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「で、では、いただいましょうか」
いつものように・・・ではなく若干緊張ぎみの盛雄の一言の後、みんなの「いただきます」があり、食事が始まった。
彩香たち女子は一斉にエビフライをとり、ゆずの特性タルタルソースをつけて熱々ジューシーなエビフライに「はむっ」と噛み付いた。
「なんでみんなエビフライ?」
不思議に思った大和が尋ねた。
「・・・おいひい・・・」
が、みんなうっとりしていて、大和質問に答えるものは1人もいなかった。
「な、なあ・・・」
図らずも女子全員から無視された形になってしまった大和は、それでも勇気を持ってもう一度尋ねた。
「エビフライ・・・」
「・・・ごめん大和くん。食べてごらんよ、めっちゃおいしいから。揚げたてだし」
「そ、そうか?」
結衣が反応してくれて(他4人はまだうっとりしている)少し元気を取り戻した大和は、エビフライを箸でつまみ、同じように自分の前に用意されていたタルタルソースをつけてから、一口食べた。
「・・・うめぇ!まじうめえ!」
大和はもう一つエビフライを取ると、今度はタルタルソースをたっぷりとつけてから口の中へ放り込んだ。
もぐもぐして飲み込んだ後
「このタルタルソース、今まで食った中で一番うまいかも・・・」
と呟いた。
「ゆずぅ、よかったね。大和あーんなに喜んでるよ」
大和呟きを聞き逃さず、明衣が突っ込んだ。
「これ、ゆずちゃんが作ったの?」
「う、うん・・・」
明衣のツッコミのせいでゆずはすでに真っ赤になっていた。
「これなら毎日でも食えるよ!マジうまい」
大和は満面の笑みでゆずに「グッ」と親指を立てた。
「あ、ありがとぅ・・・」
あまりの恥ずかしさに、ゆずは俯いてしまった。
「鷹文もこれ食えよ。めっちゃうまいから」
「ああ」
言われた鷹文もエビフライを一つつまんだ。
「・・・確かにうまいな」
「おー、鷹文もおいしいってさ!すごいじゃんゆず!」
「あ、ありがとう・・・」
顔を上げたゆずが鷹文にもお礼を言った。
「い、いや、別に・・・」
でもやっばり彩香の方がうまい、とはさすがの鷹文でも言えなかった。

一方大人チームは・・・
和泉は、自分の手ですり下ろしたわさびをのせ少しだけ醤油をつけたアジを口の中へ・・・
「うーん・・・おいしい」
口の中いっぱいにアジの甘みが広がったところで、冷酒を一口。
「・・・もう最高!」
すっかりご満悦の様子だ。
そんな和泉の向いにいる盛雄は、静かに箸を進めいてた。
「・・・にしてもひどいですよもね、先生。彩香ちゃんにこぉんなおいしいもの作らせて、私にはお酒抜きで食べさせるつもりだったんでしょ?」
「で、ですからさっき説明したじゃないですか。私だって彩香くんの料理は久しぶりで・・・」一応は筋の通った言い訳。
「わかりますけど・・・ってあれ?それって先生がみんなと一緒に来ればいいだけの話じゃ・・・」
「それは、なんと言いますか・・・やはり夏はこちらの方が筆が進みますし・・・」
「私から逃げられますもんねぇ」
和泉の目は笑っていなかった。
「まあ、今日は許します。怒ってばかりじゃ彩香ちゃん渾身のお刺身に失礼ですから」
「そうですね!いやぁ、彩香くんの料理はどれもおいしい」
和泉と目を合わせないように、盛雄は視線を料理に集中させた。

そんなふうにワイワイとしながら、夏休み初日の夜は更けていった。
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