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第11話 聖錬高校に隠されたシステム②
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「鳴海、先生……?」
「あっ、あー……きみっ、うちのクラスの子だよね! 茜お姉さんだよっ」
キュピーンっ☆ て感じで目元にピースを当てるけど、隠せてない隠せてない……! てかなにこの状況、あせあせ。
と、そこに背後から1人の女性が近づいて来る。
ボーイッシュな装いをした黒髪短髪の美人。1年生の担任を務める教師を全員記憶した俺は、彼女が1年3組担任の榎本 冴姫先生だと気が付く。
「茜! またかよ……ったく。生徒の前でそれは辞めろ――って……五十嵐 純二」
榎本先生は変貌した俺の担任教師である鳴海 茜先生の背中をポンポンと叩いてなだめながら……なぜか俺を見て意味ありげな表情を浮かべた。
「えっと……俺のことをご存じなのですか?」
少なくとも俺は榎本先生とは初対面のはずだ。
「……いや、悪い。茜がタイプなイケメンの生徒みたいだからな。名前を知ってだけだ」
「えっ、ちょっ……冴姫ちゃん! それはないよぉ……」
と、いつもの明るいお姉さんモードに戻った鳴海先生を置いて、榎本先生はどこかへ行ってしまう。
一体なんなのか……唖然としている俺に鳴海先生はふっと不敵な笑みを浮かべる。
「ははっ、でも……。きみが……冴姫ちゃんがずっと最強だって評価してた生徒……
五十嵐 純二くんか」
そして意味不明なことを呟く。俺が最強? ……それも3組の榎本先生が評価してる!? なにそれ、意味わかんない。
「見つけちゃった♡ まさか新入生の最終兵器がうちのクラスにひそんでたなんてね……」
「えっ? いや……意味わかんないんですけど」
それから俺はキャラの崩壊した鳴海先生から、この学校のシステムについての説明を聞いた。
そして、俺に1年1組を勝利に導くために協力してくれとお願いされた。
……まぁ、平穏な高校生活を送りたい俺は丁重にお断りしたんだけど。そもそも何で俺が最強とかいうことになっているのか。
俺、高校の入学試験は合格ギリギリの最低ラインで調整したはずなんですけどね――
◇
まぁ、そんなことがあって、俺は鳴海先生の本性を知ってしまい、さらには教師同士の争いにも巻き込まれそうになり、帰り際には連絡先の交換までさせられることになったのだ。
この連絡先は今後も使うつもりはなかったから記憶から抹消する予定だったんだけど……状況が変わった。
今回の学級委員長決め、担任である鳴海先生の力も借りないと勝利には導けない。
「で、どう動くつもり?」
鳴海先生は出会って5秒でバレる本性を丸出しにした。
タバコを吸い始め、教室では恥ずかしげに隠す仕草をしていたショーパンから伸びる生脚を惜しげもなく組んで石段に腰掛ける。
「まぁ、大前提として今クラスを牛耳《ぎゅうじ》っている賀藤が委員長になることは阻止します。もちろん、彼の取り巻きも」
「だよね~! あいつらがクラスのリーダーとかありえねぇわ」
鳴海先生はタバコの煙をゆっくりと空気に浮かしながら悪態をつく。先生の本性がこれとか、クラスの誰も思ってないんだろうな……。
「んじゃ、五十嵐くんは誰がクラスの委員長にふさわしいと思ってるわけ?」
「そうですね……俺が今考えている最高の布陣は、男子の委員長が八神 誠。そして女子の委員長が海原 心春です」
俺は包み隠さず今考えているありのままを伝える。鳴海先生は加えていたタバコの火を消して放り投げると、満足したように笑みを浮かべた。
「きみがそう思うならそれが最適解なんだろうね。じゃ、それで頼むよ」
なんで俺がそんなに信頼されているのかはわからないけど、なんか納得してくれたようなのでその作戦で行かせてもらう。だが……。
「じゃっ、わたしは職員室に『待ってください』」
と、俺は職員室に帰ろうとする鳴海先生を引き留める。そのために彼女をここに呼んだのだから。
「この作戦は、先生にも協力してもらわないと成立しません。まずは、学級委員長決めのシステムは、匿名の投票制にしてください」
1組が敗北する未来はくつがえされる。
少なくともこの戦いで、鳴海先生がハゲの蛇渕 久蔵に負ける未来は消えるだろう。
この学級委員長決めが、この1年1組が誰も予想していない最強のクラスへと変貌する布石になるのだから。
利用させてもらう分、俺も最低限の義理は返す。1組の勝利という形で。
「ふっ」
と、そのとき俺はなぜかこのクラスを勝利に導くことに愉悦を感じ、一瞬だけ笑ってしまった。
それに気が付いたのか気が付いていないのか……気が付いていたとしても何を思ったのかわからない表情を浮かべ、鳴海先生は微笑んだ。
「ほんと面白いよ、純二くんは」
◇
鳴海先生との作戦会議を終えて教室に戻ると……。
「っざけんなクソ陰キャがぁ!」
