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第15章 四度目の夏、時は停まってくれない
第396話 帝都に出てきてみれば…
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このクソ暑い中、わざわざ帝都まで出てきたというのに儂を待たせるとはどういう了見だ。
金箔でゴテゴテと装飾のなされた悪趣味な部屋の中で、儂は独り言を呟いていた。
しかし、久し振りに帝都に来てみれば、心なしか空気がキレイになった気がする。
何と言っても息苦しさを感じなくなっているのだ、なにかあったのだろうか。
見た目ばかりで然して座り心地も良くないソファーに腰掛けながらそんなことを考えていると、お待ち兼ねの人物が顔を見せた。
「大変お待たせしまして申し訳ございません。何分このところ煩わしい事が多いもので。」
そう言って平身低頭して許しを請う大男、この国の皇帝である。
いささか、頭が弱いのが難点であるが、ここ数代の皇帝の中でも最も信仰心に厚いと言われ、盲目的にこちらに従ってくれるので重宝しているのだ。
「儂の方が突然訪ねたのだ、そこまで恐縮せずとも良いわ。
今日はハンデルスハーフェンでの出来事を確認しようと帝都まで出て来たのだが。
帝都にある本店を訪ねてみたら、閉鎖されており衛兵に厳重に取り締まられているではいないか。
一体どうなっているのだ。」
まあ、粗方の事については帝都の教団本部に寄り聞いてきたのだが、我々に盲目的に従っているこの男が教団の者を裁くのを許すとはとても思えなかったので事情を問い質すために来たのだ。
「それがこのところ宮廷内で話の通じない者が増えており、大変困っているのです。
『黒の使徒』の方が悪いなどと頭のおかしなことを言い出す輩が増えておりまして。
本店の閉鎖に関しては、隣国も絡んできたため、力で声を封じることが出来なかったのです。」
ふむ、皇帝の話では小麦の取引を巡って帝都でいざこざがあったらしい。
それにタイミングを合わせるように、王国から儂の商会を排除するように要求があったのか。
しかも、騒動を鎮めるのに偶々その場に居合わせた王国の外交官の手を借りてしまったと。
その王国の外交官が騒動の原因は儂の商会にあると非難したらしい、周囲もそれに同調するので抗し切れなかったようだ。
確かに、そのような状況になったのでは、頭の弱いこの男には対応が難しかったのであろう。
ちっ、また王国の連中か、ハンデルスハーフェンの時といい忌々しい……。
あいつら草食動物のように争いを好まないのに、なぜか我々だけにはぶつかってきよる。
しかも、王国が絡む事案はこちらの全敗である。
それはともかく、帝国内の貴族で我々に楯突く者が増えてきたのは困ったものだ。
これは、力で抑えつけるという、従来のやり方を見直さないといけないのかもしれない。
しかし、困ったことに『色の黒い』連中は頭の弱い者が多く、これが同じ人間かと疑問に思うほど短慮で乱暴なのだ。ただ、強い魔法が使えるという一点のみが取り得の生き物なのだ。
**********
先祖の残した手記によると初代皇帝はそうではなかったらしい。
初代皇帝は非常に聡明な男で、思慮深く、しかもあらゆる魔法を使いこなせたと言う。
研究肌の先祖の残した手記なので間違いないのだと思う。
先祖は初代皇帝の形質が受け継がれることを願い、各地から初代皇帝に近い形質の女を集めたと言う。
黒髪・黒い瞳・褐色の肌を持つ女達だ。残念ながら初代皇帝のような鉄色の肌を持つ者は居なかったそうだ。
そして、初代皇帝に娶らせたが、数多くの子供達の中に皇帝の形質を受け継いだものは一人もいなかったそうだ。
いや、強力な魔法が使えるという点は遺伝するのだ。
問題なのは知能、皇帝のような聡明な者は生まれてこず、決まって短慮で乱暴な者だったと言う。
それでも、先祖は諦めず、形質の近いものを集め、番にし、遺伝実験を続けたのだ。
それを円滑に行うために、『色の黒い』者を崇めたてるようにし、『色の黒い』者が徒党を組むような社会体制を築いてきたのだ。
いつかは初代皇帝のような人物が再来するだろうとの期待を込めてのことだった。
さて、先祖が初代皇帝を皇帝の座に就けたのは良かったのだ、聡明で力のある皇帝は民衆から厚い支持を受けたので。
問題は二代目以降、本来政というのは聡明な者でないと務まらないものなのだ、しかし生まれてくるのは頭の弱い子供ばかり。
そこで、先祖が考えたのは皇帝や『色の黒い』者を神格化し、盲目的に従うように民に洗脳を施すこと。
