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46.少しは反省してます
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実家でたっぷりと愛し合ってしまった気まずさがあるのか、翌日悠仁が起きた時にはもう絋亮の姿はなく、顔を洗い、トイレを済ませてリビングに行くと、真彩と楽しそうに談笑していた。
「おはよ」
「お兄ちゃん、もう11時過ぎてるんだよ。おはようじゃないよ」
真彩に起きるのが遅すぎると小言を言われるが、その隣にいる絋亮が俺もさっき起きたところだよと笑顔を見せる。
「おはよう、悠仁」
「なに。なんか楽しそうだけど俺の悪口か」
ソファーに座って大きく伸びをすると、親父とお袋は?と辺りを見渡す。
「お兄ちゃんたちゆっくりできるって言ってたから、ご飯の用意で買い物に行ってる。絋くんからは、慶ちゃんの話を聞いてたの」
「ああ、慶太郎か。お前に会いたがってたから、そのうち暇できたら勝手に来るんじゃないか?」
自分の実家には寄り付かないくせに、出張だなんだと理由さえあれば慶太郎は悠仁の実家に顔を出しているらしい。
「慶ちゃんはお土産のチョイスがおかしいから、毎回笑っちゃうよね。あ、絋くん!話戻すけど、本当にあの面倒臭さがりの慶ちゃんがキューピットなの?」
真彩は思い出したように絋亮に向き合うと、少し信じられない様子で首を傾げている。
「そうだよ。元々俺と悠仁は顔見知りだったんだけど、い……慶太郎さんが間を取り持ってくれた感じかな」
「絋亮、こいつ慶太郎が無花果なの知ってるから大丈夫だよ」
「あ、そうなんだ。真彩ちゃん俺はね、無花果さんと仲良しなんだよ」
「じゃあもしかして、絋くんもドラァグクイーンなの?だから慶ちゃんと仲良しとか」
「そうそう。イベントでよく一緒になって、絶対気が合いそうなヤツが居るからって、無花果さんが紹介してくれたのが悠仁」
「へえ、慶ちゃんにしてはやるじゃん。でもお兄ちゃんと元々顔見知りだったなら、びっくりしたんじゃない」
楽しそうに絋亮と話す真彩を見て、本当に家族が自分や絋亮を受け入れてくれてることを実感して、悠仁は少し感傷的になる。
涙こそ出ないが、感極まった表情を見られたくなくて、飲み物を取ってくるとその場を離れてダイニングキッチンに向かった。
冷蔵庫からお茶を取り出すと、適当なグラスに並々注ぐ。
「あ、お兄ちゃん。お母さんがサンドイッチ作ってくれてるけど食べる?」
「でももうすぐ昼だろ」
「言っても残りだからそんなに量はないよ」
言いながら冷蔵庫からサンドイッチを取り出して、真彩はこれくらいならいけるでしょとテーブルに皿を置く。
「絋亮と仲良く出来そうか」
絋亮と飲んでいたのだろう。コーヒーのおかわりを用意する真彩の後ろ姿を見ながら、サンドイッチを頬張って声を掛ける。
「絋くんと?そりゃ仲良くしたいよ。めちゃくちゃ優しいし、さりげない気遣いもあるし。それに超イケメンだしね。お兄ちゃんにはもったいないよねー」
「もったいないってお前」
「……良かったね、お兄ちゃん」
「おう」
「それ食べたらおいでよ。早く3人で話そ」
真彩はにっこり笑ってマグカップを持ち上げると、自分のは淹れてきてねとそのままリビングに引き返して行った。
離れて暮らすようになった時はまだ中学生だった真彩も、専門学校を卒業して今では社会人として働いてもう3年ほど経つだろうか。
社会に出たことで、悠仁のジェンダーについて悠仁以上に考えたり悩んだり、いつの間にか妹は可愛いだけではない、大人に成長していて驚かされる。
家族の理解を得られるだけで、こんなにも心強いものなのかと、悠仁は改めて思う反面、職場や社会的にオープンにするつもりがない自分は、やはり臆病で情けないと感じてしまう。
見えない差別はまだまだあって、それに立ち向かえるほど強くは居られない。
だからこそ、せめてありのままの悠仁を認めてくれる人たちには偽りなく関わっていきたいと改めて思う。
