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第一章 山森颯人 菅野淳太
対面
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4月30日
「颯人。先生は颯人のためを思って言ってるんだ。ほら。教室に入りなさい。」
「………嫌、嫌、です…。」
ガヤガヤと賑わった煩い教室に入ろうと廊下で教師と話してしていたのは、今年の4月から転校してきた3年B組の生徒、山森颯人である。前の学校では、残酷なほどの虐めを受けた。そのため、「対人恐怖症」という障害を持ってしまった。
「僕には…無理です、。無理ですから、お願いします。対面だけは。……。助けて……」
教師は顔を顰めた後、ため息をつき、呟くように言った。
「じゃあ、教室で言っておくから。職員室で待ってなさい。」
教師は颯人を1人にし、教室のドアを開けた。1人待つ颯人は、とてつもない不安を感じた。1人で職員室に行かなければならない。行った後どうするかなどわからない。どうやっても人と会う。そんなことを考えているうちに、涙が溢れた。頭をかき乱されるような混乱状態になり、叫びそうになった。
「助けて……。誰か……。」
悲痛な、ごく小さな声で呟いた。そして、颯人は急に肩を強く叩かれた。ビクッとし、泣いた顔で後ろを向いた。
「…あれ、どうしたの?」
身長の高い、黒髪の生徒だった。颯人は大混乱し、弱々しい声を出して逃げてしまった。
「ちょ!ちょっと待って!!」
黒髪の生徒も透かさず颯人を追いかける。颯人は運動不足であり、全然足が速くない。黒髪の生徒はあっという間に追いつき、颯人の右腕をガシリと掴んだ。
「離して!!!」
「…えっ、どうしたの!?落ち着いて!」
颯人は左腕で黒髪の生徒が掴んだ手を引き剥がそうとした。生徒はそっと颯人の身体を、自分の身体に寄せた。そして、片腕で颯人の背中をトントンと叩いた。
「落ち着いて。安心して。」
颯人は左腕をそっと下ろした。過呼吸になりながら、生徒の腕に身を委ね、目を瞑った。暫く経った後、生徒は颯人から離れた。
「どうして泣いていたの?…というか、ここの生徒だよね。転校生?」
「……うん。そう………」
「あっ、僕は菅野淳太。呼び方はなんでもいいよ。君は?」
「……………や…やま…山森颯人…」
「ハヤトか。よろしくね。」
淳太は和やかに微笑んだ。颯人は緊張しながら、言葉を口にしていく。だが、脈はずっと速いままだ。何分か会話にならないほどのコミュニケーションをとり、先生が教室から出てきた。
「…颯人。まだ職員室に行ってなかったのか?どうしてだ?」
颯人はドキッとして、汗が止まらなくなった。「えっと…」と言葉を詰まらせた時、
「あっ、それ僕のせいです。」
と、淳太が言った。
「…菅野。そうだったのか…。すまない。颯人を疑ってしまっていたようだ。」
先生はすぐに「行こう」と言い、颯人を職員室に連行した。淳太は笑顔で「いってらっしゃ~い。」と手を振った。
「颯人。先生は颯人のためを思って言ってるんだ。ほら。教室に入りなさい。」
「………嫌、嫌、です…。」
ガヤガヤと賑わった煩い教室に入ろうと廊下で教師と話してしていたのは、今年の4月から転校してきた3年B組の生徒、山森颯人である。前の学校では、残酷なほどの虐めを受けた。そのため、「対人恐怖症」という障害を持ってしまった。
「僕には…無理です、。無理ですから、お願いします。対面だけは。……。助けて……」
教師は顔を顰めた後、ため息をつき、呟くように言った。
「じゃあ、教室で言っておくから。職員室で待ってなさい。」
教師は颯人を1人にし、教室のドアを開けた。1人待つ颯人は、とてつもない不安を感じた。1人で職員室に行かなければならない。行った後どうするかなどわからない。どうやっても人と会う。そんなことを考えているうちに、涙が溢れた。頭をかき乱されるような混乱状態になり、叫びそうになった。
「助けて……。誰か……。」
悲痛な、ごく小さな声で呟いた。そして、颯人は急に肩を強く叩かれた。ビクッとし、泣いた顔で後ろを向いた。
「…あれ、どうしたの?」
身長の高い、黒髪の生徒だった。颯人は大混乱し、弱々しい声を出して逃げてしまった。
「ちょ!ちょっと待って!!」
黒髪の生徒も透かさず颯人を追いかける。颯人は運動不足であり、全然足が速くない。黒髪の生徒はあっという間に追いつき、颯人の右腕をガシリと掴んだ。
「離して!!!」
「…えっ、どうしたの!?落ち着いて!」
颯人は左腕で黒髪の生徒が掴んだ手を引き剥がそうとした。生徒はそっと颯人の身体を、自分の身体に寄せた。そして、片腕で颯人の背中をトントンと叩いた。
「落ち着いて。安心して。」
颯人は左腕をそっと下ろした。過呼吸になりながら、生徒の腕に身を委ね、目を瞑った。暫く経った後、生徒は颯人から離れた。
「どうして泣いていたの?…というか、ここの生徒だよね。転校生?」
「……うん。そう………」
「あっ、僕は菅野淳太。呼び方はなんでもいいよ。君は?」
「……………や…やま…山森颯人…」
「ハヤトか。よろしくね。」
淳太は和やかに微笑んだ。颯人は緊張しながら、言葉を口にしていく。だが、脈はずっと速いままだ。何分か会話にならないほどのコミュニケーションをとり、先生が教室から出てきた。
「…颯人。まだ職員室に行ってなかったのか?どうしてだ?」
颯人はドキッとして、汗が止まらなくなった。「えっと…」と言葉を詰まらせた時、
「あっ、それ僕のせいです。」
と、淳太が言った。
「…菅野。そうだったのか…。すまない。颯人を疑ってしまっていたようだ。」
先生はすぐに「行こう」と言い、颯人を職員室に連行した。淳太は笑顔で「いってらっしゃ~い。」と手を振った。
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