826 / 848
第二三章 時は緩やかに流れて…
第826話 国家の大事だなんて大袈裟な…
しおりを挟む
バジルさんの退職願いを出しに行くと言うミントさんと一緒に久々にトアール国の王宮を訪ねたおいら達。
王妃となったオランの実姉ネーブル姉ちゃんと互いの子供を紹介し合っていたんだけど、そこに血相を変えたおじさんが飛び込んできたの。
えらく取り乱しているその御仁はどうやら財務卿らしい。
「何事だ、騒がしい。
私は今、休暇中であるぞ。
しかも来客中であるのが分からんのか?」
カズヤ兄ちゃんが財務卿の無礼を咎めると。
「ご無礼については謝罪申し上げます。
ですが、国の運営に掛かる一大事なのです。
是非とも陛下の裁可を仰ぎたく参上致しました。」
財務卿ほどの役職にある人が取り乱して居るんだから相当にヤバいことが起きているんだろうね。
そう言えば、ミントさんとバジルさんが向かったのも財務省だった、ちゃんと退職願いが受理されたかな。
財務卿がこんなに狼狽しているんじゃ、退職願いなんて些事は受け付けてもらえないかも…。
「それで一大事とは、何があったのだ。
ワイバーンが襲来したとでも言うのか?」
カズヤ兄ちゃんもワイバーンの群れと対峙したことがあるから、余程のことじゃないと動じなくなっているみたい。
「それが…。」
カズヤ兄ちゃんからの問い掛けに財務卿が返答しようと口を開き掛けたところで。
「財務卿、話はまだ終わっていませんよ。
話の途中で席を立つを立つなんて失礼じゃありませんこと。
せめてこれを受け取ってからでないと困りますわ。」
バジルさんを背後に従えたミントさんが姿を現したの。そのミントさんの手には退職願いが握られていたよ。
やっぱり、一官吏の退職願いなんて後回しにされたみたいだね。
「陛下、王母様の後ろにいるあの男。
あやつがいきなり現れまして…。」
そう言って財務卿が指差したのは…。
「うん、母上の後ろにいる者がどうかしたのか?」
カズヤ兄ちゃんは財務卿の指が指し示す方に視線を向け。
「そなた、バジルか?
母上と一緒とは珍しい。何かあったのか?」
当然、カズヤ兄ちゃんは、ミントさんがにっぽん爺のところに身を寄せていることを知っているんだろうね。
王都に居ないはずのミントさんが分家の三男坊と一緒にいることを、カズヤ兄ちゃんは奇異に感じたみたい。
「そ奴が今日限りで王宮の職務を辞すると言って来たのです。」
バジルさんを指差して忌々しそうな表情で、財務卿はカズヤ兄ちゃんへ訴えていたんだ。
「うん? それの何が問題なのだ?」
状況を把握できない様子で、カズヤ兄ちゃんは財務卿に説明を求めてた。
うん、カズヤ兄ちゃんの問い掛けはもっともだと思う。バジルさんの退職が国を揺るがす一大事とはとても思えないもん。
「あやつが急に辞めると、財務省の仕事が麻痺します。
それすなわち王宮の機能が麻痺することを意味するのですぞ。
これを一大事と言わずしてどうします。」
「何を大袈裟な…。
そう言えば、バジルは今どんな役職に就いておる。
局長クラスだとでも言うのか?」
バジルさんの退職程度のことで、休暇中、しかも私的な来客中を邪魔されたと知り、カズヤ兄ちゃんは不機嫌な表情を露わにしたよ。
因みに、カズヤ兄ちゃんはバジルさんのポストを把握してない様子で、局長クラスなら突然辞められたら困るのも頷けるがと言ってた。
すると、財務卿はあからさまにバツの悪い顔をして。
「いえ、バジルは主計局の主査をしております。
何と申しますか…、下から数えた方が…。」
カズヤ兄ちゃんの問い掛けに歯切れの悪い返答をしたんだ。
「ふむ、そなた、端役が一人辞めるくらいで騒ぎ立てたと申すか。
端役が一人辞めたくらいで、王宮が麻痺するはずが無かろうが。
まあ、母上の元側近が何故そんな端役に居たのかは甚だ疑問ではあるがな。」
