上 下
72 / 145

暗闇の中の光

しおりを挟む
 「ノル‼︎ほんっとごめん!」
 「もういいって......」
 マジで後何回謝る気だ?かれこれ一時間ぐらいは誤り倒しているんじゃないか?
 「私は結局、ノルの自由を奪ってしまった。君を私の大魔法使いだって言うつもりなんてなかった。それに......勝手に苗字を考えて、ノルの気持ちなんてお構いなしだった」
 「そんなことねぇよ」
 「え?」
 「その名前を考えてくれてサンキューな。えっと、嬉しかった」
 「......ノル」
 「だからもう落ち込むな」
 「うん。そうだね」
 ノルが私専属の大魔法使いになってから早数ヶ月。私達は今日も神の間に居る。昔よりかは行動出来る範囲はあるけど、神の間のドアには触れられない。ノルも私と同じで、神の間に閉じ込められることになった。
 「ノル。此処に居て息苦しいとか思わないの?私は昔から此処に居るからなんとも思わないわけではないけどね」
 「ん?俺、たまに外に出てるぞ」
 「え?ええええええええええええええ!?」
 「あれ?言ってなかったけ?」
 「聞いてない!何?どうやって出てるの?結界は?え?どうゆーことなの!?」
 「お、落ち着け。瞬間移動すれば結界なんて発動しないぜ」
 「そ、そうなの?」
 「まぁ、俺は全属性魔法持ちだからな!全属性魔法持ちだからな‼︎」
 「な、なんで、二回言ったの⁇」
 それに全属性魔法持ちって......全属性持ちじゃなくて?まぁ突っ込まないでおこう。
 「なんとなく」
 「そ、そう?」
 「お前に海を見せてやるよ。ちょうど深夜だしな。誰も此処には来ないだろ」
 「そ、そうだね。一度も......いや。ノルと初め会った時だけ来たな」
 「つまりはよっぽどのことがない限りは此処には来ないってことだな?」
 「うん。そうだね」
 「じゃあ行くぜ」
 パチンっと指を鳴らしたノル。気が付いたら目の前に一面の水が広がっていた。
 「此処が海?」
 「ああ」
 「綺麗」
 月明かりに照らされて海がほのかに光る。
 私に光なんてない。ずっと暗闇の中に居た。でも光はあるんだって思いたい。だって、ノルと出会えたことが私にとって、一番の奇跡で光なんだから。
 「ねぇノル。私ねぇ、今がとても幸せ!ノルと一緒に居られることが私の幸せなんだって気付いたの」
 「......そうか。そうだよな?俺達は二人一緒に居れば幸せなんだよな?」
 「当然だよ!」
 「ルーク。そのキスしてもいいか?」
 「え?えっ!?」
 「お前ともっと触れ合いたい」
 「いや......あの......その......」
 「駄目か⁇」
 クゥーン
 「あばばばば‼︎」
 こんな子犬みたいな顔で迫って来たら拒否出来ないよ!うわああん!
 「い、一回だけなら......」
 「ルーク」
 「......ノル」
 チュッ
 ノルと私の唇が触れ合う。私の心が満たされていく。私はノルが好き。だからこうして、ノルと触れ合いたかったんだ。だからこそ辛くなる。いつかは別れてしまうのだから。そう決まった運命なのだから。
 「そろそろ頃合いではありませんか?」
 「いいや。我らの神はまだ幼い。後もう少し待つべきだ」
 「早くあの神をあの滝に突き落として加護を貰いたいですね」
 「まぁ、あの小娘のおかげで、我が国もかなりの裕福になりましたからね」
 「大丈夫です。神様は逃げ出しませんよ。何故ならそう教育をしてきましたから」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

転生者の取り巻き令嬢は無自覚に無双する

山本いとう
ファンタジー
異世界へと転生してきた悪役令嬢の取り巻き令嬢マリアは、辺境にある伯爵領で、世界を支配しているのは武力だと気付き、生き残るためのトレーニングの開発を始める。 やがて人智を超え始めるマリア式トレーニング。 人外の力を手に入れるモールド伯爵領の面々。 当然、武力だけが全てではない貴族世界とはギャップがある訳で…。 脳筋猫かぶり取り巻き令嬢に、王国中が振り回される時は近い。

チートな幼女に転生しました。【本編完結済み】

Nau
恋愛
道路に飛び出した子供を庇って死んだ北野優子。 でもその庇った子が結構すごい女神が転生した姿だった?! 感謝を込めて別世界で転生することに! めちゃくちゃ感謝されて…出来上がった新しい私もしかして規格外? しかも学園に通うことになって行ってみたら、女嫌いの公爵家嫡男に気に入られて?! どうなる?私の人生! ※R15は保険です。 ※しれっと改正することがあります。

