263 / 508
第10章 王都に春はまだ遠く
第262話 お婆ちゃんの心配
しおりを挟む
フィナントロープさんは、この雪の中わざわざわたし達に注意を促すために精霊神殿まで足を運んでくれたみたいね。
「フィナントロープさん、心配してくれて有り難う。
帝国の方ではそんな風に噂になっているんだね。
でも少し内容が間違って伝わっているね、森を作ったのはわたしやミーナちゃんじゃないよ。」
だって、森を作ったのはフェイさん達だもの、わたしにはそんな力はないよ。
「ほお、そうかい。でもその言い方だと、あながち無関係という訳でもなさそうだね。
実際にはどういう話しなんだい。」
「帝国の東の辺境に作った森は、この三人が作ってくれたんだよ。
わたしの従者を装っているけど、本当はわたしの保護者で三人とも上位の精霊なんだよ。」
わたしは、後ろに控えるソールさんたち三人をフィナントロープさんに紹介した。
すると、フィナントロープさんは少し驚いたようだが、すぐに穏やかな表情を取り戻して言った。
「精霊とか言われても今までだったら信用しなかったのだけど、お嬢ちゃん達の治癒術の話を聞いているからね。
まあ、信じておくさ、そのお三方が精霊さんかい人間と全く見分けが付かないじゃないかい。
人間長生きするもんだね、伝承の中の存在だと思っていた精霊に会えるなんて思いもしなかったよ。
じゃあ、三人の精霊が森を作った現場にお嬢ちゃん達もいた訳だ。
それなら、お嬢ちゃん達が奴らに恨まれるのもあながち筋違いと言う訳でもなさそうだね。」
目の敵にされているのは一昨年からだし、今更だね。
「一昨年の夏に帝国の皇后様の病気を治すために帝国まで行ったの。
帝国の食料事情がひどく悪いと聞いたので食糧支援をしながら帝都まで行ったんだ。
その時、帝国の辺境に術を用いて畑や林を作ったの。
だけど、『黒の使徒』には『色なし』がそういうことをしたのが気に入らなかったようなの。
既に去年の冬には暗殺者を送って来たよ、捕まえちゃったけど。」
そう言ってから、わたしは一昨年の夏から去年の夏までのことを順を追って詳しく説明した。
プッペたちの事件からこっちのことは言わなかったよ。まだ捜査中だし、政治の問題が絡んでいるので子供のわたしが言って良いことではないから。
「そうかい、お嬢ちゃんも厄介な連中に目をつけられたもんだね。
あの連中は宗教団体の名を借りたヤクザ者の集まりみたいなものだからね。
すぐに力にモノを言わすし、話す内容が恫喝みたいだものね。
自分達の教義の邪魔になるものは、力で排除するか、脅して黙らせるかだからね。」
確かにあいつら無茶苦茶だよね、いきなり辺境の村に押しかけてせっかく植えた木を伐り払うって、何を考えているのかと思ったよ。そうそう、その話もしておこうか。
「お嬢ちゃん達もやるねぇ、前年に植えた木を伐られた腹いせに伐り払うことが出来ない森を作ったってか。
そうかい、精霊の森っていうものなんだ。
精霊が人の立ち入りを拒んだり、樹木の伐採を妨害したりしているなんて思いもしなかった。
私は書簡を見たとき随分と荒唐無稽な噂が流れているものだと思っていたんだけど、本当のことだったのかい。
しかし、なんだい森を無くした方が強い魔法が使えるってのは、やつら、また随分と妙なことを言っているもんだね。
まあ、狂信的な連中の言うことだから、やつらなりの理屈があるんだろうね。
だったら、そんなものを置き土産にされた日には、連中が怒るのも無理もないか。
お嬢ちゃん達のやったことは見事に奴らの神経を逆なでした訳だ。
教会の情報網にまで引っかかるということは、奴ら本腰を入れてお嬢ちゃん達の排除を画策しているのかもしれないね。
言うまでもないが、奴ら蛇のようにしつこいし、狡猾だから十分に気をつけるんだよ。」
実は『黒の使徒』の連中の森を無くすというのは、彼ら『色の黒い』連中にとっては、ある意味理にかなっているんだけどね。
ただ、一般には瘴気と魔力が同じモノだというのは知られていないようだから、黙っていよう。
しかし、わたし達を目の敵にしているということが噂で流れるくらいなら、本当に注意する必要がありそうだね。