御后様の側近をしてたんだもの、常識的に考えればもっと重要なポストが与えられて然るべきだよね。
カズヤ兄ちゃんはその辺の経緯は後で詳しく説明しろと財務卿に告げていたよ。
「いえ、それは…。」
カズヤ兄ちゃんの至極真っ当な指摘に、財務卿は顔に冷や汗を浮かべて言葉を詰まらせてたんだ。
**********
「ああ、それね。
前王派のあんぽんたんが人事に手を回したみたいなの。
重要なポストに就かせたら、馬車馬のように働かせることが出来ないでしょう。」
その身を縮こまらせて言葉を無くしている財務卿に代わってミントさんがカズヤ兄ちゃんの問い掛けに答えたんだ。
「母上は事情をご存じなのですか?」
「まあ、最近知ったのだけどね。
私も迂闊だったわ、色惚けしてたみたいでこの子の処遇を放置しちゃったし。」
財務省って国のお金を握っている重要な部署で、そこに配属される官吏はエリートなんだって。特に予算決定権を実質的に握っている主計局は花形中の花形で、主計局の管理職を務めるとその後はとんとん拍子に出世するそうだよ。
でも、国家財政を掌握している財務省の役人は無能では務まらない訳で、前王派の貴族共が一計を案じたらしい。人事に根回して、優秀なバジルさんを兵隊として主計局の下っ端に引っ張ったの。もちろん、その上司は無能な前王派の貴族共。バジルさんを直属の部下に置く課長とか、課長補佐とかに就任して、仕事を全てバジルさんに放って自分達はのうのうとその果実を貪っていたらしい。
バジルさんが優秀かつ真面目なことに加えて、気弱な性格だってことで付け込まれたんだって。
バジルさんを部下にした課長クラスは一年で昇進して他のポストに移るそうで、次もまた前王派の無能な貴族が上司としてやって来るそうなんだ。
昼行灯の前王が、おべっかを使って擦り寄ってくる貴族を甘やかしたツケが今でも払拭できていないみたい。
「気の毒にこの子、休みも無しで働かされていたそうよ。
それも、朝から働いて、毎日午前様だったみたいだし。
過労で倒れて、公爵家の屋敷で療養していたのよ。」
ミントさんがバジルさんの勤務状況を説明すると、カズヤ兄ちゃんが拳を振るわせて。
「財務卿、貴様、国家の大事をこの者一人に押し付けていたと申すか!」
日頃の温和な表情とは打って変わって、財務卿を叱り付けたんだ。
「ひえぇ、申し訳ございませぬ。
ですが現状、財務省の大半は前王に与した能無し共が主流でして…。
バジルが抜けると業務が滞ってしまうのも事実なのです。」
「あら、バジルはこの半月病気療養で休職していたはずよ。
その間の業務はどうなっているかしら?」
「いえ、ですから、バジルの机の上に…。」
ミントさんが問い詰めると、財務卿は蚊の鳴くような小さな声になったよ。どうやら、手付かずの書類がバジルさんの机の上に積み上がっているらしい。
「この馬鹿者! そんなものバジルの上司にさせれば良いだろうが!」
「ですが、あ奴らにさせると。
誤字やら、計算ミスやらが多くて、仕事が二度手間、三度手間になりまして…。
はっきり申して、業務の障害になるものですから。」
「そんな愚か者、さっさとクビにせんか!」
カズヤ兄ちゃんが財務省の醜態を知り声を荒げると。
「まあ、まあ、カズヤ、そう怒らないの。
財務卿だって、前王派から無能な子弟を押し付けられた被害者なのだから。」
ミントさんの話では財務卿は前王派と言う訳ではないらしい。
前王に与した愚か者共の多くは有力貴族らしく、裏から人事に手を回すのは常套手段なんだって。鼻薬を利かせて、人事に介入するらしい。
国家予算を私物化するつもりなのか、前王派の有力貴族は子弟を財務省に出仕させたいみたいなの。そのため、本来一番優秀な人材を集めるべき財務省が前王派の無能貴族の溜まり場になっているそうで、バジルさん達ごく少数の優秀な人材に仕事が集中しているらしい。
