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36 大人の余裕
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蒲田さん。
「すみません。この服のサイズ、一つ小さいのってありますか?」
「あ、はい。今、お持ちしますね」
蒲田さん、聴こえているでしょうか?
「こちらになります」
今、心の中から呼びかけています。転職が決まってすぐにお祝いをくれたぐらいだから、こうやって心の中から呼びかけても返事してくれたりしません?
「それでは、お会計の方が……」
すみませんけど。
「ありがとうございましたぁ」
早く、あの、俺と旭輝のラブラブカップル認定、してもらえないですか?
本当に。マジで。
じゃないと、とても、困るんです。だってもう十二月ですよ? 世間一般ではクリスマスに街中ちょっと楽しそうになっちゃう時期なんです。その頃にまだこのお芝居続けてたら、世の女性が、特に旭輝と同じ職場のあのヒールのよく似合う、高級なブランド香水もよく似合う、あの女の人も「おいおい」ってなるだろうし。ね? だから、とにかく早くしてもらえないと。
「どう? 仕事、慣れたかな?」
「あ、国見さん。まだ仕入れ先の詳細まで把握できてないですけど、なんとか」
「いやいや、充分だよ。とても助かってる。初めて雇った人が君で本当によかった」
「そんな……ありがとうございます」
にこやかに微笑む国見さんへペコリと頭を下げて、今、お店を後にしたお客さんに見せていた商品を棚へと陳列し直してた。
「畳み方、すごく綺麗だよね」
「そうですか? あは、でも、こういうのはやっぱ手慣れてるから……」
「それに楽しそうにしてくれてるのもありがたい」
「いえ、楽しいですから」
本当に楽しいよ?
販売の仕事好きだし。セレクトショップの知識はまだ浅いけど、お客さんそれぞれに合わせた距離感図るのだって、その人の好みを会話の中から探るのだって、全部楽しい。そして、その人がお店を出る時、少しでも笑顔でいてくれたら最高って思う。
「魔法が使えたって気がして」
「魔法?」
「笑われちゃいそうですけど。でも、服一つ、鞄や靴一つで、その人が少しでもポジティブになれるお手伝いって思ってたりします」
なんだってそう。家着だって、部屋で履くスリッパだって、カバンだって、靴だって。Tシャツ一枚でさえ。とてもとってもお気に入りならさ。それを身につけただけで、気持ちがポジティブになると思うんだ。俺はそのお手伝いをしてるって、いつも、そう思ってる。
「……素敵だな」
「! あは、いえいえ! 全然です! 独りよがりな時だってあるだろうし。それに、お客さんにしてみたら、たまたま出会った店員、ってだけで、きっとお店の外を出たら忘れちゃうだろうし……」
「そんなことはないと思うよ。それにとても素敵な考え方だ」
「ぁ、りがとうございます」
国見さんって、印象もだけど言葉使いとか仕草とか柔らかいんだよね。ナヨナヨしてるとかじゃない柔らかさ。
なんて言うのが一番合う感じだろ。
「じゃあ、あのタイピンもそうやって選ばれた、のかな?」
「え? あ……黒い石の……」
あ、あれ、大人の男。
もう俺も二十五超えててれっきとした大人だけど、そういうのじゃなくて、俺みたいに、あっちこっちで困ってみたり、慌ててみたり、自分の気持ちひとつもままならないようなそんな大人じゃなくて。
余裕のある大人の男って感じ。
こういう人の恋人って、すごく大事にされそうだよね。
「お世話になってる人って言ってたけど」
「……?」
きっと、大人の余裕で包み込まれるような感じ、なんじゃないかなぁって。
「恋人、かな?」
「……ぇ?」
「昨日、偶然、見かけたんだ。夜、十一時くらいだったかな。君が背の高い男性と並んで歩いてるところを」
その時間帯、確かに旭輝と歩いてた。
「あの……」
「いや、なんだかとても親密そうというか、君に触れていたから」
冷たくなった鼻先。
そこを旭輝が触って、早くうちに帰ろうって。あの時?
