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第4章 学園祭
第65話 学園祭③ 花がなければ咲かせればいいじゃない
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*本日、臨時にお昼と17時に投稿しています。
お読みでない方は、そちらから先にお読みください。
**********
ラインさんのお店にある球根は、ブルーメン子爵家で品種改良された自信作ばかりなんだって。
用意したのは、チューリップを中心に、ユリとアネモネだそうで、どれも様々な色のものを取り揃えているとのこと。
ラインさんの話では、どれもブルーメン子爵自身が品種改良に携わり自信を持って売りに出した品種だそうだ。
また、ブルーメン領で生産された陶器製の植木鉢や木製のプランターなんかも屋台の脇に積んである。
そんな綺麗な花ならわたしも見てみたいな。
「花がないなら、咲かせればいいじゃない。」
わたしは、ラインさんにそう提案した。
**********
それから、わたし達は大急ぎで準備をした。
植木鉢とプランターに土魔法で土を入れていく、こういうとき魔法って便利だよね。
これは、ルーナちゃんとラインさんにお願いした。
わたしとミーナちゃんはここで消耗するわけには行かないから。
植木鉢もプランターも、空の物を欲しいという人がいるかも知れないので全部に土を入れるわけではない。
植木鉢もプランターも一つ銀貨一枚で売る予定だったそうだ。
球根は全て五球で銀貨一枚とのこと、一球あたり大銅貨二枚だね。
そうすると、植木鉢にチューリップを一本咲かせたもは、銀貨一枚、大銅貨二枚になるけど幾らバザーでも安すぎるという話になった。
それで、植木鉢にチューリップが一本咲いている物が銀貨二枚、プランターにチューリップが五本並んでいる物を銀貨五枚で売ることにした。
何と言っても、季節はずれのチューリップである。このくらいなら買う人がいるだろう。
準備が整ったのでルーナちゃんが呼び込みを始める。
「はーい!寄ってらっしゃい!見てらっしゃい!
これから、ブルーメン領自慢の花の販売を始めます。
まずは、今の時期は他では見ることのできない鉢植えのチューリップ、咲きたてのものをご覧に入れます。」
こういう呼び込みは元気なルーナちゃんにやってもらうに限るね。
ルーナちゃんの呼びかけ声に何事かと、周囲の人の注目が集まる。
すかさずわたしは、木のおチビちゃん達に鉢植えのチューリップの成長促進をお願いする。
この時、わたしは魔法を使っているように周囲の人に思わせるため適当なことを言うことにした。
これも客引きの一環だよ。
「土に眠る緑の息吹よ、今目を覚まし我にその美しき姿を見せよ!」
わたしの言葉が終わるとチューリップの球根が芽を出し、葉が伸び茎が伸び見る間に茎の先に大振りな蕾をつけた。
そして、ゆっくりと開花していき、見頃なところで開花が止まる。
そこには、花弁が淡いピンクで花弁の中心にしたがってクリーム色に色変わりしてゆく美しい大輪のチューリップが咲いていた。
一瞬、観客のみんなが息を呑んだのがわかった。
「すごい…、目の前でチューリップが咲いた……。」
誰かが呟いた。
すかさず、ルーナちゃんが呼びかける。
「今咲きたてのこのチューリップ、一鉢銀貨二枚です。
どなたか、お求めになる方はいませんか?」
すると一番近くにいた男性がひったくるように鉢植えを手に取り、「買った!」と声を上げた。
そして、すぐに銀貨二枚をルーナちゃんに支払った。
すると、
「おい、もうないのか?」、「私も欲しい!」、「チューリップ以外はないのか?」
周囲から様々な声が上がった。
「はーい!慌てないで。
商品はまだたくさんあります。
チューリップ以外にユリとアネモネもありますよ。
ユリも一鉢銀貨二枚、アネモネは寄せ植えで一鉢銀貨二枚です。
チューリップとアネモネはプランター植えもあります、一つ銀貨五枚です。」
ルーナちゃんのその言葉をかわきりに、わたしとミーナちゃんは次々に花を咲かせていく。
チューリップ、ユリ、アネモネと本当に色鮮やかで、ラインさんが自慢の逸品というのが良くわかる。
わたしも楽しくなってつい力が入ってしまったよ。
気付くと用意した鉢植えとプランターの全てが咲いていた。
店の前に集まった人たちも、季節はずれの花の競演に大喜びだ。
「お花のお姉ちゃんすごーい!」
小さな子の歓声が上がる。喜んでくれて嬉しいよ!
