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第7章 二度目の夏休み、再び帝国へ
第167話 怒る支配人
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瘴気の森から戻った翌日、わたしはハイジさんとフローラちゃんに瘴気の森であったこと話した。
「やはり、シュバーツアポステル商会が関わっていましたか。隣国まで来て悪さをしているとは呆れてしまいます。
しかし、『黒の使徒』と関係があるとは思っていましたが、まさかそのものだったとは驚きました。
しかも、普段は表に出ないでダミーの商会を使っているのですか、私が知らなくて当然ですわね。」
ハイジさんが心底呆れた声を出した。
「それで、あの施設の支配人のプッペと言う人、わたしになんで生きてるんだって言ったの。
わたしが『黒の使徒』の暗殺者に殺されていると思ってたみたい。
ということは、帝国にいたギリッグ支配人にわたし達のことを知られたのは拙かったかもしれない。
『黒の使徒』にわたし達が生きていることが知られたらまた暗殺者を送ってくるかも。」
「そうね、注意が必要かも知れないわね。
王都に戻ったらお母様にも言っておきませんと。」
**********
ここは領主館の地下にある犯罪者の収容施設、ぶっちゃけ地下牢だね。
わたしはハイジさんと共にプッペ支配人を訪ねて来た。
プッペ支配人は相変わらず黙秘しており取調べに応じていないそうだ。
わたしとハイジさんの顔を見れば怒って何か口を滑らすかも知れないと思ってやってきた。
小娘と侮って何か喋ってくれるかもしれないしね。
「こんにちわ、プッペさん。ご機嫌いかがですか?」
わたしは鉄格子越しにプッペ支配人に声をかけた。
「この悪魔め、私に何の用だ!」
あっ、魔力を奪われたことを根に持っているんだね。
「ターニャちゃんはわたしを案内してくれただけよ。プッペ支配人でよろしいかしら?」
「お、おまえは背信皇女、何でおまえまでここにいるんだ!」
「あら、自分の国の皇女に向かって、おまえとか背信皇女とか酷いことを言うのね。
あなた、不敬罪って言う言葉知っている?
私はターニャちゃんに付き添って帝国辺境部に視察に行った帰りにこの町に寄っただけよ。」
「また、その悪魔を帝国に連れて行っただと、おまえは皇女の癖に何故帝国の秩序を乱すのだ。」
ハイジさんを前に怒りを露わにしたプッペ支配人が言うには、昨年わたし達が帝国の東部辺境の一部で行った活動(食糧支援、農地開墾、疾病治療)が東部辺境部に広く知れ渡ったらしい。
『色なし』の子供二人で奇跡のような魔法を使い作付けが困難だと思われていた瘴気の濃い土地を青々とした農地に変えたという噂が、『白い聖女』という異名と共に広がったそうだ。
それはとりもなおさず、魔法が使えない『色なし』は神に見放された忌むべき存在だと蔑む『黒の使徒』の教義に反することみたい。
目の前で『色なし』が魔法を使って見せたものだから、辺境では『黒の使徒』の教義に従う人が激減しているらしい。
『色なし』の子供二人が、民衆のために食べ物を分け与えたり農作物を作付けして歩けば、力で押さえつけることしかしない『黒の使徒』とどちらが民に支持されるかは明らかだよね。
でも、それは帝国の偉い人には困ることみたい。
魔法力の強い者を上の立場において畏怖で民を支配するのが帝国の統治の仕方だという。
それを思想的に支えるのが、魔法は神からの恩寵で魔法力の強い黒髪・黒い瞳・褐色の肌の人は神に祝福された人達として民を導く立場なのだという教えを説く、『黒の使徒』なんだ。
『色なし』が奇跡のような魔法を使って民を救済したら『黒の使徒』の立場がないよね。
そういうことで、今、帝国の東部辺境では『黒の使徒』から離反する村が増えているんだって。
それはもう、布教が困難なぐらいらしい。
**********
ハイジさんは怒りを露わにするプッペさんの様子を気にするでもなく話を続けた。
「そうそう、帝国で製材所の支配人のギリッグという方に会ったわ。
そこでシュバーツアポステル商会って名前を聞いたのよ、まさか『黒の使徒』の別働隊だとは思わなかったわ。
そこで製材所の様子を見たターニャちゃんが、ヴェストエンデにゴロツキが集まっていて魔晶石が不正に流通しているという話に似ていると言ったのよ。
それで慌てて帰ってきたの、本当は夏休み中ずっと東部辺境に森を作る計画だったのにね。」
ハイジさんの言葉を聞いていたプッペ支配人はワナワナと怒りに肩を震わせている。
「ギリッグの製材所を見て私の計画に感づくとは、なんという勘の良いやつだ。
何でこんなに早く気付かれたのかと思ったらそういうことだったのか。
数年がかりで計画したことが、小娘の勘一つで水泡に帰すとは思いもしなかった。
やっと『黒の使徒』の本格的な王国進出の足がかりが出来たと思っていたのに。」
そう呟くとプッペ支配人は項垂れてしまったが、ハッと何かに気付いたように顔を上げた。
そして、今までよりも更に怒りを強めてハイジさんを罵った。
「おまえ、今、東部辺境に森を作る計画だと言ったか?
なんと罰当たりなことを考えているのだ!先人の苦労をなんだと思っているのだ!
おまえのような奴は皇族を名乗る資格がないぞ!」
プッペ支配人、怒りに任せて色々喋ってくれたよ。
『黒の使徒』の長年の経験の積み重ねから、瘴気の森の近くでは魔力が回復しやすく魔法の威力が増すことが分っているらしい。
一方で、豊かな森の中では魔法の威力が著しく低下する上に魔力の回復が遅いと気付いたそうだ。
それで、より強い魔法を使えるようにするために森を減らしてきたらしい。
いろいろな理由で森を伐ることに反対する勢力も多いことから、それこそ長い時をかけて目立たないように少しずつ。
それで、以前、ヴィクトーリアさんが気付かないうちに森がなくなっていたと言ってたんだね。
ヴィクトーリアさんのような良識派に気取られないように本当に少しずつ減らしていったんだ。
やっぱり、『黒の使徒』の企みだったんだね、このまえ、ミーナちゃんが言ってた通りだったよ。
『黒の使徒』にとっては、森を増やすと言うのは許されざる大罪らしい。
わたし、知らない間にまた恨みを買っていた?
「やはり、シュバーツアポステル商会が関わっていましたか。隣国まで来て悪さをしているとは呆れてしまいます。
しかし、『黒の使徒』と関係があるとは思っていましたが、まさかそのものだったとは驚きました。
しかも、普段は表に出ないでダミーの商会を使っているのですか、私が知らなくて当然ですわね。」
ハイジさんが心底呆れた声を出した。
「それで、あの施設の支配人のプッペと言う人、わたしになんで生きてるんだって言ったの。
わたしが『黒の使徒』の暗殺者に殺されていると思ってたみたい。
ということは、帝国にいたギリッグ支配人にわたし達のことを知られたのは拙かったかもしれない。
『黒の使徒』にわたし達が生きていることが知られたらまた暗殺者を送ってくるかも。」
「そうね、注意が必要かも知れないわね。
王都に戻ったらお母様にも言っておきませんと。」
**********
ここは領主館の地下にある犯罪者の収容施設、ぶっちゃけ地下牢だね。
わたしはハイジさんと共にプッペ支配人を訪ねて来た。
プッペ支配人は相変わらず黙秘しており取調べに応じていないそうだ。
わたしとハイジさんの顔を見れば怒って何か口を滑らすかも知れないと思ってやってきた。
小娘と侮って何か喋ってくれるかもしれないしね。
「こんにちわ、プッペさん。ご機嫌いかがですか?」
わたしは鉄格子越しにプッペ支配人に声をかけた。
「この悪魔め、私に何の用だ!」
あっ、魔力を奪われたことを根に持っているんだね。
「ターニャちゃんはわたしを案内してくれただけよ。プッペ支配人でよろしいかしら?」
「お、おまえは背信皇女、何でおまえまでここにいるんだ!」
「あら、自分の国の皇女に向かって、おまえとか背信皇女とか酷いことを言うのね。
あなた、不敬罪って言う言葉知っている?
私はターニャちゃんに付き添って帝国辺境部に視察に行った帰りにこの町に寄っただけよ。」
「また、その悪魔を帝国に連れて行っただと、おまえは皇女の癖に何故帝国の秩序を乱すのだ。」
ハイジさんを前に怒りを露わにしたプッペ支配人が言うには、昨年わたし達が帝国の東部辺境の一部で行った活動(食糧支援、農地開墾、疾病治療)が東部辺境部に広く知れ渡ったらしい。
『色なし』の子供二人で奇跡のような魔法を使い作付けが困難だと思われていた瘴気の濃い土地を青々とした農地に変えたという噂が、『白い聖女』という異名と共に広がったそうだ。
それはとりもなおさず、魔法が使えない『色なし』は神に見放された忌むべき存在だと蔑む『黒の使徒』の教義に反することみたい。
目の前で『色なし』が魔法を使って見せたものだから、辺境では『黒の使徒』の教義に従う人が激減しているらしい。
『色なし』の子供二人が、民衆のために食べ物を分け与えたり農作物を作付けして歩けば、力で押さえつけることしかしない『黒の使徒』とどちらが民に支持されるかは明らかだよね。
でも、それは帝国の偉い人には困ることみたい。
魔法力の強い者を上の立場において畏怖で民を支配するのが帝国の統治の仕方だという。
それを思想的に支えるのが、魔法は神からの恩寵で魔法力の強い黒髪・黒い瞳・褐色の肌の人は神に祝福された人達として民を導く立場なのだという教えを説く、『黒の使徒』なんだ。
『色なし』が奇跡のような魔法を使って民を救済したら『黒の使徒』の立場がないよね。
そういうことで、今、帝国の東部辺境では『黒の使徒』から離反する村が増えているんだって。
それはもう、布教が困難なぐらいらしい。
**********
ハイジさんは怒りを露わにするプッペさんの様子を気にするでもなく話を続けた。
「そうそう、帝国で製材所の支配人のギリッグという方に会ったわ。
そこでシュバーツアポステル商会って名前を聞いたのよ、まさか『黒の使徒』の別働隊だとは思わなかったわ。
そこで製材所の様子を見たターニャちゃんが、ヴェストエンデにゴロツキが集まっていて魔晶石が不正に流通しているという話に似ていると言ったのよ。
それで慌てて帰ってきたの、本当は夏休み中ずっと東部辺境に森を作る計画だったのにね。」
ハイジさんの言葉を聞いていたプッペ支配人はワナワナと怒りに肩を震わせている。
「ギリッグの製材所を見て私の計画に感づくとは、なんという勘の良いやつだ。
何でこんなに早く気付かれたのかと思ったらそういうことだったのか。
数年がかりで計画したことが、小娘の勘一つで水泡に帰すとは思いもしなかった。
やっと『黒の使徒』の本格的な王国進出の足がかりが出来たと思っていたのに。」
そう呟くとプッペ支配人は項垂れてしまったが、ハッと何かに気付いたように顔を上げた。
そして、今までよりも更に怒りを強めてハイジさんを罵った。
「おまえ、今、東部辺境に森を作る計画だと言ったか?
なんと罰当たりなことを考えているのだ!先人の苦労をなんだと思っているのだ!
おまえのような奴は皇族を名乗る資格がないぞ!」
プッペ支配人、怒りに任せて色々喋ってくれたよ。
『黒の使徒』の長年の経験の積み重ねから、瘴気の森の近くでは魔力が回復しやすく魔法の威力が増すことが分っているらしい。
一方で、豊かな森の中では魔法の威力が著しく低下する上に魔力の回復が遅いと気付いたそうだ。
それで、より強い魔法を使えるようにするために森を減らしてきたらしい。
いろいろな理由で森を伐ることに反対する勢力も多いことから、それこそ長い時をかけて目立たないように少しずつ。
それで、以前、ヴィクトーリアさんが気付かないうちに森がなくなっていたと言ってたんだね。
ヴィクトーリアさんのような良識派に気取られないように本当に少しずつ減らしていったんだ。
やっぱり、『黒の使徒』の企みだったんだね、このまえ、ミーナちゃんが言ってた通りだったよ。
『黒の使徒』にとっては、森を増やすと言うのは許されざる大罪らしい。
わたし、知らない間にまた恨みを買っていた?
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