実際、バジルさんが辞めちゃうと、財務卿は重要な仕事を任せられる人が居ないみたい。
「カズヤにも責任があるのよ。
あなたが玉座に座った時、あの昼行灯の取り巻きを徹底的に粛清しなかったから。
今からでも遅くないわ。無能な連中の首を切りなさい。」
「いえ、母上、あの時はエロスキー一派を粛清したばかりでしたから。
あれ以上、父上の派閥の者を粛清すると反乱が起きかねなかったので…。」
そう言えば、二十を超える貴族家を取り潰したからね。相当な恨みを買っていたはずだし。
「陛下、私からもお願い申し上げます。
これ以上、無能共のお守りは勘弁してください。」
財務卿からも泣きが入ったよ。
「分かった、前王派の人事への介入については徹底的に調べ上げてやろう。
それと財務省の中間管理職は明日にでも放逐する。
後任は宰相に諮って優秀な人材を充てることにする。」
中間管理職以外の官吏については、宰相と財務卿を交えて検討することになったみたい。無能な連中は、配置転換ではなく免職だって。
**********
「しかし、いきなり今日辞職とは急ですね。
何か急を要することがあったのですか。」
バジルさんの退職についてカズヤ兄ちゃんが問い掛けると。
「ああ、この子、今度結婚することになってね。
マロンちゃんの後ろに控えているお付きの娘さん。
プティーニちゃんの家にお婿に入ることになったの。
病気療養中だから、辞めても問題ないと思ったのよね。」
ミントさんは呆れていたよ。
まさか、休職し始めて半月も経ったのに、誰も代わりの仕事をしていないとは思わなかったって。
カズヤ兄ちゃんは、二人の結婚を喜んでくれて、快く退職を認めてくれたんだ。
財務卿を騒がすことになった件についても、自分の目の届かないところで起きている不正を炙り出すことになって助かったって。
まあ、トアール国は大国だものね。幹部クラスならばともかく、中間管理職の不正までは王様の目が届く訳無いか…。
王妃となったオランの実姉ネーブル姉ちゃんと互いの子供を紹介し合っていたんだけど、そこに血相を変えたおじさんが飛び込んできたの。
えらく取り乱しているその御仁はどうやら財務卿らしい。
「何事だ、騒がしい。
私は今、休暇中であるぞ。
しかも来客中であるのが分からんのか?」
カズヤ兄ちゃんが財務卿の無礼を咎めると。
「ご無礼については謝罪申し上げます。
ですが、国の運営に掛かる一大事なのです。
是非とも陛下の裁可を仰ぎたく参上致しました。」
財務卿ほどの役職にある人が取り乱して居るんだから相当にヤバいことが起きているんだろうね。
そう言えば、ミントさんとバジルさんが向かったのも財務省だった、ちゃんと退職願いが受理されたかな。
財務卿がこんなに狼狽しているんじゃ、退職願いなんて些事は受け付けてもらえないかも…。
「それで一大事とは、何があったのだ。
ワイバーンが襲来したとでも言うのか?」
カズヤ兄ちゃんもワイバーンの群れと対峙したことがあるから、余程のことじゃないと動じなくなっているみたい。
「それが…。」
カズヤ兄ちゃんからの問い掛けに財務卿が返答しようと口を開き掛けたところで。
「財務卿、話はまだ終わっていませんよ。
話の途中で席を立つを立つなんて失礼じゃありませんこと。
せめてこれを受け取ってからでないと困りますわ。」
バジルさんを背後に従えたミントさんが姿を現したの。そのミントさんの手には退職願いが握られていたよ。
やっぱり、一官吏の退職願いなんて後回しにされたみたいだね。
「陛下、王母様の後ろにいるあの男。
あやつがいきなり現れまして…。」
そう言って財務卿が指差したのは…。
「うん、母上の後ろにいる者がどうかしたのか?」
カズヤ兄ちゃんは財務卿の指が指し示す方に視線を向け。
「そなた、バジルか?