「いひっ、いひひひっ」
不良の陣野 豪大が、問題児陰キャの鎌切 京太と揉めていた。
「あっ、あー……きみっ、うちのクラスの子だよね! 茜お姉さんだよっ」
キュピーンっ☆ て感じで目元にピースを当てるけど、隠せてない隠せてない……! てかなにこの状況、あせあせ。
と、そこに背後から1人の女性が近づいて来る。
ボーイッシュな装いをした黒髪短髪の美人。1年生の担任を務める教師を全員記憶した俺は、彼女が1年3組担任の榎本 冴姫先生だと気が付く。
「茜! またかよ……ったく。生徒の前でそれは辞めろ――って……五十嵐 純二」
榎本先生は変貌した俺の担任教師である鳴海 茜先生の背中をポンポンと叩いてなだめながら……なぜか俺を見て意味ありげな表情を浮かべた。
「えっと……俺のことをご存じなのですか?」
少なくとも俺は榎本先生とは初対面のはずだ。
「……いや、悪い。茜がタイプなイケメンの生徒みたいだからな。名前を知ってだけだ」
「えっ、ちょっ……冴姫ちゃん! それはないよぉ……」
と、いつもの明るいお姉さんモードに戻った鳴海先生を置いて、榎本先生はどこかへ行ってしまう。
一体なんなのか……唖然としている俺に鳴海先生はふっと不敵な笑みを浮かべる。
「ははっ、でも……。きみが……冴姫ちゃんがずっと最強だって評価してた生徒……
五十嵐 純二くんか」
そして意味不明なことを呟く。俺が最強? ……それも3組の榎本先生が評価してる!? なにそれ、意味わかんない。
「見つけちゃった♡ まさか新入生の最終兵器がうちのクラスにひそんでたなんてね……」
「えっ? いや……意味わかんないんですけど」
それから俺はキャラの崩壊した鳴海先生から、この学校のシステムについての説明を聞いた。
そして、俺に1年1組を勝利に導くために協力してくれとお願いされた。
……まぁ、平穏な高校生活を送りたい俺は丁重にお断りしたんだけど。そもそも何で俺が最強とかいうことになっているのか。
俺、高校の入学試験は合格ギリギリの最低ラインで調整したはずなんですけどね――
◇
まぁ、そんなことがあって、俺は鳴海先生の本性を知ってしまい、さらには教師同士の争いにも巻き込まれそうになり、帰り際には連絡先の交換までさせられることになったのだ。
この連絡先は今後も使うつもりはなかったから記憶から抹消する予定だったんだけど……状況が変わった。
今回の学級委員長決め、担任である鳴海先生の力も借りないと勝利には導けない。
「で、どう動くつもり?」
鳴海先生は出会って5秒でバレる本性を丸出しにした。
タバコを吸い始め、教室では恥ずかしげに隠す仕草をしていたショーパンから伸びる生脚を惜しげもなく組んで石段に腰掛ける。
「まぁ、大前提として今クラスを牛耳《ぎゅうじ》っている賀藤が委員長になることは阻止します。もちろん、彼の取り巻きも」
「だよね~! あいつらがクラスのリーダーとかありえねぇわ」
鳴海先生はタバコの煙をゆっくりと空気に浮かしながら悪態をつく。先生の本性がこれとか、クラスの誰も思ってないんだろうな……。
「んじゃ、五十嵐くんは誰がクラスの委員長にふさわしいと思ってるわけ?」
「そうですね……俺が今考えている最高の布陣は、男子の委員長が八神 誠。そして女子の委員長が海原 心春です」
俺は包み隠さず今考えているありのままを伝える。鳴海先生は加えていたタバコの火を消して放り投げると、満足したように笑みを浮かべた。
「きみがそう思うならそれが最適解なんだろうね。じゃ、それで頼むよ」
なんで俺がそんなに信頼されているのかはわからないけど、なんか納得してくれたようなのでその作戦で行かせてもらう。だが……。
「じゃっ、わたしは職員室に『待ってください』」
と、俺は職員室に帰ろうとする鳴海先生を引き留める。そのために彼女をここに呼んだのだから。
「この作戦は、先生にも協力してもらわないと成立しません。まずは、学級委員長決めのシステムは、匿名の投票制にしてください」
1組が敗北する未来はくつがえされる。
少なくともこの戦いで、鳴海先生がハゲの蛇渕 久蔵に負ける未来は消えるだろう。
この学級委員長決めが、この1年1組が誰も予想していない最強のクラスへと変貌する布石になるのだから。
利用させてもらう分、俺も最低限の義理は返す。1組の勝利という形で。
「ふっ」
と、そのとき俺はなぜかこのクラスを勝利に導くことに愉悦を感じ、一瞬だけ笑ってしまった。
それに気が付いたのか気が付いていないのか……気が付いていたとしても何を思ったのかわからない表情を浮かべ、鳴海先生は微笑んだ。
「ほんと面白いよ、純二くんは」
◇
鳴海先生との作戦会議を終えて教室に戻ると……。
「っざけんなクソ陰キャがぁ!」
「いひっ、いひひひっ」
不良の陣野 豪大が、問題児陰キャの鎌切 京太と揉めていた。
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