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第一章:始まりの世界 ”チーム対抗戦” 

♯108.チーム対抗戦の始まり㉚ バトル開始1

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 堀部は試合が始まる直前に対戦相手に話し掛ける
行動に出る。
「最初に手を合わせた状態で、そのまま押し切るの
は僕としてはヒキョウな手だと思うんだ。だから手
を一旦下げてから攻撃する事にするよ」
「えっ? 一応聞くけど、それって作戦かい?」
 田中は試合前に声が掛かるとは思っていなかった
ので激しく、どうようした。声が裏返っているのだ。
「そうだよ。信じる信じないは、そっちの勝手だけ
どね」
 堀部は自分で思い付いた先に仕掛ける戦法を実行
に移しただけだったが田中には、かなり有効だと感
じていた。入場シーンで堂々と歩いてきていたらば
、この戦法は見送るつもりだったがアレを見て使わ
ない理由が見当たらなかったのだ。
「心理的な作戦には引っ掛からないからなっ」
 田中は自分にも言い聞かせるように口に出したが
手の平からの汗を止める事は出来なかった。

「バトル始めぇーーーーっ」
 立花からの開始の合図が言い終わる頃に堀部は、
最速の動きで手を腰の位置まで下げる。その動きを
瞬き無しで見ていた田中は同じ動きをした方が良い
かどうかの迷いが生じた。その瞬間を見逃さずに、
好機と判断した堀部は、自身の両手で力強く相手の
手の平を奥へと押し込んだ。
「最初の相手が君で助かったよっ」
 堀部は微笑みながらボソッと田中に語り掛けた。
「本当だったんだ……」
 田中は、円板から空中に放り出されると背中から
砂場へと着地して負けた事をさとっていた。
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