上 下
23 / 46

10.邪竜(股間)の咆哮③

しおりを挟む
 依斗は悲壮な顔をして『ジュニアが召されたなんて』と口元を押さえながら身を震わせるが、間髪入れずにジレーザの冷たい声が轟く。
「そんな訳ないでしょう!」
「え?」
「あ、いや。私が申し上げたいのは、私に身体的な問題は御座いませんということです」
「なんだよジレーザ、お前もやっぱり勃つんじゃないか」
「声に出してお話にならないでください!」
「恥ずかしがるなよ。お前童貞なのかよ」
 二つ程度でも歳下だと分かったからか、依斗は気安いノリで揶揄うような言葉を向けが、ジレーザは黙ったまま頭を抱えてしまい、依斗の悪ノリの相手をする気はない態度を見せる。
「こんな程度で怒るか? 普通」
「…………ってください」
「は?」
 聞き取れずに眉を寄せた依斗に、ジレーザは少しでいいから黙ってくださいと繰り返す。
「ここはピアリスです。サーチェスにおいて最も神聖な場所で、私は聖職者です。無闇にそのような下世話な話を他人を不快にさせる神経を疑います」
「不快って、お前は聖剣を使った代償の責任取るって言ったよな」
「それは、確かに申し上げましたが」
「だったら、瘴気を祓った聖人に対して、お前のその態度はどうな訳よ。こっちは抜こうが我慢しようが暴発が止まらないチンコに、三日も自由を奪われてるんだぞ」
「ですから直接的な表現はお止めください」
「チンコを別のなにかに例える方が卑猥だろ!」
 依斗が叫ぶとジレーザはハッとしたように目を見張る。
「いや、そこでそれはそうか。みたいな顔するなよ。ジレーザ納得、じゃないんだよ」
「私についての考察はどうでも宜しい」
「お前が対話せずに、チンコに固執するからだろ」
「誰がそんなものに固執したんですか」
「チンコに拘りがあるじゃないか」
「語弊を生む言い方はやめてください!」
「事実じゃないか」
「私が申し上げたいのは、貴方のその節操のない態度を悔い改めろと言うことです」
「節操がないのは俺のせいじゃないだろ。お前が聖剣を使わせたんだろ。その結果がコレだろうが」
 依斗はベッドの上で立ち上がると、別の意味で立ち上がった股間の邪竜を腰ごとぶるんと震わせる。
「だからってその凶暴なものを、人前に晒すんじゃない!」
「お前が来て解放運動の手を止めたせいでこのザマだ」
「なにが解放運動だ。貴様、ふざけるのも大概にしろ」
「お? 本性を現したな、鬼畜神官ジレーザめ」
「誰が鬼畜だ。さっさとその熱り立ったナニを収めろ」
「だから治まらないって言ってんだろ」
「腰を突き出すな! 痴れ者が」
 あまりに大騒ぎしたためか、突如として扉を叩く音が響き、中にいる依斗とジレーザを案じるネルディムの声が扉の向こうから聞こえてくる。
「どうなさったのですか」
 依斗はともかくジレーザが声を荒げることなどないからだろう、相当に焦った様子でネルディムは心配している様子だ。
「ほら見てみろ。お前がチンコに拘るから」
「そんなものに拘る訳がなかろう!」
 ジレーザが烈火の如く怒りを露わにして叫ぶと、再び扉の向こうからネルディムの心配する声が響く。
「とにかく貴様は、その穢らわしい汚物を隠して伏せったフリをしていろ」
「お前、そんな口悪いキャラだったのかよ」
「黙って言う通りにしろ。ネルディムは私が相手をする」
 そう言って依斗がベッドに寝転ぶのを確認すると、ジレーザは僅かに咳払いしてから深呼吸して、それから静かに扉を開けると部屋の外へ出ていく。
 そして依斗はジレーザが居なくなったのをいいことに、パンパンに張り詰めて痛みすら伴う、股間で荒ぶる邪竜を掴んで解放運動に集中する。
 時折奇妙な呻き声を上げることが功を奏したのかは分からないが、部屋の外に出たジレーザがネルディムを言いくるめるのは容易かった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

初めての友達は神様でした!~神様はなんでもありのチートです~

荷居人(にいと)
BL
親は俺が生まれてすぐ他界し、親戚にはたらい回しされ、どこの学校に行っても孤立し、ひどいといじめにあう毎日。 会話なんてろくにしたことがない俺はコミュ障で、周囲を見ては友達がほしいとそう思った。 友達がいれば世界は変わるのではないだろうか、時に助け合い、共通の会話を楽しみ、悩みを相談し、何かあれば慰め合うなど、きっと心強いに違いない。 親戚の家では携帯どころか、パソコンはあってもいんたーねっとすら使わせてもらえないのでネット友達もできない。 だからもしクラスメイトから盗み聞きしていたなんでも願いが叶うならどうする?と言う話題に、友達がほしいなと俺なら答える。 しかしその日、盗み聞きをした罰だろうか、赤信号を走ってきたトラックに引かれ、俺は死んだ。 まさか、死んだことでぼっち人生がなくなるとは思ってもいなかった。 「あー、僕神様ね。質問は聞かない。間違えて君殺しちゃったんだよね。悪いとは思わないけど?神の失敗はお詫びする決まりだから、あの世界で生き返る以外なら1つなんでも叶えてあげる。」 「と、友達になってください!」 「は?」 思わず叫んだ願い事。もし叶うなら死んでよかったとすら思う願い事。だって初めて友達ができるかもしれないんだよ? 友達になれるなら神様にだってお願いするさ! 進めば進むほどBL染みてきたのでファンタジーからBL変更。腐脳はどうしてもBL気味になる様子。でもソフトBLなので、エロを求める方はお引き取りを。 とりあえず完結。別作品にて転生後話公開中!元神様はスライム転生!?~世界に一匹だけの最強のスライムに俺は召喚された~をよろしくお願いします。

