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第1章 人間の街へ
第3話 初めての街
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精霊の森を出て三日目の午後、わたしは初めて人の住まう街というところに辿り着いた。
「うわっ!!、人がいっぱいだ。わたし以外の人って初めて見た。」
「ええ、この街はこの国で一番新しい街ですので、活気がありますね。
今が一番街としての伸び盛りなのではないでしょうか。」
そうなんだ、だから真新しい建物が結構あって、街も綺麗なんだ。
「これからどうするの。」
「まずは両替商に行ってこの国のお金を手に入れないといけません。
そうしないと、何もできませんから。」
そう言ってソールさんは、街の中心部に向かって魔導車を進めた。
人が多いのでのろのろ運転だよ。
街の中心部、大きな建物の前で、魔導車を停めると扉の前に立っていた人がやって来てソールさんに何か言っている。
どうやら車を停めておく場所に誘導されているようだ、誘導されるまま進むと建物の中庭に出た。
「馬車がいっぱい止まっている。でも、魔導車は一台もないんだね。」
「ええ、魔導車は全て魔導王国の遺産ですので大変稀少なんです。
今の人の技術では作れないのです。
ですから、魔導車を持っているのは、王族と高位貴族だけかと思われます。
この街の領主は臣籍に下った元王族ですので、所有しているかもしれませんね。」
ふーん、そうなんだ。ということは、わたし達って相当目立っているんじゃないの?
「お嬢様、私は両替に行って参りますので、ここでお待ちください。
誘拐されるといけませんのでくれぐれも車から降りることがないようにお願いします。
フェイ、お嬢様のこと頼みましたよ。」
と言ってソールさんは建物中に入っていった。言われなくても、大人しく待っていますよ。
「そういえば、馬って言うのも初めて見たんだ。
魔導王国の図鑑で見たことがあったから初めてという気がしなかった。
ねえ、フェイさん、お馬さんを近くで見てきたらダメ?」
「お嬢様、さっきソールから何て言われましたか覚えてますよね。
まさか、もう忘れたとは言いませんよね。」
うん、わたしは、聞き訳がよい子、我が儘言わないもん。
うずうず、うずうず、zzzzzzz
「ねえ、フェイさん、チョットだけだからお馬さん見てきちゃダメ?」
「もう、しょうがないお嬢様ですね。よっぽど退屈なんですね。
よろしいですよ、私がお供いたします。」
「わーい、お馬さんだ!!」
ちゃんと、フェイさんが先に降りたあとに、フェイさんが差し出した手をとってゆっくりと魔導車を降りたよ。
走ったりしないよ、お嬢様という設定なんだから。
わたしは、馬車につながれたお馬さんを見て歩いた。
お馬さんも色々いるんだね。白ぽいの、栗毛色なの、黒っぽいの、足が細いの、足が太いの。
うん?一頭元気のないお馬さんがいる。
「ねえ、おじちゃん。このお馬さん、元気ないようだけどどうかしたの?」
「お嬢ちゃん、よくわかったね。こいつはなんだか朝から調子悪いんだ、病気じゃないようだが。」
わたしのも耳元で、おチビちゃん達が囁いている。
(この馬、働きすぎ、全然休ませてもらえないんだって。このままじゃ、過労で死んじゃうわ。)
おチビちゃん達というのは、わたしの周りにわらわらといる中位精霊のこと。わたしの指先から肘までくらいの身長で、人と同じ姿かたちをしている。普通の人には見えないんだって。
おチビちゃん達は、このお馬さんを治して欲しいと騒いでいる。
はいはい、わかりましたよ。
「おじちゃん、このお馬さん、疲れたって言っているよ。全然お休みをあげてないでしょう。
可哀そうだから、元気の出るお水をあげたいんだけど、ダメかな?」
「お嬢ちゃん、水やりをしたいのか。かまわないけど、ここから井戸まで結構あるぜ。水桶抱えて歩けるのかい?」
「えっ、そんなことしないよ。その水桶貸して。」
わたしは、指先に集めたマナをおチビちゃん達に与えて念じた。
(じゃあ、水のおチビちゃん達、力を貸して!癒しの水でこの水桶を満たせ!!)
