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第二三章 時は緩やかに流れて…

第826話 国家の大事だなんて大袈裟な…

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 バジルさんの退職願いを出しに行くと言うミントさんと一緒に久々にトアール国の王宮を訪ねたおいら達。
 王妃となったオランの実姉ネーブル姉ちゃんと互いの子供を紹介し合っていたんだけど、そこに血相を変えたおじさんが飛び込んできたの。
 えらく取り乱しているその御仁はどうやら財務卿らしい。

「何事だ、騒がしい。
 私は今、休暇中であるぞ。
 しかも来客中であるのが分からんのか?」

 カズヤ兄ちゃんが財務卿の無礼を咎めると。

「ご無礼については謝罪申し上げます。
 ですが、国の運営に掛かる一大事なのです。
 是非とも陛下の裁可を仰ぎたく参上致しました。」

 財務卿ほどの役職にある人が取り乱して居るんだから相当にヤバいことが起きているんだろうね。
 そう言えば、ミントさんとバジルさんが向かったのも財務省だった、ちゃんと退職願いが受理されたかな。
 財務卿がこんなに狼狽しているんじゃ、退職願いなんて些事は受け付けてもらえないかも…。

「それで一大事とは、何があったのだ。
 ワイバーンが襲来したとでも言うのか?」

 カズヤ兄ちゃんもワイバーンの群れと対峙したことがあるから、余程のことじゃないと動じなくなっているみたい。

「それが…。」

 カズヤ兄ちゃんからの問い掛けに財務卿が返答しようと口を開き掛けたところで。

「財務卿、話はまだ終わっていませんよ。
 話の途中で席を立つを立つなんて失礼じゃありませんこと。
 せめてこれを受け取ってからでないと困りますわ。」

 バジルさんを背後に従えたミントさんが姿を現したの。そのミントさんの手には退職願いが握られていたよ。
 やっぱり、一官吏の退職願いなんて後回しにされたみたいだね。

「陛下、王母様の後ろにいるあの男。
 あやつがいきなり現れまして…。」

 そう言って財務卿が指差したのは…。

「うん、母上の後ろにいる者がどうかしたのか?」

 カズヤ兄ちゃんは財務卿の指が指し示す方に視線を向け。

「そなた、バジルか?
 母上と一緒とは珍しい。何かあったのか?」

 当然、カズヤ兄ちゃんは、ミントさんがにっぽん爺のところに身を寄せていることを知っているんだろうね。
 王都に居ないはずのミントさんが分家の三男坊と一緒にいることを、カズヤ兄ちゃんは奇異に感じたみたい。

「そ奴が今日限りで王宮の職務を辞すると言って来たのです。」

 バジルさんを指差して忌々しそうな表情で、財務卿はカズヤ兄ちゃんへ訴えていたんだ。

「うん? それの何が問題なのだ?」

 状況を把握できない様子で、カズヤ兄ちゃんは財務卿に説明を求めてた。
 うん、カズヤ兄ちゃんの問い掛けはもっともだと思う。バジルさんの退職が国を揺るがす一大事とはとても思えないもん。

「あやつが急に辞めると、財務省の仕事が麻痺します。
 それすなわち王宮の機能が麻痺することを意味するのですぞ。
 これを一大事と言わずしてどうします。」

「何を大袈裟な…。
 そう言えば、バジルは今どんな役職に就いておる。
 局長クラスだとでも言うのか?」

 バジルさんの退職程度のことで、休暇中、しかも私的な来客中を邪魔されたと知り、カズヤ兄ちゃんは不機嫌な表情を露わにしたよ。
 因みに、カズヤ兄ちゃんはバジルさんのポストを把握してない様子で、局長クラスなら突然辞められたら困るのも頷けるがと言ってた。

 すると、財務卿はあからさまにバツの悪い顔をして。

「いえ、バジルは主計局の主査をしております。
 何と申しますか…、下から数えた方が…。」

 カズヤ兄ちゃんの問い掛けに歯切れの悪い返答をしたんだ。

「ふむ、そなた、端役が一人辞めるくらいで騒ぎ立てたと申すか。
 端役が一人辞めたくらいで、王宮が麻痺するはずが無かろうが。
 まあ、母上の元側近が何故そんな端役に居たのかは甚だ疑問ではあるがな。」

 御后様の側近をしてたんだもの、常識的に考えればもっと重要なポストが与えられて然るべきだよね。
 カズヤ兄ちゃんはその辺の経緯は後で詳しく説明しろと財務卿に告げていたよ。

