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第一章:始まりの世界 ”チーム対抗戦” 

#178.チーム対抗戦の始まり”83”  三年ぶりの再会

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 霞実と別れて盛り上がっている会場の方へと辿り
着こうとした時、清武が一番会いたくない人物が行
く手をふさぐように立っていた。実に三年の月日が
流れている事を思い出しながら向こうは誰かを探し
ているらしく首をキョロキョロ動かしている。
 未だ相手はこちらに気付いてはいないようだった。
さて、このままのタイガーマスク姿のままで良いの
か迷っているとプロレスマスクの収集が趣味という
事がバレており、同じ種類のマスクでも縫い目や色
落ちなど全てのマスクの違いを把握しており、本物
だと分かれば、本人だと認めざるを得ないピンチな
状況になる事を容易に想像した。
(今回は相手が相手だけに慎重に行動した方が良さ
そうだ)
 マスクをズボンの中にしまい込んでから近づくと
相手から声が掛かった
「実に、ひさしぶりだわね。私から逃げられると思
ったの?」
 厚手のコートに身を包んでいる長身の女性で背中
まで伸びた黒髪のロングが印象に残る。
「誰のことだ?」
 清武は自分からは名乗らない。相手も名乗らない
のだから先に答えてやる必要も無い。
「あなたに決まってるじゃない。清武(きょうぶ)」
「残念ながら別人だな。俺は清武(きよたけ)だ」
 一緒に居た頃は肩までの長さだったのでカワイイ
タイプだった記憶があるが印象が随分と変わってて
綺麗な大人の女性に映る。

「ふぅーん。そういうしらばっくれ方するんだね。
あんなに愛しあった中なのに……」
 ふと視線を下に落として悲しげな表情を見せる女。
「だから、人違いだって。証拠でもあるのか?」
 つられて視線を下に落とすと両手に白い皮手袋が
はめてある事が分かった。当時は、こんな物はして
いなかったはずだが……。
「証拠ねー。双子の弟とか言ってごまかすつもりか
しら。まぁ、どっちにしても三年前の私とはレベル
が違うから覚悟しておいてねっ」
 厚手のコートを脱ぐと全身黒色のラバースーツ姿
が現れていた。久しぶりに見ると目のやり場に困る
抜群のプロポーションは健在だった。
 
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