28 / 52
28.予期していなかった連絡
しおりを挟む
片付いた部屋を見渡して、衣装の管理の大変さはなんとなく分かった気がする。
衣装やウィッグを洗ったバケツと洗面器を洗って洗面台の下にしまうと、ちょうど洗濯機が乾燥を終えた電子音が鳴る。
取り出した衣装をネットから出すと、ハンガーに掛けて、バルコニーに干し直す。
一連の作業を終えてソファーに座ると、もうそろそろ23時になる頃になっていた。
「こりゃ疲れるわな」
本来であれば絋亮は土日が休みのはずだが、その土日にほとんどイベントが入っていて、平日にもステージに出ることがあるくらいだから、悠仁が今日したような作業はよほど手が空いてる時にしか出来ないだろう。
それを考えると、食事を作ったり部屋の掃除をしたりも、効率重視になってくるのはよく理解できた。
「まあ俺も、長い休みのうちの1日だから出来たんだろうしなあ」
すっかり片付いた部屋を思い浮かべて、夜風に揺れる衣装を眺めながら時給欲しいわと独りごちて笑う。
充電器に差していたスマホを手元に持ってくると、SNSを開いてザッと目を通す。
HaLのアカウントにもログインして、溜まっていたコメントを確認すると、返信をしてしばらくやり取りをしてからログアウトした。
手持ち無沙汰になってテレビでもつけようとした時に、テーブルに置いたスマホが震え、どこからか着信が入っているらしく、知らない番号だが慌てて手に取る。
「はいもしもし?」
『夜分遅くに失礼致します。友川悠仁さんの携帯電話で間違いないですか』
「は?」
『友川さんでしょうか』
「……はぁ、友川の携帯ですが。あの、失礼ですけど、どちら様ですか」
『失礼します。私、千葉中央署の大東と申します。秋塚絋亮さん本人のご希望でご連絡しております。秋塚さんが病院に運び込まれまして』
「え……警察って、絋亮が病院?ちょっと待ってください。すみませんが、お名前もう一度頂戴出来ますか。こちらから確認して折り返したいんですけど」
警察を名乗る声に不信感は募る。それに絋亮が病院に運び込まれたとはどういうことだろうか。
『そうですよね、構いませんよ。千葉中央署、刑事課の大東と申します。ご連絡お待ちしてます』
「すみません、非常事態かも知れませんが念のためです。では失礼します」
悠仁は電話を切ると、すぐにネットで千葉中央署の番号を調べて電話を掛ける。
事情を説明すると、確かに刑事課に大東という刑事は実在するし、今は職務中でその場にいないと言う。
電話の応対をしてくれた須下という男性に、大東の番号を確認して着信履歴と照会すると合致した。
それでも念のため合言葉を伝えてもらい、10分後にこちらから掛け直すのでキーワードを出して欲しいと伝えると、快く受けてくれて電話を終える。
それにしても絋亮が病院に運ばれてなぜ警察から連絡があるのだろうか。
考えても仕方がないので、約束通り10分待ってから大東に電話を掛ける。
「もしもし、大東さんの携帯ですか?」
『はい』
「先程は失礼致しました。友川です」
『セレ、ドゥジエムフォワ』
須下に伝えたキーワードが早速出る。フランス語で二度目ですねという意味だ。
「メルシー。ご協力ありがとうございます。それで絋亮はなぜ病院に?」
『ファンを名乗る男に拉致され、脚に怪我を負わされてしまったためです』
「本人の意識はある状態ですか」
『意識ははっきりしておいでです。それがその……』
「……?」
『犯人に関しては、強姦致傷の現行犯で逮捕しております』
「え……」
衝撃的な単語に、思うように声が出ない。
『足の治療は終わってますが、今はまだ千葉総合メディカルセンターにいらっしゃいます。すぐにこちらに来られますか。それとも明日に改められますか』
「今日連れて帰れる状況なんですか」
『ええ。医師の判断では帰宅の許可も出てますので大丈夫です。ご本人も安心されると思いますので、今からお見えになれますか』
「東京からなので時間が掛かりますけど、とりあえず今から向かいます」
詳しくは着いてからまた話を聞く事にして、電話を切るとすぐにネットでレンタカーの手配を済ませ、万が一に備えて着替えの洋服一式を適当な袋に詰めてバタバタと家を飛び出した。
衣装やウィッグを洗ったバケツと洗面器を洗って洗面台の下にしまうと、ちょうど洗濯機が乾燥を終えた電子音が鳴る。
