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二度目人生

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 「二度目の人生か……」

 嬉しいはずなのになんだが、心がぽっかりと穴が空いたように気がする。

 「お父様が私を裏切り殺すだなんて、いまだに信じられないわ」
  
 そもそも皇帝陛下の伴侶って本当のことだったの?

 「今は思えば不審なことはたくさんあった」

 お父様の期待に嬉しすぎて気づかなかった。

 「私を護衛するはずの騎士たちは全員新米さんだった」

 何人かはベテランもいたかもしれない。でもほとんどが新米だった。

 「お父様はなぜ私を殺したのかしら⁇」

 あの日時間が遡ってから数日が経過したけど、夢ではない。だって目覚めないもの。それに体も小さくなっている。

 「サシルが生きている。それにみんなもまだ死んでない」

 回避しなきゃ。私のために犠牲になった人たちを助けなきゃ。

 「そして、お父様は失望させてここから出るの。私は捨てられなければならないのだから!」

 翌日

 「お嬢様!旦那様がお帰りになられましたよ?」

 「……そう」

 サァァー

 「あ、あれ?いつもなら飛んでいくのに……お嬢様⁇もしかしてお疲れですか?」

 「えっ?」

 「いつもと様子が違うので……」

 心配そうに私を見つめるサシルは本当に優しい。だからこそ余計に辛くなる。あなたを死なせてしまった自分を許せない。

 「もうやめたの」

 「何をですか?」

 「お父様に期待するのをやめたの」

 そう。私は私のために、そして私を守ろうとしてくれた人たちのために生きるの。

 「サシル。今から書斎に行くわ」

 ぱあっ!

 「はい。旦那様にお会いになるのですね?」

 「まぁね」

 表情が一気に明るくなった。でも私はあの日あの時のできごとを許すつもりはない。ここからが私の復讐よ。

 書斎

 コンコン

 「誰だ?」

 「クリスタです。入ってもよろしいでしょうか?」

 「ああ……」

 ガチャ

 「お父様お帰りなさい」

 「おう」

 「お父様にお話があります」

 「なんだ?」

 お父様は皇帝陛下と結ばれるのを望む。現時点では第一王子のはず?私とは十も年が離れている。

 「お父様。私ねぇ、第四王子様と仲良くなりたい」

 ピキッ

 「は?第四王子だと?あの出来損ないの駄目王子のことか?」

 「はい」

 そう来ると思ったわ。確かに彼は王子としては欠けるものが多すぎるけど、彼は優しさが誰よりも一番持っている。そして彼の頭だけはずば抜けている。

 「お父様はそろそろ婚約者を見つけなさいって言いましたよね?」

 「言ったな?」

 「だからね第四王子様を私の婚約者にしたいの」

 ほんっとに四歳の子供に婚約者って……まだまだ結婚できないのにアホなの?それとも愛のない結婚をしろと?でも捨てられる材料は揃った。このまま押し通る!

 「駄目だ。あんな出来損ないのやつとは婚約させられない」

 「お父様……」

 「なんだ?」

 気のせいか⁇クリスタの雰囲気が変わった?

 「お父様は王族を侮辱するのですね?」

 ビクッ

 「何を言っている?俺がいつそんなことを……」

 「先ほど申し上げたではありせんか?第四王子は出来損ない」

 ギクッ

 「……」

 「それって立派な侮辱ですよね?呆れてものも言えませんわ」

 お父様はプライドだけは高い。そのプライドをへし折ってやる。やるからには徹底的に叩き潰す!

 「お父様。私のお願い聞いてくれますよね?」

 二度目の人生は必ず生き残る。そしてお父様に捨てられる!

 それが私の目標‼︎
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