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捜査最終日

63. 十一日目(謹慎三日)、真夜中の着信Ⅱ

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 目を覚ました後藤は違和感を覚えたので、その正体が何なのか無性に気にな
って部屋を見渡してみる事にした。一周回って壁掛け時計が24時45分を過
ぎていた事を横目で確認し2周目に入った所でようやく変化に気付いて口を開
いた。
「あれっ、こんな所に”兎の縫ぐるみ”が置いてあるぞ?」
 後藤は一度も買った事が無い商品を手にしながら貰った覚えもない事に気付
いて一体誰が何の為に固定電話の下にある収納BOXに置いていったんだろう
かと思って最近の来訪者を頭の中に思い出してみる。最初に浮かんだのは同僚
の小林だが置いていった可能性は考えられなくも無い。数分考えた後、同性に
対してイタズラをするタイプで無かった事を思い出した。次に教官を務めてい
た綾部先輩の事を思い出した。娘がいたとは聞いた事が無かったし奥さんへの
プレゼントとは考えられなかった。

「トゥルルル……」
(誰だよ。こんな真夜中に固定電話に掛けてくる非常識な奴は。知り合いだっ
たら説教の一つでも言わないと気が済まないな)
「もしもし、後藤ですけど掛けてくる時間が遅くないですか!?」
 相手が名乗る前に心の内を吐き出してしまう後藤。
「伸幸くん。あたしだけど声覚えてるかな?」
 下の名前を知っている事に素直にドキッとしたが知ったかぶりをする気には、
なれなかったので冷静に対応した。
「長く付き合った彼女なら判るかもしれないけど正直、思い出せない」
「普通はそうだよねー。先月の8月のお盆休みに終電逃しちゃって3日間居候
させて貰った早苗です」
「あぁ、あの時の早苗ちゃんかー。こんな時間にどうしたの? ストーカーに
悩んでるとか?」
「そういうのは居ないんですけど今彼が嫉妬深くて私の自宅の私物を完璧に把
握してまして同級生と日帰り旅行中に知人から貰った縫いぐるみを彼に見せる
のが怖くなって処分するのも失礼な気がして……」
「その縫いぐるみって割と大き目なサイズの兎かな?」
「そうなんです。悪いとは思っていたんですけど貸して頂いた合鍵で、お邪魔
して置かせて貰いました」
「そっか。嫉妬深い彼氏なら仕方無いかなとは思うけど……」
 誰が置いたかが分かったので疑心暗鬼から解放されて安心するも勝手に入室
された事に対して不信感が歯切れの悪さとなって出ていた。
「伸幸くん。ヤリ逃げは許さないんだからー」
「えっ何、逆ギレしてるの? 早苗ちゃん。一旦落ち着こう」
 後藤は酔った勢いで抱いた事を思い出したが早苗は遊び人みたいなサバサバ
した行動を取る人物で前戯に時間を掛けるよりもドッキング重視で終わったら、
直ぐにシャワーを浴びて寝間着に着替えて煙草を吸う行動が基本であった。
「10代の若いピチピチの体を3日間も弄んだんだから、縫いぐるみ位、預か
ってくれても良いでしょ?」
 今度は甘えた声で懇願する早苗だった。
「10代って言っても大学生なんだから変な言葉を使わないで欲しいな。合鍵
をきちんと返して貰えるなら大切に預かっておくよ」
 早苗は三日間と言ったが弄んだ記憶はなく、最初こそ、こちらから誘ったが
残りの二日は彼女から積極的だった事を克明に思い出したが敢えて黙っていた。
「さっすが優秀な警察官は違いますな~。助かります」
「おだてても何も出て来ないよ。ところで確認なんだけど、この兎の縫いぐる
みを置いた日付を教えてくれるかな?」
「え~っと手帳に書いてあるから確認するね! あった。コレコレ。9月16
日の午後15時半だよ。合鍵はバイトが休みな時に後日返すね」
「了解。じゃあ、おやすみ。彼氏とお幸せに」
「じゃね~。バイバイ!」
 おやすみを返さない自己中な感じがしたが悪さをするようには見えなかった
ので説教するのは辞めた後藤だった。
(16日の15時半って言ってたが……。確か、その時間は東病院に2回目の
訪問に行ってた時間だな)
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