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第5章 冬休み、南部地方への旅
第97話 提督がやってきた
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テーテュスさんに指示されたとおり、沖合いの軍艦の様子を探るためにおチビちゃん達に行ってもらった。
状況はすぐわかったよ。だっておチビちゃんが病人だらけだったって言うのだもの。
おチビちゃんの話では三隻とも横たわっている病人で足の踏み場がないくらいだって。
元気な人の方が少ないようで、毎日亡くなる人がいるみたい。
おチビちゃんは、軍艦に乗っている人の会話の内容や独り言まで拾って来てくれた。
テーテュスさんの言った通り、コルテス王国を出港したときは大艦隊だったみたいだね。
それが、航海の途中ではぐれるか、沈没するかしちゃってポルトに辿り着けたのは三隻だけだったようだ。
艦隊の一番偉い人、提督っていう人の呟きを聞いてきたおチビちゃんが言ってたけど、テーテュスさんの成功に触発されて北大陸進攻を決めたみたい。
小娘が大陸間の航海を成功させたのだから、俺達にできないはずがないって。
テーテュスさんって見た目は二十代の女性だからね、大精霊だとは思いもしないだろう。
まさか、海流を自由に従えることができるから易々と大洋を越えられるとは知る由もない。
テーテュスさんの秘密も知らずに大洋に漕ぎ出した結果、複雑な海流に翻弄されて悪戦苦闘したみたいだ。悪いことに、その最中に嵐にあったらしい。
その嵐で艦隊の大部分を失ったんだって、ついてないね。
嵐で壊れた船から人と飲食料を三隻に集めた時に、大砲や弾薬を投棄したようで各艦に備え付けられた大砲は四門ずつしかないようだ。
砲弾は各艦十発だけしか残さなかったみたい、その中から既に五発撃っちゃったよね。
テーテュスさんの予想通り砲撃は虚仮脅しのようだね、実際はもう戦える人が少なくて戦闘をすることは難しいみたい。
おチビちゃんに探ってもらったことは全て公爵に報告した。
報告した内容が、テーテュスさんが予想した通りなんで公爵は一安心したようだ。
テーテュスさんは、向こうの状況を知っていたんじゃないだろうか?
自分でこっそりと軍艦に乗り込めるし、近くにいるおチビちゃんに探らせることもできる。
ただ、全部教えてしまうのは甘やかし過ぎなので、あえてわたし達にやらせたのじゃないかな。
そして、最初の砲撃があってから三日目の夜、わたしがベッドに入ってウトウトしているときにおチビちゃんが一人やってきて告げた。
(明日、提督が港に乗り込んでくるって言っているよ。)
わたしは飛び起きて、公爵のもとに走った。
**********
わたし達は、テーテュスさんの助言に従いこちらからは接触せずに無視を決め込んだ。
向こうの提督は、こちらが弱腰で接触してくるのを期待していたようだが、こちらからのコンタクトがないので業を煮やしたらしい。
水も食料も尽きかけているらしいし、死亡者も日に日に増える一方だから向こうも余裕がないのだろう。提督自身も病気みたいだしね。
テーテュスさんの助言に基づき、公爵は強気で折衝に望む気でいる。
向こうの内情が筒抜けなんで、いくら虚勢を張られても怖くはないよね。
ただ、いきなり鉄砲でズドンは怖いのでその対策だけは抜かりがない。
軽い木材を薄い鋼の板で挟みこんだ大盾を多数用意した。
公爵は、テーテュスさんに貰った鉄砲で繰り返し試して、至近距離で打たれても貫けない盾でできる限り軽いものを作らせたんだ。
全身を隠せる大盾じゃないといけないけど、全部鉄だと重くて移動が難しいからね。
また、鉄砲を撃たせないように水の魔法が得意な兵士も伴うことにした。
**********
翌日、公爵は、朝から港の役場の一室に移り、沖合いの軍艦の動向に注目していた。
昼時になって軍艦から小船が降ろされ、こちらに向かってくるとの知らせがあった。
「よし、手はず通り、港でお客さんを出迎えるぞ。」
そう言って、公爵は立ち上がった。
えっ、公爵自ら行くの?
こういう場合、偉い人は後ろでドンと構えているんじゃないの?
