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70 愛でられる感
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ふわふわした。
ふわりって。
あと、すごく、熱かった。
その、彼の指先? 唇? なんていうか、全部?
セックスってあんなに気持ちよかったっけ? って、なったの。
いや、全然、気持ちいい行為ではあるんだけど、なんていうか、違ったんだよね。なんていうの? んー……なんか、なんでしょう。
い。
いと……。
――聡衣。
い。
いや、あの、あれ。
そのね、最中にさ、名前を、呼ばれるの。その、しながら。ぎゅって抱き締められながらさ、なんか頬にキスとかしてくるし。そういうの、なんというか、ね。もう、ほら。
――聡衣。
愛しい…………感じ? っていうの? なんていうの? なんか、そんな愛しさ――。
「糸?」
「!」
すぐそばで聞こえた低い声にぱちっと目を開けた。
う、わ、あ。
って、内心、言葉が大きくなって固まって。それで。「おはっ」って口から声が飛び出て。
「っぷ、すげ、一瞬で真っ赤」
そんな寝起きの俺を見て、旭輝が笑ってた。
だって、しようがないじゃん。目覚ましたら、すっごいイケメンリーマンがいて、髪撫でてて、微笑んでるんだもん。
そんなおとぎ話みたいな、シンデレラストーリーみたいなの、遭遇したことないもん。
「あのっ」
「朝食作ってある」
「へ? あ、時間? えっと、あのっ、ごめっ」
「いや、聡衣はまだ出勤時間じゃないだろ? ゆっくり寝とけよ」
「あのっ」
「俺は仕事に行ってくるから」
「あ、うん」
すご……かっこい……。
今までも全然かっこいいエリートって思ってたけど、でも、なんていうか、その、違う感じ。
よくバーとかでも見かけるけどさ。
スーツイケメン。
やっぱそういう人って見てても眼福だし、声かけてみようかなって思うし、陽介と一緒になってはしゃいだりするんだけど。
そういうのは違う。
説明、上手じゃないから上手く言葉にできてないけど。今、目の前にいる旭輝はそういうスーツイケメンとか違ってて。
「聡衣」
「!」
名前を呼ばれて、パッと顔を上げて、思わず視線を逸らそうとした。
まださ、寝ぼすけで裸で旭輝の布団に包まれながら、そっと、髪に旭輝がキスをした。額に、頬に。
「っ」
優しく触れる。それだけでも、絶対に笑えるくらいに真っ赤になってるのに。
「好きだ」
なんてさ、言うから、ほら、恥ずかしいくらいに俺ってば、取り乱しちゃうじゃん。
「それじゃあ、行ってきます」
「へは! はいっ、行ってらっしゃい!」
やっぱ、キス魔。
微笑みながら、最後に「ここでしまいにしないと」って言うように、唇に唇で触れて、パッと手を離した。
「帰りは、あんまり遅くならないようにする。夕食は俺が作るよ」
なん。
「へっ、は」
なんなん。
なんなんでしょう。あの人。
ずっと俺のこと好きとか言って。
なんかさ。
俺のことを、ね。
「ん…………も、ぉ……何、あれ」
俺のことを愛でてる感がすごくてね。
「……はぁ」
ひとりぼっちになったベッドの中、膝を抱えて、そっと布団の中に顔を埋めながら溜め息を零した。
そうしないと、そうでもしないと、なんかね。愛でられ感に茹で上がって、蒸発しちゃいそうな気がした。
久しぶりのセックス。
初めての、ふわり感。
困るくらいの旭輝の甘さ。
そんなのに真冬でもポカポカするくらいにあっためられながら、バスルームへと向かった。そろそろ仕事の準備しなくちゃって。
「わ……ぁ、すご」
けど、その鏡の前には思わず声を出しちゃうくらいに髪が重力無視してて。
