幸せの1ページ

Pomu

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その日、僕は夢を見た。

とても、残酷な夢を。





夢の中で、とても幸せそうに笑っている圭くんの隣にいるのは、僕であるようで、僕じゃなかった。

同じ顔、同じ声、同じ人を愛する心を持っていながら、僕には与えられない圭くんの愛を持っている人。



顔と声は、僕そのものなのに、それ以外が何もかも僕とは違う。



朝、圭くんと二人で飲むコーヒーも、僕はブラックコーヒーなんて苦くて飲めない。

お昼に散歩に行く時も、二人が話しているアーティストのことを僕は何も知らない。

夜、圭くんの隣で眠る時も、僕はあんなに優しいキスを貰ったことはない。







そして、この残酷な夢に僕は気付かされた。

二つの日々の、決定的な違いが何なのか。





それは、圭くんの幸せの重さだ。





だからこそ、僕が、今しなくてはならないこと。

そのことに、やっと気がついた。







僕は、今のままじゃ、真さんの模倣でしかない。

圭くんが幾ら真さんと同じように僕を愛そうと思っても、今のままじゃ、ただの真似事になってしまう。





僕は、圭くんに本物の幸せをあげたい。

本当の、笑顔を見たい。





だったら、やっぱり…僕が本物になるしかないんだ。





同じ顔、同じ声、同じ人を愛する心。

それは全部、ただの偶然なんかじゃない。





きっと僕は、真さんになるために、ここに来たんだ。





これでみんな、幸せになれる。

そうだ。

全ての願いが、叶うんだ。





圭くんのもとに、真さんは帰ってくる。

真さんのことを、圭くんが忘れることはない。





僕の願いは…それは、結局、圭くんが笑顔でいてくれることだから。

たとえ圭くんが僕のことを今まで通りマコとして見てくれても、それによって圭くんの笑顔がなくなってしまうなら、それはそんなに大切なことだろうか?

圭くんの笑顔が失われることよりも辛いことなんて、きっと僕の世界にはない。





僕が真さんになることで、圭くんは本当の笑顔を取り戻せる。

真さんをもう一度愛して、二人で、幸せになれる。





これでみんな幸せなんだ。



きっと、幸せなんだ。




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