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第25話 やっぱりぐたーっとしてるあの女子生徒

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 ――始業式から数日が経過した日の朝。

「うーん、なんか最近おかしいんだよね」

 誰に言うとでもなく、左隣の万莉亜がつぶやいた。

 とはいえ、万莉亜の周りには特に彼女の言葉を拾おうとするものはいないし、これはやはり俺に話しかけているのだろう。

「なにがおかしいんだ? まさか、世界線が変動してるとでもいうんじゃないだろうな」

 万莉亜はときどき俺の思考を読んでくるテレパス持ちの異能者だ。パラレルワールドを行き来できる能力なんかも持っているかもしれないと思い問いかけた。

「うーん、それもそうなんだけど。なんか最近つけられてる気がするっていうか」

 それもそうだと!? こいつ、世界線の変動を感知できることをそんなあっさりと……。なんかよくわかんない組織に狙われても知らんぞ!

 ……と、冗談はさておき、なんだか物騒な言葉が。

「つけられてるって、ストーカーってことか?」

「うーん、そこまで確信があるわけじゃないんだけど、なんかときどき気配を感じたり、見られてる感じがしたりするっていうか」

 万莉亜は普通にかなりの美人だしな。スカートもめちゃくちゃ短いし……。

 ストーカーみたいなやつが出てこないとも限らない。

「まっ、多分気のせいだと思うから大丈夫。ごめんね、変なこと言って」

 万莉亜はそう言うが、俺はどうも釈然としない思いだった。

 とはいえ、彼女が大丈夫だと言っている以上、これ以上話を深堀りするのもな……。

 そう思い、俺はとある提案をすることにした。

「そうか? 偽の恋人くらいだったら演じられるぞ」

「あ、それなら水篠くんみたいな人にお願いしたいかも」

Noノウ!」

 ラノベ好きにしか通用しなそうなネタでジャブを仕掛けたらカウンターを食らった。

 やっぱりイケメンには敵わないのだと知った。

 ◇

「あー、くそっ」

 昼休み。今日も俺たちは校舎裏にて3人で昼食を取っていたのだが、どうにも真也の様子がおかしい。

 さっきから、スマホを見ながら頭を抱えている。

「どうしたの? また朱音ちゃんに振られちゃった?」

「いやまたも何もまだ告白もしてねぇから! そうじゃなくてクラスのことだ。俺はどうにも花京院とはそりが合わないんだよな」

 委員長になった真也は、開始早々崩壊し始めているクラスのために奮闘している。

 だが、もう1人の委員長である花京院さんとうまくいっていないようだ。

 確かに花京院さんってちょっと神経質っぽいし、感情の起伏が激しい真也とは相性が悪いのかもしれない。

「頼むっ、花京院と上手くやっていく方法を一緒に考えてくれねぇか。俺はもうあいつから既読無視されてて詰んでる!」

 どうやらかなり状況は絶望的な状況のようである。

 正直かなりの難題だが、頭を下げてくる真也の思いを無下にするのも申し訳ないな。

 万莉亜も同意見だったらしく、視線を向けると頷いた。

「とは言っても、どうやったら仲良くなれるんだ? 俺たちは花京院さんのことを知らなすぎる」

「うーん、花京院さんって確かテニス部に入ってたよね。今なら部活動見学もやってるし、試しに行ってみる?」

 部活か……。

 真也は花京院さんとコミュニケーションをとることに苦戦している。

 なにかきっかけとなる話題を見つけると言う意味では部活はいい方法かもしれない。

 俺たちは放課後、テニス部の見学に行ってみることにした。

 ◇

 放課後、俺は万莉亜と2人でテニス部の活動場所に来ていた。

 真也も一緒に行くと言ったのだが、花京院さんから拒絶されている以上、下手に接触すると探りを入れていると疑われる恐れがあると思ったのだ。

 それに、万莉亜と一緒に行動するのには今朝聞いたストーカー(仮)の件を探る意味もある。

 現在、俺はサブクエストを同時に2つ進行中というわけだ。

 ん? メインクエストは何かって? 忘れちゃあいけない、万莉亜と契約した実力テストで全科目満点をとるあの件を何とかしなければ!

 だが、実のところあれに関して俺はすでに考えがある。計画通りに進めばなんとかなるはずだ。

 ……と、俺たちがテニス部のコートの外側にたどり着いた頃。外のベンチで見覚えのある女子生徒を見つけた。

「うあー、暑いー、溶けるー」

 その女子生徒は、ベンチの上でまるで溶けたアイスのようにべしゃーっとしていた。

「あれ、あの子……」

 万莉亜も気が付いたようである。

 まぁ、あそこまでなんてそうそういないからな。
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