「いえ、それは…。」

 カズヤ兄ちゃんの至極真っ当な指摘に、財務卿は顔に冷や汗を浮かべて言葉を詰まらせてたんだ。

          **********

「ああ、それね。
 前王派のあんぽんたんが人事に手を回したみたいなの。
 重要なポストに就かせたら、馬車馬のように働かせることが出来ないでしょう。」

 その身を縮こまらせて言葉を無くしている財務卿に代わってミントさんがカズヤ兄ちゃんの問い掛けに答えたんだ。

「母上は事情をご存じなのですか?」

「まあ、最近知ったのだけどね。
 私も迂闊だったわ、色惚けしてたみたいでこの子の処遇を放置しちゃったし。」

 財務省って国のお金を握っている重要な部署で、そこに配属される官吏はエリートなんだって。特に予算決定権を実質的に握っている主計局は花形中の花形で、主計局の管理職を務めるとその後はとんとん拍子に出世するそうだよ。
 でも、国家財政を掌握している財務省の役人は無能では務まらない訳で、前王派の貴族共が一計を案じたらしい。人事に根回して、優秀なバジルさんを兵隊として主計局の下っ端に引っ張ったの。もちろん、その上司は無能な前王派の貴族共。バジルさんを直属の部下に置く課長とか、課長補佐とかに就任して、仕事を全てバジルさんに放って自分達はのうのうとその果実を貪っていたらしい。
 バジルさんが優秀かつ真面目なことに加えて、気弱な性格だってことで付け込まれたんだって。
 バジルさんを部下にした課長クラスは一年で昇進して他のポストに移るそうで、次もまた前王派の無能な貴族が上司としてやって来るそうなんだ。
 昼行灯の前王が、おべっかを使って擦り寄ってくる貴族を甘やかしたツケが今でも払拭できていないみたい。

「気の毒にこの子、休みも無しで働かされていたそうよ。
 それも、朝から働いて、毎日午前様だったみたいだし。
 過労で倒れて、公爵家の屋敷で療養していたのよ。」

 ミントさんがバジルさんの勤務状況を説明すると、カズヤ兄ちゃんが拳を振るわせて。

「財務卿、貴様、国家の大事をこの者一人に押し付けていたと申すか!」

 日頃の温和な表情とは打って変わって、財務卿を叱り付けたんだ。

「ひえぇ、申し訳ございませぬ。
 ですが現状、財務省の大半は前王に与した能無し共が主流でして…。
 バジルが抜けると業務が滞ってしまうのも事実なのです。」

「あら、バジルはこの半月病気療養で休職していたはずよ。
 その間の業務はどうなっているかしら?」

「いえ、ですから、バジルの机の上に…。」

 ミントさんが問い詰めると、財務卿は蚊の鳴くような小さな声になったよ。どうやら、手付かずの書類がバジルさんの机の上に積み上がっているらしい。

「この馬鹿者! そんなものバジルの上司にさせれば良いだろうが!」

「ですが、あ奴らにさせると。
 誤字やら、計算ミスやらが多くて、仕事が二度手間、三度手間になりまして…。
 はっきり申して、業務の障害になるものですから。」

「そんな愚か者、さっさとクビにせんか!」

 カズヤ兄ちゃんが財務省の醜態を知り声を荒げると。

「まあ、まあ、カズヤ、そう怒らないの。
 財務卿だって、前王派から無能な子弟を押し付けられた被害者なのだから。」

 ミントさんの話では財務卿は前王派と言う訳ではないらしい。
 前王に与した愚か者共の多くは有力貴族らしく、裏から人事に手を回すのは常套手段なんだって。鼻薬を利かせて、人事に介入するらしい。
 国家予算を私物化するつもりなのか、前王派の有力貴族は子弟を財務省に出仕させたいみたいなの。そのため、本来一番優秀な人材を集めるべき財務省が前王派の無能貴族の溜まり場になっているそうで、バジルさん達ごく少数の優秀な人材に仕事が集中しているらしい。
 実際、バジルさんが辞めちゃうと、財務卿は重要な仕事を任せられる人が居ないみたい。

「カズヤにも責任があるのよ。
 あなたが玉座に座った時、あの昼行灯の取り巻きを徹底的に粛清しなかったから。
 今からでも遅くないわ。無能な連中の首を切りなさい。」

「いえ、母上、あの時はエロスキー一派を粛清したばかりでしたから。
 あれ以上、父上の派閥の者を粛清すると反乱が起きかねなかったので…。」

 そう言えば、二十を超える貴族家を取り潰したからね。相当な恨みを買っていたはずだし。

「陛下、私からもお願い申し上げます。
 これ以上、無能共のお守りは勘弁してください。」

 財務卿からも泣きが入ったよ。

「分かった、前王派の人事への介入については徹底的に調べ上げてやろう。
 それと財務省の中間管理職は明日にでも放逐する。
 後任は宰相に諮って優秀な人材を充てることにする。」

 中間管理職以外の官吏については、宰相と財務卿を交えて検討することになったみたい。無能な連中は、配置転換ではなく免職だって。

          **********

「しかし、いきなり今日辞職とは急ですね。
 何か急を要することがあったのですか。」

 バジルさんの退職についてカズヤ兄ちゃんが問い掛けると。

「ああ、この子、今度結婚することになってね。
 マロンちゃんの後ろに控えているお付きの娘さん。
 プティーニちゃんの家にお婿に入ることになったの。
 病気療養中だから、辞めても問題ないと思ったのよね。」

 ミントさんは呆れていたよ。
 まさか、休職し始めて半月も経ったのに、誰も代わりの仕事をしていないとは思わなかったって。

 カズヤ兄ちゃんは、二人の結婚を喜んでくれて、快く退職を認めてくれたんだ。
 財務卿を騒がすことになった件についても、自分の目の届かないところで起きている不正を炙り出すことになって助かったって。
 まあ、トアール国は大国だものね。幹部クラスならばともかく、中間管理職の不正までは王様の目が届く訳無いか…。
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