「まるで恋人みたいに見えたんだ」
「そ……そ、んなわけないじゃないですか」
自分で言って自分でびっくりした。ここ、こんな即否定とかしちゃダメじゃんって。今、嘘だけどお芝居だけど、フリ、なんだけど、恋人同士の設定なのにさ。ここの定休日だって知っちゃってる蒲田さんをごまかすためには、国見さんに旭輝は恋人なんですって言わないとダメなのに。
「敵を欺くにはまず味方から戦法」なのに。
ダメじゃん。恋人じゃないって言っちゃったら。
「違うの?」
「ち、違いますよ~。それに男ですよ? あ、あいつも、俺も」
「なんだ、違うんだ」
「はい。えっと、違います」
ダメ。
ダメだったら。否定しちゃ、ダメなのに。
なのに、上手にできなかった。
彼氏なんです、って言って、少し照れ笑い、とかしないといけなかったのにそれができなかった。
「そっか……てっきり、同類なのかなって嬉しくなったけど」
「……ぇ? あ、の……同類って……」
慌ててる、心臓が。ほら。いつもは柔らかく落ち着いた雰囲気の国見さんの声が一個音下がって低くなったから。
蒲田さんの前で前はできた、旭輝が彼氏なんですって嘘のお芝居を今、上手にできなかったから。
「ゲイ、かなって……」
「……」
国見さんは大人の余裕を感じる人で、きっとこんな人の恋人はとても安心して頼れるんだろうなって。包容力、すごいし。だから、きっと、この人の恋人になれる人は幸せだろうなぁって。
「ぁ、の……」
「君がゲイなら嬉しい……けど、あの彼が君の恋人なら、嬉しくないって思った」
この人の恋人に……。
「でも、彼が恋人じゃなくて」
「……」
「君の恋愛対象が同性なら」
なれたら幸せなんだろうなぁって思った。
「すごく、嬉しいな」
「…………」
目が合った国見さんは落ち着いていて、包容力もある、そして、男の顔をしていた。
「すみません。この服のサイズ、一つ小さいのってありますか?」
「あ、はい。今、お持ちしますね」
蒲田さん、聴こえているでしょうか?
「こちらになります」
今、心の中から呼びかけています。転職が決まってすぐにお祝いをくれたぐらいだから、こうやって心の中から呼びかけても返事してくれたりしません?
「それでは、お会計の方が……」
すみませんけど。
「ありがとうございましたぁ」
早く、あの、俺と旭輝のラブラブカップル認定、してもらえないですか?
本当に。マジで。
じゃないと、とても、困るんです。だってもう十二月ですよ? 世間一般ではクリスマスに街中ちょっと楽しそうになっちゃう時期なんです。その頃にまだこのお芝居続けてたら、世の女性が、特に旭輝と同じ職場のあのヒールのよく似合う、高級なブランド香水もよく似合う、あの女の人も「おいおい」ってなるだろうし。ね? だから、とにかく早くしてもらえないと。
「どう? 仕事、慣れたかな?」
「あ、国見さん。まだ仕入れ先の詳細まで把握できてないですけど、なんとか」
「いやいや、充分だよ。とても助かってる。初めて雇った人が君で本当によかった」
「そんな……ありがとうございます」
にこやかに微笑む国見さんへペコリと頭を下げて、今、お店を後にしたお客さんに見せていた商品を棚へと陳列し直してた。
「畳み方、すごく綺麗だよね」
「そうですか? あは、でも、こういうのはやっぱ手慣れてるから……」
「それに楽しそうにしてくれてるのもありがたい」
「いえ、楽しいですから」
本当に楽しいよ?
