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第1章 柳田 影
第5話 不動産
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影はドキッとした。何故だ。言葉が出なくなる。
「……佐藤?あぁ…前の住人のことか。」
「前の?」
「引っ越したんだよ。だからわしはここにいる。それだけの理由じゃ。」
影は下を向いた。佐藤杏子は、引っ越していた。老人にすごく申し訳なくなる。
「あぁ、前の住人を知りたかったら、この近くの不動産屋に行くといいさ。知ってることがあるかもしれないからな。」
老人の言葉にハッとした。確かに、影の家から徒歩10分くらいの場所にある。「ありがとうございます!!」と深々と頭を下げ、歩き出した。遠くなる影の背中を見て、老人は思った。
「……そういえば、前の住人は引きこもりと聞いたな。その友達なのか?あいつは。」
不動産屋に着いた。客は1人しかいない。小さな不動産屋。なんというか、いかにも胡散臭い。
「いらっしゃいませ。どのようなご用件で?」
「えっと…佐藤杏子という人の、引っ越した後の場所を知りたくて…今、どこに住んでいるかとか…。」
受付の人は顔をしかめた。
「よく聞く質問なのですが、そういうのって所謂、個人情報なんですよ。お教え出来ませんから。」
少し腹が立った。影はあまり期待していなかったが、期待外れにも程があったので、わかりやすくため息をついてしまった。そして、近くに座っていた客が、立ち上がった。
「佐藤杏子さんを探しているのですか?」
スーツ服を着て、眼鏡をかけた好青年。思わず見惚れてしまうかのような顔。
「あっ、そうです…」
「◯◯小学校の、ですか?」
影は頷いた。青年は爽やかな笑顔を見せた。
「申し遅れました。私は◯◯小学校で教師をしております。時雨 誠(ときさめまこと)と申します。佐藤さんとは、小学校時代の同級生です。」
「……佐藤?あぁ…前の住人のことか。」
「前の?」
「引っ越したんだよ。だからわしはここにいる。それだけの理由じゃ。」
影は下を向いた。佐藤杏子は、引っ越していた。老人にすごく申し訳なくなる。
「あぁ、前の住人を知りたかったら、この近くの不動産屋に行くといいさ。知ってることがあるかもしれないからな。」
老人の言葉にハッとした。確かに、影の家から徒歩10分くらいの場所にある。「ありがとうございます!!」と深々と頭を下げ、歩き出した。遠くなる影の背中を見て、老人は思った。
「……そういえば、前の住人は引きこもりと聞いたな。その友達なのか?あいつは。」
不動産屋に着いた。客は1人しかいない。小さな不動産屋。なんというか、いかにも胡散臭い。
「いらっしゃいませ。どのようなご用件で?」
「えっと…佐藤杏子という人の、引っ越した後の場所を知りたくて…今、どこに住んでいるかとか…。」
受付の人は顔をしかめた。
「よく聞く質問なのですが、そういうのって所謂、個人情報なんですよ。お教え出来ませんから。」
少し腹が立った。影はあまり期待していなかったが、期待外れにも程があったので、わかりやすくため息をついてしまった。そして、近くに座っていた客が、立ち上がった。
「佐藤杏子さんを探しているのですか?」
スーツ服を着て、眼鏡をかけた好青年。思わず見惚れてしまうかのような顔。
「あっ、そうです…」
「◯◯小学校の、ですか?」
影は頷いた。青年は爽やかな笑顔を見せた。
「申し遅れました。私は◯◯小学校で教師をしております。時雨 誠(ときさめまこと)と申します。佐藤さんとは、小学校時代の同級生です。」
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