15 / 52
15.優しい時間
しおりを挟む
「あ。悠仁まだ起きてた」
ようやくベッドルームにやってきた絋亮の手には、ペットボトルが握られている。
「明日は?俺何時までに出ればいいの」
「夜は予定があるから、夕方には支度しなくちゃいけなくて。だから昼までしか一緒に居られないんだよね」
絋亮は申し訳なさそうにそう返すと、リモコンで部屋の電気を消して、ランプをつけたサイドテーブルにペットボトルを置き、布団の中に潜り込んで、悠仁を抱き寄せてキスをする。
「お前も忙しいんだな」
「まあ好きでやってることだし、明日のは半分趣味みたいなものだけどね」
「ん?」
「そのうち話すよ」
曖昧に笑う絋亮に、悠仁はわざとらしく揶揄うように返事する。
「へえ、また会ってくれるつもりな訳だ」
「俺は結構粘着タイプだよ」
「おお、怖っ」
言葉とは裏腹に絋亮を抱きしめると、悠仁はそのままキスをしてそっと髪や顔を撫でる。
こんないじらしいことを言うくせに、変な薬を盛られるような付き合いを、得体の知れない誰かとしている。その事実に一人嫉妬して悠仁は絋亮の鼻を摘んで捻る。
「痛っ、なんだよ急に」
「適当に遊んでるだけあって、誑かすのが上手いと思ってね」
「……なんだよ。薬のこと?」
「そもそもなんで、あんなことになったんだよ。お前の交友関係が心配だわ」
「別に。ちょっと色々あって一人が辛くて適当に見つけた相手だったんだけど、そんな相手に執着心なんかないじゃん?それが気に障ったらしくて、寝てる間に仕込まれたっぽい」
「ん?だったらなんでそいつにやられなかったんだ」
「だよね。相当抜けてるやつだろ。爆睡してたし、夜中のうちに置き去りにしてきた」
「ああね」
計画性も何もなく突発的にそうなったと言うことか。
それにしても話を聞くだけで、いかにルーズな交友関係なのかが窺える。
「ねえ悠仁」
「ん?」
「なんか俺に質問してよ。パーソナルなこと」
「どうした急に」
「知ってて欲しいんだよ。それになんか話したい気分だし」
甘えて擦り寄る絋亮は、どこか遠くを見るような目をしている。
こんな自分に少しでも気を許して執着してくれるのだろうか。悠仁はそんなことを思いながら改めて抱きしめる腕に力を込めると、質問ねと天井を見上げる。
「兄弟は?」
「居ない。一人っ子。母さんの思い出はほとんど無い。俺、父子家庭ってやつなんだよね」
「へえ。親父さんはどんな人なんだ」
「気のいい人だよ。尊敬してる。母さんは病気で亡くなったんだけど、あんなに好きになれる人は居ないからって。俺が照れるくらい今でも母さん一筋」
暇があれば仏壇に向かって話してるんだよと可笑しそうに笑う。
「愛情深い人なんだな」
「そうかもね。だから父さんに孫を抱かせてやれないのは申し訳ないかな」
「……お前の事情も知ってんのか」
「中学くらいかな。晩酌しながらさ、好きな子は居ないのかって。親子なら普通の会話であると思うんだけど。その時にもしかしたら女の子は好きじゃ無いかも知れないって」
「親父さんはなんて答えたんだ」
「少し驚いては居たけど、誰も好きになれないよりいいじゃないかって」
「そうか」
それから絋亮の幼い頃の話を色々と聞いた。結構悪さをして地元で有名な不良だった時期もあったらしい。人は見かけによらないものだ。
しばらく話していると、いつの間にか返事が曖昧になってきて、そのうちすぐに規則的な寝息が聞こえてきた。
「おやすみ」
悠仁は呟いて絋亮の額にキスをすると、緩やかに沈むように眠りについた。
ようやくベッドルームにやってきた絋亮の手には、ペットボトルが握られている。
「明日は?俺何時までに出ればいいの」
「夜は予定があるから、夕方には支度しなくちゃいけなくて。だから昼までしか一緒に居られないんだよね」
絋亮は申し訳なさそうにそう返すと、リモコンで部屋の電気を消して、ランプをつけたサイドテーブルにペットボトルを置き、布団の中に潜り込んで、悠仁を抱き寄せてキスをする。
「お前も忙しいんだな」
「まあ好きでやってることだし、明日のは半分趣味みたいなものだけどね」
「ん?」
「そのうち話すよ」
曖昧に笑う絋亮に、悠仁はわざとらしく揶揄うように返事する。
「へえ、また会ってくれるつもりな訳だ」
「俺は結構粘着タイプだよ」
「おお、怖っ」
言葉とは裏腹に絋亮を抱きしめると、悠仁はそのままキスをしてそっと髪や顔を撫でる。
こんないじらしいことを言うくせに、変な薬を盛られるような付き合いを、得体の知れない誰かとしている。その事実に一人嫉妬して悠仁は絋亮の鼻を摘んで捻る。
「痛っ、なんだよ急に」
「適当に遊んでるだけあって、誑かすのが上手いと思ってね」
「……なんだよ。薬のこと?」
「そもそもなんで、あんなことになったんだよ。お前の交友関係が心配だわ」
「別に。ちょっと色々あって一人が辛くて適当に見つけた相手だったんだけど、そんな相手に執着心なんかないじゃん?それが気に障ったらしくて、寝てる間に仕込まれたっぽい」
「ん?だったらなんでそいつにやられなかったんだ」
「だよね。相当抜けてるやつだろ。爆睡してたし、夜中のうちに置き去りにしてきた」
「ああね」
計画性も何もなく突発的にそうなったと言うことか。
それにしても話を聞くだけで、いかにルーズな交友関係なのかが窺える。
「ねえ悠仁」
「ん?」
「なんか俺に質問してよ。パーソナルなこと」
「どうした急に」
「知ってて欲しいんだよ。それになんか話したい気分だし」
甘えて擦り寄る絋亮は、どこか遠くを見るような目をしている。
こんな自分に少しでも気を許して執着してくれるのだろうか。悠仁はそんなことを思いながら改めて抱きしめる腕に力を込めると、質問ねと天井を見上げる。