おチビちゃん達に学園の周囲に『色の黒い』人がいたら、警戒して欲しいとお願いしているけど警戒レベルを引き上げたほうがいいかな。
あとでみんなと相談してみよう。
「ええ、わかっていますわ。
この子たちには、指一本触れさせるつもりはございませんわ。
『黒の使徒』の連中には、この国の中でこそこそと悪さをされて腹を立てていますの。
こちらも、喧嘩を売られて黙っているわけには参りませんわ。」
ミルトさん、頼りにしていますよ。がんばって守ってくださいね。
去年の冬みたいに刃物で刺されるのはもう勘弁してください、あれ凄く痛かったです。
「まあ、ミルト様がそう言うのであれば、これ以上私が言うことはないよ。
そうそう、私の方は本部に『何与太話を真に受けているんだい』って、返事を返しておくよ。
創世教は『色なし』が魔法を使ったからと言って、殺し屋を送るような偏狭な考えではないけどね。
やっぱり、『色なし』に対して差別的な考えを持っているから、『色なし』が大魔法を使えるなんて聞いたら絡んでくる愚か者がいるかも知れないしね。」
フィナントロープさんは、教会本部からの照会を与太話として、そんな事実はないと返答してくれるらしい。
まあ、教会としても、そのような返答があった方が余計なことに気をもむ必要がなくて良いだろうとフィナントロープさんは言う。
フィナントロープさんがわたし達に協力的で本当に助かるよ。
「フィナントロープさん、心配してくれて有り難う。
帝国の方ではそんな風に噂になっているんだね。
でも少し内容が間違って伝わっているね、森を作ったのはわたしやミーナちゃんじゃないよ。」
だって、森を作ったのはフェイさん達だもの、わたしにはそんな力はないよ。
「ほお、そうかい。でもその言い方だと、あながち無関係という訳でもなさそうだね。
実際にはどういう話しなんだい。」
「帝国の東の辺境に作った森は、この三人が作ってくれたんだよ。
わたしの従者を装っているけど、本当はわたしの保護者で三人とも上位の精霊なんだよ。」
わたしは、後ろに控えるソールさんたち三人をフィナントロープさんに紹介した。
すると、フィナントロープさんは少し驚いたようだが、すぐに穏やかな表情を取り戻して言った。
「精霊とか言われても今までだったら信用しなかったのだけど、お嬢ちゃん達の治癒術の話を聞いているからね。
まあ、信じておくさ、そのお三方が精霊さんかい人間と全く見分けが付かないじゃないかい。
人間長生きするもんだね、伝承の中の存在だと思っていた精霊に会えるなんて思いもしなかったよ。
じゃあ、三人の精霊が森を作った現場にお嬢ちゃん達もいた訳だ。
それなら、お嬢ちゃん達が奴らに恨まれるのもあながち筋違いと言う訳でもなさそうだね。」
目の敵にされているのは一昨年からだし、今更だね。
「一昨年の夏に帝国の皇后様の病気を治すために帝国まで行ったの。
帝国の食料事情がひどく悪いと聞いたので食糧支援をしながら帝都まで行ったんだ。
その時、帝国の辺境に術を用いて畑や林を作ったの。
だけど、『黒の使徒』には『色なし』がそういうことをしたのが気に入らなかったようなの。
既に去年の冬には暗殺者を送って来たよ、捕まえちゃったけど。」
そう言ってから、わたしは一昨年の夏から去年の夏までのことを順を追って詳しく説明した。
プッペたちの事件からこっちのことは言わなかったよ。まだ捜査中だし、政治の問題が絡んでいるので子供のわたしが言って良いことではないから。
「そうかい、お嬢ちゃんも厄介な連中に目をつけられたもんだね。
あの連中は宗教団体の名を借りたヤクザ者の集まりみたいなものだからね。
すぐに力にモノを言わすし、話す内容が恫喝みたいだものね。
自分達の教義の邪魔になるものは、力で排除するか、脅して黙らせるかだからね。」
確かにあいつら無茶苦茶だよね、いきなり辺境の村に押しかけてせっかく植えた木を伐り払うって、何を考えているのかと思ったよ。そうそう、その話もしておこうか。
「お嬢ちゃん達もやるねぇ、前年に植えた木を伐られた腹いせに伐り払うことが出来ない森を作ったってか。
そうかい、精霊の森っていうものなんだ。
