上 下
3 / 4

第3話 推しVTuberの転校生は陽キャ男子ではなく陰キャぼっちの俺に学校案内してほしいらしい

しおりを挟む
 放課後、南條さんが伊藤を始めとした陽キャたちと話している状況にモヤモヤしながら教室を出た俺。

 しかし、なぜか下駄箱で靴をはき替えていると南條さんが話しかけてきた。どうして……。

「南條さん、クラスメイトと話してたんじゃ……来ちゃっていいの?」

「岬先生、わからないことあったら乃木川くんに聞いてほしいって言ってたし……それに、席近いのにまだ全然話せてなかったから」

 ぐはっ!

 推しからそんなことを言われて喜ばないオタクなどいるだろうか。しかし、ここで発狂してしまったら変に思われてしまうので俺はぐっと感動を心の中だけに留めた。

 まぁ、岬先生が俺に聞いてほしいって言ったのは、なんかめっちゃ適当っぽかったけど。ただ単に後ろのだからってだけで、俺である必然性まったく感じてなかったけどね!

 いずれにせよ岬先生グッジョブ! ありがとうございます!

「おい、美玲奈ちゃん待ってくれよ」

 話していると、廊下側から伊藤の声がしてくる。最悪だ、せっかく南條さんと話す時間ができたのに、またあいつに邪魔される。

 しかし、あいつが近づいてくるよりも早く南條さんは靴をはき替えると、俺の腕を掴んだ。

 やっ、柔らかい……。

「乃木川くん、こっち」

「えっ、ちょ……」

 南條さんは腕を掴んだまま、伊藤から逃れるかのように俺を外に引っ張って行く。

 俺はドキドキしながら、彼女に連れられるまま校舎を出た。

 ◇

 それからは南條さんが知っておきたいという教室や施設を一通り見て回り、最後に職員室に行くことになった。

 俺が北条レイナのリスナーだということは、何度も喉まで出かかったが言わなかった。

 もしかしたら本人はVTuberとしての活動と学校生活を切り分けて考えているかもしれないし、困らせてしまってもいけないと思ったからだ。

「失礼しまーす」

 職員室に来たのは、南條さんが転校してきたばかりで色々と提出するものもあったりするということだったからだ。

 岬先生の席に行くと、案の定彼女はデスクの上でべしゃーっとなって寝ていた。案の定と言ったのは、俺が今まで職員室に来た限り毎回こうだからだ。

「岬先生~、起きてくださーい」

 南條さんが岬先生をゆさゆさして起こそうとする。

「うーんー。南條と乃木川かー。どうしたー?」

 岬 美湖という教師は、一言でいえば残念美人である。

 サイドテールにしている濃い茶髪。タレ目の美人で、こんなにいつも寝てるのに目のしたにクマがある。

 せっかく綺麗なのに、残念感が出てしまうのはこのクマと気だるそうな口調、そしていつも上下ダルダルのジョージを着ているせいだろう。

 色白な肌も、もはや不健康そうに見えてしまう。野菜ジュースとかあげたい。

「今、学校の案内してもらってました! 先生が紹介してくれた通り、乃木川くんに任せて正解でした!」

「紹介……? まあいいかー。乃木川はいいやつだろー?」

 いや、先生紹介とかじゃなくてたまたま後ろにいた俺を適当に名前出しただけだから!

 まぁ、でもそんなふうに褒めてもらえるのはめちゃくちゃ嬉しい。

「それで、まだ提出してない書類があって持ってきたんですけど」

「あー、忘れてたー」

 そんなゆるーい時間を職員室で過ごした夜。

 レイナさんの配信でまさかあんなことになるとは思いもしなかった――
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

貴重な男の中で一番優しいのは俺らしい

クローバー
恋愛
男女比率の違っているお話。 だが、その要素は多すぎず、普通の恋愛話が多目である。 主人公、心優しい25歳、松本修史は訳あって流れ星にお願い事をする。 願いは叶ったが、自分の想像とは斜め上を行った願いの叶い方だった。 かっこよくなって高校生に戻ったかと思いきや、妹がいたり世界の男女比がおかしくなっていた。 修史は時にあざとく、時に鈍感に楽しく学園生活を生きる。 時々下ネタぶっこみますが、許してください。 性的描写がいつしか出てきたとしても許してください。 少しシリアスからのハッピーエンドがあります。 一夫多妻の世界なので、恋人は7人ほど出来る予定です。 もしかしたら14人になるかもしれません。 作者の我慢の限界が来たら…R18的な行為もしてしまうかもしれません。←冗談です。 作者の休日は月曜日なので、月曜日更新が多くなります。 作者は貧乳とロリが好物なため、多少キャラに偏りがありますがご了承ください。 ひんぬー教、万歳! Twitterで更新するとき言うので、フォローお願いいたします。 @clober0412 クローバー うたっこ 恋する乙女と守護の楯という神ゲーの穂村有里がトプ画です。