次の瞬間、ドバッと水桶に水が降り注ぎ、あっという間に縁まで満たされた。
「どわっ!!お嬢ちゃん、魔法が使えるのか。こりゃ吃驚した、俺は魔法を使える『色なし』を初めて見たぜ。」
水がかかりそうになったおじちゃんが飛び退きながら言った。
このおじちゃん、なに言ってるんだろう?わたし魔法なんか使ってないよ。
こんなの精霊さんにお願いすれば、簡単じゃない。
それより、お馬さんに水を上げないと。
「お馬さん、この水をお飲み、少しは元気が出ると思うよ。」
わたしは、お馬さんを撫でながら水を飲むように促す。
最初は恐れ恐れ口を付けたが、その後、一気に飲み干す勢いで飲み始めた。
水桶の水を全部飲み干す頃には、お馬さんは見違えるように元気になっていた。
よし、よし、水のおチビちゃん達ありがとうね。いい仕事だったよ。
わたしの横でおじちゃんが呆然としていたけど、わたしは「水桶ありがとうございました。」と言って魔導車に戻った。
魔導車に戻ったわたしは、人前で安易に精霊術を使ったらいけませんと、フェイさんに叱られた。
人間には精霊が見えないので、わたしが魔法を使ったように見えるんだって。
人の常識では、わたしの様な『色なし』は、魔法が使えないことになっているから異常に見えるって。
**********
そうこうするうちにソールさんが戻って来た。
「こんなに時間をとったのに、結局魔導王国の金貨を一枚しか両替できなかった。」
ソールさんは不満そうだった。
両替商のカウンターに行って、魔導王国の金貨を出したら、本物かどうかで騒ぎになったらしい。
鑑定士を呼んで本物とわかると、今度は王都のオークションじゃないと価格は決まらないと言われたそうだ。
それでも、ここで買い取って欲しいといったら、オークションの出品手数料やら王都までの護衛料を差し引くので相当安くなると言われて、最終的には両替商が幾らで売っても異議を唱えないという念書を取られたらしい。
ソールさんは、そこまでで辟易してしまい、まだあるとは言えなかったそうだ。
「酷く不満げだけど、これからの旅費に足りないの?相当足元を見られたようだけど。」
とフィアさんが尋ねると、
「いや、確かに足元は見られたんだろうが、それでも私の予想より高かった。
この国の金貨が千五百枚手に入ったんで、旅費はもちろんティターニア様の入学金や学費を全て払ってもかなり残る。
ただ、私としては、ティターニア様のために王都の屋敷を用意しようと思っていたので全然足りない。
せめて、あと十枚両替できれば。」
とソールさんは言った。
いや、王都に屋敷なんか要らないよ。確か、学校って全寮制なんでしょう?
「うわっ!!、人がいっぱいだ。わたし以外の人って初めて見た。」
「ええ、この街はこの国で一番新しい街ですので、活気がありますね。
今が一番街としての伸び盛りなのではないでしょうか。」
そうなんだ、だから真新しい建物が結構あって、街も綺麗なんだ。
「これからどうするの。」
「まずは両替商に行ってこの国のお金を手に入れないといけません。
そうしないと、何もできませんから。」
そう言ってソールさんは、街の中心部に向かって魔導車を進めた。
人が多いのでのろのろ運転だよ。
街の中心部、大きな建物の前で、魔導車を停めると扉の前に立っていた人がやって来てソールさんに何か言っている。
どうやら車を停めておく場所に誘導されているようだ、誘導されるまま進むと建物の中庭に出た。
「馬車がいっぱい止まっている。でも、魔導車は一台もないんだね。」
「ええ、魔導車は全て魔導王国の遺産ですので大変稀少なんです。
今の人の技術では作れないのです。
ですから、魔導車を持っているのは、王族と高位貴族だけかと思われます。
この街の領主は臣籍に下った元王族ですので、所有しているかもしれませんね。」
ふーん、そうなんだ。ということは、わたし達って相当目立っているんじゃないの?
