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21.まさかお前だったとは
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あまりの急展開に呆然としていると、ヘドニス子に会えてそんなに嬉しいのかと、無花果の姿をしたままの慶太郎が可笑しそうに笑っている。
「ハル。なにお前、緊張してんの。顔変だよ?」
ちなみに慶太郎が悠仁をハルと呼ぶのは、最初の出会いで悠仁をハルヒトと読み間違えたことに起因する。
「無花果さん違うのよ。HaLさんだとは知らなかったけど、アタシ、目下こちらの殿方を口説いてる最中なの。ロックオンよ、ロックオン!」
「えー!ヘドさん、そうなの?ちょっとハル、知り合いだったのー?」
ガールズ?トークが盛り上がる中、まさか絋亮がヘドニス子だったとは夢にも思わない悠仁は、ピンヒールのせいで2メートルはあろうかと言う彼女を改めて見つめる。
「ヤダぁ、そんなに見つめないで。照れる照れるぅ」
「ヘドさん乙女だー」
悠仁を置き去りにして盛り上がる二人をよそに、悠仁の脳内は高速回転で絋亮とのやり取りを振り返る。
確か絋亮には同棲だか同居している彼女がいるはずだ。パートナーだの相方だのと言っていたので、絋亮がドラァグクイーンであることへの理解も深いということか。
それなのにさっき慶太郎には、悠仁のことを口説いてる最中だと言った。社交辞令だったとしても嬉しい言葉なのでこれは聞き間違いではないと思う。
となるとあの部屋の主である彼女とは、どんな女性なのだろうか。恋人ではないと否定はしていたが、ここに来てそれが一番モヤモヤしてしまう。
「おいハル?どしたの。難しい顔して」
「え、いや別に。ちょっと驚きがデカくて」
「あらHaLさん、それってアタシのこと?」
楽しげに顔を寄せてくるヘドニス子に愛想笑いを浮かべると、まあそうですねと捻くれた返事をしてしまう。
「いやー。でも二人がもう知り合いだったなんて、世の中面白いよね。3人でご飯でもと思ってたけど、おじゃま虫みたいだから今日は退散します」
「そんな、無花果さん。お二人だって会うのは久々でしょ?」
「良いの良いの。ね、ハル。また連絡するから、その時に詳しく聞かせてねー」
慶太郎は言うが早いか、そのまま搬出作業をしていた他の演者たちに声を掛けて、すぐにその場を離れてしまった。
「でもまさかHaLさんが悠仁だったとはね」
「それはこっちも同じだよ」
頭ひとつ分背が高いヘドニス子——絋亮を見上げると、いまだにどこか信じられなくて色んな角度から見つめてしまう。
「そんなに見られたら興奮しちゃう」
「ああ、やっぱり絋亮か」
「なんでよ!」
地団駄を踏みながらも、心底可笑しそうに笑う絋亮に釣られて悠仁も笑う。
「ここで立ち話もなんだし、ご飯でも食べに行く?」
この辺なら個室でいい店知ってるよと、悠仁がスマホを取り出して足を進めると、その腕を掴んだ絋亮が帰ろうよと言い出した。
「ならうちに来てよ」
「いや、お前んちは彼女?が居るんじゃないのか」
「ああ、そう云うこと」
最初はキョトンとしていたが、何かが腑に落ちたのか、クスクスと可笑しそうに肩を揺らして絋亮が笑い始める。
「なにがそんなに可笑しいんだよ。急に行ったら迷惑だろ?」
「違う違う。これ。俺の大事なパートナー。あの部屋の主」
絋亮が自分を指差してまだ笑うので、そこでようやく悠仁も気が付いた。
「あ?……ああ!ヘドニス子さんの衣装部屋的な?」
「そうだよ」
「だったらそうだって早く言えよ。めちゃくちゃ勘繰ったじゃないか」
「いや、いきなりドラァグクイーンやってるって言うのも驚かせるじゃない……えぇ?もしかして悠仁、ヤキモチ妬いてくれたの」
「それどころの騒ぎじゃなかったよ」
「ちゃんと恋人じゃないって言ったよ?」
「でも一緒の家に住んでるとか、パートナーとか相方とか言われたら気になるだろ」
「ごめん。そこまで気にしてくれると思ってなかったから。ちょっと自惚れてもいいのかな」
ニヤついた顔を寄せる絋亮に、しまったと思ったが遅かった。これでは好きだと言っているようなものだ。
「ハル。なにお前、緊張してんの。顔変だよ?」
ちなみに慶太郎が悠仁をハルと呼ぶのは、最初の出会いで悠仁をハルヒトと読み間違えたことに起因する。
「無花果さん違うのよ。HaLさんだとは知らなかったけど、アタシ、目下こちらの殿方を口説いてる最中なの。ロックオンよ、ロックオン!」
「えー!ヘドさん、そうなの?ちょっとハル、知り合いだったのー?」
ガールズ?トークが盛り上がる中、まさか絋亮がヘドニス子だったとは夢にも思わない悠仁は、ピンヒールのせいで2メートルはあろうかと言う彼女を改めて見つめる。
「ヤダぁ、そんなに見つめないで。照れる照れるぅ」
「ヘドさん乙女だー」
悠仁を置き去りにして盛り上がる二人をよそに、悠仁の脳内は高速回転で絋亮とのやり取りを振り返る。
確か絋亮には同棲だか同居している彼女がいるはずだ。パートナーだの相方だのと言っていたので、絋亮がドラァグクイーンであることへの理解も深いということか。
それなのにさっき慶太郎には、悠仁のことを口説いてる最中だと言った。社交辞令だったとしても嬉しい言葉なのでこれは聞き間違いではないと思う。
となるとあの部屋の主である彼女とは、どんな女性なのだろうか。恋人ではないと否定はしていたが、ここに来てそれが一番モヤモヤしてしまう。
「おいハル?どしたの。難しい顔して」
「え、いや別に。ちょっと驚きがデカくて」
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楽しげに顔を寄せてくるヘドニス子に愛想笑いを浮かべると、まあそうですねと捻くれた返事をしてしまう。
「いやー。でも二人がもう知り合いだったなんて、世の中面白いよね。3人でご飯でもと思ってたけど、おじゃま虫みたいだから今日は退散します」
「そんな、無花果さん。お二人だって会うのは久々でしょ?」
「良いの良いの。ね、ハル。また連絡するから、その時に詳しく聞かせてねー」
慶太郎は言うが早いか、そのまま搬出作業をしていた他の演者たちに声を掛けて、すぐにその場を離れてしまった。
「でもまさかHaLさんが悠仁だったとはね」
「それはこっちも同じだよ」
頭ひとつ分背が高いヘドニス子——絋亮を見上げると、いまだにどこか信じられなくて色んな角度から見つめてしまう。
「そんなに見られたら興奮しちゃう」
「ああ、やっぱり絋亮か」
「なんでよ!」
地団駄を踏みながらも、心底可笑しそうに笑う絋亮に釣られて悠仁も笑う。
「ここで立ち話もなんだし、ご飯でも食べに行く?」
この辺なら個室でいい店知ってるよと、悠仁がスマホを取り出して足を進めると、その腕を掴んだ絋亮が帰ろうよと言い出した。
「ならうちに来てよ」
「いや、お前んちは彼女?が居るんじゃないのか」
「ああ、そう云うこと」
最初はキョトンとしていたが、何かが腑に落ちたのか、クスクスと可笑しそうに肩を揺らして絋亮が笑い始める。
「なにがそんなに可笑しいんだよ。急に行ったら迷惑だろ?」
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