上 下
69 / 428
1

69

しおりを挟む
 
それから数日後の木曜日の夕方
帰宅した鷹文は、すでに夕食の準備をはじめていた彩香の様子を伺いつつ、彩香に話しかけた。
「な、なあ、彩香」
「なに?」
なぜか少しそっけない彩香。
「あのさ・・・また、デート、行くんだけど・・・」
「ふうん。そうなんだ。それ、私が聞かなきゃいけないの?」
彩香は少しイラついた顔で鷹文を見た。
「いや・・・その、前の服、よかったって・・・言われたから」
「え?玲、さん?」
気まずそうに鷹文が続けた。
「あ、ああ。で、さ、また、選んでもらえない、かな?」
「また⁉︎」
「・・・やっぱだめ、だよな」
残念そうな顔をする鷹文。
「そんなこと、ない、けど・・・」
困ってしまう彩香。
「何回クローゼット見ても、この前と同じ服になるんだ・・・」
「そ、そうよね。それは、わかるわ・・・」
彩香は、鷹文のクローゼットを思い出して、少し残念な気分になりながら同意した。
「だから、さ・・・また、一緒に、頼めない、か?」
恥ずかしそうにお願いする鷹文。
「も、もう、仕方ないわね。今回だけよ。で、鷹文くん、いつ行くの?」
「明後日」
「え?もうすぐじゃない!」
びっくりした彩香は、キッチンの片付けを中止して、すぐに鷹文の部屋に向かった。
そのまま何の断りもなく鷹文の部屋のドアをあけ、クローゼットの扉を開けた。ひととおり確認した後、
「うーん。やっぱりここのじゃ無理ね。明日また行くわよ!」
「すまん」
「もう、もっと早く言ってよ。私だってすぐにコーディネイト決められるわけじゃないんだからね。男の子の服なんてうちじゃ必要ないんだし」
「そ、そうだよな。おれも、考えるから・・・」
「そうして。次は自分で買いに行ってね!」
彩香は、先ほどの気まずい状況も忘れて、思わず毒づいてしまった。
 
それから帰宅して・・・
「もう、何で二回も鷹文くんのデートのために・・・」
ふみくんを抱きしめた彩香は、ムッとした顔でつぶやいていた。
「・・・また、デート・・・なんだ」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

JKがいつもしていること

フルーツパフェ
大衆娯楽
平凡な女子高生達の日常を描く日常の叙事詩。 挿絵から御察しの通り、それ以外、言いようがありません。

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

令嬢の名門女学校で、パンツを初めて履くことになりました

フルーツパフェ
大衆娯楽
 とある事件を受けて、財閥のご令嬢が数多く通う女学校で校則が改訂された。  曰く、全校生徒はパンツを履くこと。  生徒の安全を確保するための善意で制定されたこの校則だが、学校側の意図に反して事態は思わぬ方向に?  史実上の事件を元に描かれた近代歴史小説。

校長先生の話が長い、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
学校によっては、毎週聞かされることになる校長先生の挨拶。 学校で一番多忙なはずのトップの話はなぜこんなにも長いのか。 とあるテレビ番組で関連書籍が取り上げられたが、実はそれが理由ではなかった。 寒々とした体育館で長時間体育座りをさせられるのはなぜ? なぜ女子だけが前列に集められるのか? そこには生徒が知りえることのない深い闇があった。 新年を迎え各地で始業式が始まるこの季節。 あなたの学校でも、実際に起きていることかもしれない。

寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい

白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。 私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。 「あの人、私が

♡ちょっとエッチなアンソロジー〜おっぱい編〜♡

x頭金x
大衆娯楽
♡ちょっとHなショートショート詰め合わせ♡

若妻の穴を堪能する夫の話

かめのこたろう
現代文学
内容は題名の通りです。

処理中です...