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しおりを挟むそれから数日後の木曜日の夕方
帰宅した鷹文は、すでに夕食の準備をはじめていた彩香の様子を伺いつつ、彩香に話しかけた。
「な、なあ、彩香」
「なに?」
なぜか少しそっけない彩香。
「あのさ・・・また、デート、行くんだけど・・・」
「ふうん。そうなんだ。それ、私が聞かなきゃいけないの?」
彩香は少しイラついた顔で鷹文を見た。
「いや・・・その、前の服、よかったって・・・言われたから」
「え?玲、さん?」
気まずそうに鷹文が続けた。
「あ、ああ。で、さ、また、選んでもらえない、かな?」
「また⁉︎」
「・・・やっぱだめ、だよな」
残念そうな顔をする鷹文。
「そんなこと、ない、けど・・・」
困ってしまう彩香。
「何回クローゼット見ても、この前と同じ服になるんだ・・・」
「そ、そうよね。それは、わかるわ・・・」
彩香は、鷹文のクローゼットを思い出して、少し残念な気分になりながら同意した。
「だから、さ・・・また、一緒に、頼めない、か?」
恥ずかしそうにお願いする鷹文。
「も、もう、仕方ないわね。今回だけよ。で、鷹文くん、いつ行くの?」
「明後日」
「え?もうすぐじゃない!」
びっくりした彩香は、キッチンの片付けを中止して、すぐに鷹文の部屋に向かった。
そのまま何の断りもなく鷹文の部屋のドアをあけ、クローゼットの扉を開けた。ひととおり確認した後、
「うーん。やっぱりここのじゃ無理ね。明日また行くわよ!」
「すまん」
「もう、もっと早く言ってよ。私だってすぐにコーディネイト決められるわけじゃないんだからね。男の子の服なんてうちじゃ必要ないんだし」
「そ、そうだよな。おれも、考えるから・・・」
「そうして。次は自分で買いに行ってね!」
彩香は、先ほどの気まずい状況も忘れて、思わず毒づいてしまった。
それから帰宅して・・・
「もう、何で二回も鷹文くんのデートのために・・・」
ふみくんを抱きしめた彩香は、ムッとした顔でつぶやいていた。
「・・・また、デート・・・なんだ」
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