結局、残しておいた植木鉢とプランターにも植えつけて、花を咲かせて売ることになった。
そして、ルーナちゃんが追加で売り口上をあげた。
「いま、販売したお花の球根はまだあります。
咲いた物を見ていただいてお分かりでしょうが、ブルーメン領が自信を持ってお届けする物ばかりです。
ちょうど今植えていただきますとチューリップとアネモネは来年の春、ユリは来年の初夏に美しい花をつけます。
こちらは、破格の五球で銀貨一枚です。ぜひともお買い求めください。」
結局、季節はずれに咲いたチューリップ、アネモネ、ユリの花は、学園祭に集まった人たちの関心を集め、あっという間に完売しちゃった。
ラインさんの、「咲いている花さえあれば売れる」という言葉通り、植木鉢が足らなくて花を咲かせられなかった大量の球根も全て売れちゃったよ。
鉢植え一鉢銀貨二枚、プランター植え一つ銀貨五枚と当初予定よりかなり高く売ったことに加え準備した商品を全て完売したことから売上げは想定以上のものとなったみたい。
ラインさんは、これで面目が保てたとホクホク顔だったよ。
このときわたしは知らなかったのだけど、学園祭で寄付金が上位十位以内(=売上げ十位以内)のお店は後日国王から直々に感謝状を賜れるらしく、ラインさんは王宮に呼ばれて目を丸くしていた。
そして、わたしは失念していた。植物の成長促進魔法が失われた奇跡の魔法と呼ばれていることを。
この日、奇跡の魔法の使い手が二人も現れたと王都中に知れ渡ることになってしまった。
お読みでない方は、そちらから先にお読みください。
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ラインさんのお店にある球根は、ブルーメン子爵家で品種改良された自信作ばかりなんだって。
用意したのは、チューリップを中心に、ユリとアネモネだそうで、どれも様々な色のものを取り揃えているとのこと。
ラインさんの話では、どれもブルーメン子爵自身が品種改良に携わり自信を持って売りに出した品種だそうだ。
また、ブルーメン領で生産された陶器製の植木鉢や木製のプランターなんかも屋台の脇に積んである。
そんな綺麗な花ならわたしも見てみたいな。
「花がないなら、咲かせればいいじゃない。」
わたしは、ラインさんにそう提案した。
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それから、わたし達は大急ぎで準備をした。
植木鉢とプランターに土魔法で土を入れていく、こういうとき魔法って便利だよね。
これは、ルーナちゃんとラインさんにお願いした。
わたしとミーナちゃんはここで消耗するわけには行かないから。
植木鉢もプランターも、空の物を欲しいという人がいるかも知れないので全部に土を入れるわけではない。
植木鉢もプランターも一つ銀貨一枚で売る予定だったそうだ。
球根は全て五球で銀貨一枚とのこと、一球あたり大銅貨二枚だね。
そうすると、植木鉢にチューリップを一本咲かせたもは、銀貨一枚、大銅貨二枚になるけど幾らバザーでも安すぎるという話になった。
それで、植木鉢にチューリップが一本咲いている物が銀貨二枚、プランターにチューリップが五本並んでいる物を銀貨五枚で売ることにした。
何と言っても、季節はずれのチューリップである。このくらいなら買う人がいるだろう。
準備が整ったのでルーナちゃんが呼び込みを始める。
「はーい!寄ってらっしゃい!見てらっしゃい!