「さて。真彩と絋亮は、なんの話をしてるのやら」
食べ終わった皿を片付け、コーヒーを淹れてリビングに向かうと、楽しそうに盛り上がる真彩と絋亮に混ざって会話を楽しむ。
2、30分ほど談笑していると、買い物から帰った両親に夕飯も食べて行けばいいと引き留められ、とりあえず今日泊まるホテルを押さえた。
「今日も泊まったらええのに」
母が残念そうな声で悠仁を見つめて溜め息を吐く。
「親父も真彩も明日は仕事だろ。さすがに悪いよ」
「家族に気ぃ遣わんでもええやないの。絋亮くんかて脚怪我してるんやし、観光なんかそれこそ今度来たらええやんか」
「また今度ゆっくり来るから、そん時に頼むよ」
「ほんまに。お兄ちゃんは一回言うたら聞かへん。絋亮くん、あんた一人でもかまへんのやから、マメに顔見せに来てよ?」
「あはは、分かりました。本当にまた遊びに来ますから、その時にゆっくり泊まらせてもらいます。俺は悠仁と違って、関西に出張とかもよくありますから」
「いや嬉しいわぁ。そしたらその時は遠慮なく泊まりに来るんよ」
「お袋、親父の出張の記憶あるだろ。会社員が出張でそんな都合よく実家に泊れる訳ないだろ。絋亮、お前もだぞ。あんまり期待させること言うな」
呆れ顔で二人を見比べて小言を吐き出すと、そんな悠仁を見つめて母と絋亮が可笑しそうに笑う。
「おぉ怖。そんな威嚇せんかて、絋亮くん取ったりせえへんよ。なあ絋亮くん」
「ははは。そうだよ悠仁。遊びに来るって言っても、出張に絡めて有休が取れたらの話だよ」
いつの間にか、すっかり仲良く息を合わせる母と絋亮にバツの悪さを感じながら苦笑すると、真彩が面白がって悠仁を突いてくる。
「お兄ちゃんって、結構独占欲強いのかな?」
「なんだよそれ」
「お母さんに絋くん取られたらやなんでしょ」
「あのなぁ……」
面白おかしく家族に揶揄われてバツが悪くなったタイミングで、父がちょうどリビングに現れて準備が出来てると母を呼びに来た。
「母さん、お喋りも良いけど、みんなにお昼早く食べさせてやらないと」
「ああ、そうやね。夕飯しっかり作るんやったら、お昼はたこ焼きにでもしよかて、お父さんと言うてたんよ。すぐ支度するわ」
パンと手を打つと、母は真彩を連れてダイニングキッチンに向かった。
「おはよ」
「お兄ちゃん、もう11時過ぎてるんだよ。おはようじゃないよ」
真彩に起きるのが遅すぎると小言を言われるが、その隣にいる絋亮が俺もさっき起きたところだよと笑顔を見せる。
「おはよう、悠仁」
「なに。なんか楽しそうだけど俺の悪口か」
ソファーに座って大きく伸びをすると、親父とお袋は?と辺りを見渡す。
「お兄ちゃんたちゆっくりできるって言ってたから、ご飯の用意で買い物に行ってる。絋くんからは、慶ちゃんの話を聞いてたの」
「ああ、慶太郎か。お前に会いたがってたから、そのうち暇できたら勝手に来るんじゃないか?」
自分の実家には寄り付かないくせに、出張だなんだと理由さえあれば慶太郎は悠仁の実家に顔を出しているらしい。
「慶ちゃんはお土産のチョイスがおかしいから、毎回笑っちゃうよね。あ、絋くん!話戻すけど、本当にあの面倒臭さがりの慶ちゃんがキューピットなの?」
真彩は思い出したように絋亮に向き合うと、少し信じられない様子で首を傾げている。
「そうだよ。元々俺と悠仁は顔見知りだったんだけど、い……慶太郎さんが間を取り持ってくれた感じかな」
「絋亮、こいつ慶太郎が無花果なの知ってるから大丈夫だよ」
「あ、そうなんだ。真彩ちゃん俺はね、無花果さんと仲良しなんだよ」
「じゃあもしかして、絋くんもドラァグクイーンなの?だから慶ちゃんと仲良しとか」
「そうそう。イベントでよく一緒になって、絶対気が合いそうなヤツが居るからって、無花果さんが紹介してくれたのが悠仁」
「へえ、慶ちゃんにしてはやるじゃん。でもお兄ちゃんと元々顔見知りだったなら、びっくりしたんじゃない」
楽しそうに絋亮と話す真彩を見て、本当に家族が自分や絋亮を受け入れてくれてることを実感して、悠仁は少し感傷的になる。