「ちょ……これで、おはようって、何、もぉ、昨日、変な寝方したかな」
すっごい寝癖。
だから髪触ってたんだ。
旭輝に寝相悪いって思われなかったかな。
あんな顔してないで教えてくれてもいいのに。あんな。
「……っ」
あんな幸せそうな顔。まるで寝癖までも愛おしいみたいなの。
ただの寝癖だよ? それなのに笑うんじゃなくて微笑んでさ。
「……すご」
そして、一人で勝手に気恥ずかしくなった俺は肩をキュッとすくめた。その拍子に、チラリと見えた肩のところに昨日は気が付かなかったキスマークを見つけて。
「……」
いっぱい付いてるんだよね。
旭輝は多分キス魔だから。
肩にも、胸にも、足にもある。
赤い、唇の痕が、印になって残ってる。
そこぜーんぶに旭輝がキスをした。
あの人のものっていう印みたいに、全身にある。
そしてそのことを思い出して、また一人で赤くなってる。
すごい、よね。旭輝っていつもああなのかな。いつもあんなふうに、その……。
鏡の前で、自分を見つめて、自分に赤くなって。
そこでリビングからスマホが短く呼び鈴を鳴らした。
スマホ、どこだっけ。映画を見て、それから二人で……だから、そのままリビングのソファに置いてたっけ。
国見さんから急なヘルプ要請かもと、慌ててそれを確認しに行って。
「? ぇ? なんで?」
そのメッセージに思わず首、かしげちゃった。
メッセージは旭輝から。
河野ってあの人、だよね? 悪い、同僚の人。名前、どうしてか、何度聞いても忘れちゃう人。存在薄いのかな。いやいや、そんなことないけど、なんでか名前を何度言われても覚えられてない人。
「…………いー、けど……」
――今度、河野を飲みに誘った。聡衣も一緒に。
「………………なんで?」
なんだろ? って、首を傾げながら「いいよ」って返事をするとすぐに既読がついた。
そこから返事はないけれど、なぜか、なんとなく楽しそうな旭輝の顔がパッと目に浮かんでた。
ふわりって。
あと、すごく、熱かった。
その、彼の指先? 唇? なんていうか、全部?
セックスってあんなに気持ちよかったっけ? って、なったの。
いや、全然、気持ちいい行為ではあるんだけど、なんていうか、違ったんだよね。なんていうの? んー……なんか、なんでしょう。
い。
いと……。
――聡衣。
い。
いや、あの、あれ。
そのね、最中にさ、名前を、呼ばれるの。その、しながら。ぎゅって抱き締められながらさ、なんか頬にキスとかしてくるし。そういうの、なんというか、ね。もう、ほら。
――聡衣。
愛しい…………感じ? っていうの? なんていうの? なんか、そんな愛しさ――。
「糸?」
「!」
すぐそばで聞こえた低い声にぱちっと目を開けた。
う、わ、あ。
って、内心、言葉が大きくなって固まって。それで。「おはっ」って口から声が飛び出て。
「っぷ、すげ、一瞬で真っ赤」
そんな寝起きの俺を見て、旭輝が笑ってた。
だって、しようがないじゃん。目覚ましたら、すっごいイケメンリーマンがいて、髪撫でてて、微笑んでるんだもん。
そんなおとぎ話みたいな、シンデレラストーリーみたいなの、遭遇したことないもん。
「あのっ」
「朝食作ってある」
「へ? あ、時間? えっと、あのっ、ごめっ」
「いや、聡衣はまだ出勤時間じゃないだろ? ゆっくり寝とけよ」
「あのっ」
「俺は仕事に行ってくるから」
「あ、うん」
すご……かっこい……。
今までも全然かっこいいエリートって思ってたけど、でも、なんていうか、その、違う感じ。
よくバーとかでも見かけるけどさ。
スーツイケメン。
やっぱそういう人って見てても眼福だし、声かけてみようかなって思うし、陽介と一緒になってはしゃいだりするんだけど。
そういうのは違う。
