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捜査最終日

77. 十一日目(謹慎三日)、サユリ宅にて⑫  恩田の告白1

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「ハアッハァツ。俺の頭の中も真っ白になったよ。こんな感覚は、
初めてだ。そっちは大丈夫か?」
 恩田は100mをストレッチ無しで全速力で駆け抜けた位の疲労
感が走っていた。 
「ふぅーふぅーっ。恩田さんのラストスパートが凄すぎてヤバかっ
たよ! 今も快感の余波が残ってるし、未だアソコに硬いジュニア
が入ってる感覚だもん」
「そうかっ。俺も久々にハッスルしたよ。三回戦は頼まれても無理
だなっ」
「流石の私も今日は無理かな。人生で負け越したの初めてかも……」
「勝ち負けばかりが人生じゃないさ。たまたま勝ったのが俺だった。
そういう事にしておけ」
 かろうじて届いた右手でサユリの頭をナデナデして慰めると恩田
だったがお互いが披露感いっぱいの大の字で仰向けになっていたの
でシーツに飛び散った愛液を処理する事が出来なかった。
「気遣いありがとね。恩田さん。聞いても良い?」
「何だ」
「一回戦は気付かなかったけど、どうしてフニッシュの時に避妊具
を装着してたの?」
「その事か。バレないように細心の注意を払ってたけど気付かれて
たか。恋人でも無い関係で俺の子供を孕ませる訳にはいかないさ」
「ふぅ~ん。意外と真面目なんだ」
「快楽に走って女性だけが損をするのは納得行かないだけさ」
「それって前世が女性だったとかかな」
「そこまでは分からんがな。いずれにしろ、このままだと二人とも
風邪引く事は間違いないから、呼吸が整って俺が置き上がれるよう
になったら追い炊きで温めておく。ブザーが鳴っても、お前が起き
れない状態だったら、お姫様抱っこして湯舟まで連れてくよ」
「恩田さんて力持ちだったっけ?」
 最初の方こそ、疑りの眼差しを向けるも少女みたいに期待してい
る目に変わるサユリ。
「今日だけ特別に眠ってる力を呼び覚ますよ」
「じゃぁ、その時はお任せしますっ」
 恩田は、貧血気味な頭を動かしながらサユリの下半身周りの愛液
をテッシュで綺麗に拭き取ってから性器周りを優しく拭き取って、
自分が使用してるバスローブをサユリに掛けた後、寝室を後にした。

(恩田さんって実は女性の扱いに慣れてる気がしたけど本命って、
居るのかな!?)
 サユリは恩田が話した特別仕様を体感出来て幸せで溺れそうにな
っていた。

 冷蔵庫から野菜ジュースを取り出した恩田はコップに半分程注い
だ後、立ったままの姿勢でゴクゴクと飲み干していき、キッチンの
椅子に腰掛けると無性に煙草が吸いたくなっていた。勢いで、お姫
様抱っこって言ったけど実際にやった事が無かった事に気付き、額
に手を当てて、うっかり発言を反省し始めていた。
「たぶん、サユリの体型なら大丈夫だ」
 そう自分に言い聞かせてから、貧血が治まったのを確認すると、
追い炊き機能をONにして寝室に戻って上着から愛用の煙草を取り
出した際、サユリを見ると寝落ちしている横顔が妙に可愛かった。
綺麗に整ってる髪型も好きだが少し位、乱れてるのが好物である事
は今まで体の関係を持った女性には内緒にしていた。

 ブザーが鳴った訳でもないので起こさずにキッチンに戻ると換気
扇の前に立ち、紐を引いて羽根を回転させると煙草の中から黒色の
100円ライターと一本を取り出して火をつけた後、ゆっくりと煙
を肺に吸い込んで緊張を解き解していく。
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