「兄弟は?」
「居ない。一人っ子。母さんの思い出はほとんど無い。俺、父子家庭ってやつなんだよね」
「へえ。親父さんはどんな人なんだ」
「気のいい人だよ。尊敬してる。母さんは病気で亡くなったんだけど、あんなに好きになれる人は居ないからって。俺が照れるくらい今でも母さん一筋」
暇があれば仏壇に向かって話してるんだよと可笑しそうに笑う。
「愛情深い人なんだな」
「そうかもね。だから父さんに孫を抱かせてやれないのは申し訳ないかな」
「……お前の事情も知ってんのか」
「中学くらいかな。晩酌しながらさ、好きな子は居ないのかって。親子なら普通の会話であると思うんだけど。その時にもしかしたら女の子は好きじゃ無いかも知れないって」
「親父さんはなんて答えたんだ」
「少し驚いては居たけど、誰も好きになれないよりいいじゃないかって」
「そうか」
それから絋亮の幼い頃の話を色々と聞いた。結構悪さをして地元で有名な不良だった時期もあったらしい。人は見かけによらないものだ。
しばらく話していると、いつの間にか返事が曖昧になってきて、そのうちすぐに規則的な寝息が聞こえてきた。
「おやすみ」
悠仁は呟いて絋亮の額にキスをすると、緩やかに沈むように眠りについた。
0
お気に入りに追加
160
あなたにおすすめの小説
どうせ全部、知ってるくせに。
楽川楽
BL
【腹黒美形×単純平凡】
親友と、飲み会の悪ふざけでキスをした。単なる罰ゲームだったのに、どうしてもあのキスが忘れられない…。
飲み会のノリでしたキスで、親友を意識し始めてしまった単純な受けが、まんまと腹黒攻めに捕まるお話。
※fujossyさんの属性コンテスト『ノンケ受け』部門にて優秀賞をいただいた作品です。
【完結】テルの異世界転換紀?!転がり落ちたら世界が変わっていた。
カヨワイさつき
BL
小学生の頃両親が蒸発、その後親戚中をたらいまわしにされ住むところも失った田辺輝(たなべ てる)は毎日切り詰めた生活をしていた。複数のバイトしていたある日、コスプレ?した男と出会った。
異世界ファンタジー、そしてちょっぴりすれ違いの恋愛。
ドワーフ族に助けられ家族として過ごす"テル"。本当の両親は……。
そして、コスプレと思っていた男性は……。
【完結】ぎゅって抱っこして
かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。
でも、頼れる者は誰もいない。
自分で頑張らなきゃ。
本気なら何でもできるはず。
でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。
侯爵令息セドリックの憂鬱な日
めちゅう
BL
第二王子の婚約者候補侯爵令息セドリック・グランツはある日王子の婚約者が決定した事を聞いてしまう。しかし先に王子からお呼びがかかったのはもう一人の候補だった。候補落ちを確信し泣き腫らした次の日は憂鬱な気分で幕を開ける———
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
初投稿で拙い文章ですが楽しんでいただけますと幸いです。
親友だと思ってた完璧幼馴染に執着されて監禁される平凡男子俺
toki
BL
エリート執着美形×平凡リーマン(幼馴染)
※監禁、無理矢理の要素があります。また、軽度ですが性的描写があります。
pixivでも同タイトルで投稿しています。
https://www.pixiv.net/users/3179376
もしよろしければ感想などいただけましたら大変励みになります✿
感想(匿名)➡ https://odaibako.net/u/toki_doki_
Twitter➡ https://twitter.com/toki_doki109
素敵な表紙お借りしました!
https://www.pixiv.net/artworks/98346398
【完結】人形と皇子
かずえ
BL
ずっと戦争状態にあった帝国と皇国の最後の戦いの日、帝国の戦闘人形が一体、重症を負って皇国の皇子に拾われた。
戦うことしか教えられていなかった戦闘人形が、人としての名前を貰い、人として扱われて、皇子と幸せに暮らすお話。
性表現がある話には * マークを付けています。苦手な方は飛ばしてください。
第11回BL小説大賞で奨励賞を頂きました。応援してくださった皆様、ありがとうございます。
ホントの気持ち
神娘
BL
父親から虐待を受けている夕紀 空、
そこに現れる大人たち、今まで誰にも「助けて」が言えなかった空は心を開くことができるのか、空の心の変化とともにお届けする恋愛ストーリー。
夕紀 空(ゆうき そら)
年齢:13歳(中2)
身長:154cm
好きな言葉:ありがとう
嫌いな言葉:お前なんて…いいのに
幼少期から父親から虐待を受けている。
神山 蒼介(かみやま そうすけ)
年齢:24歳
身長:176cm
職業:塾の講師(数学担当)
好きな言葉:努力は報われる
嫌いな言葉:諦め
城崎(きのさき)先生
年齢:25歳
身長:181cm
職業:中学の体育教師
名取 陽平(なとり ようへい)
年齢:26歳
身長:177cm
職業:医者
夕紀空の叔父
細谷 駿(ほそたに しゅん)
年齢:13歳(中2)
身長:162cm
空とは小学校からの友達
山名氏 颯(やまなし かける)
年齢:24歳
身長:178cm
職業:塾の講師 (国語担当)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる