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数日後
鷹文は机に座って考え事をしていた。
「やっぱり彩香、だよな」
鷹文はペンを持ったまま立ち上がって部屋の中を歩き出した。
「・・・で、明衣とゆずが出てきて・・・」
と何かを思いついた鷹文は、急いで机に戻りメモに書き込んだ。

しばらくして考えのまとまった鷹文は、リビングでお茶を飲んでいた和泉のところにやってきた。
「和泉さん、ちょっといい?」
「あら、鷹文くん。どうしたの?」
「あの、さ、ちょっとこれ見てもらってもいいかな」
鷹文が原稿用紙を和泉に渡した。
「また・・・書いてみようと思ってさ。とりあえず簡単なプロットだけ、作ってみたんだ」
鷹文が少し恥ずかしそうに頭を掻いた。
「そう!どれどれ・・・」
和泉が原稿用紙に目を通した。
「・・・これって」
「彩香たちの事、書いてみようかと思って」
「・・・う、うん。いいんじゃない!」
「そうかな?」
「そ、そうよ。やっぱり身近なことの方が気持ちも入れやすいじゃない」
「だよね。ありがとう和泉さん!」
和泉に認めてもらえた鷹文は、嬉しそうな顔で自分の部屋に戻った。
「・・・って言っちゃったけど、いいのかなぁ」

「先生、今、いいですか?」
「はい。どうしました?」
「あの、鷹文くん、また書くみたいで」
「ほう。やっとやる気になりましたか」
盛雄が嬉しそうな顔をした。
「それがですね!あの・・・」
「はい?」
「この前の先生の短編、あったじゃないですか」
「ええ」
「鷹文くんも同じなんですよ。青春もの。彩香ちゃんたちを題材に」
「ああ。そういうことですか」
と平然としたままの盛雄。
「・・・っていいんですか?」
「いいも何も。鷹文が書きたいと思ったのでしょう」
「はい・・・」
「作家が書きたいと思ったなら、それを書いてもらうのが編集の勤めなんじゃないですか?」
「それは・・・そうなんですけど」
「私と鷹文に限らなくても、同じテーマで書く作家なんてたくさんいるじゃないですか」
「・・・そうですね」
「たまたま全く同じ題材で、それがたまたま親子だったというだけで、書く人間が違えば、必ず違う作品になります」
「そ、そうなんですけど、先生の作品、もうすぐ鷹文くんも読みますし・・・」
「それも、鷹文にとってはいい勉強になるのではありませんか?同じテーマで、プロが書いた作品を読めるわけですから」
「・・・」
「要は鷹文がやる気をなくさなければいいだけですね。頼みましたよ。プロの編集者さん」
「え?えっと、私、鷹文くんの担当じゃないんですが・・・」
「未来の作家を育てるのも、編集者の大切な仕事だと、私は思います」
「は、はあ・・・」
いつもの仕返しとばかりにニンマリとした笑みを浮かべる盛雄だった。 
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