母上と一緒とは珍しい。何かあったのか?」
当然、カズヤ兄ちゃんは、ミントさんがにっぽん爺のところに身を寄せていることを知っているんだろうね。
王都に居ないはずのミントさんが分家の三男坊と一緒にいることを、カズヤ兄ちゃんは奇異に感じたみたい。
「そ奴が今日限りで王宮の職務を辞すると言って来たのです。」
バジルさんを指差して忌々しそうな表情で、財務卿はカズヤ兄ちゃんへ訴えていたんだ。
「うん? それの何が問題なのだ?」
状況を把握できない様子で、カズヤ兄ちゃんは財務卿に説明を求めてた。
うん、カズヤ兄ちゃんの問い掛けはもっともだと思う。バジルさんの退職が国を揺るがす一大事とはとても思えないもん。
「あやつが急に辞めると、財務省の仕事が麻痺します。
それすなわち王宮の機能が麻痺することを意味するのですぞ。
これを一大事と言わずしてどうします。」
「何を大袈裟な…。
そう言えば、バジルは今どんな役職に就いておる。
局長クラスだとでも言うのか?」
バジルさんの退職程度のことで、休暇中、しかも私的な来客中を邪魔されたと知り、カズヤ兄ちゃんは不機嫌な表情を露わにしたよ。
因みに、カズヤ兄ちゃんはバジルさんのポストを把握してない様子で、局長クラスなら突然辞められたら困るのも頷けるがと言ってた。
すると、財務卿はあからさまにバツの悪い顔をして。
「いえ、バジルは主計局の主査をしております。
何と申しますか…、下から数えた方が…。」
カズヤ兄ちゃんの問い掛けに歯切れの悪い返答をしたんだ。
「ふむ、そなた、端役が一人辞めるくらいで騒ぎ立てたと申すか。
端役が一人辞めたくらいで、王宮が麻痺するはずが無かろうが。
まあ、母上の元側近が何故そんな端役に居たのかは甚だ疑問ではあるがな。」
御后様の側近をしてたんだもの、常識的に考えればもっと重要なポストが与えられて然るべきだよね。
カズヤ兄ちゃんはその辺の経緯は後で詳しく説明しろと財務卿に告げていたよ。
「いえ、それは…。」
カズヤ兄ちゃんの至極真っ当な指摘に、財務卿は顔に冷や汗を浮かべて言葉を詰まらせてたんだ。
**********
「ああ、それね。
前王派のあんぽんたんが人事に手を回したみたいなの。
重要なポストに就かせたら、馬車馬のように働かせることが出来ないでしょう。」
その身を縮こまらせて言葉を無くしている財務卿に代わってミントさんがカズヤ兄ちゃんの問い掛けに答えたんだ。
「母上は事情をご存じなのですか?」
「まあ、最近知ったのだけどね。
私も迂闊だったわ、色惚けしてたみたいでこの子の処遇を放置しちゃったし。」
財務省って国のお金を握っている重要な部署で、そこに配属される官吏はエリートなんだって。特に予算決定権を実質的に握っている主計局は花形中の花形で、主計局の管理職を務めるとその後はとんとん拍子に出世するそうだよ。
でも、国家財政を掌握している財務省の役人は無能では務まらない訳で、前王派の貴族共が一計を案じたらしい。人事に根回して、優秀なバジルさんを兵隊として主計局の下っ端に引っ張ったの。もちろん、その上司は無能な前王派の貴族共。バジルさんを直属の部下に置く課長とか、課長補佐とかに就任して、仕事を全てバジルさんに放って自分達はのうのうとその果実を貪っていたらしい。
バジルさんが優秀かつ真面目なことに加えて、気弱な性格だってことで付け込まれたんだって。
バジルさんを部下にした課長クラスは一年で昇進して他のポストに移るそうで、次もまた前王派の無能な貴族が上司としてやって来るそうなんだ。
昼行灯の前王が、おべっかを使って擦り寄ってくる貴族を甘やかしたツケが今でも払拭できていないみたい。