大好きな彼女を学校一のイケメンに寝取られた。そしたら陰キャの僕が突然モテ始めた件について

ねんごろ
恋愛
僕の大好きな彼女が寝取られた。学校一のイケメンに…… しかし、それはまだ始まりに過ぎなかったのだ。 NTRは始まりでしか、なかったのだ……

男女比1:10000の貞操逆転世界に転生したんだが、俺だけ前の世界のインターネットにアクセスできるようなので美少女配信者グループを作る

電脳ピエロ
恋愛
男女比1:10000の世界で生きる主人公、新田 純。 女性に襲われる恐怖から引きこもっていた彼はあるとき思い出す。自分が転生者であり、ここが貞操の逆転した世界だということを。 「そうだ……俺は女神様からもらったチートで前にいた世界のネットにアクセスできるはず」 純は彼が元いた世界のインターネットにアクセスできる能力を授かったことを思い出す。そのとき純はあることを閃いた。 「もしも、この世界の美少女たちで配信者グループを作って、俺が元いた世界のネットで配信をしたら……」

男がほとんどいない世界に転生したんですけど…………どうすればいいですか?

かえるの歌🐸
恋愛
部活帰りに事故で死んでしまった主人公。 主人公は神様に転生させてもらうことになった。そして転生してみたらなんとそこは男が1度は想像したことがあるだろう圧倒的ハーレムな世界だった。 ここでの男女比は狂っている。 そんなおかしな世界で主人公は部活のやりすぎでしていなかった青春をこの世界でしていこうと決意する。次々に現れるヒロイン達や怪しい人、頭のおかしい人など色んな人達に主人公は振り回させながらも純粋に恋を楽しんだり、学校生活を楽しんでいく。 この話はその転生した世界で主人公がどう生きていくかのお話です。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ この作品はカクヨムや小説家になろうで連載している物の改訂版です。 投稿は書き終わったらすぐに投稿するので不定期です。 必ず1週間に1回は投稿したいとは思ってはいます。 1話約3000文字以上くらいで書いています。 誤字脱字や表現が子供っぽいことが多々あると思います。それでも良ければ読んでくださるとありがたいです。

男女比の狂った世界で愛を振りまく

キョウキョウ
恋愛
男女比が1:10という、男性の数が少ない世界に転生した主人公の七沢直人(ななさわなおと)。 その世界の男性は無気力な人が多くて、異性その恋愛にも消極的。逆に、女性たちは恋愛に飢え続けていた。どうにかして男性と仲良くなりたい。イチャイチャしたい。 直人は他の男性たちと違って、欲求を強く感じていた。女性とイチャイチャしたいし、楽しく過ごしたい。 生まれた瞬間から愛され続けてきた七沢直人は、その愛を周りの女性に返そうと思った。 デートしたり、手料理を振る舞ったり、一緒に趣味を楽しんだりする。その他にも、色々と。 本作品は、男女比の異なる世界の女性たちと積極的に触れ合っていく様子を描く物語です。 ※カクヨムにも掲載中の作品です。

[完結済み]男女比1対99の貞操観念が逆転した世界での日常が狂いまくっている件

森 拓也
キャラ文芸
俺、緒方 悟(おがた さとる)は意識を取り戻したら男女比1対99の貞操観念が逆転した世界にいた。そこでは男が稀少であり、何よりも尊重されていて、俺も例外ではなかった。 学校の中も、男子生徒が数人しかいないからまるで雰囲気が違う。廊下を歩いてても、女子たちの声だけが聞こえてくる。まるで別の世界みたいに。 そんな中でも俺の周りには優しいな女子たちがたくさんいる。特に、幼馴染の美羽はずっと俺のことを気にかけてくれているみたいで……

3年振りに帰ってきた地元で幼馴染が女の子とエッチしていた

ねんごろ
恋愛
3年ぶりに帰ってきた地元は、何かが違っていた。 俺が変わったのか…… 地元が変わったのか…… 主人公は倒錯した日常を過ごすことになる。 ※他Web小説サイトで連載していた作品です

処理中です...