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第4章 迷宮の宝
第5話 腕相撲
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「出発前に怪我されても困る。腕相撲で決めろ」
フォーレントが、オレたちの勝負に対して腕相撲を指示してきた。
表情が少し焦っているように見えるが、それは多分、通常の戦闘勝負をしたらこの大男はオレに負けると思ったんだろう。
解析で大男のステータスを見てみたら、レベルは115だった。
フォーレントがオレのステータスを見たとき、オレのレベルは118だったから、実力的にはオレたちのことはほぼ互角と思ってるはず。ただ、あれから時間も経っているし、フォーレントがオレを警戒するのも無理はない。
だが、単純な力比べなら、この大男に分があると考えたわけだ。
パワータイプの戦士みたいだし、確かに腕相撲は相当強そうだ。
「ぐふっ、俺はそれで構わないぜ。なんなら指1本で相手してやろうか?」
「お気遣いなく。もったいぶらずに全力で来いよ」
大男の挑発に、オレも少し煽り返す。
「生意気な小僧だな……リュークだったか? Fランクのお前が、なんでそんな口をたたけるのか俺には分からねえ。腕相撲で俺に勝てるわけねえのに、頭がおかしいんじゃねえのか?」
「あはははその通りだ。腕相撲じゃ勝負になるわけがねえ」
「まあリュークじゃ、どんなことで勝負しようとも勝てるわけないけどな」
「おいリューク、かけっこに変更してもらったほうがいいんじゃねえか? それならお前にもチャンスがあるかもしれねえぜ?」
周りの連中がわやわやと騒ぐ中、オレと大男はテーブルに移動し、お互い腕を置いて手を組み合う。
騒ぎを知ったほかの冒険者たちも、野次馬するためにぞろぞろと集まってきた。
「ああ、マスターがワタシのために戦ってくださるなんて……感激です。勝利した暁には、ワタシのキスをその唇に捧げます」
「いや、そういうのいらないから」
勝負直前にアホなことを言われ、オレの全身から力が抜ける。
サクヤに不意打ちでキスされたことまで思い出して、少々気が重くなった。
まったく、負けたらレムのせいだぞ!
「俺はジャビロ。『双大剣』のジャビロだ。名前くらいは聞いたことあるだろ?」
「すまないが、全然知らねえ。一応覚えておくよ」
「ぐふっ、本当に口の減らねえガキだ。お前の腕を破壊して、俺様の名を忘れられないようにしてやる。いくぞ!」
そう言いながら、大男――ジャビロが腕に力を入れた。
その巨大な上腕二頭筋が、痙攣しながらパンパンに膨れ上がる。
「俺様の力を思い知れ…………思いし…………えっ、なんだこりゃ!?」
ジャビロは腕が震えるほど力を入れているが、オレの腕はビクともしない。
多分、怪力自慢なんだろうが、この程度なら『天狼七部衆』のカブトマルのほうが遥かにパワーが強かったな。
「な……どうした? 腕相撲はもう始まってるのに、なんで決着がつかねえ?」
「リュークがパワーで勝てるわけないのに!?」
「こりゃ……いったい何が起こってんだ!?」
ゲラゲラと笑いながら盛り上がっていた周りの連中が、固まったままの腕相撲を見て驚きの声を上げる。
その最中も、ジャビロは顔を真っ赤にして必死に力を入れているが、もちろんオレの腕は動かない。
オレはそのまま、ジャビロの腕をペタンと軽く押し倒して勝つ。
「これで文句ないな?」
「バ……バカなっ、こ、この俺が力で負けるなんて……!?」
しんとして声も出ないその場の一同。
ふとフォーレントの顔を見ると、口を大きく開けたまま真っ青になっていた。
「さすがですマスター。脳細胞がトロール以下の男に負けるはずありませんね。さあ約束のキスをお受け取りください」
腕相撲と脳細胞は関係ないと思うが?
と考える間もなくレムはオレの首に抱きつき、無理やりキスを迫ってきた。
「よせ! そんな約束なんてしてないだろ!」
オレはレムの顔に手を当て、ぐいと力を入れて遠ざけると、ひょっとこみたいな口になっていたレムの顔がグニャリと変形する。
それはまるで本物の人間のような感触だった。
うん、これならゴーレムとバレることはないな。
「ああ、つれないお方……ひょっとして、人前では恥ずかしいのですか? 分かりましたマスター、キスは夜伽のときまでお預けしますわ」
「お前とそんなことなんて、何があろうともするわけないだろ!」
外見はアニスそっくりなのに、なんでこんな性格になっちゃったんだ?
もしかしてアニスが物静かだから、逆にオレはこういうタイプを無意識に望んでしまったとか……?