販売の仕事好きだし。セレクトショップの知識はまだ浅いけど、お客さんそれぞれに合わせた距離感図るのだって、その人の好みを会話の中から探るのだって、全部楽しい。そして、その人がお店を出る時、少しでも笑顔でいてくれたら最高って思う。
「魔法が使えたって気がして」
「魔法?」
「笑われちゃいそうですけど。でも、服一つ、鞄や靴一つで、その人が少しでもポジティブになれるお手伝いって思ってたりします」
なんだってそう。家着だって、部屋で履くスリッパだって、カバンだって、靴だって。Tシャツ一枚でさえ。とてもとってもお気に入りならさ。それを身につけただけで、気持ちがポジティブになると思うんだ。俺はそのお手伝いをしてるって、いつも、そう思ってる。
「……素敵だな」
「! あは、いえいえ! 全然です! 独りよがりな時だってあるだろうし。それに、お客さんにしてみたら、たまたま出会った店員、ってだけで、きっとお店の外を出たら忘れちゃうだろうし……」
「そんなことはないと思うよ。それにとても素敵な考え方だ」
「ぁ、りがとうございます」
国見さんって、印象もだけど言葉使いとか仕草とか柔らかいんだよね。ナヨナヨしてるとかじゃない柔らかさ。
なんて言うのが一番合う感じだろ。
「じゃあ、あのタイピンもそうやって選ばれた、のかな?」
「え? あ……黒い石の……」
あ、あれ、大人の男。
もう俺も二十五超えててれっきとした大人だけど、そういうのじゃなくて、俺みたいに、あっちこっちで困ってみたり、慌ててみたり、自分の気持ちひとつもままならないようなそんな大人じゃなくて。
余裕のある大人の男って感じ。
こういう人の恋人って、すごく大事にされそうだよね。
「お世話になってる人って言ってたけど」
「……?」
きっと、大人の余裕で包み込まれるような感じ、なんじゃないかなぁって。
「恋人、かな?」
「……ぇ?」
「昨日、偶然、見かけたんだ。夜、十一時くらいだったかな。君が背の高い男性と並んで歩いてるところを」
その時間帯、確かに旭輝と歩いてた。
「あの……」
「いや、なんだかとても親密そうというか、君に触れていたから」
冷たくなった鼻先。
そこを旭輝が触って、早くうちに帰ろうって。あの時?
「まるで恋人みたいに見えたんだ」
「そ……そ、んなわけないじゃないですか」
自分で言って自分でびっくりした。ここ、こんな即否定とかしちゃダメじゃんって。今、嘘だけどお芝居だけど、フリ、なんだけど、恋人同士の設定なのにさ。ここの定休日だって知っちゃってる蒲田さんをごまかすためには、国見さんに旭輝は恋人なんですって言わないとダメなのに。
「敵を欺くにはまず味方から戦法」なのに。
ダメじゃん。恋人じゃないって言っちゃったら。
「違うの?」
「ち、違いますよ~。それに男ですよ? あ、あいつも、俺も」
「なんだ、違うんだ」
「はい。えっと、違います」
ダメ。
ダメだったら。否定しちゃ、ダメなのに。
なのに、上手にできなかった。
彼氏なんです、って言って、少し照れ笑い、とかしないといけなかったのにそれができなかった。
「そっか……てっきり、同類なのかなって嬉しくなったけど」
「……ぇ? あ、の……同類って……」
慌ててる、心臓が。ほら。いつもは柔らかく落ち着いた雰囲気の国見さんの声が一個音下がって低くなったから。
蒲田さんの前で前はできた、旭輝が彼氏なんですって嘘のお芝居を今、上手にできなかったから。
「ゲイ、かなって……」
「……」
国見さんは大人の余裕を感じる人で、きっとこんな人の恋人はとても安心して頼れるんだろうなって。包容力、すごいし。だから、きっと、この人の恋人になれる人は幸せだろうなぁって。
「ぁ、の……」
「君がゲイなら嬉しい……けど、あの彼が君の恋人なら、嬉しくないって思った」
この人の恋人に……。
「でも、彼が恋人じゃなくて」
「……」
「君の恋愛対象が同性なら」
なれたら幸せなんだろうなぁって思った。
「すごく、嬉しいな」
「…………」
目が合った国見さんは落ち着いていて、包容力もある、そして、男の顔をしていた。
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