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皇帝陛下の苦しみ

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 王宮皇帝の部屋
 「ゔっ‼︎またか......」
 陛下はいつも同じ夢を見る。そう処刑した実の娘、ニーアスの夢だ。
 「其方は余をどれだけ苦しめば気がするのだ?」
 コンコン
 「誰だ?」
 「アリアスです。お父様。今大丈夫でしょうか?」
 「あ、ああ......入れ」
 ガチャ
 「また、悪夢ですか?」
 「ああ」
 「なんの悪夢を見るのか教えてほしいです」
 「アリアス......其方には関係ない事だ」
 「......」
 「ニーアス」
 「え?」
 「余の娘、ニーアスとモールド公爵家に生まれた娘、ラティス.ハンル.モールドは似ておる」
 「......」
 「何故あの娘のことを思い出す?余にもわからんのだ」
 「......お父様。あの子は神に嫌われた子ですよ。だから忘れましょう?」
 赤く煌めくその瞳はまるで、心身共に何もかも蝕むものだった。
 「......そうだな」
 「お父様は私だけを見ればいいのです」
 「其方だけを見るとしよう」
 「クスクス」
 元ニーアスの部屋
 「あんたはいつまで、私の邪魔をするの?あんたなんかいらない子なのよ」
 青から赤に変わる時、例えるなら天使から悪魔に変わる。そんな感じだ。
 「早く......セリファを取り込まなきゃ!」
 ゾワッ
 「ひっ!?」
 「ん?ラティス?どうしたんだ?」
 「な、なんでもない」
 き、気のせいよね?誰かに恨まれた気がするけど、変な事はしてないから気のせいね?めっちゃっ恨まれています。アリアスに!
 「お父様!」
 「......ニーアス」
 「......皇帝陛下」
 「余は間違っていたと言うのか?ニーアス」
 「......」
 アリアスは陛下を自分の物にするべく更なる洗脳をした。
 「お父様は今後一切、ニーアスお姉様の名前を口にしてはなりません」
 「......はい」
 「いひひひひ!」
 アリアスの目的はこの国と世界各地に埋まっているレイセリファを見つける為だ。レイセリファはどんな、セリファよりも強く、どんな魔法も使えるようになるものだ。
 「あの力さえあれば......神すらもひざまづく。いひひひひひひひ!」
 陛下も気づいているのだろう。自分が洗脳されていることに。だが、アリアスの魔法は十二歳とは思えないほどに強く残酷で、恐ろしい。アリアスはセリファを取り込む過ぎたのだ。だからあんだけの力を持っている。普通は体持つはずない。しかし、アリアスは再生能力のあるセリファを取り込んだ。そのため、体が持つ。じゃないと、セリファに飲み込まれるだろう。そのぐらい。セリファは恐ろしいのだ。
 「ゔぅぅ!はぁはぁ」
 ニーアスのことを考えるほど、頭が痛くなり心が掻き乱れる。本当にニーアスが嫌いなのか?いや、本当は好きなのではないか?ニーアスに会いたい。もう一度でいいから会って、愛していると言いたい。アリアスではなく、ニーアスが陛下にとって、最愛の娘。そう気づいてももう遅い。ニーアスは死んだ。この手で死に追いやった。いくら悔やんでも泣き喚いても帰って来ない。
 「余は......ラティスが欲しい」
 まるで、物のように扱う陛下は、ラティスに目をつけてしまうほどにニーアスが欲しい。
 「ラティス.ハンル.モールド......其方は何故、ニーアスに似ておるのか?」
 セリファを全てあげてもいいから戻って来て欲しい。何度もそう願う。今日もまた、ニーアスの夢を見る。
 「どうして?どうして愛してはくださらないのですか?」
 あの時のニーアスはどんな顔をしていた?陛下は夢の中でもその事を考える。もうニーアスの顔すら思い出せない。
 「私はただ一人の娘なんですよ!」
 ああ。その時に抱きしめてやれば良かった。そうすれば、泣き顔は見る事はないだろ。
 ラティスの部屋
 「其方を愛する事など永遠に訪れない」
 「はっ!?」
 「やぁ。久しぶりだね」
 「ウリス!」
 「風魔法だいぶ使えるようになったね」
 「うん!」
 「君は、アリアスが嫌いか?」  
 「......嫌いだけど、憎めない」
 「......そうか」
 「アリアスは何故、あんなにも変わったの?」
 「それは......神のみが知るってところかなぁ?」  
 「アリアスは何が目的で、王宮に来たのか知りたい」
 「レイセリファを取り込むためだろ」  
 「え?レイ......セリファ!?」
 「そうだよ」
 「あんなのを取り込んだら......」  
 「確実に死に追いやられるね」
 「レイセリファは強い力上に命を削る」
 「そうだね」
 「全部で六個だったはず......?」
 「正確には八個だね」
 「え?八個?」
 「君と、アリアスはもう既にレイセリファなんだよ」
 「......え?」
 私がレイセリファ?だから私に死んで欲しかったの?その後もレイセリファの事について、ウリスと夜が明けるまで話し合った。
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