「気の毒にこの子、休みも無しで働かされていたそうよ。
それも、朝から働いて、毎日午前様だったみたいだし。
過労で倒れて、公爵家の屋敷で療養していたのよ。」
ミントさんがバジルさんの勤務状況を説明すると、カズヤ兄ちゃんが拳を振るわせて。
「財務卿、貴様、国家の大事をこの者一人に押し付けていたと申すか!」
日頃の温和な表情とは打って変わって、財務卿を叱り付けたんだ。
「ひえぇ、申し訳ございませぬ。
ですが現状、財務省の大半は前王に与した能無し共が主流でして…。
バジルが抜けると業務が滞ってしまうのも事実なのです。」
「あら、バジルはこの半月病気療養で休職していたはずよ。
その間の業務はどうなっているかしら?」
「いえ、ですから、バジルの机の上に…。」
ミントさんが問い詰めると、財務卿は蚊の鳴くような小さな声になったよ。どうやら、手付かずの書類がバジルさんの机の上に積み上がっているらしい。
「この馬鹿者! そんなものバジルの上司にさせれば良いだろうが!」
「ですが、あ奴らにさせると。
誤字やら、計算ミスやらが多くて、仕事が二度手間、三度手間になりまして…。
はっきり申して、業務の障害になるものですから。」
「そんな愚か者、さっさとクビにせんか!」
カズヤ兄ちゃんが財務省の醜態を知り声を荒げると。
「まあ、まあ、カズヤ、そう怒らないの。
財務卿だって、前王派から無能な子弟を押し付けられた被害者なのだから。」
ミントさんの話では財務卿は前王派と言う訳ではないらしい。
前王に与した愚か者共の多くは有力貴族らしく、裏から人事に手を回すのは常套手段なんだって。鼻薬を利かせて、人事に介入するらしい。
国家予算を私物化するつもりなのか、前王派の有力貴族は子弟を財務省に出仕させたいみたいなの。そのため、本来一番優秀な人材を集めるべき財務省が前王派の無能貴族の溜まり場になっているそうで、バジルさん達ごく少数の優秀な人材に仕事が集中しているらしい。
実際、バジルさんが辞めちゃうと、財務卿は重要な仕事を任せられる人が居ないみたい。
「カズヤにも責任があるのよ。
あなたが玉座に座った時、あの昼行灯の取り巻きを徹底的に粛清しなかったから。
今からでも遅くないわ。無能な連中の首を切りなさい。」
「いえ、母上、あの時はエロスキー一派を粛清したばかりでしたから。
あれ以上、父上の派閥の者を粛清すると反乱が起きかねなかったので…。」
そう言えば、二十を超える貴族家を取り潰したからね。相当な恨みを買っていたはずだし。
「陛下、私からもお願い申し上げます。
これ以上、無能共のお守りは勘弁してください。」
財務卿からも泣きが入ったよ。
「分かった、前王派の人事への介入については徹底的に調べ上げてやろう。
それと財務省の中間管理職は明日にでも放逐する。
後任は宰相に諮って優秀な人材を充てることにする。」
中間管理職以外の官吏については、宰相と財務卿を交えて検討することになったみたい。無能な連中は、配置転換ではなく免職だって。
**********
「しかし、いきなり今日辞職とは急ですね。
何か急を要することがあったのですか。」
バジルさんの退職についてカズヤ兄ちゃんが問い掛けると。
「ああ、この子、今度結婚することになってね。
マロンちゃんの後ろに控えているお付きの娘さん。
プティーニちゃんの家にお婿に入ることになったの。
病気療養中だから、辞めても問題ないと思ったのよね。」
ミントさんは呆れていたよ。
まさか、休職し始めて半月も経ったのに、誰も代わりの仕事をしていないとは思わなかったって。