「お嬢様、私は両替に行って参りますので、ここでお待ちください。
誘拐されるといけませんのでくれぐれも車から降りることがないようにお願いします。
フェイ、お嬢様のこと頼みましたよ。」
と言ってソールさんは建物中に入っていった。言われなくても、大人しく待っていますよ。
「そういえば、馬って言うのも初めて見たんだ。
魔導王国の図鑑で見たことがあったから初めてという気がしなかった。
ねえ、フェイさん、お馬さんを近くで見てきたらダメ?」
「お嬢様、さっきソールから何て言われましたか覚えてますよね。
まさか、もう忘れたとは言いませんよね。」
うん、わたしは、聞き訳がよい子、我が儘言わないもん。
うずうず、うずうず、zzzzzzz
「ねえ、フェイさん、チョットだけだからお馬さん見てきちゃダメ?」
「もう、しょうがないお嬢様ですね。よっぽど退屈なんですね。
よろしいですよ、私がお供いたします。」
「わーい、お馬さんだ!!」
ちゃんと、フェイさんが先に降りたあとに、フェイさんが差し出した手をとってゆっくりと魔導車を降りたよ。
走ったりしないよ、お嬢様という設定なんだから。
わたしは、馬車につながれたお馬さんを見て歩いた。
お馬さんも色々いるんだね。白ぽいの、栗毛色なの、黒っぽいの、足が細いの、足が太いの。
うん?一頭元気のないお馬さんがいる。
「ねえ、おじちゃん。このお馬さん、元気ないようだけどどうかしたの?」
「お嬢ちゃん、よくわかったね。こいつはなんだか朝から調子悪いんだ、病気じゃないようだが。」
わたしのも耳元で、おチビちゃん達が囁いている。
(この馬、働きすぎ、全然休ませてもらえないんだって。このままじゃ、過労で死んじゃうわ。)
おチビちゃん達というのは、わたしの周りにわらわらといる中位精霊のこと。わたしの指先から肘までくらいの身長で、人と同じ姿かたちをしている。普通の人には見えないんだって。
おチビちゃん達は、このお馬さんを治して欲しいと騒いでいる。
はいはい、わかりましたよ。
「おじちゃん、このお馬さん、疲れたって言っているよ。全然お休みをあげてないでしょう。
可哀そうだから、元気の出るお水をあげたいんだけど、ダメかな?」
「お嬢ちゃん、水やりをしたいのか。かまわないけど、ここから井戸まで結構あるぜ。水桶抱えて歩けるのかい?」
「えっ、そんなことしないよ。その水桶貸して。」
わたしは、指先に集めたマナをおチビちゃん達に与えて念じた。
(じゃあ、水のおチビちゃん達、力を貸して!癒しの水でこの水桶を満たせ!!)
次の瞬間、ドバッと水桶に水が降り注ぎ、あっという間に縁まで満たされた。
「どわっ!!お嬢ちゃん、魔法が使えるのか。こりゃ吃驚した、俺は魔法を使える『色なし』を初めて見たぜ。」
水がかかりそうになったおじちゃんが飛び退きながら言った。
このおじちゃん、なに言ってるんだろう?わたし魔法なんか使ってないよ。
こんなの精霊さんにお願いすれば、簡単じゃない。
それより、お馬さんに水を上げないと。
「お馬さん、この水をお飲み、少しは元気が出ると思うよ。」
わたしは、お馬さんを撫でながら水を飲むように促す。
最初は恐れ恐れ口を付けたが、その後、一気に飲み干す勢いで飲み始めた。
水桶の水を全部飲み干す頃には、お馬さんは見違えるように元気になっていた。
よし、よし、水のおチビちゃん達ありがとうね。いい仕事だったよ。
わたしの横でおじちゃんが呆然としていたけど、わたしは「水桶ありがとうございました。」と言って魔導車に戻った。
魔導車に戻ったわたしは、人前で安易に精霊術を使ったらいけませんと、フェイさんに叱られた。
人間には精霊が見えないので、わたしが魔法を使ったように見えるんだって。
人の常識では、わたしの様な『色なし』は、魔法が使えないことになっているから異常に見えるって。
**********
そうこうするうちにソールさんが戻って来た。
「こんなに時間をとったのに、結局魔導王国の金貨を一枚しか両替できなかった。」
ソールさんは不満そうだった。
両替商のカウンターに行って、魔導王国の金貨を出したら、本物かどうかで騒ぎになったらしい。
鑑定士を呼んで本物とわかると、今度は王都のオークションじゃないと価格は決まらないと言われたそうだ。
それでも、ここで買い取って欲しいといったら、オークションの出品手数料やら王都までの護衛料を差し引くので相当安くなると言われて、最終的には両替商が幾らで売っても異議を唱えないという念書を取られたらしい。
ソールさんは、そこまでで辟易してしまい、まだあるとは言えなかったそうだ。
「酷く不満げだけど、これからの旅費に足りないの?相当足元を見られたようだけど。」
とフィアさんが尋ねると、
「いや、確かに足元は見られたんだろうが、それでも私の予想より高かった。
この国の金貨が千五百枚手に入ったんで、旅費はもちろんティターニア様の入学金や学費を全て払ってもかなり残る。
ただ、私としては、ティターニア様のために王都の屋敷を用意しようと思っていたので全然足りない。
せめて、あと十枚両替できれば。」
とソールさんは言った。
いや、王都に屋敷なんか要らないよ。確か、学校って全寮制なんでしょう?
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