明日は、屋上で会おう。

第一章 山森颯人 菅野淳太

なんでも知っている

「どういう…こと……です、か？」
「…知ってるんだよ。俺はな。」
　颯人は先生に恐怖を覚えながら、動かずにいた。澤村先生は部屋中をゆっくりと彷徨うろつき始める。澤村先生はあまり落ち着きがない。
「俺は3年生一人一人の個人情報を知っている。もちろんお前のも、菅野のも。……まぁ、プライバシーというものがある。拷問にかけられても生徒の情報は言わないがな。」
　颯人はかなり震えながら聞いていた。耐えられなくなった颯人は口を開いた。
「あっ…あの…なぜ、知っているのですか、？」
「……調べた。徹底的に。」
「…どうやって、ですか…？」
「…今の段階だと、ギリギリアウトだろうな。情報入手の手口は。まぁ、バレたら教員免許は剥奪されるだろう」
「…え。」
　颯人の脚がすくんでいる。澤村先生はメモ帳をポケットに閉まった後、人差し指を唇の近くに持っていった。
「個人情報の保護を約束しよう。お前のことはいくつか知っている。滝野葵に何をされたのかも、いじめ常習犯の名前も、家族関係も、お前の深い傷の箇所も。」
「…ひ、ひぃ…」
「あとお前がくすぐったい箇所も」
　澤村先生は颯人の首筋をなぞるようにして触った。
「ひぐぅ！！！！」
　颯人はそのままソファに倒れ込んだ。
「せっ…セクハラですよ！？やめてください、！」
「すまん。冗談。冗談だ。」
　澤村先生はニヤニヤ笑っているが、颯人は静かにパーカーのフードを被った。颯人は澤村先生に嫌気がさしてきている。
「山森颯人。ずっと言いたいことがあったんだが、いいか？」
「…なんですか」
「俺は菅野に幸せになってほしいんだよ。だから、お前と菅野で付き合ってほしい。」
「…はい？」
　颯人はポカンとした顔をして、しばらく澤村先生を見つめた。