取り出した衣装をネットから出すと、ハンガーに掛けて、バルコニーに干し直す。
一連の作業を終えてソファーに座ると、もうそろそろ23時になる頃になっていた。
「こりゃ疲れるわな」
本来であれば絋亮は土日が休みのはずだが、その土日にほとんどイベントが入っていて、平日にもステージに出ることがあるくらいだから、悠仁が今日したような作業はよほど手が空いてる時にしか出来ないだろう。
それを考えると、食事を作ったり部屋の掃除をしたりも、効率重視になってくるのはよく理解できた。
「まあ俺も、長い休みのうちの1日だから出来たんだろうしなあ」
すっかり片付いた部屋を思い浮かべて、夜風に揺れる衣装を眺めながら時給欲しいわと独りごちて笑う。
充電器に差していたスマホを手元に持ってくると、SNSを開いてザッと目を通す。
HaLのアカウントにもログインして、溜まっていたコメントを確認すると、返信をしてしばらくやり取りをしてからログアウトした。
手持ち無沙汰になってテレビでもつけようとした時に、テーブルに置いたスマホが震え、どこからか着信が入っているらしく、知らない番号だが慌てて手に取る。
「はいもしもし?」
『夜分遅くに失礼致します。友川悠仁さんの携帯電話で間違いないですか』
「は?」
『友川さんでしょうか』
「……はぁ、友川の携帯ですが。あの、失礼ですけど、どちら様ですか」
『失礼します。私、千葉中央署の大東と申します。秋塚絋亮さん本人のご希望でご連絡しております。秋塚さんが病院に運び込まれまして』
「え……警察って、絋亮が病院?ちょっと待ってください。すみませんが、お名前もう一度頂戴出来ますか。こちらから確認して折り返したいんですけど」
警察を名乗る声に不信感は募る。それに絋亮が病院に運び込まれたとはどういうことだろうか。
『そうですよね、構いませんよ。千葉中央署、刑事課の大東と申します。ご連絡お待ちしてます』
「すみません、非常事態かも知れませんが念のためです。では失礼します」
悠仁は電話を切ると、すぐにネットで千葉中央署の番号を調べて電話を掛ける。
事情を説明すると、確かに刑事課に大東という刑事は実在するし、今は職務中でその場にいないと言う。
電話の応対をしてくれた須下という男性に、大東の番号を確認して着信履歴と照会すると合致した。
それでも念のため合言葉を伝えてもらい、10分後にこちらから掛け直すのでキーワードを出して欲しいと伝えると、快く受けてくれて電話を終える。
それにしても絋亮が病院に運ばれてなぜ警察から連絡があるのだろうか。
考えても仕方がないので、約束通り10分待ってから大東に電話を掛ける。
「もしもし、大東さんの携帯ですか?」
『はい』
「先程は失礼致しました。友川です」
『セレ、ドゥジエムフォワ』
須下に伝えたキーワードが早速出る。フランス語で二度目ですねという意味だ。
「メルシー。ご協力ありがとうございます。それで絋亮はなぜ病院に?」
『ファンを名乗る男に拉致され、脚に怪我を負わされてしまったためです』
「本人の意識はある状態ですか」
『意識ははっきりしておいでです。それがその……』
「……?」
『犯人に関しては、強姦致傷の現行犯で逮捕しております』
「え……」
衝撃的な単語に、思うように声が出ない。
『足の治療は終わってますが、今はまだ千葉総合メディカルセンターにいらっしゃいます。すぐにこちらに来られますか。それとも明日に改められますか』
「今日連れて帰れる状況なんですか」
『ええ。医師の判断では帰宅の許可も出てますので大丈夫です。ご本人も安心されると思いますので、今からお見えになれますか』
「東京からなので時間が掛かりますけど、とりあえず今から向かいます」
詳しくは着いてからまた話を聞く事にして、電話を切るとすぐにネットでレンタカーの手配を済ませ、万が一に備えて着替えの洋服一式を適当な袋に詰めてバタバタと家を飛び出した。
0
お気に入りに追加
160
あなたにおすすめの小説
どうせ全部、知ってるくせに。
楽川楽
BL
【腹黒美形×単純平凡】
親友と、飲み会の悪ふざけでキスをした。単なる罰ゲームだったのに、どうしてもあのキスが忘れられない…。
飲み会のノリでしたキスで、親友を意識し始めてしまった単純な受けが、まんまと腹黒攻めに捕まるお話。
※fujossyさんの属性コンテスト『ノンケ受け』部門にて優秀賞をいただいた作品です。