説明、上手じゃないから上手く言葉にできてないけど。今、目の前にいる旭輝はそういうスーツイケメンとか違ってて。
「聡衣」
「!」
名前を呼ばれて、パッと顔を上げて、思わず視線を逸らそうとした。
まださ、寝ぼすけで裸で旭輝の布団に包まれながら、そっと、髪に旭輝がキスをした。額に、頬に。
「っ」
優しく触れる。それだけでも、絶対に笑えるくらいに真っ赤になってるのに。
「好きだ」
なんてさ、言うから、ほら、恥ずかしいくらいに俺ってば、取り乱しちゃうじゃん。
「それじゃあ、行ってきます」
「へは! はいっ、行ってらっしゃい!」
やっぱ、キス魔。
微笑みながら、最後に「ここでしまいにしないと」って言うように、唇に唇で触れて、パッと手を離した。
「帰りは、あんまり遅くならないようにする。夕食は俺が作るよ」
なん。
「へっ、は」
なんなん。
なんなんでしょう。あの人。
ずっと俺のこと好きとか言って。
なんかさ。
俺のことを、ね。
「ん…………も、ぉ……何、あれ」
俺のことを愛でてる感がすごくてね。
「……はぁ」
ひとりぼっちになったベッドの中、膝を抱えて、そっと布団の中に顔を埋めながら溜め息を零した。
そうしないと、そうでもしないと、なんかね。愛でられ感に茹で上がって、蒸発しちゃいそうな気がした。
久しぶりのセックス。
初めての、ふわり感。
困るくらいの旭輝の甘さ。
そんなのに真冬でもポカポカするくらいにあっためられながら、バスルームへと向かった。そろそろ仕事の準備しなくちゃって。
「わ……ぁ、すご」
けど、その鏡の前には思わず声を出しちゃうくらいに髪が重力無視してて。
「ちょ……これで、おはようって、何、もぉ、昨日、変な寝方したかな」
すっごい寝癖。
だから髪触ってたんだ。
旭輝に寝相悪いって思われなかったかな。
あんな顔してないで教えてくれてもいいのに。あんな。
「……っ」
あんな幸せそうな顔。まるで寝癖までも愛おしいみたいなの。
ただの寝癖だよ? それなのに笑うんじゃなくて微笑んでさ。
「……すご」
そして、一人で勝手に気恥ずかしくなった俺は肩をキュッとすくめた。その拍子に、チラリと見えた肩のところに昨日は気が付かなかったキスマークを見つけて。
「……」
いっぱい付いてるんだよね。
旭輝は多分キス魔だから。
肩にも、胸にも、足にもある。
赤い、唇の痕が、印になって残ってる。
そこぜーんぶに旭輝がキスをした。
あの人のものっていう印みたいに、全身にある。
そしてそのことを思い出して、また一人で赤くなってる。
すごい、よね。旭輝っていつもああなのかな。いつもあんなふうに、その……。
鏡の前で、自分を見つめて、自分に赤くなって。
そこでリビングからスマホが短く呼び鈴を鳴らした。
スマホ、どこだっけ。映画を見て、それから二人で……だから、そのままリビングのソファに置いてたっけ。
国見さんから急なヘルプ要請かもと、慌ててそれを確認しに行って。
「? ぇ? なんで?」
そのメッセージに思わず首、かしげちゃった。
メッセージは旭輝から。
河野ってあの人、だよね? 悪い、同僚の人。名前、どうしてか、何度聞いても忘れちゃう人。存在薄いのかな。いやいや、そんなことないけど、なんでか名前を何度言われても覚えられてない人。
「…………いー、けど……」
――今度、河野を飲みに誘った。聡衣も一緒に。
「………………なんで?」
なんだろ? って、首を傾げながら「いいよ」って返事をするとすぐに既読がついた。
そこから返事はないけれど、なぜか、なんとなく楽しそうな旭輝の顔がパッと目に浮かんでた。
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