涙こそ出ないが、感極まった表情を見られたくなくて、飲み物を取ってくるとその場を離れてダイニングキッチンに向かった。
冷蔵庫からお茶を取り出すと、適当なグラスに並々注ぐ。
「あ、お兄ちゃん。お母さんがサンドイッチ作ってくれてるけど食べる?」
「でももうすぐ昼だろ」
「言っても残りだからそんなに量はないよ」
言いながら冷蔵庫からサンドイッチを取り出して、真彩はこれくらいならいけるでしょとテーブルに皿を置く。
「絋亮と仲良く出来そうか」
絋亮と飲んでいたのだろう。コーヒーのおかわりを用意する真彩の後ろ姿を見ながら、サンドイッチを頬張って声を掛ける。
「絋くんと?そりゃ仲良くしたいよ。めちゃくちゃ優しいし、さりげない気遣いもあるし。それに超イケメンだしね。お兄ちゃんにはもったいないよねー」
「もったいないってお前」
「……良かったね、お兄ちゃん」
「おう」
「それ食べたらおいでよ。早く3人で話そ」
真彩はにっこり笑ってマグカップを持ち上げると、自分のは淹れてきてねとそのままリビングに引き返して行った。
離れて暮らすようになった時はまだ中学生だった真彩も、専門学校を卒業して今では社会人として働いてもう3年ほど経つだろうか。
社会に出たことで、悠仁のジェンダーについて悠仁以上に考えたり悩んだり、いつの間にか妹は可愛いだけではない、大人に成長していて驚かされる。
家族の理解を得られるだけで、こんなにも心強いものなのかと、悠仁は改めて思う反面、職場や社会的にオープンにするつもりがない自分は、やはり臆病で情けないと感じてしまう。
見えない差別はまだまだあって、それに立ち向かえるほど強くは居られない。
だからこそ、せめてありのままの悠仁を認めてくれる人たちには偽りなく関わっていきたいと改めて思う。
「さて。真彩と絋亮は、なんの話をしてるのやら」
食べ終わった皿を片付け、コーヒーを淹れてリビングに向かうと、楽しそうに盛り上がる真彩と絋亮に混ざって会話を楽しむ。
2、30分ほど談笑していると、買い物から帰った両親に夕飯も食べて行けばいいと引き留められ、とりあえず今日泊まるホテルを押さえた。
「今日も泊まったらええのに」
母が残念そうな声で悠仁を見つめて溜め息を吐く。
「親父も真彩も明日は仕事だろ。さすがに悪いよ」
「家族に気ぃ遣わんでもええやないの。絋亮くんかて脚怪我してるんやし、観光なんかそれこそ今度来たらええやんか」
「また今度ゆっくり来るから、そん時に頼むよ」
「ほんまに。お兄ちゃんは一回言うたら聞かへん。絋亮くん、あんた一人でもかまへんのやから、マメに顔見せに来てよ?」
「あはは、分かりました。本当にまた遊びに来ますから、その時にゆっくり泊まらせてもらいます。俺は悠仁と違って、関西に出張とかもよくありますから」
「いや嬉しいわぁ。そしたらその時は遠慮なく泊まりに来るんよ」
「お袋、親父の出張の記憶あるだろ。会社員が出張でそんな都合よく実家に泊れる訳ないだろ。絋亮、お前もだぞ。あんまり期待させること言うな」
呆れ顔で二人を見比べて小言を吐き出すと、そんな悠仁を見つめて母と絋亮が可笑しそうに笑う。
「おぉ怖。そんな威嚇せんかて、絋亮くん取ったりせえへんよ。なあ絋亮くん」
「ははは。そうだよ悠仁。遊びに来るって言っても、出張に絡めて有休が取れたらの話だよ」
いつの間にか、すっかり仲良く息を合わせる母と絋亮にバツの悪さを感じながら苦笑すると、真彩が面白がって悠仁を突いてくる。
「お兄ちゃんって、結構独占欲強いのかな?」
「なんだよそれ」
「お母さんに絋くん取られたらやなんでしょ」
「あのなぁ……」
面白おかしく家族に揶揄われてバツが悪くなったタイミングで、父がちょうどリビングに現れて準備が出来てると母を呼びに来た。
「母さん、お喋りも良いけど、みんなにお昼早く食べさせてやらないと」
「ああ、そうやね。夕飯しっかり作るんやったら、お昼はたこ焼きにでもしよかて、お父さんと言うてたんよ。すぐ支度するわ」
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