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第23話 性格最悪なパワハラ教師がざまぁされる

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 校舎裏で見たのは、非常に胸糞の悪い光景だった。

 舘磯が、新任教師の新島先生を一方的に怒鳴りつけている。

「ホームルームが始まってすぐ、鬼ヶ崎が私のクラスに乱入してきたぞ。かと思えば手当たり次第に女子生徒を口説いて行きやがった! 自分のクラスの生徒くらいちゃんと教育しろ!」

 新島先生は、ひたすら頭を下げて「すみません、すみません!」と謝っている。

「は? 鬼ヶ崎って去年舘磯のクラスだったじゃん。あいつなに自分の責任を新島先生に押し付けてんの?」

 万莉亜の言うとおりである。

 鬼ヶ崎自身がホームルーム中に言っていた通り、彼は去年舘磯のクラスだった。

 そもそも鬼ヶ崎は始業式を欠席していたので、新島先生は今日鬼ヶ崎に初めて会ったばかりである。

 確かに鬼ヶ崎が授業中に他クラスに乱入したのは問題だが、自分のことを棚に上げて、ちゃんと教育しろなどというのは明らかに見当違いである。

「新任教師が言い返せないのをいいことに偉そうにしやがって。あいつ、本当にクズだな」

 真也は今にも舘磯に殴りかかりそうな勢いだった。

 だが、真也が彼に詰め寄るよりも早く、

 万莉亜と真也が意外そうな目で俺を見ている。

「おまえはすみませんしか言えないのか? 謝ればなんでも許されるとでも思ってるんじゃないだろうなぁ」

「ちっ、違います……っ。そんな、つもりじゃ……」

 新島先生は泣いてしまっていた。嗚咽が漏れ、うまく声を出せなくなっている。

「これだからゆとり世代はダメなんだ。どうせ遊び気分で教師にでもなったんだろ?」

 舘磯はそんな新島先生をみてニチャァっと気味の悪い笑みを浮かべた。権力で人を言いくるめて気持ちよくなるクズ特有の笑みだ。

「違います、わたしは……」

 新島先生が悔しそうに唇を噛み締める。

 舘磯が「私が教育をしてやろう」とか言って手を振り上げた。

 彼の手が新島先生の頬を張るよりも早く、俺は新島先生の前に立ちふさがった。

「おい、なんだおまえ……って、おまえ、最底辺の落ちこぼれじゃないか。はははっ! クズがこんなところで何をしている。女の窮地を救うヒーローにでもなったつもりかよおい!」

 舘磯が俺の制服を掴んでくる。それを見た真也と万莉亜も駆け寄ってきた。

「クズはてめぇだろ。玲二から手を離せよ」

「ちゃんと教育しろとか言ってますけど、鬼ヶ崎をちゃんと教育出来なかったのはあんたでしょ。なに着任して間もない新島先生のせいにしてるんですか?」

「……ッ!」

 万莉亜に正論を突き付けられた舘磯は、顔を真っ赤にして逆切れし始めた。

「うるさい! 俺は過去に売春していた女子生徒を更生させたことがあるんだぞ! おまえらクズとは違うんだ!」

 またか……と俺はうんざりした。真也と万莉亜もうんざりした顔をしている。

 ことあるごとに舘磯は『売春をしていた女子生徒を更生させた』という武勇伝を語る。そんな女子生徒が本当にいたのかどうかもわからない。

 多分、そんなもの存在しないのだろう。

 口から出まかせというヤツだ。1度口に出してしまった以上、引っ込みがつかなくなってしまったのかもしれない。

 豹変してまくし立てる舘磯に俺たちが冷めた気分になっていたとき……。

「舘磯先生、何をしてるんですか?」

 爽やかな青年の声がした。

 そちらに視線を向けると、見覚えのある男子生徒が立っていた。

 水篠みずしの 翔来しょうらいは去年俺たちと同じクラスだった男子生徒だ。

 成績は常に学年トップ。サッカー部のエースでありながら生徒会にも所属しており、時期生徒会長候補とまで言われている男だ。しかもイケメン。

 彼はまさに絵に描いたような好青年だ。

「水篠、なぜこんなところに……?」

「ホームルームで決めた委員会の割り振り、まとめ終わったので届けに来たんですよ」

「そ、そうか。別に放課後でもよかったんだがな……」

 どうやら水篠は今年、舘磯のクラスになったらしい。

 舘磯は急にしおらしくなった。俺たちのような浮いている存在ならまだしも、生徒会に所属していて発言力のある優等生に新任教師をいじめているところを見られたらまずいとでも思ったのだろう。

「ところで舘磯先生、お取込み中だったようなので話しかけなかったのですが。僕は先ほどの一部始終を見ていました」

「なっ……!」

 舘磯の表情が一瞬にして青ざめる。

「なんなら証拠の映像も録画しています。まずは学年主任に報告させていただきます」

「まっ、待ってくれ……」

 舘磯は命乞いをするが、水篠は無視して淡々と続ける。

「もし今後同じようなことをしていることが発覚した場合、教育委員会にも話を持ち掛けます。その場合、先生の立場がどうなるかは言うまでもありませんよね」

「そんな……」

 自分の未来が絶望的であることを理解したのだろう、舘磯はがっくりとうなだれた。
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