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第一章:始まりの世界 ”自己啓発編”

♯31. トランプゲーム”練習プレイ”その④

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 休憩タイムが終わりを告げると立花が積み札から一枚
取って(立=残り5枚)次順に回す。霞実は立花の背後
に回り込んで新たに増えたハートの3を記憶する。
「次は僕の番だね!」
 哀川はスペードの4を出してマークをクローバーからスペード
へと変化させる。(哀=残り11枚)
「で俺っちだな」
 突然、一人称を変化させてくるので先生を含む全員の
頬が緩む和やかムードが流れるも明石は無意識下の中に
あったので普段と変わらない様子でスペードの10を出し
て残りを堅実に減らした。(明=残り2枚)
「一瞬減ったと思ったのに、また増えてそこから中々、
減らないのも醍醐味って奴なのかな~」
 立花は最もな意見を口に出してスペードの5を出した。
(立=残り4枚)
「気付いたら明石先輩、残りの手札2枚になってるし」
 哀川は何を出そうか迷った挙句にスペードの6を出した。
(哀=残り10枚)
「何の変化もない札だこと」
 立花は、速攻で野次を入れたので哀川は恥ずかしさの
あまり、視線を床に落としていたが明石は気にせず積み
札から一枚取った。(明=残り3枚)
 霞実が確認作業の為、椅子から立ち上がろうとした時
、明石が気を利かせて手札が見えるように体を移動する
とハートの9が新たに加わった事が確認出来た。

 空気みたいに自順が来るのを待つ体制に入ろうか迷っ
ていた哀川は光明が差したの如く、目に輝きを取り戻し
て言い放った。
「先見の明が無い奴は少し黙ってろっ」
「……」
 たまたま上手く事が運んだだけでは、あったが明石の
手札を増やした事実は立花のプライドにヒビを入れた。
 
「哀川君。難しい言葉を知っているのね! 先生、驚い
ちゃった」
「霞実先生に言われると素直に嬉しいですけど、大した
事じゃありませんよっ」
 知ってて当然の態度をしていたが父親の口癖だっただ
けの話で耳にタコが出来る程、聞かされていたのだから
心理作戦を仕掛けるには絶好の機会だった。 

 タカフミは二人のやりとりをゲームに支障が出るレベ
ルでは無いと判断して傍観者を決め込んだ。

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