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初代当主の答えは

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 「ルークを守りたいの。だから協力して」
 私は祈るように手を重ね、初代当主をじっと見つめた。
 「俺は......」
 答えに迷いがある。こんなこと間違っているって気がついていんだ。後ひと推し。
 「ルークをこのまま死なせていいの?ただこの世界に生まれてきただけの女の子だよ?私達と変わりないんだよ?」
 その言葉に村の人は思うところがあったのか全員が俯いた。
 「ルークを神様だと祭り上げて彼女の心を壊して楽しい?」
 私がそう言うと、村の人達がそれぞれ抗議した。
 「我々は村のためにやったんだ」
 「ルーク様は同意の上でやったまでだ!!!!!!!」
 「そうだそうだ!」
 「本当に⁇」
 私は低い声と冷たい目でそう言い、村の人達を睨み付けた。
 「......」
 「ルークはノルと一緒になるの。だから邪魔立ては許さない」
 私はルークの昔の記憶を見ている。死んだ瞬間も死んだ後、成仏出来ずにずっと、私達を見守っていたことも知っている。
 なのに私はルークを守れなかった。それどころかただ全否定して貶した。私も村の人達とそう変わりない。
 「ルークの人生を奪って楽しい?」
 そう変わらない。なのに平然と、ルークの味方なんだと言っている自分も許せない。
 「ルークは渡さない。死なせない」 
 過去を変えてしまえば私とアリアスはなかった存在になるかもしれない。ルークがレイセリファをふたつに割って存在が私とアリアス。正確にはルークのセリファを割った存在だ。
 「モールド家初代当主。私からもう一度言うね。お願い。ルークを助けて」
 「......」
 なんで言えばいいんだ?この娘は嘘偽りもない目で自分を見ている。
 「俺は......」
 「裏切るのですか!?」
 村人がそう声を上げた。
 「我々は村のために民のために身を粉にして戦った。勝利した。今、ルーク様を失ったら我々はどうなる?」
 「そ、それは......」
 村の人達も必死に初代当主に縋り付いている。わかる。何かに縋りたい気持ち。誰かのせいにしたい気持ち。全てが痛いほどにわかる。
 「ルーク様には神様としての勤めが......」
 「もういい加減にしてよ!」
 私はたまらずにそう叫んだ。
 「ルークをもうこれ以上苦しめないでよ!!!!!!!」
 未来で起きる悲劇を変えたい。
 「ルークがもし死んだらそれこそこの世界の終わり。あの黒のモヤに全てを奪われる。その前にルークを助けたいの‼︎」
 この想い届いてよ。お願い。答えてよ。ルークを助けてよ。
 「お前の言うことは真実はわからない。だが、ルーク様を助ける。その想いは真っ直ぐで純粋だ」
 「......」
 「俺達は間違っていたのかもしれない。そろそろ掟を変えるべきだ。ルーク様を何十年間も閉じ込めた罰が降る時が来たんだ」
 そう言って、初代当主はゆっくりと私の方へと歩きひと言こう言った。
 「お前に協力するよ」
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