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第十八章【間章】おいらが生まれるよりずっと前のことだって
第598話 流れ星に乗って来たんだって…
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アルトのお母さん、アカシアさんのところでこの大地の姿を見せたもらったよ。
絵よりも精密に現実の姿を写し取ったものだと言ってたけど。
まん丸で青く光っていてとても綺麗だったよ。
アルトが言っていた通り、この大地も天空に浮かんでいる星なのだと良く分かった。
でも、一番驚いたのは…。
「アカシアさんって、六億年以上生きているの?
妖精って長生きするんだなと思ってたけど…。
そこまで長生きだなんて、想像もしてなかったよ。」
おいらが感じたままを口にすると。
「マロン、驚くのはそこか?
アカシアさんの話が事実だとすると。
妖精族は宇宙人だと言うことになるんだぞ。
俺にはそっちの方が驚きだが。」
どうやら、タロウとおいらでは驚きのツボが違うみたいだった。
「宇宙? 何それ?」
「おまっ…。さっきから何を聞いていたんだ。
アルト姐さんやアカシアさんが言ってるだろうが。
この星も含めて、星が存在する空間を全部ひっくるめて宇宙って言うんだよ。」
「あっ、なるほど。この星も宇宙の中にあるんだね。
それで、妖精族が宇宙人だってことにどうして驚いているの?
この星も宇宙にあるのなら、ここに居るみんな、宇宙人じゃない。」
「だぁぁぁ、そうじゃない。
アカシアさんは他の星からやって来たと言ってるんだ。
宇宙を渡って、何処か遠い星から。」
どうやらおいらとタロウには認識の食い違いがあるようで。
タロウの言葉からは何処か歯痒そうな感情が窺えたよ。
「いや、でも、ほら見なよ。
星ってあんなにいっぱいあるんだよ。
一つ一つが、この星のような大地なら。
人の住む星があっても不思議じゃないと思うよ。
他所の星からお客さんが来ても驚くことないじゃない。」
壁に映し出された映像は尚もこの星から遠ざかり、やがて壁いっぱいに星が映し出されていたの。
その頃には、壁に映る星のどれがおいら達の住む星か分からなくなっていたよ。
「この星に生命に満ち溢れているのは奇跡と言っても良いんだぜ。
いいか、マロン、人に限らず生物は水と空気が無けりゃ生きられないんだ。
広い宇宙にある星の殆どには、その水も空気も無いんだぞ。
少なくとも俺が居た地球の科学水準じゃ、生物が住める星は見つけられなかったし。
それにな、この映像じゃ近くに見えるかも知れないが。
実際には星と星は気が遠くなるほど離れているんだ。
地球の技術じゃ星と星の間を旅する事なんて、夢のまた夢だったよ。」
タロウの住んでいた地球は、この星よりも遥かに科学技術が進歩しているそうで。
地球には、望遠鏡という宇宙の遥か遠くを観察出来る道具があるらしいけど。
その望遠鏡を使って永年観測しても、生物が住める星は見つからないそうだよ。
それに、宇宙空間の移動に関しても。
この星の『ルナ』と同じように、地球にも『月』と呼ばれる衛星があるそうで。
地球の科学技術では、月まで人を送るのがやっとだったらしい。
それも気軽な旅行ではなく、極一部の人が命懸けで到達するのがやっとだって。
アカシアさんの言葉が真実ならと前置きして、タロウは言ったの。
この星以外に、知的生命体が住んでいる星があること自体が驚くべきことだし。
星と星との間を移動してきたことは、もっと驚くことなんだと力説してたよ。
アカシアさんの故郷は、地球よりも遥かに科学技術が進歩してたんだろうって。
**********
「ふーん、そんなものなんだ…。
そんなことを言われても。
この大地の外に広い宇宙が広がっているなんて初めて知ったし。
この星が奇跡みたいなものだと言われてもピンとこないよ。」
タロウの言葉を聞いても、「へえ、そうなんだ」くらいしか言えないって。
だって、あんなにいっぱい星があるんだもの。
人が住む星が、一つ二つあってもおかしくないと思うのが自然だよ。
「マロンちゃんがそう思うのも、もっともだと思うわ。
今この大陸の人々は星を観察する術すら持たないのだから。
唯ね、タロウ君の言葉の方が正しいのよ。
宇宙にはこんなに星が溢れているのに…。
生命を育むことが可能な星は極めて稀なの。」
アカシアさんは、おいらを微笑まし気に見ながらそんなことを言ったの。
何か癪だけど、タロウの言っていることの方が正しいらしいよ。タロウの癖に…。
「それで、アカシアさんの乗ってきた星間航行船は何処にあるんだ?