精霊が人の立ち入りを拒んだり、樹木の伐採を妨害したりしているなんて思いもしなかった。
私は書簡を見たとき随分と荒唐無稽な噂が流れているものだと思っていたんだけど、本当のことだったのかい。
しかし、なんだい森を無くした方が強い魔法が使えるってのは、やつら、また随分と妙なことを言っているもんだね。
まあ、狂信的な連中の言うことだから、やつらなりの理屈があるんだろうね。
だったら、そんなものを置き土産にされた日には、連中が怒るのも無理もないか。
お嬢ちゃん達のやったことは見事に奴らの神経を逆なでした訳だ。
教会の情報網にまで引っかかるということは、奴ら本腰を入れてお嬢ちゃん達の排除を画策しているのかもしれないね。
言うまでもないが、奴ら蛇のようにしつこいし、狡猾だから十分に気をつけるんだよ。」
実は『黒の使徒』の連中の森を無くすというのは、彼ら『色の黒い』連中にとっては、ある意味理にかなっているんだけどね。
ただ、一般には瘴気と魔力が同じモノだというのは知られていないようだから、黙っていよう。
しかし、わたし達を目の敵にしているということが噂で流れるくらいなら、本当に注意する必要がありそうだね。
おチビちゃん達に学園の周囲に『色の黒い』人がいたら、警戒して欲しいとお願いしているけど警戒レベルを引き上げたほうがいいかな。
あとでみんなと相談してみよう。
「ええ、わかっていますわ。
この子たちには、指一本触れさせるつもりはございませんわ。
『黒の使徒』の連中には、この国の中でこそこそと悪さをされて腹を立てていますの。
こちらも、喧嘩を売られて黙っているわけには参りませんわ。」
ミルトさん、頼りにしていますよ。がんばって守ってくださいね。
去年の冬みたいに刃物で刺されるのはもう勘弁してください、あれ凄く痛かったです。
「まあ、ミルト様がそう言うのであれば、これ以上私が言うことはないよ。
そうそう、私の方は本部に『何与太話を真に受けているんだい』って、返事を返しておくよ。
創世教は『色なし』が魔法を使ったからと言って、殺し屋を送るような偏狭な考えではないけどね。
やっぱり、『色なし』に対して差別的な考えを持っているから、『色なし』が大魔法を使えるなんて聞いたら絡んでくる愚か者がいるかも知れないしね。」
フィナントロープさんは、教会本部からの照会を与太話として、そんな事実はないと返答してくれるらしい。
まあ、教会としても、そのような返答があった方が余計なことに気をもむ必要がなくて良いだろうとフィナントロープさんは言う。
フィナントロープさんがわたし達に協力的で本当に助かるよ。
5
お気に入りに追加
2,274
あなたにおすすめの小説
【完結】転生少女は異世界でお店を始めたい
梅丸
ファンタジー
せっかく40代目前にして夢だった喫茶店オープンに漕ぎ着けたと言うのに事故に遭い呆気なく命を落としてしまった私。女神様が管理する異世界に転生させてもらい夢を実現するために奮闘するのだが、この世界には無いものが多すぎる! 創造魔法と言う女神様から授かった恩寵と前世の料理レシピを駆使して色々作りながら頑張る私だった。
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
冷宮の人形姫
りーさん
ファンタジー
冷宮に閉じ込められて育てられた姫がいた。父親である皇帝には関心を持たれず、少しの使用人と母親と共に育ってきた。
幼少の頃からの虐待により、感情を表に出せなくなった姫は、5歳になった時に母親が亡くなった。そんな時、皇帝が姫を迎えに来た。
※すみません、完全にファンタジーになりそうなので、ファンタジーにしますね。
※皇帝のミドルネームを、イント→レントに変えます。(第一皇妃のミドルネームと被りそうなので)
そして、レンド→レクトに変えます。(皇帝のミドルネームと似てしまうため)変わってないよというところがあれば教えてください。
【完結】父が再婚。義母には連れ子がいて一つ下の妹になるそうですが……ちょうだい癖のある義妹に寮生活は無理なのでは?
つくも茄子
ファンタジー
父が再婚をしました。お相手は男爵夫人。
平民の我が家でいいのですか?
