45 / 136
捜査開始
45. 十日目(謹慎二日)、裏切られた男への対応①
しおりを挟む
後藤の方は信頼していた上司の裏の顔を知ってしまった事で思考が混乱して
しばらくは、何も考えられない状態が続いていた。聡が投げ掛ける会話にも生
返事が続いたので話す事、自体が困難だと判断された。そこで落ち着かせる為
にもダイニングテーブルの席に座らせて熱々のほうじ茶を出し、少しずつ飲ま
せるように指示をした。
十分程すると要約、混乱が落ち着いてきたのか次第に焦点も定まってきてい
るようだった。
「後藤さん。大丈夫か?」
後藤との最初の取り決めを気にしている状況では無いので一般人として扱う
事にした聡。
「何とか正気です」
耳の下から汗が滲み出ていて首周り全体が水滴で覆われていた。表情だけに
気を取られていたので聡は急いで顔拭きタオルを用意して手渡す。
「色々と済みません」
急いで首周りの汗を拭き取ると綺麗に畳んでテーブルの上に置いた。
「何、気にする事はないよ。僕にとっては新しい弟みたいなものだ。って言っ
ても結婚すらしてないんだがね」
「そんな風に言って貰えると嬉しいですっ」
お礼の言葉を言い終えると抑えていた感情が溢れ出て止まらなくなり、嗚咽
まじりに泣き崩れる後藤。
(余程、ショックだったに違いない)
タオルを使う事を忘れる位、大人の男性が打ちひしがれている姿を初めてみ
て目尻を濡らす聡。続けて見ていると貰い泣きしてしまいそうな気がして一旦
席を外す。時計を見ると深夜二時を過ぎていた。小腹も空いてきたので、メモ
用紙に大きな文字で二品を書いて後藤の手に握らせてから背中越しに言葉を掛
けた。
「好きな方を丸で囲ってくれ」
後藤は涙で濡れたズボンの膝部分を衣類の上から顔拭きタオルで押し付けて
拭き取る作業を数回繰り返していた。気が済むと目尻に溜まった涙を人差し指
で拭い、メニューを凝視している。
そこに書かれていたのは『オムライスと焼きうどん』だった。涙で視界が、
ぼやけていたが文字は認識できていた。その直後、携帯電話のメール着信と思
わせるバイブレーションの動きがあったが出る気になれなかった。
しばらくは、何も考えられない状態が続いていた。聡が投げ掛ける会話にも生
返事が続いたので話す事、自体が困難だと判断された。そこで落ち着かせる為
にもダイニングテーブルの席に座らせて熱々のほうじ茶を出し、少しずつ飲ま
せるように指示をした。
十分程すると要約、混乱が落ち着いてきたのか次第に焦点も定まってきてい
るようだった。
「後藤さん。大丈夫か?」
後藤との最初の取り決めを気にしている状況では無いので一般人として扱う
事にした聡。
「何とか正気です」
耳の下から汗が滲み出ていて首周り全体が水滴で覆われていた。表情だけに
気を取られていたので聡は急いで顔拭きタオルを用意して手渡す。
「色々と済みません」
急いで首周りの汗を拭き取ると綺麗に畳んでテーブルの上に置いた。
「何、気にする事はないよ。僕にとっては新しい弟みたいなものだ。って言っ
ても結婚すらしてないんだがね」
「そんな風に言って貰えると嬉しいですっ」
お礼の言葉を言い終えると抑えていた感情が溢れ出て止まらなくなり、嗚咽
まじりに泣き崩れる後藤。
(余程、ショックだったに違いない)
タオルを使う事を忘れる位、大人の男性が打ちひしがれている姿を初めてみ
て目尻を濡らす聡。続けて見ていると貰い泣きしてしまいそうな気がして一旦
席を外す。時計を見ると深夜二時を過ぎていた。小腹も空いてきたので、メモ
用紙に大きな文字で二品を書いて後藤の手に握らせてから背中越しに言葉を掛
けた。
「好きな方を丸で囲ってくれ」
後藤は涙で濡れたズボンの膝部分を衣類の上から顔拭きタオルで押し付けて
拭き取る作業を数回繰り返していた。気が済むと目尻に溜まった涙を人差し指
で拭い、メニューを凝視している。
そこに書かれていたのは『オムライスと焼きうどん』だった。涙で視界が、
ぼやけていたが文字は認識できていた。その直後、携帯電話のメール着信と思
わせるバイブレーションの動きがあったが出る気になれなかった。
0
お気に入りに追加
13
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
岬ノ村の因習
めにははを
ホラー
某県某所。
山々に囲われた陸の孤島『岬ノ村』では、五年に一度の豊穣の儀が行われようとしていた。
村人達は全国各地から生贄を集めて『みさかえ様』に捧げる。
それは終わらない惨劇の始まりとなった。
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
就職面接の感ドコロ!?
フルーツパフェ
大衆娯楽
今や十年前とは真逆の、売り手市場の就職活動。
学生達は賃金と休暇を貪欲に追い求め、いつ送られてくるかわからない採用辞退メールに怯えながら、それでも優秀な人材を発掘しようとしていた。
その業務ストレスのせいだろうか。
ある面接官は、女子学生達のリクルートスーツに興奮する性癖を備え、仕事のストレスから面接の現場を愉しむことに決めたのだった。
校長先生の話が長い、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
学校によっては、毎週聞かされることになる校長先生の挨拶。
学校で一番多忙なはずのトップの話はなぜこんなにも長いのか。
とあるテレビ番組で関連書籍が取り上げられたが、実はそれが理由ではなかった。
寒々とした体育館で長時間体育座りをさせられるのはなぜ?
なぜ女子だけが前列に集められるのか?
そこには生徒が知りえることのない深い闇があった。
新年を迎え各地で始業式が始まるこの季節。
あなたの学校でも、実際に起きていることかもしれない。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる