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第十九章 難儀な連中が現れたよ…
第627話 妙な食い逃げ犯に遭遇したよ…
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王都で広場で串焼き屋のおばさんから串焼きをご馳走になったんだ。
そのまま、おばさんとよもやま話をしてたんだけど。
聞けば、昨夜目撃されたと言う『空飛ぶ怪しい光』のことが巷で大分噂になってるみたい。
しかもその光の玉は、タロウと何らかの関わりがあるようなの。
でも、タロウったら、はぐらかそうとするんだ。
おいら、何かやましいことでもあるのかと追求しようと思ったんだけど…。
おいらが、タロウを問い詰めようとした時のこと。
「集団で食い逃げとはふてえ野郎共だ!
王宮の騎士様に突き出してやらぁ!」
そんな怒声が響いたかと思うと、広場に面した飯屋から男が四人転がり出して来たよ。
腕っ節の良い店主に叩き出されたのか、勢い良く転がった連中は尻もちをついてた。
四人組で白昼堂々食いに逃げだなんて、また随分と大胆な輩も居たものだと感心していると…。
「貴様、神に仕える我々にこんな仕打ちをしてタダで済むと思っているのか。
我々、神の使徒が食事に足を運んだのだ。
浄財として快く食事を差し出すのが礼儀と言うものであろうが。」
食い逃げ犯の一人が、店の主人に食って掛かったんだ。なにこれ、逆ギレって奴?
だいたい、こいつら何を言っているんだろう。
神が何だか知らないけど、どんな立場の人でも食事代を踏み倒しちゃダメだよ。
女王のおいらだって、飯屋で食事をしたらちゃんとお代を払うんだもの。
すると。
「そうだ、そうだ。
司教様が食事をとりに足を運ばれたのだ。
ご奉仕として食事を差し出すのは当たり前であろう。
感謝の印としてなにがしかの浄財を包んでも良いところだぞ。」
別の一人が最初の男に追従するように言ったんだ。
飯屋に来てやったんだから金を出せって…、こいつら、何言ってんだ。
食い逃げ犯の偉そうな態度にムッとしたんだろうね。
「てめえ、この上金を出せだって。
どんだけ図々しい奴らだ。
盗っ人猛々しいとはこのことだぜ。」
そんな言葉を吐き捨てた飯屋のご主人は、尻もちをついてる連中を足蹴にしてたよ。
「よせ、この罰当たり。こら、よすんだ!」
「いてえ、何をする。
そんな不心得では、三代先まで祟られるぞ!」
結局、食い逃げ犯の四人組は、飯屋の主人にボコボコにされたんだ。
ナニこの、茶番…。こいつら、本気で食い逃げできると思っていたんだろうか…。
**********
飯屋の店主と食い逃げ犯のやり取りを眺めていると。
「うわっ、あれ、教団の連中じゃない…。
連中、この大陸まで逃げて来たんだ。」
おいらの後ろに控えていたウレシノが呆れ口調で呟いたの。
「あいつらのこと知っているの?
ヌル王国の連中なのかな?」
「ああ、あの姿形から見るに『幸福な家庭の光』教団の連中ですね。
ヌル王国と言うより、オードゥラ大陸で一頃流行ったペテン師集団の一つです。
大陸では『教団ビジネス』とか、『神様ビジネス』とか呼ばれてますが…。
人の心の弱みに付け込んで、詐欺や集りをする連中ですよ。
ヌル王国でも多々問題を起こして厳しく取り締まるようになりまして。
おそらく、オードゥラ大陸を逃げ出してこの大陸に渡って来たのかと。」
ウレシノの話によると、無銭飲食なんてのは日常茶飯事で、まだ可愛い方らしいよ。
死後に現世の罪が許されるとか唆して、落書きみたいな紙切れを法外な値段で売り付けたり。
身内に不幸があると、先祖の罪が祟っていると脅してゴミみたいな壺を法外な値段で売り付けたり。
そんなアコギな商売をしている連中なんだって。
特に身内に何か不幸があると、何処からともなくハイエナのように嗅ぎ付けてやって来るらしいよ。
ウレシノは言ってたよ、下手に付け入れられると全財産を搾り取られるって。
そのくせ、自分達が支払う立場になると、神への浄財と称してびた一文支払おうとしないケチな集団らしいの。
「なにそれ、バカじゃないの?
紙切れや壺を買って、罪が許されるなんて有り得ないでしょう…。
そんな詐欺に引っ掛かる人がいるなんて…。」
殆ど無価値の壺一つで、金貨一枚も取るんだって。
ヌル王国では銀貨千枚で金貨一枚らしいから、この国の銀貨で七百五十枚くらい。
駆け出しの職人の給金が月銀貨二百枚くらいだから、給金四ヶ月分近くだね。
「それが、そうでも無いのです。
オードゥラ大陸って戦乱に明け暮れていたでしょう。
人の心の弱みに付け込む隙が、沢山あったのですよ。」
おいらが懐疑的な感想を述べると、ウレシノは騙される人は結構いると言うんだ。
「どういうこと?」
「戦死した人の遺族や農地の荒廃により飢饉に苦しむ人達。
そんな人達に、本人や先祖の行いが悪かったから不幸を招いたのだと告げ。
浄罪せずに放置すると不幸は続くと脅します。
そして最後は、これを買えば神の赦しが得られるなんて言葉で騙すのです。
だから、ひところ雨後の筍のように『教団』が増えまして…。
この十年くらい、被害が急増して酷いものでした。」
因みに『神』と言うのは、それぞれの教団がでっち上げた架空の存在。
タロウの住んでた世界でもお伽話の中に神様ってのが出て来るって言ってたね。
たいていの場合、万物の創造主にして全知全能の存在って設定になっていて。
どんな荒唐無稽な内容でも神の御業ってことにして、有耶無耶にできるお便利な登場人物だって。
まあ、お伽話の中だけなら害が無いから良いけど…。
現実の世の中で、そんなモノをダシに人を騙す連中がいるなんて厄介極まりないね。
まともな精神状態の時なら、そんな与太話に引っ掛かる人は居ないのだろうけど。
心が弱っている時に、言葉巧みに言い寄られるとコロッと騙されるそうだからね。
連中、ペテン師の集団だけあって、人を騙す話術にも長けているみたいだし。
そんな厄介な連中が、この国に上陸しているなんて困ったものだよ。
「でも、何で、そんな連中、今頃この国に着いたんだろう?
ムルティの結界があるから、大海を越えられないはずなのに…。」
「いえ、それは違うのではありませんか?
連中、もっと前からこの大陸若しくはこの国に着いてたのでは。
今まで鳴りを潜めていたか、水面下で布教活動をしていたのだと思います。
この大陸って平和ですし、騙される人が少なくて資金が底を突いたのでは?
だから、無銭飲食などしたのだと思います。」
ウレシノがおいらの考え違いを指摘してくれたよ。
加えて半年前には、ヌル王国の水軍による侵攻もあったし。
連中はヌル王国でお尋ね者になっているから、捕縛を恐れて表立って行動できなかったんじゃないかって。
確かに、ウレシノの言う通りかも知れない。
結界の補修前にこの大陸に来ちゃったなら、もう帰りたくても帰れないしね。
そのまま、おばさんとよもやま話をしてたんだけど。
聞けば、昨夜目撃されたと言う『空飛ぶ怪しい光』のことが巷で大分噂になってるみたい。
しかもその光の玉は、タロウと何らかの関わりがあるようなの。
でも、タロウったら、はぐらかそうとするんだ。
おいら、何かやましいことでもあるのかと追求しようと思ったんだけど…。
おいらが、タロウを問い詰めようとした時のこと。
「集団で食い逃げとはふてえ野郎共だ!
王宮の騎士様に突き出してやらぁ!」
そんな怒声が響いたかと思うと、広場に面した飯屋から男が四人転がり出して来たよ。
腕っ節の良い店主に叩き出されたのか、勢い良く転がった連中は尻もちをついてた。
四人組で白昼堂々食いに逃げだなんて、また随分と大胆な輩も居たものだと感心していると…。
「貴様、神に仕える我々にこんな仕打ちをしてタダで済むと思っているのか。
我々、神の使徒が食事に足を運んだのだ。
浄財として快く食事を差し出すのが礼儀と言うものであろうが。」
食い逃げ犯の一人が、店の主人に食って掛かったんだ。なにこれ、逆ギレって奴?
だいたい、こいつら何を言っているんだろう。
神が何だか知らないけど、どんな立場の人でも食事代を踏み倒しちゃダメだよ。
女王のおいらだって、飯屋で食事をしたらちゃんとお代を払うんだもの。
すると。
「そうだ、そうだ。
司教様が食事をとりに足を運ばれたのだ。
ご奉仕として食事を差し出すのは当たり前であろう。
感謝の印としてなにがしかの浄財を包んでも良いところだぞ。」
別の一人が最初の男に追従するように言ったんだ。
飯屋に来てやったんだから金を出せって…、こいつら、何言ってんだ。
食い逃げ犯の偉そうな態度にムッとしたんだろうね。
「てめえ、この上金を出せだって。
どんだけ図々しい奴らだ。
盗っ人猛々しいとはこのことだぜ。」
そんな言葉を吐き捨てた飯屋のご主人は、尻もちをついてる連中を足蹴にしてたよ。
「よせ、この罰当たり。こら、よすんだ!」
「いてえ、何をする。
そんな不心得では、三代先まで祟られるぞ!」
結局、食い逃げ犯の四人組は、飯屋の主人にボコボコにされたんだ。
ナニこの、茶番…。こいつら、本気で食い逃げできると思っていたんだろうか…。
**********
飯屋の店主と食い逃げ犯のやり取りを眺めていると。
「うわっ、あれ、教団の連中じゃない…。
連中、この大陸まで逃げて来たんだ。」
おいらの後ろに控えていたウレシノが呆れ口調で呟いたの。
「あいつらのこと知っているの?
ヌル王国の連中なのかな?」
「ああ、あの姿形から見るに『幸福な家庭の光』教団の連中ですね。
ヌル王国と言うより、オードゥラ大陸で一頃流行ったペテン師集団の一つです。
大陸では『教団ビジネス』とか、『神様ビジネス』とか呼ばれてますが…。
人の心の弱みに付け込んで、詐欺や集りをする連中ですよ。
ヌル王国でも多々問題を起こして厳しく取り締まるようになりまして。
おそらく、オードゥラ大陸を逃げ出してこの大陸に渡って来たのかと。」
ウレシノの話によると、無銭飲食なんてのは日常茶飯事で、まだ可愛い方らしいよ。
死後に現世の罪が許されるとか唆して、落書きみたいな紙切れを法外な値段で売り付けたり。
身内に不幸があると、先祖の罪が祟っていると脅してゴミみたいな壺を法外な値段で売り付けたり。
そんなアコギな商売をしている連中なんだって。
特に身内に何か不幸があると、何処からともなくハイエナのように嗅ぎ付けてやって来るらしいよ。
ウレシノは言ってたよ、下手に付け入れられると全財産を搾り取られるって。
そのくせ、自分達が支払う立場になると、神への浄財と称してびた一文支払おうとしないケチな集団らしいの。
「なにそれ、バカじゃないの?
紙切れや壺を買って、罪が許されるなんて有り得ないでしょう…。
そんな詐欺に引っ掛かる人がいるなんて…。」
殆ど無価値の壺一つで、金貨一枚も取るんだって。
ヌル王国では銀貨千枚で金貨一枚らしいから、この国の銀貨で七百五十枚くらい。
駆け出しの職人の給金が月銀貨二百枚くらいだから、給金四ヶ月分近くだね。
「それが、そうでも無いのです。
オードゥラ大陸って戦乱に明け暮れていたでしょう。
人の心の弱みに付け込む隙が、沢山あったのですよ。」
おいらが懐疑的な感想を述べると、ウレシノは騙される人は結構いると言うんだ。
「どういうこと?」
「戦死した人の遺族や農地の荒廃により飢饉に苦しむ人達。
そんな人達に、本人や先祖の行いが悪かったから不幸を招いたのだと告げ。
浄罪せずに放置すると不幸は続くと脅します。
そして最後は、これを買えば神の赦しが得られるなんて言葉で騙すのです。
だから、ひところ雨後の筍のように『教団』が増えまして…。
この十年くらい、被害が急増して酷いものでした。」
因みに『神』と言うのは、それぞれの教団がでっち上げた架空の存在。
タロウの住んでた世界でもお伽話の中に神様ってのが出て来るって言ってたね。
たいていの場合、万物の創造主にして全知全能の存在って設定になっていて。
どんな荒唐無稽な内容でも神の御業ってことにして、有耶無耶にできるお便利な登場人物だって。
まあ、お伽話の中だけなら害が無いから良いけど…。
現実の世の中で、そんなモノをダシに人を騙す連中がいるなんて厄介極まりないね。
まともな精神状態の時なら、そんな与太話に引っ掛かる人は居ないのだろうけど。
心が弱っている時に、言葉巧みに言い寄られるとコロッと騙されるそうだからね。
連中、ペテン師の集団だけあって、人を騙す話術にも長けているみたいだし。
そんな厄介な連中が、この国に上陸しているなんて困ったものだよ。
「でも、何で、そんな連中、今頃この国に着いたんだろう?
ムルティの結界があるから、大海を越えられないはずなのに…。」
「いえ、それは違うのではありませんか?
連中、もっと前からこの大陸若しくはこの国に着いてたのでは。
今まで鳴りを潜めていたか、水面下で布教活動をしていたのだと思います。
この大陸って平和ですし、騙される人が少なくて資金が底を突いたのでは?
だから、無銭飲食などしたのだと思います。」
ウレシノがおいらの考え違いを指摘してくれたよ。
加えて半年前には、ヌル王国の水軍による侵攻もあったし。
連中はヌル王国でお尋ね者になっているから、捕縛を恐れて表立って行動できなかったんじゃないかって。
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