また、民に疑問を抱かせないために、民に知恵を与えないこと、余計な情報を与えないことを徹底したのだ。
もし、『色の黒い』者に逆らう者があれば、暴力で封じ恐怖で民衆を従わせるようにもした。
こうすることにより、皇帝やその周りに従う『色の黒い』者が多少頭が弱くても楽に統治できるようにしたのだ。
その役割を担ったのが、宗教団体としての『黒の使徒』なのだ。
どうも戦乱の時代はそれで上手く行ったようだ。
民も貴族も戦争に勝つことが最優先で、ほかの事に気を配る余裕が無かったから。
しかし、大陸の統一がなってから少しずつ雲行きが怪しくなってきた。
少しは知恵を持つ貴族や大商人たちが、我々の行動に疑問を感じ苦言を呈すようになったのだ。
戦乱が終って落ち着いて周囲を見回す余裕が出来たからであろう。
そして、ここ一、二年、突然がそれが表面化したのだ。
突然、我々を公然と批判する噂が民衆に流れるようになり、帝国のあちこちで『黒の使徒』からの離反が見られるようになった。
正直、儂の目から見てもやりすぎのきらいはあったのだ、しかし、『色の黒い』者に加減をするとか、融通を利かせるとか、人目を気にするとかいう頭を働かせるのは無理なのだ。
儂の配下に、プッペとリストという『色の黒い』者の中では頭の良い者がいた、なんでもすぐに覚えるし、教えたことに対してそれなりの応用もしてみせる。
この二人ならばと思い、王国に橋頭堡を築くため別々に送り込んだのだが、見事に失敗して見せた。
調べてみると、奴らは王国に行っても帝国と同じように振る舞ったらしい。
法律は無視するわ、役人にあからさまに賄賂は贈るわで、郷に入れば郷に従えという発想はまったくなかったらしい。
『色の黒い』者は何をやっても許される、という考えが骨の髄まで染み込んでおり、それが通じない場所があるとは思いもよらなかったようだ。
その報告を聞いたとき、儂は頭が痛くなった。
**********
あの二人でもそんな体たらくだったのだ。
やり方を変えるとしても一体どうすれば良いのやら、こいつ等に柔軟な対応なんて期待できないではないか。
儂が一人頭を悩ませていると、目の前で皇帝が気になることを呟いた。
「しかし、今思い返しても忌々しいのが、女二人。
なんなのだ、女の分際で公使だと、あいつが余計なことを言うから皇太子派を調子付かせる。」
うん?女で公使?王国には女の外交官がそんなに多いのか?
「おい、皇帝よ。
その女外交官の名前は覚えているか?」
こいつの記憶力では無理だろうと半ば諦めつつ尋ねると、意外なことにまともな答えがあった。
「はい、リタ・シューネフェルトと申しておりました。女男爵だそうです。」
なんだと?そんな馬鹿なことがあるのか?
儂は皇帝に問い返したが、間違いないと言う。
「なんだそれは、儂が見た帝都でばら撒かれたというチラシ、そこにその名前が書かれていたぞ。
ハンデルスハーフェンの事件に立ち会った王国の外交官としてな。
なんで、丁度一ヶ月前にハンデルスハーフェンに居た女が帝都に居るんだ。
王国にはそんなに速い移動手段があるのか。」
儂は、そう言った時、ハッと先日からの苛立ちの訳が理解できた。
そうか、儂に敵対する勢力は、儂の想像を超える移動手段を持っているのかと。
「移動手段でございますか?
そう言えば、以前あの忌々しい皇后の病を治した『色なし』の小娘が乗っていた魔導車がすごい速さで走ると聞いた覚えがございます。
王国にはあんな魔導車が何台もあるのだろうか。
そういえば、『白い聖女』とやらが帝都に来ているという噂がございますが、あの小娘のことではございませんか。」
皇帝に『白い聖女』と呼ばれている『色なし』の小娘を見かけたのかと尋ねたが、皇帝は確認はしていないと言う。
ただ、裁きの場で『黒の使徒』の者が放った魔法を防いだ少女が『白い聖女』なのではないかと噂されているらしい。
「でも、裁きの場に現われた娘、フード付きのローブを着ており、姿かたちが全く分からなかったのでございます。」
皇帝はそう付け加えた。
フードで顔を隠した少女か、この暑いのにフード付きのローブとは怪しい。
如何にも、素性を隠しているという様子ではないか。
『白い聖女』、もう三年前になるか。
皇帝からとんでもない魔法を使う『色なし』が現われたと聞いたとき、儂は何かの間違いだろうと皇帝の知らせを過小評価してしまった。
こいつ、頭は弱いくせに、直感が優れているというべきか、野性の本能というべきか、危険察知に優れているのだ。
あの時、皇帝は自分の立場が危うくなると懸念して儂に相談してきたのに、儂は取り合わなかった。それが間違いだったのだ。
その後、儂は何度、あの娘に煮え湯を飲まされたことか。
