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少し離れた駐車場に車を止めた舞菜たちは、買い物をしながら湯本駅までやってきた。
「あっ、いた。秋人さん、こっちこっち!」
「?? えっと・・・明衣、さん、でしたっけ?」
「うわぁー、私のこと覚えてないんだ。私はちゃんと覚えてたのに」
明衣はわざとらしくむくれ顔をした。
「す、すいません・・・」
「なあんてね。1回店で会ったくらいじゃ覚えてられるわけないよね。秋人さん人気者だし」
明衣が笑顔で助け舟を出した。
「ほ、ほんとにすいません」
秋人は勢いよく頭を下げた。
「あーケーキ崩れちゃうよ!」
「あっ・・・だ、大丈夫、です」
秋人はケーキの箱を慎重に揺すってみた。どうやら中は無事のようだ。
「よかったぁ。ちょっと!しっかりしてよね。お店の人でしょ!」
「は、はい。すいません・・・」
「明衣ちゃん、あんまりいじめちゃかわいそうよ。こんな遠くまで届けてもらってるんだから」
「そ、そうだね。ごめんね。秋人さん」
「い、いえ。むしろ嬉しいです!」
「えっ、叱られるのが嬉しいの⁉︎」
驚きの声を上げる舞菜。
「ち、違いますよ!今日の特急、新型の赤いのだったんです。ずっと乗ってみたかったんですよぉ。それにほら、見てくださいよこれ。駅員さんが撮ってくれたんですよ!」
嬉しそうに特急と自分が一緒に写っている写真を見せた。
「ああ、そういう趣味の人ね」
明衣が納得したように頷いた。
「そっかぁ・・・私も乗ってみたいかも」
と舞菜がなんとなく相槌を打った。
「ですよね!いいっすよね、この赤いの!」
「そ、そうね。す、素敵よね」
秋人の勢いに舞菜がたじろいだ。
「うわぁ、この特急の良さがわかってくれる女性っているんだぁ・・・
あの、明衣さん、こちらの美人さんは?」
「びびび、美人って・・・」
思わぬことを言われた舞菜は、真っ赤になってしまった。
「ああ、こちらは舞菜さん。彩香の写真の友達だよ」
「ああ、彩香さんの。類は友を呼ぶってほんとですね」
「・・・って彩香のことは覚えてるんだ」
と明衣は呆れ顔で呟いた。
「あ、あの・・・わたしそ、そんな・・・」
舞菜は言葉を続けることができなかった。
「でもさあ、なんで撮られる側より撮る側の方がレベル高いんだろうね?」
「ですね。モデルさんとかもやりにくそう・・・」
言いながらも舞菜のことが気になるのか、秋人はチラチラと舞菜を見ていた。
「そ、そんな・・・」
「・・・成和駅からちょっと離れてるんですけど、カフェやってるんでよかったら遊びに来てくださいね!隣にはゆずさんの家もありますから」
「秋人さんね、成和の女子大生とか近所のママたちから人気みたいで、店にファンクラブとかもあるんだって」
「た、確かに、ちょっとかっこいいかも・・・」
舞菜は恥ずかしそうに秋人を見つめた。
「そ、そんなことないですよ・・・あっ、帰りの特急が!」
話しているとホームから特急発車時間の案内放送が聞こえてきた。
「急がなきゃじゃん!舞菜さん!」
「は、はい!あの、これ、よかったら・・・」
舞菜はお土産の袋を手渡した。
「うわぁ、ありがとうございます!」
「かまぼことひょうたん漬け入ってるから。かまぼこは帰ったら冷蔵庫入れてね」
「まじっすか!でもぼくお酒飲めないしなぁ・・・」
と言いながらも嬉しそうに袋の中を覗き込んだ。
「っていうか早く行かなくていいの?」
「・・・うわぁ、あと2分しかない!じゃあぼくはこれで!」
秋人は階段を駆け上がっていった。
「お、面白い人だったね」
「舞菜さん、美人って言われて舞い上がってましたね」
ニヤニヤと見つめる明衣。
「い、いいでしょ!そんなこと滅多に言ってもらえないんだから・・・」
舞菜はボソボソと呟いた。
「いやぁ、あれだからモテるんだろうなぁ」
とある意味納得した明衣だった。
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