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第8章 夏休み明け
第200話 打ち合わせ
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「そこ、そっちじゃダメじゃない?簡単になりすぎるよ。」
「えー、でも反対に曲がったら、渋滞が起こるよ。」
「学園祭の出し物なんだから、あんまり複雑にしないほうがいいんじゃない?」
わたし達の部屋のリビング、北部地区のお姉さん達がテーブルに紙を広げて楽しそうに意見を出し合っている。
学園祭の出し物の花の迷路の設計図を作っているんだって。
**********
今日は、ラインさんを中心に北部地方の女子生徒が催すことになった花の迷路の打ち合わせの日なんだ。
ラインさんが打ち合わせをしたいというので招き入れたけど、設計のところから始めるとは思わなかったよ。
できれば、設計図が出来てから打ち合わせにして欲しかった。
だって、わたし、何も口を出すことないもの…。
ミーナちゃんは花の迷路がどのようなモノなのか興味津々で、お姉さん達に混じって設計図が出来ていく様子を熱心に見ている。
わたしがソファーでみんなが設計図を作る様子を眺めていると、
「ごめんなさいね、大勢で押しかけちゃって、迷惑だったでしょう。」
ラインさんが気を使って謝ってきた。
「いいえ、それはかまわないのですけど、設計図からここで作っていると結構時間かかりますよね。
時間もないことだし、もう設計図は出来ているのかと思っていました。」
「本当にごめんなさい、そうするつもりだったんだけど…。」
ラインさんは気まずそうに話し出した。
本当は設計図が出来てからラインさんはルーナちゃん一人を伴って打ち合わせに来るつもりだったそうだ。
雲行きが怪しくなったのはわたしの部屋の場所を聞いた一人が、一緒に行きたいと言い出したことらしい。
各寮の四隅にある部屋は今まで王族以外が使ったことがないようで、部屋の中を見る機会がないそうだ。わたし達が使っている部屋が四隅の部屋の一つだと聞いて興味を持った子がいたみたい。
そしたら、他の子も一緒に来たいと言い出して、じゃあここで設計図から作りましょうとなってしまったみたい。
相変わらず押しに弱いね、ラインさん…。
でもこの部屋、規則上は別に王族の部屋というわけではない、生徒が二人で利用できる部屋というだけなんだ。
海外から留学してくる王族はご学友を伴ってくるケースが多いので、主寝室二つ、従者部屋二つという部屋を作ったらしいの。別に王族でなくても、双子が入学してくるとか、二人で一つの部屋を使いたい場合は借りることが出来るんだよ。
わたしとミーナちゃんはなれない環境で一人一部屋では心細いので、一緒に使えるこの部屋を貸してもらっただけなの。
他の人が一人で使っている部屋を二つ繋げただけなんだけどね、お家賃も二部屋分らしいし。
そもそも、調度品は生徒が各自で持ち込むのだから、四隅の部屋に住んでいるからと言って豪華なわけじゃないよ。
わたしの説明を聞いたラインさんが言った。
「そう言われても実際には王族以外に住んでいるのは見たことないので、興味があるのだと思うわ。」
現在、四つ隅の部屋が使われている寮は二つだけ、ハイジさんの住む寮と初等部のこの学年の寮だけなんだって。学年毎にある寮のほとんどは四隅の部屋が空いているらしい。
現在王族は、この国のフローラちゃんと帝国からの留学生のハイジさん、ザイヒト王子の三人だけ。
あ、三人ともご学友を伴っているわけではないのに四隅の二人部屋を借りているんだね。
だから、王族用の部屋だと勘違いしている人がいるんだ。
「でも、このソファー凄く快適だわ、柔らかくて包み込むような座り心地がとっても良い感じね。
私の部屋のソファーなんか座り心地が固くてイヤになるわ、ゆっくり寛げないのですもの。
ソファーに限らずこの部屋の物って一々上質に見えるのだけど、ターニャちゃんってもしかして何処かの王族だったりするの?」
「イヤだな、わたしが王族に見えますか?こんながさつな王族がいる訳ないじゃありませんか。」
わたしの返答に、ラインさんは上から下へ視線を動かしながらわたしを観察し、
「それもそうね。」
と納得したように言ったの。
それは、それで、失礼だな…。
**********
ラインさんとそんな話をしていると設計図が完成したのか、ミーナちゃんがわたし達を呼びにきた。
「ターニャちゃん、花の迷路、思っていたのよりずっと素敵なモノになりそうなの。
設計図が出来たから早くこっちに来て。」
とはしゃぐミーナちゃんはソファーに腰掛けているわたしの手を取って立ち上がらせようとする。
そんなに慌てなくたって、設計図は逃げないって…。
ミーナちゃんに急かされてわたしはラインさんとテーブルへ向かった。
テーブルの上に広げられた紙、その上に描かれた花の迷路の設計図。
わたしはそれを見せられて思わず零してしまった。
「五シュトラーセ四方?」
一辺五シュトラーセのほぼ正方形の敷地に迷路を作るらしい、凄い広さだね…。
「そうなの、迷路に入ってから出てくるまで三十分くらい掛かるように設計したんだって。
この面積に五、六万本のコスモスを植えるらしいよ。
頑張って、きれいな花を咲かせましょう!」
ミーナちゃん、テンション高いな…。
普段大人しいミーナちゃんが珍しくはしゃいでいるは良いのだけど…。
これを作るのに必要なマナのことを考えている?