疑問に思うものの、よくよく聞けば、相手も再婚で、娘が一人いるとのこと。
義妹はそれは美しい少女でした。義母に似たのでしょう。父も実娘をそっちのけで義妹にメロメロです。ですが、この新しい義妹には悪癖があるようで、人の物を欲しがるのです。「お義姉様、ちょうだい!」が口癖。あまりに煩いので快く渡しています。何故かって?もうすぐ、学園での寮生活に入るからです。少しの間だけ我慢すれば済むこと。
学園では煩い家族がいない分、のびのびと過ごせていたのですが、義妹が入学してきました。
必ずしも入学しなければならない、というわけではありません。
勉強嫌いの義妹。
この学園は成績順だということを知らないのでは?思った通り、最下位クラスにいってしまった義妹。
両親に駄々をこねているようです。
私のところにも手紙を送ってくるのですから、相当です。
しかも、寮やクラスで揉め事を起こしては顰蹙を買っています。入学早々に学園中の女子を敵にまわしたのです!やりたい放題の義妹に、とうとう、ある処置を施され・・・。
なろう、カクヨム、にも公開中。
【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
転生幼女具現化スキルでハードな異世界生活
高梨
ファンタジー
ストレス社会、労働社会、希薄な社会、それに揉まれ石化した心で唯一の親友を守って私は死んだ……のだけれども、死後に閻魔に下されたのは願ってもない異世界転生の判決だった。
黒髪ロングのアメジストの眼をもつ美少女転生して、
接客業後遺症の無表情と接客業の武器営業スマイルと、勝手に進んで行く周りにゲンナリしながら彼女は異世界でくらします。考えてるのに最終的にめんどくさくなって突拍子もないことをしでかして周りに振り回されると同じくらい周りを振り回します。
中性パッツン氷帝と黒の『ナンでも?』できる少女の恋愛ファンタジー。平穏は遙か彼方の代物……この物語をどうぞ見届けてくださいませ。
無表情中性おかっぱ王子?、純粋培養王女、オカマ、下働き大好き系国王、考え過ぎて首を落としたまま過ごす医者、女装メイド男の娘。
猫耳獣人なんでもござれ……。
ほの暗い恋愛ありファンタジーの始まります。
R15タグのように15に収まる範囲の描写がありますご注意ください。
そして『ほの暗いです』
転生令息は攻略拒否!?~前世の記憶持ってます!~
深郷由希菜
ファンタジー
前世の記憶持ちの令息、ジョーン・マレットスは悩んでいた。
ここの世界は、前世で妹がやっていたR15のゲームで、自分が攻略対象の貴族であることを知っている。
それはまだいいが、攻略されることに抵抗のある『ある理由』があって・・・?!
(追記.2018.06.24)
物語を書く上で、特に知識不足なところはネットで調べて書いております。
もし違っていた場合は修正しますので、遠慮なくお伝えください。
(追記2018.07.02)
お気に入り400超え、驚きで声が出なくなっています。
どんどん上がる順位に不審者になりそうで怖いです。
(追記2018.07.24)
お気に入りが最高634まできましたが、600超えた今も嬉しく思います。
今更ですが1日1エピソードは書きたいと思ってますが、かなりマイペースで進行しています。
ちなみに不審者は通り越しました。
(追記2018.07.26)
完結しました。要らないとタイトルに書いておきながらかなり使っていたので、サブタイトルを要りませんから持ってます、に変更しました。
お気に入りしてくださった方、見てくださった方、ありがとうございました!
うっかり『野良犬』を手懐けてしまった底辺男の逆転人生
野良 乃人
ファンタジー
辺境の田舎街に住むエリオは落ちこぼれの底辺冒険者。
普段から無能だの底辺だのと馬鹿にされ、薬草拾いと揶揄されている。
そんなエリオだが、ふとした事がきっかけで『野良犬』を手懐けてしまう。
そこから始まる底辺落ちこぼれエリオの成り上がりストーリー。
そしてこの世界に存在する宝玉がエリオに力を与えてくれる。
うっかり野良犬を手懐けた底辺男。冒険者という枠を超え乱世での逆転人生が始まります。
いずれは王となるのも夢ではないかも!?
◇世界観的に命の価値は軽いです◇
カクヨムでも同タイトルで掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる