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第十七章 所変わればと言うみたいだけど・・・
第521話 まだまだ諦めの悪い連中がいるようで…
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オードゥラ大陸からやって来た商人のニイチャンを解放してから数日。
ニイチャンの口から『砂糖』の入手方法が伝わったらしく、停泊していた商船が次々と出港して行ったよ。
サトウキビ畑や砂糖の精製所などこの国には存在しないことやトレントいう恐ろしい魔物がドロップすること。
そんな情報がオードゥラ大陸から来た同業者に伝わったようで。
これ以上留まるだけ時間の無駄だと悟った商人達が、我先にと船出したらしいよ。
その間、ヒマワリ会の直販所はてんやわんやだったとタロウはボヤいてた。
『シュガーポット』を買い付けるオードゥラ大陸の商人が、殺到したらしいんだ。
とは言え、砂糖の秘密がオードゥラ大陸まで伝わるのには半年以上の時間を要するらしいから。
その後も毎日のように、オードゥラ大陸からの船が入港してるよ。
ただ、港に着くとオードゥラ大陸の商人の間で情報交換が行われているようで。
先に着いた商人から、ヒマワリ会より安く砂糖を仕入れるのは無理と知らされるみたいなの。
その結果、最初の頃のように王都に長く留まる商人は目に見えて減ったんだ。
砂糖の仕入れと水や食料の補給を済ませ、船乗りさんに最低限の休息を与えるとサッサと出港して行くみたい。
それでも諦めが悪く、長く滞在する商人もチラホラ見られたよ。
そう言う商人は、如何にも大商人でございって感じで、決まって大きな船でやって来ているの。
ヌル王国の国王から直々に、トレントの苗木を手に入れて来いと、命じられた連中みたいだよ。
トレントの苗木の在り処を嗅ぎ回って東奔西走してたそうだけど、何の手掛かりも掴めなかったらしくてね。
商人達は、誰もが意気消沈して王都に戻ってきたようなの。
そしたら、トレントが怖ろしい魔物で、とても手に負える相手では無いという噂が広がっていたというオチみたい。
と同時に、あちこち探しても見つからなかったトレントの生息地が、王都のすぐ傍に二ヶ所もあることも伝わったらしい。
冒険者研修所とトレントの狩場だね。
王命とあってトレントの苗木を諦められない商人達は、二ヶ所への侵入を試みてことごとく失敗してたよ。
冒険者研修所を取り囲む堅固な擁壁とトレントの狩場に施されたアルトの結界に阻まれてね。
それでも、諦めの悪い連中はいるんだ。
**********
「オードゥラ大陸の人が冒険者研修を受けたいって?」
「ああ、そうなんだ。
俺は別に受け入れても構わないと思っているんだが。
何か、注意しておくことがあるか確認したくてな。」
ある日、父ちゃんがそんな相談を持ち掛けてきたんだ。
どうやら連中、冒険者研修でトレント狩り実習をする事や冒険者登録をすれば狩場に入れることを知ったらしい。
おおかた、トレントの森に行けば苗木を手に入れられると思ったんだろうね。
「別にかまわないけど。
オードゥラ大陸の人の研修は、この国の人達と別にして欲しいの。
それで、怪我をしても『妖精の泉』の水による治療はしないで。
あの『水』の効能は、オードゥラ大陸の人には知られたくないから。
申し込みを受け付ける時、研修で命を落としても異議を唱えないと定めた条項を必ず説明してね。
後は、途中リタイヤを認めてあげて、あの『水』無しじゃ、怪我をしたら続けられないから。」
「そうだったな、あの水の事は内密にするように宰相からも言われてるよ。
分かった、マロンの指示は現場の指導員にも徹底しておくぜ。」
冒険者研修は途中リタイヤを認めていないんだ。
受講の者の中には、ならず者予備軍みたいな青少年が少なからずいるの。
大概は田舎のガキ大将で、王都で恐喝でもやって楽して稼ぎたいと舐めた考えをしてる奴。
そういう連中って冒険者を名乗ろうとするんだけど、王都へ着いて初めて知るんだ。
冒険者と名乗ったり、帯剣したりするためには冒険者登録が必要だとね。
それで慌てて冒険者研修を受講するんだ。
そんな連中のお山の大将根性を挫くため、最終日まで強制的に受講させてるの。
何度大怪我をしても『妖精の泉』の水で治療してね。
殆どの悪ガキは腕っ節が強いだけで、根性の無い奴が多いから。
何度も痛い目に遭った結果、研修終了時にはすっかり自信喪失して郷へ帰っていくよ。
でも、『妖精の泉』の水無しじゃ、その方法は使えないものね。本当に死んじゃうから。
だから、リタイヤOKにするの。リタイヤした受講者の口からもトレントの怖ろしさが伝わるだろうからね。
そして、数日後…。
おいらが研修で討伐したトレントの本体を回収しに行くと。
「痛てえよ、畜生、魔物ってのはあんなに強ええモンだったのかよ。
俺の安い給金で、あんなものの相手をさせられたら堪んねえぞ。」
腕に血染めの包帯を巻いた若い男が研修施設の門を出て行くところだったよ。
門扉の開閉のために男を見送ってた指導員のお姉さんが居たので尋ねてみたんだ。
「あの男の人、オードゥラ大陸から来た人だよね。
途中リタイヤみたいだし。
トレント狩り実習でやられたの?」
「いえ、あの方は実習二日目のウサギ狩り実習でリタイヤです。
ご想像の通りオードゥラ大陸の者のようですが。
商人の使用人らしくて、全然体を鍛えてないのです。
ウサギの動きに全くついて行けず、いきなり腕に噛みつかれまして…。」
上腕の筋肉をぐっさり噛み千切られちゃって、これ以上は受講不可能とリタイアにしたんだって。
何でも、商人の主の命でここに研修を受けに来たそうだよ。
「あの男以外にもオードゥラ大陸から来た人が受講しているんだよね。
どんな感じ?」
「はあ、どうやら船主の商人が、船乗りや使用人に命じているようですね。
冒険者研修を受講するようにと。
数日前から立て続けに五十人ほど受講を申し込んでまいりました。
ですが、ハッキリ言って、使用人はダメダメですね。
皆、体力不足です。おそらく一人も研修を合格できないでしょう。
反対に、船乗りは皆さん、凄いですね。
体は鍛えられていますし、グループ内で息が合っています。
ウサギなんて、軽々と倒していましたよ。
この分なら、明日からのトレント狩りも何とかなるでしょう。」
事務員さんが多いようで、商人の使用人はすぐにバテちゃって。
連携して助け合うことも出来ないので、良いようにウサギに蹂躙されちゃうらしいの。
この三日間に関して言えば、二日目、三日目のウサギ狩り研修でほぼ全員がリタイアしているようだよ。
オードゥラ大陸から来た人に関して言えば、最初に申し込みを受けたグループが明日初めてトレント狩りに挑戦するんだって。
全員が船乗りさんらしいけど、みんな、連携がキチンとしているらしくてね。
トレント狩りも上手にこなしそうだと、お姉さんは言ってたよ。
**********
それからまた五日ほど経って。
トレントの狩場へ行こうとバニーに乗って街中を進んでいると…。
「バカ野郎! テメー逃げるな! 待ちやがれ!」
怒声が聞こえた方向を見ると、身なりの良いオッサンが血相を変えて逃げてきたの。
それを追いかけて来るのは、三十人以上は居ようかと言う屈強な男達だった。
放っておくとオッサンが袋叩きに遭いそうだったので、おいらが割って入ることにしたよ。
おいらが、追ってくる男達の前にバニーを止めて行く手を塞ぐようにすると。
「おお、あんたら騎士か? 良い所に巡回してた。
あの連中を止めてくれ、船乗りの分際で雇い主の儂に楯突きおる。」
おいらの後ろで護衛を勤めていたジェレ姉ちゃん達に向かって、オッサンが言ったんだ。
このオッサン、なんか偉そうでイヤ。
『あんたら騎士か?』って、みんな近衛騎士だもの貴族待遇だよ。
そんな口の利き方は無いでしょう。
しかも、助けを求めているんだから、もう少し丁寧な言葉遣いをしないと。
すると、今度は追いかけてきた連中が。
「お嬢ちゃん、申し訳ないけど、そこを退いちゃあくれないかい。
おじさん達、その男に用事があるんだ。」
おいらを怯えさせないようにか、柔らかい口調で言ったの。
強面な雰囲気のおじさん達だけど、こっちの方がよっぽど人当たりが良いよ。
「大人の話に子供が口を挟んで悪いけど。
この街で、集団暴行を働くと捕まえないといけなくなるんだ。
一対一の喧嘩までは止めないけど、その人数で袋叩きとなるとちょっと見逃せないよ。
どんな事情で、こんな事になっているのかな?
良かったら聞かせてもらえない。」
「何だい、随分と分別のある事を言うお嬢ちゃんだな。
調子が狂うぜ。
おじさん達、遠い大陸から船に乗ってやって来たんだけど。
この町に着いたら、そいつが俺達に無茶なことを命じたんだ。」
おじさん達のリーダーらしき人は、ノリの良い人なのか。
おいらを無視するでなく、こんなガキンチョの問い掛けにちゃんと答えてくれたよ。
おじさん達は、今入港している大きな船の船乗りさん達らしいの。
そして、今、おいらの護衛騎士に助けを求めている横柄なオッチャンは雇い主の商人らしい。
オードゥラ大陸の慣例では、船乗りさんの仕事は操船だけで、陸に着いたら出港までは休息となり自由時間らしいんだ。
船乗りさんの仕事は激務だから、帰りの航海に備えて十分体を休めろと言うことらしい。
ところが、このオッサン、いきなり冒険者研修を受けろと命じたらしい。
船乗りたちは、それに不服で文句を言ったそうだけど。
「お前ら、何をふざけたことを子供に吹き込んでいるんだ。
航海の間は、儂の指示に従うという契約で、お前らを雇ったんだろう。
航海ってのは、母港を出てから母港に帰り着くまでを言うのであろうが。
この港にいる間も、儂の指示に従うのが当たり前だろう。」
丁度、こんな風に言われて契約書を突き付けたんだって。
普通、航海って言えば海の上にいる間だけってのが、船乗りの認識らしいけど。
このオッチャン、契約書を突き付けた上で、更に船乗り達を脅したんだって。
今回の航海は王命を受けて船出したもので、王命を遂げるために船乗り達に冒険者研修を受けて貰う必要があると。
もし、逆らうと言うのなら、帰港したら王に告げ口して罰してもらうって。
王命を盾にとって脅されると、船乗り達はイヤと言えなくて渋々指示に従うことにしたらしいの。
そして、八日前から冒険者研修を受けて、先程、無事に研修を合格したそうなんだ。
それからが、問題だったらしいの。
ニイチャンの口から『砂糖』の入手方法が伝わったらしく、停泊していた商船が次々と出港して行ったよ。
サトウキビ畑や砂糖の精製所などこの国には存在しないことやトレントいう恐ろしい魔物がドロップすること。
そんな情報がオードゥラ大陸から来た同業者に伝わったようで。
これ以上留まるだけ時間の無駄だと悟った商人達が、我先にと船出したらしいよ。
その間、ヒマワリ会の直販所はてんやわんやだったとタロウはボヤいてた。
『シュガーポット』を買い付けるオードゥラ大陸の商人が、殺到したらしいんだ。
とは言え、砂糖の秘密がオードゥラ大陸まで伝わるのには半年以上の時間を要するらしいから。
その後も毎日のように、オードゥラ大陸からの船が入港してるよ。
ただ、港に着くとオードゥラ大陸の商人の間で情報交換が行われているようで。
先に着いた商人から、ヒマワリ会より安く砂糖を仕入れるのは無理と知らされるみたいなの。
その結果、最初の頃のように王都に長く留まる商人は目に見えて減ったんだ。
砂糖の仕入れと水や食料の補給を済ませ、船乗りさんに最低限の休息を与えるとサッサと出港して行くみたい。
それでも諦めが悪く、長く滞在する商人もチラホラ見られたよ。
そう言う商人は、如何にも大商人でございって感じで、決まって大きな船でやって来ているの。
ヌル王国の国王から直々に、トレントの苗木を手に入れて来いと、命じられた連中みたいだよ。
トレントの苗木の在り処を嗅ぎ回って東奔西走してたそうだけど、何の手掛かりも掴めなかったらしくてね。
商人達は、誰もが意気消沈して王都に戻ってきたようなの。
そしたら、トレントが怖ろしい魔物で、とても手に負える相手では無いという噂が広がっていたというオチみたい。
と同時に、あちこち探しても見つからなかったトレントの生息地が、王都のすぐ傍に二ヶ所もあることも伝わったらしい。
冒険者研修所とトレントの狩場だね。
王命とあってトレントの苗木を諦められない商人達は、二ヶ所への侵入を試みてことごとく失敗してたよ。
冒険者研修所を取り囲む堅固な擁壁とトレントの狩場に施されたアルトの結界に阻まれてね。
それでも、諦めの悪い連中はいるんだ。
**********
「オードゥラ大陸の人が冒険者研修を受けたいって?」
「ああ、そうなんだ。
俺は別に受け入れても構わないと思っているんだが。
何か、注意しておくことがあるか確認したくてな。」
ある日、父ちゃんがそんな相談を持ち掛けてきたんだ。
どうやら連中、冒険者研修でトレント狩り実習をする事や冒険者登録をすれば狩場に入れることを知ったらしい。
おおかた、トレントの森に行けば苗木を手に入れられると思ったんだろうね。
「別にかまわないけど。
オードゥラ大陸の人の研修は、この国の人達と別にして欲しいの。
それで、怪我をしても『妖精の泉』の水による治療はしないで。
あの『水』の効能は、オードゥラ大陸の人には知られたくないから。
申し込みを受け付ける時、研修で命を落としても異議を唱えないと定めた条項を必ず説明してね。
後は、途中リタイヤを認めてあげて、あの『水』無しじゃ、怪我をしたら続けられないから。」
「そうだったな、あの水の事は内密にするように宰相からも言われてるよ。
分かった、マロンの指示は現場の指導員にも徹底しておくぜ。」
冒険者研修は途中リタイヤを認めていないんだ。
受講の者の中には、ならず者予備軍みたいな青少年が少なからずいるの。
大概は田舎のガキ大将で、王都で恐喝でもやって楽して稼ぎたいと舐めた考えをしてる奴。
そういう連中って冒険者を名乗ろうとするんだけど、王都へ着いて初めて知るんだ。
冒険者と名乗ったり、帯剣したりするためには冒険者登録が必要だとね。
それで慌てて冒険者研修を受講するんだ。
そんな連中のお山の大将根性を挫くため、最終日まで強制的に受講させてるの。
何度大怪我をしても『妖精の泉』の水で治療してね。
殆どの悪ガキは腕っ節が強いだけで、根性の無い奴が多いから。
何度も痛い目に遭った結果、研修終了時にはすっかり自信喪失して郷へ帰っていくよ。
でも、『妖精の泉』の水無しじゃ、その方法は使えないものね。本当に死んじゃうから。
だから、リタイヤOKにするの。リタイヤした受講者の口からもトレントの怖ろしさが伝わるだろうからね。
そして、数日後…。
おいらが研修で討伐したトレントの本体を回収しに行くと。
「痛てえよ、畜生、魔物ってのはあんなに強ええモンだったのかよ。
俺の安い給金で、あんなものの相手をさせられたら堪んねえぞ。」
腕に血染めの包帯を巻いた若い男が研修施設の門を出て行くところだったよ。
門扉の開閉のために男を見送ってた指導員のお姉さんが居たので尋ねてみたんだ。
「あの男の人、オードゥラ大陸から来た人だよね。
途中リタイヤみたいだし。
トレント狩り実習でやられたの?」
「いえ、あの方は実習二日目のウサギ狩り実習でリタイヤです。
ご想像の通りオードゥラ大陸の者のようですが。
商人の使用人らしくて、全然体を鍛えてないのです。
ウサギの動きに全くついて行けず、いきなり腕に噛みつかれまして…。」
上腕の筋肉をぐっさり噛み千切られちゃって、これ以上は受講不可能とリタイアにしたんだって。
何でも、商人の主の命でここに研修を受けに来たそうだよ。
「あの男以外にもオードゥラ大陸から来た人が受講しているんだよね。
どんな感じ?」
「はあ、どうやら船主の商人が、船乗りや使用人に命じているようですね。
冒険者研修を受講するようにと。
数日前から立て続けに五十人ほど受講を申し込んでまいりました。
ですが、ハッキリ言って、使用人はダメダメですね。
皆、体力不足です。おそらく一人も研修を合格できないでしょう。
反対に、船乗りは皆さん、凄いですね。
体は鍛えられていますし、グループ内で息が合っています。
ウサギなんて、軽々と倒していましたよ。
この分なら、明日からのトレント狩りも何とかなるでしょう。」
事務員さんが多いようで、商人の使用人はすぐにバテちゃって。
連携して助け合うことも出来ないので、良いようにウサギに蹂躙されちゃうらしいの。
この三日間に関して言えば、二日目、三日目のウサギ狩り研修でほぼ全員がリタイアしているようだよ。