これは、フローラちゃんとハンナちゃんに手伝ってもらわないとしんどいかも知れないよ。
*****
一シュトラーセ=約五メートル
五シュトラーセ=約二十五メートル
と思ってください。
「えー、でも反対に曲がったら、渋滞が起こるよ。」
「学園祭の出し物なんだから、あんまり複雑にしないほうがいいんじゃない?」
わたし達の部屋のリビング、北部地区のお姉さん達がテーブルに紙を広げて楽しそうに意見を出し合っている。
学園祭の出し物の花の迷路の設計図を作っているんだって。
**********
今日は、ラインさんを中心に北部地方の女子生徒が催すことになった花の迷路の打ち合わせの日なんだ。
ラインさんが打ち合わせをしたいというので招き入れたけど、設計のところから始めるとは思わなかったよ。
できれば、設計図が出来てから打ち合わせにして欲しかった。
だって、わたし、何も口を出すことないもの…。
ミーナちゃんは花の迷路がどのようなモノなのか興味津々で、お姉さん達に混じって設計図が出来ていく様子を熱心に見ている。
わたしがソファーでみんなが設計図を作る様子を眺めていると、
「ごめんなさいね、大勢で押しかけちゃって、迷惑だったでしょう。」
ラインさんが気を使って謝ってきた。
「いいえ、それはかまわないのですけど、設計図からここで作っていると結構時間かかりますよね。
時間もないことだし、もう設計図は出来ているのかと思っていました。」
「本当にごめんなさい、そうするつもりだったんだけど…。」
ラインさんは気まずそうに話し出した。
本当は設計図が出来てからラインさんはルーナちゃん一人を伴って打ち合わせに来るつもりだったそうだ。
雲行きが怪しくなったのはわたしの部屋の場所を聞いた一人が、一緒に行きたいと言い出したことらしい。
各寮の四隅にある部屋は今まで王族以外が使ったことがないようで、部屋の中を見る機会がないそうだ。わたし達が使っている部屋が四隅の部屋の一つだと聞いて興味を持った子がいたみたい。
そしたら、他の子も一緒に来たいと言い出して、じゃあここで設計図から作りましょうとなってしまったみたい。
相変わらず押しに弱いね、ラインさん…。
でもこの部屋、規則上は別に王族の部屋というわけではない、生徒が二人で利用できる部屋というだけなんだ。
海外から留学してくる王族はご学友を伴ってくるケースが多いので、主寝室二つ、従者部屋二つという部屋を作ったらしいの。別に王族でなくても、双子が入学してくるとか、二人で一つの部屋を使いたい場合は借りることが出来るんだよ。
わたしとミーナちゃんはなれない環境で一人一部屋では心細いので、一緒に使えるこの部屋を貸してもらっただけなの。
他の人が一人で使っている部屋を二つ繋げただけなんだけどね、お家賃も二部屋分らしいし。
そもそも、調度品は生徒が各自で持ち込むのだから、四隅の部屋に住んでいるからと言って豪華なわけじゃないよ。
わたしの説明を聞いたラインさんが言った。
「そう言われても実際には王族以外に住んでいるのは見たことないので、興味があるのだと思うわ。」
現在、四つ隅の部屋が使われている寮は二つだけ、ハイジさんの住む寮と初等部のこの学年の寮だけなんだって。学年毎にある寮のほとんどは四隅の部屋が空いているらしい。
現在王族は、この国のフローラちゃんと帝国からの留学生のハイジさん、ザイヒト王子の三人だけ。
あ、三人ともご学友を伴っているわけではないのに四隅の二人部屋を借りているんだね。
だから、王族用の部屋だと勘違いしている人がいるんだ。
「でも、このソファー凄く快適だわ、柔らかくて包み込むような座り心地がとっても良い感じね。
私の部屋のソファーなんか座り心地が固くてイヤになるわ、ゆっくり寛げないのですもの。
ソファーに限らずこの部屋の物って一々上質に見えるのだけど、ターニャちゃんってもしかして何処かの王族だったりするの?」
「イヤだな、わたしが王族に見えますか?こんながさつな王族がいる訳ないじゃありませんか。」
わたしの返答に、ラインさんは上から下へ視線を動かしながらわたしを観察し、
「それもそうね。」
と納得したように言ったの。
それは、それで、失礼だな…。
**********
ラインさんとそんな話をしていると設計図が完成したのか、ミーナちゃんがわたし達を呼びにきた。
「ターニャちゃん、花の迷路、思っていたのよりずっと素敵なモノになりそうなの。
設計図が出来たから早くこっちに来て。」
とはしゃぐミーナちゃんはソファーに腰掛けているわたしの手を取って立ち上がらせようとする。
そんなに慌てなくたって、設計図は逃げないって…。
ミーナちゃんに急かされてわたしはラインさんとテーブルへ向かった。
テーブルの上に広げられた紙、その上に描かれた花の迷路の設計図。
わたしはそれを見せられて思わず零してしまった。
「五シュトラーセ四方?」
一辺五シュトラーセのほぼ正方形の敷地に迷路を作るらしい、凄い広さだね…。
「そうなの、迷路に入ってから出てくるまで三十分くらい掛かるように設計したんだって。
この面積に五、六万本のコスモスを植えるらしいよ。
頑張って、きれいな花を咲かせましょう!」
ミーナちゃん、テンション高いな…。
普段大人しいミーナちゃんが珍しくはしゃいでいるは良いのだけど…。
これを作るのに必要なマナのことを考えている?
これは、フローラちゃんとハンナちゃんに手伝ってもらわないとしんどいかも知れないよ。
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一シュトラーセ=約五メートル
五シュトラーセ=約二十五メートル
と思ってください。
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