絶滅危惧種の俺様王子に婚約を突きつけられた小物ですが

古森きり
BL
前世、腐男子サラリーマンである俺、ホノカ・ルトソーは”女は王族だけ”という特殊な異世界『ゼブンス・デェ・フェ』に転生した。 女と結婚し、女と子どもを残せるのは伯爵家以上の男だけ。 平民と伯爵家以下の男は、同家格の男と結婚してうなじを噛まれた側が子宮を体内で生成して子どもを産むように進化する。 そんな常識を聞いた時は「は?」と宇宙猫になった。 いや、だって、そんなことある? あぶれたモブの運命が過酷すぎん? ――言いたいことはたくさんあるが、どうせモブなので流れに身を任せようと思っていたところ王女殿下の誕生日お披露目パーティーで第二王子エルン殿下にキスされてしまい――! BLoveさん、カクヨム、アルファポリス、小説家になろうに掲載。

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

推しの完璧超人お兄様になっちゃった

紫 もくれん
BL
『君の心臓にたどりつけたら』というゲーム。体が弱くて一生の大半をベットの上で過ごした僕が命を賭けてやり込んだゲーム。 そのクラウス・フォン・シルヴェスターという推しの大好きな完璧超人兄貴に成り代わってしまった。 ずっと好きで好きでたまらなかった推し。その推しに好かれるためならなんだってできるよ。 そんなBLゲーム世界で生きる僕のお話。

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

転生したけどやり直す前に終わった【加筆版】

リトルグラス
BL
 人生を無気力に無意味に生きた、負け組男がナーロッパ的世界観に転生した。  転生モノ小説を読みながら「俺だってやり直せるなら、今度こそ頑張るのにな」と、思いながら最期を迎えた前世を思い出し「今度は人生を成功させる」と転生した男、アイザックは子供時代から努力を重ねた。  しかし、アイザックは成人の直前で家族を処刑され、平民落ちにされ、すべてを失った状態で追放された。  ろくなチートもなく、あるのは子供時代の努力の結果だけ。ともに追放された子ども達を抱えてアイザックは南の港町を目指す── ***  第11回BL小説大賞にエントリーするために修正と加筆を加え、作者のつぶやきは削除しました。(23'10'20) **

音楽の神と呼ばれた俺。なんか殺されて気づいたら転生してたんだけど⁉(完)

柿の妖精
BL
俺、牧原甲はもうすぐ二年生になる予定の大学一年生。牧原家は代々超音楽家系で、小さいころからずっと音楽をさせられ、今まで音楽の道を進んできた。そのおかげで楽器でも歌でも音楽に関することは何でもできるようになり、まわりからは、音楽の神と呼ばれていた。そんなある日、大学の友達からバンドのスケットを頼まれてライブハウスへとつながる階段を下りていたら後ろから背中を思いっきり押されて死んでしまった。そして気づいたら代々超芸術家系のメローディア公爵家のリトモに転生していた!?まぁ音楽が出来るなら別にいっか! そんな音楽の神リトモと呪いにかけられた第二王子クオレの恋のお話。 完全処女作です。温かく見守っていただけると嬉しいです。<(_ _)>

俺の伴侶はどこにいる〜ゼロから始める領地改革 家臣なしとか意味分からん〜

琴音
BL
俺はなんでも適当にこなせる器用貧乏なために、逆に何にも打ち込めず二十歳になった。成人後五年、その間に番も見つけられずとうとう父上静かにぶちギレ。ならばと城にいても楽しくないし?番はほっとくと適当にの未来しかない。そんな時に勝手に見合いをぶち込まれ、逃げた。が、間抜けな俺は騎獣から落ちたようで自分から城に帰還状態。 ならば兄弟は優秀、俺次男!未開の地と化した領地を復活させてみようじゃないか!やる気になったはいいが……… ゆるゆる〜の未来の大陸南の猫族の小国のお話です。全く別の話でエリオスが領地開発に奮闘します。世界も先に進み状況の変化も。番も探しつつ…… 世界はドナシアン王国建国より百年以上過ぎ、大陸はイアサント王国がまったりと支配する世界になっている。どの国もこの大陸の気質に合った獣人らしい生き方が出来る優しい世界で北から南の行き来も楽に出来る。農民すら才覚さえあれば商人にもなれるのだ。 気候は温暖で最南以外は砂漠もなく、過ごしやすく農家には適している。そして、この百年で獣人でも魅力を持つようになる。エリオス世代は魔力があるのが当たり前に過ごしている。 そんな世界に住むエリオスはどうやって領地を自分好みに開拓出来るのか。 ※この物語だけで楽しめるようになっています。よろしくお願いします。

処理中です...