こうしてはおれん、大至急噂の真偽を確かめなくては。
そして、『白い聖女』が本当に帝都におるのなら、今度こそ確実に抹殺しなくては。
金箔でゴテゴテと装飾のなされた悪趣味な部屋の中で、儂は独り言を呟いていた。
しかし、久し振りに帝都に来てみれば、心なしか空気がキレイになった気がする。
何と言っても息苦しさを感じなくなっているのだ、なにかあったのだろうか。
見た目ばかりで然して座り心地も良くないソファーに腰掛けながらそんなことを考えていると、お待ち兼ねの人物が顔を見せた。
「大変お待たせしまして申し訳ございません。何分このところ煩わしい事が多いもので。」
そう言って平身低頭して許しを請う大男、この国の皇帝である。
いささか、頭が弱いのが難点であるが、ここ数代の皇帝の中でも最も信仰心に厚いと言われ、盲目的にこちらに従ってくれるので重宝しているのだ。
「儂の方が突然訪ねたのだ、そこまで恐縮せずとも良いわ。
今日はハンデルスハーフェンでの出来事を確認しようと帝都まで出て来たのだが。
帝都にある本店を訪ねてみたら、閉鎖されており衛兵に厳重に取り締まられているではいないか。
一体どうなっているのだ。」
まあ、粗方の事については帝都の教団本部に寄り聞いてきたのだが、我々に盲目的に従っているこの男が教団の者を裁くのを許すとはとても思えなかったので事情を問い質すために来たのだ。
「それがこのところ宮廷内で話の通じない者が増えており、大変困っているのです。
『黒の使徒』の方が悪いなどと頭のおかしなことを言い出す輩が増えておりまして。
本店の閉鎖に関しては、隣国も絡んできたため、力で声を封じることが出来なかったのです。」
ふむ、皇帝の話では小麦の取引を巡って帝都でいざこざがあったらしい。
それにタイミングを合わせるように、王国から儂の商会を排除するように要求があったのか。
しかも、騒動を鎮めるのに偶々その場に居合わせた王国の外交官の手を借りてしまったと。
その王国の外交官が騒動の原因は儂の商会にあると非難したらしい、周囲もそれに同調するので抗し切れなかったようだ。
確かに、そのような状況になったのでは、頭の弱いこの男には対応が難しかったのであろう。
ちっ、また王国の連中か、ハンデルスハーフェンの時といい忌々しい……。
あいつら草食動物のように争いを好まないのに、なぜか我々だけにはぶつかってきよる。
しかも、王国が絡む事案はこちらの全敗である。
それはともかく、帝国内の貴族で我々に楯突く者が増えてきたのは困ったものだ。
これは、力で抑えつけるという、従来のやり方を見直さないといけないのかもしれない。
しかし、困ったことに『色の黒い』連中は頭の弱い者が多く、これが同じ人間かと疑問に思うほど短慮で乱暴なのだ。ただ、強い魔法が使えるという一点のみが取り得の生き物なのだ。
**********
先祖の残した手記によると初代皇帝はそうではなかったらしい。
初代皇帝は非常に聡明な男で、思慮深く、しかもあらゆる魔法を使いこなせたと言う。
研究肌の先祖の残した手記なので間違いないのだと思う。
先祖は初代皇帝の形質が受け継がれることを願い、各地から初代皇帝に近い形質の女を集めたと言う。
黒髪・黒い瞳・褐色の肌を持つ女達だ。残念ながら初代皇帝のような鉄色の肌を持つ者は居なかったそうだ。
そして、初代皇帝に娶らせたが、数多くの子供達の中に皇帝の形質を受け継いだものは一人もいなかったそうだ。
いや、強力な魔法が使えるという点は遺伝するのだ。
問題なのは知能、皇帝のような聡明な者は生まれてこず、決まって短慮で乱暴な者だったと言う。
それでも、先祖は諦めず、形質の近いものを集め、番にし、遺伝実験を続けたのだ。
それを円滑に行うために、『色の黒い』者を崇めたてるようにし、『色の黒い』者が徒党を組むような社会体制を築いてきたのだ。
いつかは初代皇帝のような人物が再来するだろうとの期待を込めてのことだった。
さて、先祖が初代皇帝を皇帝の座に就けたのは良かったのだ、聡明で力のある皇帝は民衆から厚い支持を受けたので。
問題は二代目以降、本来政というのは聡明な者でないと務まらないものなのだ、しかし生まれてくるのは頭の弱い子供ばかり。
そこで、先祖が考えたのは皇帝や『色の黒い』者を神格化し、盲目的に従うように民に洗脳を施すこと。
また、民に疑問を抱かせないために、民に知恵を与えないこと、余計な情報を与えないことを徹底したのだ。
もし、『色の黒い』者に逆らう者があれば、暴力で封じ恐怖で民衆を従わせるようにもした。
こうすることにより、皇帝やその周りに従う『色の黒い』者が多少頭が弱くても楽に統治できるようにしたのだ。
その役割を担ったのが、宗教団体としての『黒の使徒』なのだ。
どうも戦乱の時代はそれで上手く行ったようだ。
民も貴族も戦争に勝つことが最優先で、ほかの事に気を配る余裕が無かったから。
しかし、大陸の統一がなってから少しずつ雲行きが怪しくなってきた。
少しは知恵を持つ貴族や大商人たちが、我々の行動に疑問を感じ苦言を呈すようになったのだ。
戦乱が終って落ち着いて周囲を見回す余裕が出来たからであろう。
そして、ここ一、二年、突然がそれが表面化したのだ。
突然、我々を公然と批判する噂が民衆に流れるようになり、帝国のあちこちで『黒の使徒』からの離反が見られるようになった。
正直、儂の目から見てもやりすぎのきらいはあったのだ、しかし、『色の黒い』者に加減をするとか、融通を利かせるとか、人目を気にするとかいう頭を働かせるのは無理なのだ。
儂の配下に、プッペとリストという『色の黒い』者の中では頭の良い者がいた、なんでもすぐに覚えるし、教えたことに対してそれなりの応用もしてみせる。
この二人ならばと思い、王国に橋頭堡を築くため別々に送り込んだのだが、見事に失敗して見せた。
調べてみると、奴らは王国に行っても帝国と同じように振る舞ったらしい。
法律は無視するわ、役人にあからさまに賄賂は贈るわで、郷に入れば郷に従えという発想はまったくなかったらしい。
『色の黒い』者は何をやっても許される、という考えが骨の髄まで染み込んでおり、それが通じない場所があるとは思いもよらなかったようだ。
その報告を聞いたとき、儂は頭が痛くなった。
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あの二人でもそんな体たらくだったのだ。
やり方を変えるとしても一体どうすれば良いのやら、こいつ等に柔軟な対応なんて期待できないではないか。
儂が一人頭を悩ませていると、目の前で皇帝が気になることを呟いた。
「しかし、今思い返しても忌々しいのが、女二人。
なんなのだ、女の分際で公使だと、あいつが余計なことを言うから皇太子派を調子付かせる。」
うん?女で公使?王国には女の外交官がそんなに多いのか?
「おい、皇帝よ。
その女外交官の名前は覚えているか?」
こいつの記憶力では無理だろうと半ば諦めつつ尋ねると、意外なことにまともな答えがあった。
「はい、リタ・シューネフェルトと申しておりました。女男爵だそうです。」
なんだと?そんな馬鹿なことがあるのか?
儂は皇帝に問い返したが、間違いないと言う。
「なんだそれは、儂が見た帝都でばら撒かれたというチラシ、そこにその名前が書かれていたぞ。
ハンデルスハーフェンの事件に立ち会った王国の外交官としてな。
なんで、丁度一ヶ月前にハンデルスハーフェンに居た女が帝都に居るんだ。
王国にはそんなに速い移動手段があるのか。」
儂は、そう言った時、ハッと先日からの苛立ちの訳が理解できた。
そうか、儂に敵対する勢力は、儂の想像を超える移動手段を持っているのかと。
「移動手段でございますか?
そう言えば、以前あの忌々しい皇后の病を治した『色なし』の小娘が乗っていた魔導車がすごい速さで走ると聞いた覚えがございます。
王国にはあんな魔導車が何台もあるのだろうか。
そういえば、『白い聖女』とやらが帝都に来ているという噂がございますが、あの小娘のことではございませんか。」
皇帝に『白い聖女』と呼ばれている『色なし』の小娘を見かけたのかと尋ねたが、皇帝は確認はしていないと言う。
ただ、裁きの場で『黒の使徒』の者が放った魔法を防いだ少女が『白い聖女』なのではないかと噂されているらしい。
「でも、裁きの場に現われた娘、フード付きのローブを着ており、姿かたちが全く分からなかったのでございます。」
皇帝はそう付け加えた。
フードで顔を隠した少女か、この暑いのにフード付きのローブとは怪しい。
如何にも、素性を隠しているという様子ではないか。
『白い聖女』、もう三年前になるか。
皇帝からとんでもない魔法を使う『色なし』が現われたと聞いたとき、儂は何かの間違いだろうと皇帝の知らせを過小評価してしまった。
こいつ、頭は弱いくせに、直感が優れているというべきか、野性の本能というべきか、危険察知に優れているのだ。
あの時、皇帝は自分の立場が危うくなると懸念して儂に相談してきたのに、儂は取り合わなかった。それが間違いだったのだ。
その後、儂は何度、あの娘に煮え湯を飲まされたことか。
こうしてはおれん、大至急噂の真偽を確かめなくては。
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