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二人の過去その1

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 少しだけ昔話をしよう。そう私の過去のお話だ。私は小さい時から、アリアスが大っ嫌いだった。何も知らない無垢な子供に見えたけど、何処かで人を見下すその態度が嫌いだった。だから余計に陛下に愛してもらおうと躍起になっていた。彼女の瞳からはいつも憎しみだけが残されていたと思う。
 「ニーアス。其方に妹が出来たぞ。血は繋がっていなくても仲良くするんだぞ」
 「こ、こんにちは。アリアスです」
 初めて見た彼女は天使のように可愛かった。私には兄弟も姉妹も居なかった。だから最初の頃はとても嬉しかった。前に陛下に妹か弟が欲しいとおねだりをした事がある。もちろん陛下はそんな私を鼻で笑ったけどね。今でも思い出すだけでムカつく。
 「私、ニーアス!」
 二年ほどは一緒に遊ぶくらい仲が良かった。でもある日を境に陛下もアリアスも変わってしまった。二人で楽しそうに話す姿は羨ましくて、その輪に入ろうと必死だった。
 「お父様!アリアス!なんの話をしているんですか?」
 「其方にに関係ないことだ」
 「ニーアスお姉様は話には入れないよ」
 その時の顔を私は一生忘れない。嘲笑い、勝ち誇った顔で私を見るアリアスは天使から悪魔へと変わった気がする。
 「......っ!?」
 劣等感も凄かった。陛下は彼女為ならなんでもする。私を見てくれない。
 「なんであの子ばかり可愛がるの?私だって、お父様の娘なのに......」
 陛下に振り向いて欲しくて、哲学や魔法、ダンス、作法、他にも出来る事はたくさんした。でも何も見てくれない。振り向いてもくれない。陛下は私が嫌いだと言った。
 「其方の顔を見るだけで虫酸が走る!ニーアスよ。余は其方が嫌いだ!」
 「......」
 何もしてないのに......お父様の娘として、誇れるように頑張ったのに......振り向くどころか、私の影すら見てくれない。私、そんなにも駄目な子なの?そんなにも私が嫌いなの?
 「皇帝陛下に煌めく星々の祈りを捧げます」
 「もうよい。下がれ」
 さっき来たばかりなのに......。
 「......わかりました」
 「ニーアスお姉様は愛してもらえずにお可哀想。いひひ!」
 その言葉はまるで、何もかも自分の物になったと言っているようだった。
 「お父様に認めてもらわなきゃ!」
 心を無にすればいいの?明るく優しい子になれば振り向いてくれる?社交界デビューでは、陛下はエスコートどころか一緒に入ってもくれなかった。
 「あれ見てよ」
 「本物の皇女様なの?」
 「しっ!聞こえるわよ」
 「でもね、陛下に見捨てられたのと同じよね?」
 「知ってる?実の娘ではない、アリアス様にご執心なんだって!」
 「嘘!」
 「ニーアス皇女様もお可哀想」
 「......」
 黙って居れば何も起こらない。誰も私の中身を見てはくれない。
 「陛下に似てないわね?」
 「あの深紅色は珍しいけど、目がね」
 「そうよね?目が濁った沼の色ですもの!」
 「あははは!言えてる!」
 「あんなのが皇女様って嫌すぎるわ!」    
 「えぇ。私もよ!」
 皆んなが私の陰口を言う。なのに......陛下はそれを無視をする。普通は皇女を侮辱されたら怒るものなのに怒ってもくれない。こっちをチラッとでもいいから見て欲しかった。陛下はそんなにも嫌なの?私が娘であることがそんなにも嫌なの?そんな気持ちが私の心を蝕む。
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