いや、それはないな。レムのような性格は苦手だし。
となると、ますますこんな性格になった理由が分からん。
「くそっ、リュークのヤツ、こんな美少女とイチャイチャして……!」
「はああ、めちゃくちゃ羨ましい~っ! 羨ましすぎて涙が出てきた」
「こんな美少女冒険者、いったいどこで見つけてきたんだ!?」
ベタベタひっついてくるレムを見て、周りの冒険者たちがどうやら嫉妬しているみたいだ。
いや、こいつはゴーレムなんだよ、だから羨ましがる必要なんてないぞ。
……と教えてやりたいところだが、言うわけにはいかないし。
フォーレントが、オレたちの勝負に対して腕相撲を指示してきた。
表情が少し焦っているように見えるが、それは多分、通常の戦闘勝負をしたらこの大男はオレに負けると思ったんだろう。
解析で大男のステータスを見てみたら、レベルは115だった。
フォーレントがオレのステータスを見たとき、オレのレベルは118だったから、実力的にはオレたちのことはほぼ互角と思ってるはず。ただ、あれから時間も経っているし、フォーレントがオレを警戒するのも無理はない。
だが、単純な力比べなら、この大男に分があると考えたわけだ。
パワータイプの戦士みたいだし、確かに腕相撲は相当強そうだ。
「ぐふっ、俺はそれで構わないぜ。なんなら指1本で相手してやろうか?」
「お気遣いなく。もったいぶらずに全力で来いよ」
大男の挑発に、オレも少し煽り返す。
「生意気な小僧だな……リュークだったか? Fランクのお前が、なんでそんな口をたたけるのか俺には分からねえ。腕相撲で俺に勝てるわけねえのに、頭がおかしいんじゃねえのか?」
「あはははその通りだ。腕相撲じゃ勝負になるわけがねえ」
「まあリュークじゃ、どんなことで勝負しようとも勝てるわけないけどな」
「おいリューク、かけっこに変更してもらったほうがいいんじゃねえか? それならお前にもチャンスがあるかもしれねえぜ?」
周りの連中がわやわやと騒ぐ中、オレと大男はテーブルに移動し、お互い腕を置いて手を組み合う。
騒ぎを知ったほかの冒険者たちも、野次馬するためにぞろぞろと集まってきた。
「ああ、マスターがワタシのために戦ってくださるなんて……感激です。勝利した暁には、ワタシのキスをその唇に捧げます」
「いや、そういうのいらないから」
勝負直前にアホなことを言われ、オレの全身から力が抜ける。
サクヤに不意打ちでキスされたことまで思い出して、少々気が重くなった。
まったく、負けたらレムのせいだぞ!
「俺はジャビロ。『双大剣』のジャビロだ。名前くらいは聞いたことあるだろ?」
「すまないが、全然知らねえ。一応覚えておくよ」
「ぐふっ、本当に口の減らねえガキだ。お前の腕を破壊して、俺様の名を忘れられないようにしてやる。いくぞ!」
そう言いながら、大男――ジャビロが腕に力を入れた。
その巨大な上腕二頭筋が、痙攣しながらパンパンに膨れ上がる。
「俺様の力を思い知れ…………思いし…………えっ、なんだこりゃ!?」
ジャビロは腕が震えるほど力を入れているが、オレの腕はビクともしない。
多分、怪力自慢なんだろうが、この程度なら『天狼七部衆』のカブトマルのほうが遥かにパワーが強かったな。
「な……どうした? 腕相撲はもう始まってるのに、なんで決着がつかねえ?」
「リュークがパワーで勝てるわけないのに!?」
「こりゃ……いったい何が起こってんだ!?」
ゲラゲラと笑いながら盛り上がっていた周りの連中が、固まったままの腕相撲を見て驚きの声を上げる。
その最中も、ジャビロは顔を真っ赤にして必死に力を入れているが、もちろんオレの腕は動かない。
オレはそのまま、ジャビロの腕をペタンと軽く押し倒して勝つ。
「これで文句ないな?」
「バ……バカなっ、こ、この俺が力で負けるなんて……!?」
しんとして声も出ないその場の一同。
ふとフォーレントの顔を見ると、口を大きく開けたまま真っ青になっていた。
「さすがですマスター。脳細胞がトロール以下の男に負けるはずありませんね。さあ約束のキスをお受け取りください」
腕相撲と脳細胞は関係ないと思うが?
と考える間もなくレムはオレの首に抱きつき、無理やりキスを迫ってきた。
「よせ! そんな約束なんてしてないだろ!」
オレはレムの顔に手を当て、ぐいと力を入れて遠ざけると、ひょっとこみたいな口になっていたレムの顔がグニャリと変形する。
それはまるで本物の人間のような感触だった。
うん、これならゴーレムとバレることはないな。
「ああ、つれないお方……ひょっとして、人前では恥ずかしいのですか? 分かりましたマスター、キスは夜伽のときまでお預けしますわ」
「お前とそんなことなんて、何があろうともするわけないだろ!」
外見はアニスそっくりなのに、なんでこんな性格になっちゃったんだ?
もしかしてアニスが物静かだから、逆にオレはこういうタイプを無意識に望んでしまったとか……?
いや、それはないな。レムのような性格は苦手だし。
となると、ますますこんな性格になった理由が分からん。
「くそっ、リュークのヤツ、こんな美少女とイチャイチャして……!」
「はああ、めちゃくちゃ羨ましい~っ! 羨ましすぎて涙が出てきた」
「こんな美少女冒険者、いったいどこで見つけてきたんだ!?」
ベタベタひっついてくるレムを見て、周りの冒険者たちがどうやら嫉妬しているみたいだ。
いや、こいつはゴーレムなんだよ、だから羨ましがる必要なんてないぞ。
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