わたし達が港に出ると、そこには既に野次馬が集まっていた。
港の桟橋に軍艦からの小船が着くと、待ち構えていた兵士が上陸した者達を取り囲むようにして大盾を構えた。
「おいおい、外国からの使節に随分な対応ではないか?」
一番偉そうな人物が前へ進み出て苦言を呈した。
「すまんな、問答無用で大砲を打ち込んでくるような無法者に払う礼儀は持ち合わせていないものでね。」
大盾を構えた兵の間から姿を見せた公爵が応酬する。
のっけから、双方強気な姿勢だ…。
わたし?公爵のすぐ近くにいるよ。
テーテュスさんの指示で、何か不測の事態が起こった対処しろって。
それって、八歳の子供に出す指示じゃないよね…。
状況はすぐわかったよ。だっておチビちゃんが病人だらけだったって言うのだもの。
おチビちゃんの話では三隻とも横たわっている病人で足の踏み場がないくらいだって。
元気な人の方が少ないようで、毎日亡くなる人がいるみたい。
おチビちゃんは、軍艦に乗っている人の会話の内容や独り言まで拾って来てくれた。
テーテュスさんの言った通り、コルテス王国を出港したときは大艦隊だったみたいだね。
それが、航海の途中ではぐれるか、沈没するかしちゃってポルトに辿り着けたのは三隻だけだったようだ。
艦隊の一番偉い人、提督っていう人の呟きを聞いてきたおチビちゃんが言ってたけど、テーテュスさんの成功に触発されて北大陸進攻を決めたみたい。
小娘が大陸間の航海を成功させたのだから、俺達にできないはずがないって。
テーテュスさんって見た目は二十代の女性だからね、大精霊だとは思いもしないだろう。
まさか、海流を自由に従えることができるから易々と大洋を越えられるとは知る由もない。
テーテュスさんの秘密も知らずに大洋に漕ぎ出した結果、複雑な海流に翻弄されて悪戦苦闘したみたいだ。悪いことに、その最中に嵐にあったらしい。
その嵐で艦隊の大部分を失ったんだって、ついてないね。
嵐で壊れた船から人と飲食料を三隻に集めた時に、大砲や弾薬を投棄したようで各艦に備え付けられた大砲は四門ずつしかないようだ。
砲弾は各艦十発だけしか残さなかったみたい、その中から既に五発撃っちゃったよね。
テーテュスさんの予想通り砲撃は虚仮脅しのようだね、実際はもう戦える人が少なくて戦闘をすることは難しいみたい。
おチビちゃんに探ってもらったことは全て公爵に報告した。
報告した内容が、テーテュスさんが予想した通りなんで公爵は一安心したようだ。
テーテュスさんは、向こうの状況を知っていたんじゃないだろうか?
自分でこっそりと軍艦に乗り込めるし、近くにいるおチビちゃんに探らせることもできる。
ただ、全部教えてしまうのは甘やかし過ぎなので、あえてわたし達にやらせたのじゃないかな。
そして、最初の砲撃があってから三日目の夜、わたしがベッドに入ってウトウトしているときにおチビちゃんが一人やってきて告げた。
(明日、提督が港に乗り込んでくるって言っているよ。)
わたしは飛び起きて、公爵のもとに走った。
**********
わたし達は、テーテュスさんの助言に従いこちらからは接触せずに無視を決め込んだ。
向こうの提督は、こちらが弱腰で接触してくるのを期待していたようだが、こちらからのコンタクトがないので業を煮やしたらしい。
水も食料も尽きかけているらしいし、死亡者も日に日に増える一方だから向こうも余裕がないのだろう。提督自身も病気みたいだしね。
テーテュスさんの助言に基づき、公爵は強気で折衝に望む気でいる。
向こうの内情が筒抜けなんで、いくら虚勢を張られても怖くはないよね。
ただ、いきなり鉄砲でズドンは怖いのでその対策だけは抜かりがない。
軽い木材を薄い鋼の板で挟みこんだ大盾を多数用意した。
公爵は、テーテュスさんに貰った鉄砲で繰り返し試して、至近距離で打たれても貫けない盾でできる限り軽いものを作らせたんだ。
全身を隠せる大盾じゃないといけないけど、全部鉄だと重くて移動が難しいからね。
また、鉄砲を撃たせないように水の魔法が得意な兵士も伴うことにした。
**********
翌日、公爵は、朝から港の役場の一室に移り、沖合いの軍艦の動向に注目していた。
昼時になって軍艦から小船が降ろされ、こちらに向かってくるとの知らせがあった。
「よし、手はず通り、港でお客さんを出迎えるぞ。」
そう言って、公爵は立ち上がった。
えっ、公爵自ら行くの?
こういう場合、偉い人は後ろでドンと構えているんじゃないの?
わたし達が港に出ると、そこには既に野次馬が集まっていた。
港の桟橋に軍艦からの小船が着くと、待ち構えていた兵士が上陸した者達を取り囲むようにして大盾を構えた。
「おいおい、外国からの使節に随分な対応ではないか?」
一番偉そうな人物が前へ進み出て苦言を呈した。
「すまんな、問答無用で大砲を打ち込んでくるような無法者に払う礼儀は持ち合わせていないものでね。」
大盾を構えた兵の間から姿を見せた公爵が応酬する。
のっけから、双方強気な姿勢だ…。
わたし?公爵のすぐ近くにいるよ。
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