この地下か? それとも経年劣化で朽ちちゃったのか?
俺、異なる惑星系の間を航行できる宇宙船って見てみたいぜ。
やっぱり、SFみたいに次元跳躍とかするのかな。」
タロウは興味津々って感じでアカシアさんに尋ねたの。
「残念ね。恒星間航行船はこのラボで造っていた訳じゃないの。
それに完成を見ることは無かったわ。
計画は途中でとん挫したの…。」
「それじゃ、どうやって元の星からやって来たと言うんだ。
まさか、アルト姐さんみたいに自分で飛んできたとか言うんじゃないだろうな。
いくらなんでも、生身で宇宙空間を飛ぶのは無理だろう?」
タロウの話では惑星の重力圏を脱するのには相当な推進力を要し、妖精さんの羽ばたきくらいじゃ無理らしい。
また、真空の宇宙空間じゃ、羽ばたきでは前に進めないそうだよ。
そしてなりより、妖精さんも生物である限り、無酸素の宇宙空間じゃ生きていけないんだって。
「流れ星よ。
流れ星に乗ってこの星に漂着したの。
いえ、衝突したと言った方が正しいかしら。」
「流れ星って…。
ファンタジーがいきなりSFっぽくなったと思ったら。
また、ファンタジーに逆戻りかよ。
いったいどんな事情があったんだ?」
タロウはアカシアさんの言葉を聞いて首をひねっていたよ。
「事故よ。
恒星間航行船が完成しなかったのも。
私達が流れ星に乗って来たのも同じ事故のせい。
まあ、どんな偶然か、漂着した星が生存可能な星でラッキーだったわ。
意図せず、元々の計画を達成できたのだから。」
アカシアさんの話しぶりから察するに。
どうやら恒星間航行船に乗って生存可能な星へ行く計画が元々あったみたいだね。
それがどういう訳か流れ星に乗ることになっちゃったらしい。
しかし、流れ星って乗れるのかな?
「事故ね…。
どんな事故が起これば、流れ星に乗ることになるんだよ。
訳が分かんないぜ。」
「流れ星って言い方が悪かったかしら…。
そうね、せっかく来たのだから、これも見せちゃおうかな。」
アカシアさんは、タロウの疑問に直接答えることは無かったの。
その代わりに、また、机の上のボタンをパチパチと叩き始めちゃった。
**********
「どんな偶然か、あの娘と同じ名前の少女がいるのだもの。
あの娘が、どんな気持ちだったのかを知って欲しいわ。
それに、みんながここへ来た目的にも適っていると思う。
これを見れば、疑問の答えが見つかるはずよ。」
パチパチと機械の操作をしながら、アカシアさんはそんなことを言ってたよ。
どうやら、アカシアさんの知っているマロンさんは、その計画とやらに深くかかわっていたらしいね。
やがてパチパチとボタンを叩く音が消えると、壁に映し出された映像が切り替わったよ。
そこには、シフォン姉ちゃんくらいの年頃の娘さんが映し出されたの。
「マロン、恒星間航行船の方は開発が難航しているみたい。
資材の確保が難しいみたいでね。
亜光速航行に耐えうるだけの強度が実現できそうにないって。
そもそも、燃料だって確保できるか怪しいみたいだし。」
そこへアルトそっくりな妖精が飛んできて話し掛けてたよ。
どうやら、このお姉さんがマロンさんのようだね。
絵よりも精密に現実の姿を写し取ったものだと言ってたけど。
まん丸で青く光っていてとても綺麗だったよ。
アルトが言っていた通り、この大地も天空に浮かんでいる星なのだと良く分かった。
でも、一番驚いたのは…。
「アカシアさんって、六億年以上生きているの?
妖精って長生きするんだなと思ってたけど…。
そこまで長生きだなんて、想像もしてなかったよ。」
おいらが感じたままを口にすると。
「マロン、驚くのはそこか?
アカシアさんの話が事実だとすると。
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俺にはそっちの方が驚きだが。」
どうやら、タロウとおいらでは驚きのツボが違うみたいだった。
「宇宙? 何それ?」
「おまっ…。さっきから何を聞いていたんだ。
アルト姐さんやアカシアさんが言ってるだろうが。
この星も含めて、星が存在する空間を全部ひっくるめて宇宙って言うんだよ。」
「あっ、なるほど。この星も宇宙の中にあるんだね。
それで、妖精族が宇宙人だってことにどうして驚いているの?
この星も宇宙にあるのなら、ここに居るみんな、宇宙人じゃない。」
「だぁぁぁ、そうじゃない。
アカシアさんは他の星からやって来たと言ってるんだ。
宇宙を渡って、何処か遠い星から。」
どうやらおいらとタロウには認識の食い違いがあるようで。
タロウの言葉からは何処か歯痒そうな感情が窺えたよ。
「いや、でも、ほら見なよ。
星ってあんなにいっぱいあるんだよ。
一つ一つが、この星のような大地なら。
人の住む星があっても不思議じゃないと思うよ。
他所の星からお客さんが来ても驚くことないじゃない。」
壁に映し出された映像は尚もこの星から遠ざかり、やがて壁いっぱいに星が映し出されていたの。
その頃には、壁に映る星のどれがおいら達の住む星か分からなくなっていたよ。
「この星に生命に満ち溢れているのは奇跡と言っても良いんだぜ。
いいか、マロン、人に限らず生物は水と空気が無けりゃ生きられないんだ。
広い宇宙にある星の殆どには、その水も空気も無いんだぞ。
少なくとも俺が居た地球の科学水準じゃ、生物が住める星は見つけられなかったし。
それにな、この映像じゃ近くに見えるかも知れないが。
実際には星と星は気が遠くなるほど離れているんだ。
地球の技術じゃ星と星の間を旅する事なんて、夢のまた夢だったよ。」
タロウの住んでいた地球は、この星よりも遥かに科学技術が進歩しているそうで。
地球には、望遠鏡という宇宙の遥か遠くを観察出来る道具があるらしいけど。
その望遠鏡を使って永年観測しても、生物が住める星は見つからないそうだよ。
それに、宇宙空間の移動に関しても。
この星の『ルナ』と同じように、地球にも『月』と呼ばれる衛星があるそうで。
地球の科学技術では、月まで人を送るのがやっとだったらしい。
それも気軽な旅行ではなく、極一部の人が命懸けで到達するのがやっとだって。
アカシアさんの言葉が真実ならと前置きして、タロウは言ったの。
この星以外に、知的生命体が住んでいる星があること自体が驚くべきことだし。
星と星との間を移動してきたことは、もっと驚くことなんだと力説してたよ。
アカシアさんの故郷は、地球よりも遥かに科学技術が進歩してたんだろうって。
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「ふーん、そんなものなんだ…。
そんなことを言われても。
この大地の外に広い宇宙が広がっているなんて初めて知ったし。
この星が奇跡みたいなものだと言われてもピンとこないよ。」
タロウの言葉を聞いても、「へえ、そうなんだ」くらいしか言えないって。
だって、あんなにいっぱい星があるんだもの。
人が住む星が、一つ二つあってもおかしくないと思うのが自然だよ。
「マロンちゃんがそう思うのも、もっともだと思うわ。
今この大陸の人々は星を観察する術すら持たないのだから。
唯ね、タロウ君の言葉の方が正しいのよ。
宇宙にはこんなに星が溢れているのに…。
生命を育むことが可能な星は極めて稀なの。」
アカシアさんは、おいらを微笑まし気に見ながらそんなことを言ったの。
何か癪だけど、タロウの言っていることの方が正しいらしいよ。タロウの癖に…。
「それで、アカシアさんの乗ってきた星間航行船は何処にあるんだ?
この地下か? それとも経年劣化で朽ちちゃったのか?
俺、異なる惑星系の間を航行できる宇宙船って見てみたいぜ。
やっぱり、SFみたいに次元跳躍とかするのかな。」
タロウは興味津々って感じでアカシアさんに尋ねたの。
「残念ね。恒星間航行船はこのラボで造っていた訳じゃないの。
それに完成を見ることは無かったわ。
計画は途中でとん挫したの…。」
「それじゃ、どうやって元の星からやって来たと言うんだ。
まさか、アルト姐さんみたいに自分で飛んできたとか言うんじゃないだろうな。
いくらなんでも、生身で宇宙空間を飛ぶのは無理だろう?」
タロウの話では惑星の重力圏を脱するのには相当な推進力を要し、妖精さんの羽ばたきくらいじゃ無理らしい。
また、真空の宇宙空間じゃ、羽ばたきでは前に進めないそうだよ。
そしてなりより、妖精さんも生物である限り、無酸素の宇宙空間じゃ生きていけないんだって。
「流れ星よ。
流れ星に乗ってこの星に漂着したの。
いえ、衝突したと言った方が正しいかしら。」
「流れ星って…。
ファンタジーがいきなりSFっぽくなったと思ったら。
また、ファンタジーに逆戻りかよ。
いったいどんな事情があったんだ?」
タロウはアカシアさんの言葉を聞いて首をひねっていたよ。
「事故よ。
恒星間航行船が完成しなかったのも。
私達が流れ星に乗って来たのも同じ事故のせい。
まあ、どんな偶然か、漂着した星が生存可能な星でラッキーだったわ。
意図せず、元々の計画を達成できたのだから。」
アカシアさんの話しぶりから察するに。
どうやら恒星間航行船に乗って生存可能な星へ行く計画が元々あったみたいだね。
それがどういう訳か流れ星に乗ることになっちゃったらしい。
しかし、流れ星って乗れるのかな?
「事故ね…。
どんな事故が起これば、流れ星に乗ることになるんだよ。
訳が分かんないぜ。」
「流れ星って言い方が悪かったかしら…。
そうね、せっかく来たのだから、これも見せちゃおうかな。」
アカシアさんは、タロウの疑問に直接答えることは無かったの。
その代わりに、また、机の上のボタンをパチパチと叩き始めちゃった。
**********
「どんな偶然か、あの娘と同じ名前の少女がいるのだもの。
あの娘が、どんな気持ちだったのかを知って欲しいわ。
それに、みんながここへ来た目的にも適っていると思う。
これを見れば、疑問の答えが見つかるはずよ。」
パチパチと機械の操作をしながら、アカシアさんはそんなことを言ってたよ。
どうやら、アカシアさんの知っているマロンさんは、その計画とやらに深くかかわっていたらしいね。
やがてパチパチとボタンを叩く音が消えると、壁に映し出された映像が切り替わったよ。
そこには、シフォン姉ちゃんくらいの年頃の娘さんが映し出されたの。
「マロン、恒星間航行船の方は開発が難航しているみたい。
資材の確保が難しいみたいでね。
亜光速航行に耐えうるだけの強度が実現できそうにないって。
そもそも、燃料だって確保できるか怪しいみたいだし。」
そこへアルトそっくりな妖精が飛んできて話し掛けてたよ。
どうやら、このお姉さんがマロンさんのようだね。
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