モブってなんだっけ?

上野佐栁

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同じ転生者

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 前回のあらすじ。私はいつにヒロインのロザリアンと出会い、衝撃の真実を知ることになる。それはロザリアンもなんと!私と同じ転生者だったのです!以上‼︎

 もっと言うべきことがあるだろうが!馬鹿!

数日後の放課後

 「ロザリアンが転生者......」

 驚きが隠せない。アグやグレン様やルプ様に心配させている。しっかりしなきゃ‼︎

 「ユリアさん」

 「......ロザリアン様」

 不意に私に近づき耳元で囁いた。

 「ちゃんと様付けできるよね?偉いわ」

 「......」

 「私とあなたの格の違いを見せてあげるわ。所詮はモブとヒロイン。あなたに勝ち目なんてない」

 そう冷たく言うロザリアンは私の知っているヒロインじゃない。

 ロザリアンはとても明るく穏やかで優しい。健気でみんなから愛されるヒロイン。悪魔に体を乗っ取られて自由の効かない可哀想な人。

 「実はねぇ、今も私の体は悪魔に侵蝕させつつある。だから早くところあの三人助けてもらわなきゃ」

 やめて。あの三人に近づかないで。でも私にはそれを言う資格はない。言ってしまえば小説の内容を変えてしまう。それだけは避けなければならない。だから駄目。収まれ。収まれ。この気持ち収まって‼︎

 「私は行くわ。せいぜいモブらしく悪足掻きでもするのね?」

 「......」

 何も言い返せない。所詮モブはヒロインに勝てない。彼女は誰からも愛される。だからあの三人もきっとそう。

 そう悶々と考えつつ部屋に戻った。

 「......」

 わかっていたことよ。いずれヒロインが出てくるってわかってたのに......わかっていたつもりなのにこんなにも胸が苦しいの。

 コンコン

 私が少し泣いているとドアをノックする音が聞こえた。

 「はい」

 「俺だよ。アグだよ。ユリア、今いいか⁇」

 「い、今開けます」

 そう言って目を擦り慌ててドアを開けた。
  
 ガチャ

 「ユリア......って⁉︎おまっ!すげえー顔だぞ?」

 「え、えへへ......」

 「何があったんだ?」

 「なんでもありません」

 あなたもロザリアンのところに行ってしまう。だからもう仲良くするのはやめよう。そうすれば傷つかない。

 「なんでもなくないだろ?俺に言えよ!俺はお前の味方だ」

 「......アグ」

 どうして?どうしてその一言だけで涙が溢れてくるの?私はただこの世界で生きるのに精一杯なだけで、ただモブとして生きたい。そう思っただけなのに。

 「うゔぅ!」

 「え、えっ!ちょっ⁉︎な、なんで泣くんだ?泣くな。俺が側にいるだろ?」

 「......き......ですか?」

 「えっ?なんて⁇」

 「ヒック!ど、どんな時も、グスン。一緒にいてくれるの?グスグス」

 「ああ、約束する」

 その一言で安心する。

 「うわあああん!」

 ざわざわ

 「何だ?」

 「あの男子が女のことを泣かせた?」

 「最低」

 「ゲスの極み」

 「ちげーわ!」

 ギュッ

 「私もアグの側を離れないようにする」

 「お、おう」

 そう言いながらもどこかでこの街をこの国を出て行こうと思っている気持ちは今は知らない。わからない。そう思いたい。

 「何よ。本当にただのモブ⁇私はあなたを知らない。読んだこともない」

 それにあの金色の瞳。あれ以外に特に目立つところなんてないのに、なんでみんなに愛されるの?意味がわからないわ。

 「絶対に私の方が格上だと証明してやる!」

 悪魔の支配下は私達を想像を絶するほどに強力だと知らない。
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