侯爵令息セドリックの憂鬱な日
めちゅう
BL
第二王子の婚約者候補侯爵令息セドリック・グランツはある日王子の婚約者が決定した事を聞いてしまう。しかし先に王子からお呼びがかかったのはもう一人の候補だった。候補落ちを確信し泣き腫らした次の日は憂鬱な気分で幕を開ける———
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
初投稿で拙い文章ですが楽しんでいただけますと幸いです。
腐男子ですが、お気に入りのBL小説に転移してしまいました
くるむ
BL
芹沢真紀(せりざわまさき)は、大の読書好き(ただし読むのはBLのみ)。
特にお気に入りなのは、『男なのに彼氏が出来ました』だ。
毎日毎日それを舐めるように読み、そして必ず寝る前には自分もその小説の中に入り込み妄想を繰り広げるのが日課だった。
そんなある日、朝目覚めたら世界は一変していて……。
無自覚な腐男子が、小説内一番のイケてる男子に溺愛されるお話し♡
【完結】テルの異世界転換紀?!転がり落ちたら世界が変わっていた。
カヨワイさつき
BL
小学生の頃両親が蒸発、その後親戚中をたらいまわしにされ住むところも失った田辺輝(たなべ てる)は毎日切り詰めた生活をしていた。複数のバイトしていたある日、コスプレ?した男と出会った。
異世界ファンタジー、そしてちょっぴりすれ違いの恋愛。
ドワーフ族に助けられ家族として過ごす"テル"。本当の両親は……。
そして、コスプレと思っていた男性は……。
初心者オメガは執着アルファの腕のなか
深嶋
BL
自分がベータであることを信じて疑わずに生きてきた圭人は、見知らぬアルファに声をかけられたことがきっかけとなり、二次性の再検査をすることに。その結果、自身が本当はオメガであったと知り、愕然とする。
オメガだと判明したことで否応なく変化していく日常に圭人は戸惑い、悩み、葛藤する日々。そんな圭人の前に、「運命の番」を自称するアルファの男が再び現れて……。
オメガとして未成熟な大学生の圭人と、圭人を番にしたい社会人アルファの男が、ゆっくりと愛を深めていきます。
穏やかさに滲む執着愛。望まぬ幸運に恵まれた主人公が、悩みながらも運命の出会いに向き合っていくお話です。本編、攻め編ともに完結済。
その溺愛は伝わりづらい!気弱なスパダリ御曹司にノンケの僕は落とされました
海野幻創
BL
人好きのする端正な顔立ちを持ち、文武両道でなんでも無難にこなせることのできた生田雅紀(いくたまさき)は、小さい頃から多くの友人に囲まれていた。
しかし他人との付き合いは広く浅くの最小限に留めるタイプで、女性とも身体だけの付き合いしかしてこなかった。
偶然出会った久世透(くぜとおる)は、嫉妬を覚えるほどのスタイルと美貌をもち、引け目を感じるほどの高学歴で、議員の孫であり大企業役員の息子だった。
御曹司であることにふさわしく、スマートに大金を使ってみせるところがありながら、生田の前では捨てられた子犬のようにおどおどして気弱な様子を見せ、そのギャップを生田は面白がっていたのだが……。
これまで他人と深くは関わってこなかったはずなのに、会うたびに違う一面を見せる久世は、いつしか生田にとって離れがたい存在となっていく。
【7/27完結しました。読んでいただいてありがとうございました。】
【続編も8/17完結しました。】
「その溺愛は行き場を彷徨う……気弱なスパダリ御曹司は政略結婚を回避したい」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/962473946/911896785
↑この続編は、R18の過激描写がありますので、苦手な方はご注意ください。
【完結】人形と皇子
かずえ
BL
ずっと戦争状態にあった帝国と皇国の最後の戦いの日、帝国の戦闘人形が一体、重症を負って皇国の皇子に拾われた。
戦うことしか教えられていなかった戦闘人形が、人としての名前を貰い、人として扱われて、皇子と幸せに暮らすお話。
性表現がある話には * マークを付けています。苦手な方は飛ばしてください。
第11回BL小説大賞で奨励賞を頂きました。応援してくださった皆様、ありがとうございます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる