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第5章 冬休み、南部地方への旅
第101話 もう一つのあとかたづけ
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今日もわたしは牢獄に来ている。
そんなに何度も牢獄の中を見せるのは子供の情操教育に良くないと思うの。
コルテス王国から来た病人の対応を優先したため後回しになっていた『黒の使徒』の救済神官の尋問を行うらしい。
それって、お役人さんの仕事だよね、わたしがここにいる必要ないよね。
そう言って抵抗したんだけど、ヴィクトーリアさんにどうしてもと頼まれて同席している。
ミルトさんから聞いた話では、捕縛したその日に衛兵が尋問したのだが完全に黙秘したそうだ。
そのまま牢獄に移されたが、取調べは何も進んでいないということだ。
それを聞いたヴィクトーリアさんが尋問に同席したいと言い出して、なしくずし的にわたしが巻き込まれた訳だよ。
牢獄の中にある取調室の扉をくぐると、そこには何故か救済神官四人が揃っていた。
尋問って一人一人するんじゃないの?
ヴィクトーリアさんが姿を見せると、救済神官の一人が吠えた。
「この異端者め、我々の布教を邪魔するばかりか、我々救済神官に対するこの仕打ち、天罰が当たるものと覚悟せよ。」
ああ、この人たち沸点低いな。いきなり自分たちが救済神官だってばらしちゃったよ。
今まで何のために完全黙秘していたのかな?
「そんな手枷、足枷をされた姿で凄まれてもちっとも怖くありませんわよ。
それで、あなた達は誰の指示でわたし達の命を狙ったのかしら?」
「命を狙うだと?人聞きの悪いことを言うな、我々はおまえ達異端の考えに染まった者の悪しき魂に救済を与えようとしたまでだ。」
「そういう建て前はいいわ、それで誰の指示なの?」
「そんなの天命に決まっておるだろう!」
なにこれ、話がかみ合っていないと言うか、沼に杭を打ち込んでいるようだよ。
「そう、あくまでしらを切るのね。
あなた達ついてるわね、この国は拷問による取調べは禁止なんですって。
しかも、大逆罪は実際に犯行に及ばなければ適用されないそうよ。
これが帝国なら問答無用で死罪だものね、皇后と皇女の命を狙ったのだから。
なんだったら、皇后と皇女の命を狙った罪人として、帝国法で裁けるように帝国への送還をお願いしてみましょうか。」
ヴィクトーリアさんがそう言うと救済神官の一人がニヤリと笑い。
「やれるものならやってみろ、こっちは皇帝の命を受けてやってきたんだ何も怖くは無いぜ。」
こいつら馬鹿だろう…。
「そう、やっぱりあの人が一枚噛んでいるのね。私が聞きたかったのはそれだけよ。」
そう言ったヴィクトーリアさんは今度はわたしを見て、
「そういえば、この部屋臭うわね。この人たち随分と汚れているようだわ。」
と言った。
何がやりたいのかよくわからないが、わたしは救済神官四人に軽く『浄化』をかける。
四人を包み込んだ明るい光が消えると、汚れも悪臭もきれいに消えていた。
「ねえ、あなたたち、この子が帝国の辺境で何をしたか知っているでしょう。
だから、命を狙ったのですものね。
この子、瘴気を消し去ることができるの。」
**********
そのあと、わたしはヴィクトーリアさんに促されて、魔力と瘴気は同じものだという話をした。
その意味では、黒髪・黒い瞳・褐色の肌の人は瘴気が濃く魔獣に近い存在で、そちらの方が異常なんだと説明を加えた。
「小娘、きさま、我々を魔獣に近い存在だと侮辱するか。
我々選ばれた者に与えられた魔力を瘴気と一緒にするなど世迷言を言いおって。
やはりきさまのような異端者は許しておけぬ。」
許しておけぬからどうだというのだろう?
手枷、足枷をつけられたままでは何もできないだろうに。
「あなた方が信じようが信じまいがどうでも良いのです。
今日、どうしてこの子に同席してもらったのかわかりますか。
あなた方は、後日この国の法で裁かれます。
あなた方が黙秘しようが、証拠が揃っているので罪には問えます。
ただ、この国の法では死刑がないので、せいぜい強制労働止まりの刑になるようです。
そこで、あなた方には今ここで死罪より厳しい罰を受けてもらおうと思います。」
ああ、そういうことね…。
ちなみに、私刑はこの国の法では厳しく禁じられているそうだ。
でも、汚れた人をきれいにするのは問題ないそうだ。というより今までそんな事をする人はいなかったよね。
ヴィクトーリアさんは、わたしを見て悪い笑みを浮かべて言った。
「やっちゃってください。」
ヴィクトーリアさん、穏やかな顔をして実は相当怒っていたんだね。
わたしは、光のおチビちゃん達に全力で『浄化の光』を四人にかけるようにお願いする。
さっきとは違い、まばゆい光が四人を包み込み、やがて光が消えていく。
「あなた達には、これからあなた達が一番蔑んできた『色なし』として罪を償ってもらいます。
もう魔法も使えないでしょうから、脱走することも出来ないでしょう。」
ヴィクトーリアさんに言われて、四人は相互に容姿を確認した。
「おい、おまえの黒髪が真っ白になっているぞ!」
「おまえこそ、瞳が薄い碧色だぞ!」
「なんだ、手が真っ白になったぞ!体に中に魔力が感じられない…。」
「嘘だろう、どうしてくれるんだ神の加護を返せ!」
口々に驚きの言葉を発した救済神官は、自慢の黒髪、黒い瞳、褐色の肌が失われて元に戻らないこと、魔法がもう使えないことを悟るとそのままうな垂れてしまった。
後日聞いた話では、その後は取り調べに素直に応じるようになったということだった。
そんなに何度も牢獄の中を見せるのは子供の情操教育に良くないと思うの。
コルテス王国から来た病人の対応を優先したため後回しになっていた『黒の使徒』の救済神官の尋問を行うらしい。
それって、お役人さんの仕事だよね、わたしがここにいる必要ないよね。
そう言って抵抗したんだけど、ヴィクトーリアさんにどうしてもと頼まれて同席している。
ミルトさんから聞いた話では、捕縛したその日に衛兵が尋問したのだが完全に黙秘したそうだ。
そのまま牢獄に移されたが、取調べは何も進んでいないということだ。
それを聞いたヴィクトーリアさんが尋問に同席したいと言い出して、なしくずし的にわたしが巻き込まれた訳だよ。
牢獄の中にある取調室の扉をくぐると、そこには何故か救済神官四人が揃っていた。
尋問って一人一人するんじゃないの?
ヴィクトーリアさんが姿を見せると、救済神官の一人が吠えた。
「この異端者め、我々の布教を邪魔するばかりか、我々救済神官に対するこの仕打ち、天罰が当たるものと覚悟せよ。」
ああ、この人たち沸点低いな。いきなり自分たちが救済神官だってばらしちゃったよ。
今まで何のために完全黙秘していたのかな?
「そんな手枷、足枷をされた姿で凄まれてもちっとも怖くありませんわよ。
それで、あなた達は誰の指示でわたし達の命を狙ったのかしら?」
「命を狙うだと?人聞きの悪いことを言うな、我々はおまえ達異端の考えに染まった者の悪しき魂に救済を与えようとしたまでだ。」
「そういう建て前はいいわ、それで誰の指示なの?」
「そんなの天命に決まっておるだろう!」
なにこれ、話がかみ合っていないと言うか、沼に杭を打ち込んでいるようだよ。
「そう、あくまでしらを切るのね。
あなた達ついてるわね、この国は拷問による取調べは禁止なんですって。
しかも、大逆罪は実際に犯行に及ばなければ適用されないそうよ。
これが帝国なら問答無用で死罪だものね、皇后と皇女の命を狙ったのだから。
なんだったら、皇后と皇女の命を狙った罪人として、帝国法で裁けるように帝国への送還をお願いしてみましょうか。」
ヴィクトーリアさんがそう言うと救済神官の一人がニヤリと笑い。
「やれるものならやってみろ、こっちは皇帝の命を受けてやってきたんだ何も怖くは無いぜ。」
こいつら馬鹿だろう…。
「そう、やっぱりあの人が一枚噛んでいるのね。私が聞きたかったのはそれだけよ。」
そう言ったヴィクトーリアさんは今度はわたしを見て、
「そういえば、この部屋臭うわね。この人たち随分と汚れているようだわ。」
と言った。
何がやりたいのかよくわからないが、わたしは救済神官四人に軽く『浄化』をかける。
四人を包み込んだ明るい光が消えると、汚れも悪臭もきれいに消えていた。
「ねえ、あなたたち、この子が帝国の辺境で何をしたか知っているでしょう。
だから、命を狙ったのですものね。
この子、瘴気を消し去ることができるの。」
**********
そのあと、わたしはヴィクトーリアさんに促されて、魔力と瘴気は同じものだという話をした。
その意味では、黒髪・黒い瞳・褐色の肌の人は瘴気が濃く魔獣に近い存在で、そちらの方が異常なんだと説明を加えた。
「小娘、きさま、我々を魔獣に近い存在だと侮辱するか。
我々選ばれた者に与えられた魔力を瘴気と一緒にするなど世迷言を言いおって。
やはりきさまのような異端者は許しておけぬ。」
許しておけぬからどうだというのだろう?
手枷、足枷をつけられたままでは何もできないだろうに。
「あなた方が信じようが信じまいがどうでも良いのです。
今日、どうしてこの子に同席してもらったのかわかりますか。
あなた方は、後日この国の法で裁かれます。
あなた方が黙秘しようが、証拠が揃っているので罪には問えます。
ただ、この国の法では死刑がないので、せいぜい強制労働止まりの刑になるようです。
そこで、あなた方には今ここで死罪より厳しい罰を受けてもらおうと思います。」
ああ、そういうことね…。
ちなみに、私刑はこの国の法では厳しく禁じられているそうだ。
でも、汚れた人をきれいにするのは問題ないそうだ。というより今までそんな事をする人はいなかったよね。
ヴィクトーリアさんは、わたしを見て悪い笑みを浮かべて言った。
「やっちゃってください。」
ヴィクトーリアさん、穏やかな顔をして実は相当怒っていたんだね。
わたしは、光のおチビちゃん達に全力で『浄化の光』を四人にかけるようにお願いする。
さっきとは違い、まばゆい光が四人を包み込み、やがて光が消えていく。
「あなた達には、これからあなた達が一番蔑んできた『色なし』として罪を償ってもらいます。
もう魔法も使えないでしょうから、脱走することも出来ないでしょう。」
ヴィクトーリアさんに言われて、四人は相互に容姿を確認した。
「おい、おまえの黒髪が真っ白になっているぞ!」
「おまえこそ、瞳が薄い碧色だぞ!」
「なんだ、手が真っ白になったぞ!体に中に魔力が感じられない…。」
「嘘だろう、どうしてくれるんだ神の加護を返せ!」
口々に驚きの言葉を発した救済神官は、自慢の黒髪、黒い瞳、褐色の肌が失われて元に戻らないこと、魔法がもう使えないことを悟るとそのままうな垂れてしまった。
後日聞いた話では、その後は取り調べに素直に応じるようになったということだった。
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