オードゥラ大陸から来た人に関して言えば、最初に申し込みを受けたグループが明日初めてトレント狩りに挑戦するんだって。
全員が船乗りさんらしいけど、みんな、連携がキチンとしているらしくてね。
トレント狩りも上手にこなしそうだと、お姉さんは言ってたよ。
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それからまた五日ほど経って。
トレントの狩場へ行こうとバニーに乗って街中を進んでいると…。
「バカ野郎! テメー逃げるな! 待ちやがれ!」
怒声が聞こえた方向を見ると、身なりの良いオッサンが血相を変えて逃げてきたの。
それを追いかけて来るのは、三十人以上は居ようかと言う屈強な男達だった。
放っておくとオッサンが袋叩きに遭いそうだったので、おいらが割って入ることにしたよ。
おいらが、追ってくる男達の前にバニーを止めて行く手を塞ぐようにすると。
「おお、あんたら騎士か? 良い所に巡回してた。
あの連中を止めてくれ、船乗りの分際で雇い主の儂に楯突きおる。」
おいらの後ろで護衛を勤めていたジェレ姉ちゃん達に向かって、オッサンが言ったんだ。
このオッサン、なんか偉そうでイヤ。
『あんたら騎士か?』って、みんな近衛騎士だもの貴族待遇だよ。
そんな口の利き方は無いでしょう。
しかも、助けを求めているんだから、もう少し丁寧な言葉遣いをしないと。
すると、今度は追いかけてきた連中が。
「お嬢ちゃん、申し訳ないけど、そこを退いちゃあくれないかい。
おじさん達、その男に用事があるんだ。」
おいらを怯えさせないようにか、柔らかい口調で言ったの。
強面な雰囲気のおじさん達だけど、こっちの方がよっぽど人当たりが良いよ。
「大人の話に子供が口を挟んで悪いけど。
この街で、集団暴行を働くと捕まえないといけなくなるんだ。
一対一の喧嘩までは止めないけど、その人数で袋叩きとなるとちょっと見逃せないよ。
どんな事情で、こんな事になっているのかな?
良かったら聞かせてもらえない。」
「何だい、随分と分別のある事を言うお嬢ちゃんだな。
調子が狂うぜ。
おじさん達、遠い大陸から船に乗ってやって来たんだけど。
この町に着いたら、そいつが俺達に無茶なことを命じたんだ。」
おじさん達のリーダーらしき人は、ノリの良い人なのか。
おいらを無視するでなく、こんなガキンチョの問い掛けにちゃんと答えてくれたよ。
おじさん達は、今入港している大きな船の船乗りさん達らしいの。
そして、今、おいらの護衛騎士に助けを求めている横柄なオッチャンは雇い主の商人らしい。
オードゥラ大陸の慣例では、船乗りさんの仕事は操船だけで、陸に着いたら出港までは休息となり自由時間らしいんだ。
船乗りさんの仕事は激務だから、帰りの航海に備えて十分体を休めろと言うことらしい。
ところが、このオッサン、いきなり冒険者研修を受けろと命じたらしい。
船乗りたちは、それに不服で文句を言ったそうだけど。
「お前ら、何をふざけたことを子供に吹き込んでいるんだ。
航海の間は、儂の指示に従うという契約で、お前らを雇ったんだろう。
航海ってのは、母港を出てから母港に帰り着くまでを言うのであろうが。
この港にいる間も、儂の指示に従うのが当たり前だろう。」
丁度、こんな風に言われて契約書を突き付けたんだって。
普通、航海って言えば海の上にいる間だけってのが、船乗りの認識らしいけど。
このオッチャン、契約書を突き付けた上で、更に船乗り達を脅したんだって。
今回の航海は王命を受けて船出したもので、王命を遂げるために船乗り達に冒険者研修を受けて貰う必要があると。
もし、逆らうと言うのなら、帰港したら王に告げ口して罰してもらうって。
王命を盾にとって脅されると、船乗り達はイヤと言えなくて渋々指示に従うことにしたらしいの。
そして、八日前から冒険者研修を受けて、先程、無事に研修を合格したそうなんだ。
それからが、問題だったらしいの。
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