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第三章

異空間

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 こんにちは。アリスハート.レイトンです。私たちはケルベロスの決戦の日までに強くなるべく、とある火山に来てます。

 「だ、団長!なぜ火山なんですか⁉︎」

 「熱さにはなれんとな」

 「嫌だ!」

 「帰りたい!」

 「助けて!」

 「団長!どうか、ご慈悲を!ご慈悲を!」

 「どうやら貴様は火山に投げ込まれたいみたいだな?」

 「えっ......」

 「死にたいやつから前に出ろ。私が相手になってやる。そして火山の中に放り込んでやるからな」
  
 「すみませんでした‼︎」

 「アリスも容赦無くなってきたな?」

 「まぁ、ケルベロスの決戦が近づいているからな」

 「だいたい貴様らは騎士として自覚が足りてない。だからこうやって死の淵に立たされるんだ」

 「でも俺らは団長みたいに強くない」

 「強くなりたいのなら鍛錬しろ。私も最初は弱かったが、モンゴル団長とエリア元団長に地獄の特訓をしたんだ」

 ここにいる騎士たちは思った。自分たちは恵まれているのだと、なぜならアリスの目はすごく遠い目をし、目が死んでいたからだ。

 「ケルベロスに殺されたくないのなら頑張れ」

 「いやいやいや⁉︎団長じゃないんだから頑張って死なないようするって化け物じゃなければ無理だよ」

 「お前たち、私ら団長をなんだと思っているんだ?」

 「人外」

 「殺すぞ」

 「すみませんでした‼︎」

 「早く訓練に戻れ。泣き言は許さん。お前たちには生き残る術を叩き込む。だから死ぬ気でやれ」

 「り、了解‼︎」

 「へぇー、アリスってあんなことも言えちゃうんだ」

 「俺もびっくりだ。アリスは誰かのことを気を使いすぎて、あまり厳しくできな......」

 「ネスを殺しんだから殺されても文句言えないよね?」

 「貴様らしのごの言わずにさっさと歩け!」

 「貴様らの四肢が砕けるまでみっちり特訓してやる。覚悟しろよ」

 「......でもないな。俺が見た時にあんな怖いこと言ってたしな」

 全てはモンゴルのほんの少し偏見です。アリスはそこまで怖いことを言ってはいなかったはずです。

 その日の夜

 「火山って熱いよな⁇」

 「まじそれな!」

 「熱さも冷たさも耐性をつけろ。じゃないと、ケルベロスの厄災で死ぬぞ」

 「......」

 「団長はいつになったら笑うんですか?」

 「......わからない」

 「団長はあの時のことを後悔してますか?」

 「後悔してももう遅い。だから前に進み続ける。ネスや死んだみんなのためにもね」

 悲しそうに言う私にみんなはただ黙って見つめるだけ。

 「アリス。ちょっとこっちに来て」

 「団長‼︎後ろ!」

 「えっ⁇」

 「後ろに黒い影⁉︎」

 「魔物か‼︎」

 ガシッ

 「......」

 「団長⁉︎」

 ドサッ

 「痛っ!」

 どこかの部屋?

 「あれ?ここって私の部屋だよね?しかも前世の部屋」

 なぜ私はここにいる?私は死んだよね?死んだんだよね?転生している時点で亡くなったんだよね?誰かこの状況を説明してよ。

 ガチャ

 「あなた誰なの⁉︎」

 「......っ!」

 お母さんだ。抱きしめたい。会いたかったって言いたい。でも今の私は赤の他人。

 「今すぐに出て行かないと警察を呼ぶわよ!」

 「......すみません。私もここには来るつもりはなかったんです」

 「は、はあ?」

 「高木悠美を生んでくれてありがとうございます」

 そう言い、私の部屋を後にした。

 「......」

 不思議な気持ちだ。私の住んでいた街もだいぶ変わった。知っているお店は何軒か潰れ、公園やビルが沢山ある。

 「ビルならわかるけど、こんなに沢山の公園いるの?」
  
 まぁ、いい。私にはもう関係のないことなのだから。
 
 「あれから随分と時間が経っているものね」

 「お願い。この漫画はあなたの物なの。だからこれを回収して早くこの異空間から出て」

 「......高木悠美」

 「そうだよ。今は姿が見えなくなっているけど、私だよ」

 「なんのつもり⁇」

 「この赤き騎士の物語はあなたの手にあるべき物なの。だから返すだけ」

 「どうやって、禁断の魔術を知ったの?そもそも知ったところで扱えるわけがない」

 「......今はまだ言えない。禁断の魔術をアリスも使って、アリスの家族であるあの人みたいになったら私は耐えられない」

 「私の家族?誰のことを言っているの?」

 「そうか。まだ知らないんだね?でも知っているはずだよ。この漫画に描いてある。早く、十二巻を持ってこの異空間から脱出して。じゃないと出られなくなる」

 そう冷たく言い放つ私を私はただ見つめるだけ。
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