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第4話 七瀬 瑠奈と2人で講義を受ける
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薫が陽キャグループから追い出され、快児や強太が瑠奈と美緒に縁を切られてから、実質グループは解散していた。
快児と強太は大学に来ていないようだった。
瑠奈と美緒、そして薫の3人は一緒に行動することこそ多いが、必ずしもそうというわけではなかった。
みなそれぞれ履修している講義の時間が違うので、大学に来る時間も帰る時間もバラバラだったりするのだ。
今まではグループで行動するというのが日常になっていたため講義がない時間も大学にいる時間が多かったが、現在はそれぞれの生活スタイルに合わせた過ごし方をしている。
今日、薫は講義が昼頃からだったため、朝はゆっくり寝ていた。そのため、今でも眠気が覚めない。
(眠くなってきた。講義が始まるまでに寝そう……)
講義が始まるまでの待ち時間、最後尾の席で薫が再び夢の世界に誘われそうになっていると……ふいに頬を冷たい感覚が伝う。
「ひっ……」
と、薫が思わず素っ頓狂な声をもらして顔を上げると、瑠奈がペットボトルのお茶を彼の頬に当てていたずらな笑みを浮かべていた。
「めっちゃ眠そうじゃん。これあげる」
「七瀬さん……ありがと」
薫はせっかくもらったのでペットボトルを開けて喉を潤す。冷たいお茶が体内をめぐり、さっきまでの眠気が不思議と覚めていくのを感じた。
「これ自販機で買ったやつ? いくらだった?」
薫がお茶代を払おうと財布を取り出すと、瑠奈はそれを手で制して来た。
「いーの、あげるって言ったじゃん」
「……それなら、ありがたくいただくね」
そして、瑠奈は薫のすぐ隣の席に座って来た。
(ちょっ、七瀬さん近い……)
この講義室は高校の教室くらいのサイズ感で、3人まで座れる長テーブルが3列配置される構成となっている。
3人まで座れると言っても、3つの席が敷き詰められていてかなり狭いので基本的に真ん中の席は荷物置き場というのが暗黙の了解となっている。
中には3人並んで座っている場合もあるが、それはよっぽど仲のいい同性同士の3人組であったり、講義室内が一杯で詰めて座らないといけない場合であったりする。
なのに、現在は薫が3人席の左端、瑠奈が真ん中の席という形になっている。いくら一番後ろの席とはいえ男女がこんな座り方をしているパターンは滅多にない。いや、カップルの場合を除けば話は別だが……。
「アタシ今日テキスト忘れちゃったからさ、薫の見せてよ」
「あぁ、もちろん」
講義が始まると、瑠奈は小声でそう言ってくる。そのためにこんな近くに座ったのか……と、薫は納得する。
そういえば、と薫はふと思う。
(七瀬さんと2人で講義受けるのって久々だな)
大学に入ってすぐの頃は、薫が瑠奈と2人きりで講義を受けることも多かった。しかし、グループが形成されてからはそれもなくなっていた。
この講義も最近までは快児がおり、瑠奈に好意を持っている快児が彼女の隣に座らせてほしいの頼み込んできたため、いつも薫はひとつ後ろの席に座って講義を受けていた。
薫の前に快児と瑠奈が座っていたという形だ。ただ、瑠奈が現在のように席をあけずに快児のすぐ隣に座ることはなかったが……。
(それにしても近すぎ……)
瑠奈はテキストを見るたびに顔を近づけてきて、その度に彼女のサラサラな茶髪のロングヘアが頬に触れてくる。シャンプーの甘く心地よい香りが漂ってくる。
薫がノートを取るために右手を動かすと、必然的に腕が瑠奈の左腕に触れてしまう。しかし、体が触れていることも別に気にせず平然と瑠奈は講義を受けている。
この時間、薫は瑠奈に気を取られてまったく講義の内容が頭に入ってこないのだった。
快児と強太は大学に来ていないようだった。
瑠奈と美緒、そして薫の3人は一緒に行動することこそ多いが、必ずしもそうというわけではなかった。
みなそれぞれ履修している講義の時間が違うので、大学に来る時間も帰る時間もバラバラだったりするのだ。
今まではグループで行動するというのが日常になっていたため講義がない時間も大学にいる時間が多かったが、現在はそれぞれの生活スタイルに合わせた過ごし方をしている。
今日、薫は講義が昼頃からだったため、朝はゆっくり寝ていた。そのため、今でも眠気が覚めない。
(眠くなってきた。講義が始まるまでに寝そう……)
講義が始まるまでの待ち時間、最後尾の席で薫が再び夢の世界に誘われそうになっていると……ふいに頬を冷たい感覚が伝う。
「ひっ……」
と、薫が思わず素っ頓狂な声をもらして顔を上げると、瑠奈がペットボトルのお茶を彼の頬に当てていたずらな笑みを浮かべていた。
「めっちゃ眠そうじゃん。これあげる」
「七瀬さん……ありがと」
薫はせっかくもらったのでペットボトルを開けて喉を潤す。冷たいお茶が体内をめぐり、さっきまでの眠気が不思議と覚めていくのを感じた。
「これ自販機で買ったやつ? いくらだった?」
薫がお茶代を払おうと財布を取り出すと、瑠奈はそれを手で制して来た。
「いーの、あげるって言ったじゃん」
「……それなら、ありがたくいただくね」
そして、瑠奈は薫のすぐ隣の席に座って来た。
(ちょっ、七瀬さん近い……)
この講義室は高校の教室くらいのサイズ感で、3人まで座れる長テーブルが3列配置される構成となっている。
3人まで座れると言っても、3つの席が敷き詰められていてかなり狭いので基本的に真ん中の席は荷物置き場というのが暗黙の了解となっている。
中には3人並んで座っている場合もあるが、それはよっぽど仲のいい同性同士の3人組であったり、講義室内が一杯で詰めて座らないといけない場合であったりする。
なのに、現在は薫が3人席の左端、瑠奈が真ん中の席という形になっている。いくら一番後ろの席とはいえ男女がこんな座り方をしているパターンは滅多にない。いや、カップルの場合を除けば話は別だが……。
「アタシ今日テキスト忘れちゃったからさ、薫の見せてよ」
「あぁ、もちろん」
講義が始まると、瑠奈は小声でそう言ってくる。そのためにこんな近くに座ったのか……と、薫は納得する。
そういえば、と薫はふと思う。
(七瀬さんと2人で講義受けるのって久々だな)
大学に入ってすぐの頃は、薫が瑠奈と2人きりで講義を受けることも多かった。しかし、グループが形成されてからはそれもなくなっていた。
この講義も最近までは快児がおり、瑠奈に好意を持っている快児が彼女の隣に座らせてほしいの頼み込んできたため、いつも薫はひとつ後ろの席に座って講義を受けていた。
薫の前に快児と瑠奈が座っていたという形だ。ただ、瑠奈が現在のように席をあけずに快児のすぐ隣に座ることはなかったが……。
(それにしても近すぎ……)
瑠奈はテキストを見るたびに顔を近づけてきて、その度に彼女のサラサラな茶髪のロングヘアが頬に触れてくる。シャンプーの甘く心地よい香りが漂ってくる。
薫がノートを取るために右手を動かすと、必然的に腕が瑠奈の左腕に触れてしまう。しかし、体が触れていることも別に気にせず平然と瑠奈は講義を受けている。
この時間、薫は瑠奈に気を取られてまったく講義の内容が頭に入ってこないのだった。
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