カズヤ兄ちゃんは、二人の結婚を喜んでくれて、快く退職を認めてくれたんだ。
財務卿を騒がすことになった件についても、自分の目の届かないところで起きている不正を炙り出すことになって助かったって。
まあ、トアール国は大国だものね。幹部クラスならばともかく、中間管理職の不正までは王様の目が届く訳無いか…。
34
お気に入りに追加
295
あなたにおすすめの小説
義母に毒を盛られて前世の記憶を取り戻し覚醒しました、貴男は義妹と仲良くすればいいわ。
克全
ファンタジー
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。
11月9日「カクヨム」恋愛日間ランキング15位
11月11日「カクヨム」恋愛週間ランキング22位
11月11日「カクヨム」恋愛月間ランキング71位
11月4日「小説家になろう」恋愛異世界転生/転移恋愛日間78位
《勘違い》で婚約破棄された令嬢は失意のうちに自殺しました。
友坂 悠
ファンタジー
「婚約を考え直そう」
貴族院の卒業パーティーの会場で、婚約者フリードよりそう告げられたエルザ。
「それは、婚約を破棄されるとそういうことなのでしょうか?」
耳を疑いそう聞き返すも、
「君も、その方が良いのだろう?」
苦虫を噛み潰すように、そう吐き出すフリードに。
全てに絶望し、失意のうちに自死を選ぶエルザ。
絶景と評判の観光地でありながら、自殺の名所としても知られる断崖絶壁から飛び降りた彼女。
だったのですが。
【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
【本編完結】さようなら、そしてどうかお幸せに ~彼女の選んだ決断
Hinaki
ファンタジー
16歳の侯爵令嬢エルネスティーネには結婚目前に控えた婚約者がいる。
23歳の公爵家当主ジークヴァルト。
年上の婚約者には気付けば幼いエルネスティーネよりも年齢も近く、彼女よりも女性らしい色香を纏った女友達が常にジークヴァルトの傍にいた。
ただの女友達だと彼は言う。
だが偶然エルネスティーネは知ってしまった。
彼らが友人ではなく想い合う関係である事を……。
また政略目的で結ばれたエルネスティーネを疎ましく思っていると、ジークヴァルトは恋人へ告げていた。
エルネスティーネとジークヴァルトの婚姻は王命。
覆す事は出来ない。
溝が深まりつつも結婚二日前に侯爵邸へ呼び出されたエルネスティーネ。
そこで彼女は彼の私室……寝室より聞こえてくるのは悍ましい獣にも似た二人の声。
二人がいた場所は二日後には夫婦となるであろうエルネスティーネとジークヴァルトの為の寝室。
これ見よがしに少し開け放たれた扉より垣間見える寝台で絡み合う二人の姿と勝ち誇る彼女の艶笑。
エルネスティーネは限界だった。
一晩悩んだ結果彼女の選んだ道は翌日愛するジークヴァルトへ晴れやかな笑顔で挨拶すると共にバルコニーより身を投げる事。
初めて愛した男を憎らしく思う以上に彼を心から愛していた。
だから愛する男の前で死を選ぶ。
永遠に私を忘れないで、でも愛する貴方には幸せになって欲しい。
矛盾した想いを抱え彼女は今――――。
長い間スランプ状態でしたが自分の中の性と生、人間と神、ずっと前からもやもやしていたものが一応の答えを導き出し、この物語を始める事にしました。
センシティブな所へ触れるかもしれません。
これはあくまで私の考え、思想なのでそこの所はどうかご容赦して下さいませ。
僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?
闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。
しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。
幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。
お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。
しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。
『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』
さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。
〈念の為〉
稚拙→ちせつ
愚父→ぐふ
⚠︎注意⚠︎
不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。
【完結】婚約破棄されて修道院へ送られたので、今後は自分のために頑張ります!
猫石
ファンタジー
「ミズリーシャ・ザナスリー。 公爵の家門を盾に他者を蹂躙し、悪逆非道を尽くしたお前の所業! 決して許してはおけない! よって我がの名の元にお前にはここで婚約破棄を言い渡す! 今後は修道女としてその身を神を捧げ、生涯後悔しながら生きていくがいい!」
無実の罪を着せられた私は、その瞬間に前世の記憶を取り戻した。
色々と足りない王太子殿下と婚約破棄でき、その後の自由も確約されると踏んだ私は、意気揚々と王都のはずれにある小さな修道院へ向かったのだった。
注意⚠️このお話には、妊娠出産、新生児育児のお話がバリバリ出てきます。(訳ありもあります)お嫌いな方は自衛をお願いします!
2023/10/12 作者の気持ち的に、断罪部分を最後の番外にしました。
2023/10/31第16回ファンタジー小説大賞奨励賞頂きました。応援・投票ありがとうございました!
☆このお話は完全フィクションです、創作です、妄想の作り話です。現実世界と混同せず、あぁ、ファンタジーだもんな、と、念頭に置いてお読みください。
☆作者の趣味嗜好作品です。イラッとしたり、ムカッとしたりした時には、そっと別の素敵な作家さんの作品を検索してお読みください。(自己防衛大事!)
☆誤字脱字、誤変換が多いのは、作者のせいです。頑張って音読してチェックして!頑張ってますが、ごめんなさい、許してください。
★小説家になろう様でも公開しています。
妹しか愛していない母親への仕返しに「わたくしはお母様が男に無理矢理に犯されてできた子」だと言ってやった。
ラララキヲ
ファンタジー
「貴女は次期当主なのだから」
そう言われて長女のアリーチェは育った。どれだけ寂しくてもどれだけツラくても、自分がこのエルカダ侯爵家を継がなければいけないのだからと我慢して頑張った。
長女と違って次女のルナリアは自由に育てられた。両親に愛され、勉強だって無理してしなくてもいいと甘やかされていた。
アリーチェはそれを羨ましいと思ったが、自分が長女で次期当主だから仕方がないと納得していて我慢した。
しかしアリーチェが18歳の時。
アリーチェの婚約者と恋仲になったルナリアを、両親は許し、二人を祝福しながら『次期当主をルナリアにする』と言い出したのだ。
それにはもうアリーチェは我慢ができなかった。
父は元々自分たち(子供)には無関心で、アリーチェに厳し過ぎる教育をしてきたのは母親だった。『次期当主だから』とあんなに言ってきた癖に、それを簡単に覆した母親をアリーチェは許せなかった。
そして両親はアリーチェを次期当主から下ろしておいて、アリーチェをルナリアの補佐に付けようとした。
そのどこまてもアリーチェの人格を否定する考え方にアリーチェの心は死んだ。
──自分を愛してくれないならこちらもあなたたちを愛さない──
アリーチェは行動を起こした。
もうあなたたちに情はない。
─────
◇これは『ざまぁ』の話です。
◇テンプレ [妹贔屓母]
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇ご都合展開。矛盾もあるかも。
◇なろうにも上げてます。
※HOTランキング〔2位〕(4/19)☆ファンタジーランキング〔1位〕☆入り、ありがとうございます!!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる