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二人の過去その2
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アリアスは二歳の時にこの宮にやって来た。初めて会った時は幼過ぎて、何もわからない子供だった。ニーアスとの出会いは彼女にとって、運命の相手とも言える。アリアスは、ニーアスが最初から嫌っていたわけではない。むしろ好きな方だった。でも四歳になった時、純粋すぎるアリアスを見ていると自分はどれだけ汚いのだろうと考え始めた。まだ、四歳という幼い子には理解出来ないはずだった。でもアリアスは理解してしまった。神に愛され、心までも綺麗なニーアスが羨ましい。自分は親に捨てられ、此処に来たのに......ニーアスは何も失わない。何も怖い事なんてない。そう思えば思うほど、ニーアスが憎たらしいと思ってしまった。だからアリアスは陛下を支配する事に決めた。アリアスの魔法は洗脳。もちろん、ニーアスにも洗脳をしようとしたが、ニーアスは効かなかった。自分には魔力なんて無いと思い込んでいたニーアスだが、本当は内側に秘める魔力は想像を絶するものだった。そこで、アリアスは自分の捨てた両親に復讐するために洗脳して殺した。セリファを取り込んだ。セリファは相手を殺す時に内側に秘めている魔力を取り込む事が出来るのだ。その後、五歳の時にノワールを探し出して、ニーアスを殺す依頼をする。しかし、ノワールは大魔法使いなので洗脳は効かずにあっさりと断られた。
「神に愛された子を殺すなんて、馬鹿がする子だ!」
ノワールはそう言った。その言葉を聞いて、余計にニーアスを殺したくなった。この手で殺せるのなら良かったが、皇帝陛下殺人未遂の濡れ衣を着せられた彼女はそこで死んでしまう。
「ニーアスが死んだ?これで......お父様の愛は私だけの物!うふふ。いひひ!」
しかし、半月も経たないうちにニーアスが、ラティスとして生まれ変わった事をアリアスは知る事になる。
「ニーアスが生まれ変わった?ふざけないでよ。私はあんたが大っ嫌いよ!」
ニーアスが消えてもラティスが居ることで、アリアスは神に嫌われ者としての扱いになる。
「私は全部持ってるんだから。ニーアスには何もない。私の物なんだから」
ニーアスと再会した時、アリアスは気付いてしまった。いくら奪ってもニーアスはめげない。それどころか、純粋過ぎるニーアスはいつか、陛下の愛さえ奪って行くのだと、この時初めてそう思った。
「お父様は渡さない」
しかし実際は、ニーアスはもう陛下に興味の微塵のカケラも残っていない。あるのは恐怖だけ。自分を死に追いやった人をいつまでも思っていては前に進めない。そんな、ニーアスの考えにアリアスは気付かぬまま、更なる嫉妬と妬ましさ、恨み、憎しさなどを抱え込んでいた。
「私はニーアスが嫌い。私はニーアスが嫌い。私はニーアスが......嫌い......だ」
そう思わずには居られないほどに今のニーアスはとても綺麗で、愛らしい。
「......認めないんだから。私のやって来たことは正しいから」
そう言い聞かせて、ニーアスへと勝手な復讐心に燃えるアリアスだった。
一方変わって現在。
「ラティス。魔法は魔力、体力、精神を安定させれば上手くいく」
「はい!」
魔法の練習をしています。アリアスの事は気がかりだったけど、今は自分の魔法に専念しなきゃ!いつか訪れる絶望に打ち勝つ為にもね。まぁ、そんなのは建前。魔法がないと不安でしかなかった。アリアスが何もかも飲み込んでいくのではないのかと思ってしまうほどに今のアリアスは恐怖の対象だった。
「ラティスは風の魔法だから風の流れを知ると良いよ」
「風の流れ?」
「ああ。今度、空を飛ぶ時に感じてみると良いよ」
「お父様がそう言うならそうしてみる」
「そうすると良いさ」
アリアスには負けたくない。負ければ今度こそ何も残らない。そう思ってしまった。
「神に愛された子を殺すなんて、馬鹿がする子だ!」
ノワールはそう言った。その言葉を聞いて、余計にニーアスを殺したくなった。この手で殺せるのなら良かったが、皇帝陛下殺人未遂の濡れ衣を着せられた彼女はそこで死んでしまう。
「ニーアスが死んだ?これで......お父様の愛は私だけの物!うふふ。いひひ!」
しかし、半月も経たないうちにニーアスが、ラティスとして生まれ変わった事をアリアスは知る事になる。
「ニーアスが生まれ変わった?ふざけないでよ。私はあんたが大っ嫌いよ!」
ニーアスが消えてもラティスが居ることで、アリアスは神に嫌われ者としての扱いになる。
「私は全部持ってるんだから。ニーアスには何もない。私の物なんだから」
ニーアスと再会した時、アリアスは気付いてしまった。いくら奪ってもニーアスはめげない。それどころか、純粋過ぎるニーアスはいつか、陛下の愛さえ奪って行くのだと、この時初めてそう思った。
「お父様は渡さない」
しかし実際は、ニーアスはもう陛下に興味の微塵のカケラも残っていない。あるのは恐怖だけ。自分を死に追いやった人をいつまでも思っていては前に進めない。そんな、ニーアスの考えにアリアスは気付かぬまま、更なる嫉妬と妬ましさ、恨み、憎しさなどを抱え込んでいた。
「私はニーアスが嫌い。私はニーアスが嫌い。私はニーアスが......嫌い......だ」
そう思わずには居られないほどに今のニーアスはとても綺麗で、愛らしい。
「......認めないんだから。私のやって来たことは正しいから」
そう言い聞かせて、ニーアスへと勝手な復讐心に燃えるアリアスだった。
一方変わって現在。
「ラティス。魔法は魔力、体力、精神を安定させれば上手くいく」
「はい!」
魔法の練習をしています。アリアスの事は気がかりだったけど、今は自分の魔法に専念しなきゃ!いつか訪れる絶望に打ち勝つ為にもね。まぁ、そんなのは建前。魔法がないと不安でしかなかった。アリアスが何もかも飲み込んでいくのではないのかと思ってしまうほどに今のアリアスは恐怖の対象だった。
「ラティスは風の魔法だから風の流れを知ると良いよ」
「風の流れ?」
「ああ。今度、空を飛ぶ時に感じてみると良いよ」
「お父様がそう言うならそうしてみる」
「そうすると良いさ」
アリアスには負けたくない。負ければ今度こそ何も残らない。そう思ってしまった。
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