前世で医学生だった私が、転生したら殺される直前でした。絶対に生きてみんなで幸せになります

mica
ファンタジー
ローヌ王国で、シャーロットは、幼馴染のアーサーと婚約間近で幸せな日々を送っていた。婚約式を行うために王都に向かう途中で、土砂崩れにあって、頭を強くぶつけてしまう。その時に、なんと、自分が転生しており、前世では、日本で医学生をしていたことを思い出す。そして、土砂崩れは、実は、事故ではなく、一家を皆殺しにしようとした叔父が仕組んだことであった。 殺されそうになるシャーロットは弟と河に飛び込む… 前世では、私は島の出身で泳ぎだって得意だった。絶対に生きて弟を守る! 弟ともに平民に身をやつし過ごすシャーロットは、前世の知識を使って周囲 から信頼を得ていく。一方、アーサーは、亡くなったシャーロットが忘れられないまま騎士として過ごして行く。 そんな二人が、ある日出会い…. 小説家になろう様にも投稿しております。アルファポリス様先行です。

世界最強の公爵様は娘が可愛くて仕方ない

猫乃真鶴
ファンタジー
トゥイリアース王国の筆頭公爵家、ヴァーミリオン。その現当主アルベルト・ヴァーミリオンは、王宮のみならず王都ミリールにおいても名の通った人物であった。 まずその美貌。女性のみならず男性であっても、一目見ただけで誰もが目を奪われる。あと、公爵家だけあってお金持ちだ。王家始まって以来の最高の魔法使いなんて呼び名もある。実際、王国中の魔導士を集めても彼に敵う者は存在しなかった。 ただし、彼は持った全ての力を愛娘リリアンの為にしか使わない。 財力も、魔力も、顔の良さも、権力も。 なぜなら彼は、娘命の、究極の娘馬鹿だからだ。 ※このお話は、日常系のギャグです。 ※小説家になろう様にも掲載しています。 ※2024年5月 タイトルとあらすじを変更しました。

転生王女は現代知識で無双する

紫苑
ファンタジー
普通に働き、生活していた28歳。 突然異世界に転生してしまった。 定番になった異世界転生のお話。 仲良し家族に愛されながら転生を隠しもせず前世で培ったアニメチート魔法や知識で色んな事に首を突っ込んでいく王女レイチェル。 見た目は子供、頭脳は大人。 現代日本ってあらゆる事が自由で、教育水準は高いし平和だったんだと実感しながら頑張って生きていくそんなお話です。 魔法、亜人、奴隷、農業、畜産業など色んな話が出てきます。 伏線回収は後の方になるので最初はわからない事が多いと思いますが、ぜひ最後まで読んでくださると嬉しいです。 読んでくれる皆さまに心から感謝です。

ドラゴンなのに飛べません!〜しかし他のドラゴンの500倍の強さ♪規格外ですが、愛されてます♪〜

藤*鳳
ファンタジー
 人間としての寿命を終えて、生まれ変わった先が...。 なんと異世界で、しかもドラゴンの子供だった。 しかしドラゴンの中でも小柄で、翼も小さいため空を飛ぶことができない。 しかも断片的にだが、前世の記憶もあったのだ。 人としての人生を終えて、次はドラゴンの子供として生まれた主人公。 色んなハンデを持ちつつも、今度はどんな人生を送る事ができるのでしょうか?

公爵家次男はちょっと変わりモノ? ~ここは乙女ゲームの世界だから、デブなら婚約破棄されると思っていました~

松原 透
ファンタジー
異世界に転生した俺は、婚約破棄をされるため誰も成し得なかったデブに進化する。 なぜそんな事になったのか……目が覚めると、ローバン公爵家次男のアレスという少年の姿に変わっていた。 生まれ変わったことで、異世界を満喫していた俺は冒険者に憧れる。訓練中に、魔獣に襲われていたミーアを助けることになったが……。 しかし俺は、失敗をしてしまう。責任を取らされる形で、ミーアを婚約者として迎え入れることになった。その婚約者に奇妙な違和感を感じていた。 二人である場所へと行ったことで、この異世界が乙女ゲームだったことを理解した。 婚約破棄されるためのデブとなり、陰ながらミーアを守るため奮闘する日々が始まる……はずだった。 カクヨム様 小説家になろう様でも掲載してます。

転生貴族可愛い弟妹連れて開墾します!~弟妹は俺が育てる!~

桜月雪兎
ファンタジー
祖父に勘当された叔父の襲撃を受け、カイト・ランドール伯爵令息は幼い弟妹と幾人かの使用人たちを連れて領地の奥にある魔の森の隠れ家に逃げ込んだ。 両親は殺され、屋敷と人の住まう領地を乗っ取られてしまった。 しかし、カイトには前世の記憶が残っており、それを活用して魔の森の開墾をすることにした。 幼い弟妹をしっかりと育て、ランドール伯爵家を取り戻すために。

処理中です...