これから、ブルーメン領自慢の花の販売を始めます。
まずは、今の時期は他では見ることのできない鉢植えのチューリップ、咲きたてのものをご覧に入れます。」
こういう呼び込みは元気なルーナちゃんにやってもらうに限るね。
ルーナちゃんの呼びかけ声に何事かと、周囲の人の注目が集まる。
すかさずわたしは、木のおチビちゃん達に鉢植えのチューリップの成長促進をお願いする。
この時、わたしは魔法を使っているように周囲の人に思わせるため適当なことを言うことにした。
これも客引きの一環だよ。
「土に眠る緑の息吹よ、今目を覚まし我にその美しき姿を見せよ!」
わたしの言葉が終わるとチューリップの球根が芽を出し、葉が伸び茎が伸び見る間に茎の先に大振りな蕾をつけた。
そして、ゆっくりと開花していき、見頃なところで開花が止まる。
そこには、花弁が淡いピンクで花弁の中心にしたがってクリーム色に色変わりしてゆく美しい大輪のチューリップが咲いていた。
一瞬、観客のみんなが息を呑んだのがわかった。
「すごい…、目の前でチューリップが咲いた……。」
誰かが呟いた。
すかさず、ルーナちゃんが呼びかける。
「今咲きたてのこのチューリップ、一鉢銀貨二枚です。
どなたか、お求めになる方はいませんか?」
すると一番近くにいた男性がひったくるように鉢植えを手に取り、「買った!」と声を上げた。
そして、すぐに銀貨二枚をルーナちゃんに支払った。
すると、
「おい、もうないのか?」、「私も欲しい!」、「チューリップ以外はないのか?」
周囲から様々な声が上がった。
「はーい!慌てないで。
商品はまだたくさんあります。
チューリップ以外にユリとアネモネもありますよ。
ユリも一鉢銀貨二枚、アネモネは寄せ植えで一鉢銀貨二枚です。
チューリップとアネモネはプランター植えもあります、一つ銀貨五枚です。」
ルーナちゃんのその言葉をかわきりに、わたしとミーナちゃんは次々に花を咲かせていく。
チューリップ、ユリ、アネモネと本当に色鮮やかで、ラインさんが自慢の逸品というのが良くわかる。
わたしも楽しくなってつい力が入ってしまったよ。
気付くと用意した鉢植えとプランターの全てが咲いていた。
店の前に集まった人たちも、季節はずれの花の競演に大喜びだ。
「お花のお姉ちゃんすごーい!」
小さな子の歓声が上がる。喜んでくれて嬉しいよ!
結局、残しておいた植木鉢とプランターにも植えつけて、花を咲かせて売ることになった。
そして、ルーナちゃんが追加で売り口上をあげた。
「いま、販売したお花の球根はまだあります。
咲いた物を見ていただいてお分かりでしょうが、ブルーメン領が自信を持ってお届けする物ばかりです。
ちょうど今植えていただきますとチューリップとアネモネは来年の春、ユリは来年の初夏に美しい花をつけます。
こちらは、破格の五球で銀貨一枚です。ぜひともお買い求めください。」
結局、季節はずれに咲いたチューリップ、アネモネ、ユリの花は、学園祭に集まった人たちの関心を集め、あっという間に完売しちゃった。
ラインさんの、「咲いている花さえあれば売れる」という言葉通り、植木鉢が足らなくて花を咲かせられなかった大量の球根も全て売れちゃったよ。
鉢植え一鉢銀貨二枚、プランター植え一つ銀貨五枚と当初予定よりかなり高く売ったことに加え準備した商品を全て完売したことから売上げは想定以上のものとなったみたい。
ラインさんは、これで面目が保てたとホクホク顔だったよ。
このときわたしは知らなかったのだけど、学園祭で寄付金が上位十位以内(=売上げ十位以内)のお店は後日国王から直々に感謝状を賜れるらしく、ラインさんは王宮に呼ばれて目を丸くしていた。
そして、わたしは失念していた。植物の成長促進魔法が失われた奇跡の魔法と呼ばれていることを。
この日、奇跡の魔法の使い手が二人も現れたと王都中に知れ渡ることになってしまった。
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