478 / 848
第十六章 里帰り、あの人達は…
第480話 日課のトレント狩りに行ってみれば…
しおりを挟む
辺境の町に里帰りしてから五日ほど経った朝のこと。
オランや護衛の姉ちゃん達と日課のトレント狩りに行こうとしていると。
「おっ、マロン、おはようさん。
これからトレント狩りに行くんだろう。
俺も連れて行ってくれないか。」
隣りの屋敷の庭からタロウが声をかけてきたよ。
「タロウ、今日は早いじゃない。
こっちに来てから、遅くまで寝ているようだし。
すっかり、サボり癖が付いたのかと思ってたよ。」
タロウもトレント狩りを毎朝の日課にしてたのだけど。
この町に着いてからは、毎日昼前まで寝てて狩りをお休みしてたんだ。
「別にサボっていた訳じゃないぞ。
結婚すると、夜にも大事なお努めがあるんだよ。
この屋敷には広い風呂場があるだろう。
シフォンとカヌレが、風呂場でいたすのがお気に入りなもんだから。
朝まで、寝かしてもらえなかったんだよ。
それでも、家庭円満のためには疎かに出来ないんだぜ。
朝のトレント狩りより、優先順位は高いんだ。」
どんな『お努め』か知らないけど、このところタロウが眠るのは夜明け前だったと言ってた。
特に風呂屋から連れて来ちゃったミヤビ姉ちゃんが加わった一昨日は、昼夜関係なかったそうなの。
流石に昨日の晩には、お嫁さん三人とも早々に力尽きたみたいでね。
早い時間に眠れたんで、狩りに行けるだけの体力が回復したんだって。
「ふーん…。夜のお努めって何なの?
おいら、オランと結婚しているけど、夜は早々に寝ちゃうよ。
もちろん、オランも一緒に。」
「マロンの言う通りなのじゃ。
夜は体力回復のために、十分な睡眠をとらないといけないのじゃぞ。
夜更かしは体に悪いし、真夜中に体力を消耗するなど問題外なのじゃ。」
おいらとオランの言葉に、タロウは気拙そうな顔をすると…。
「いや、まあ、マロン達には少し早いかな…。
あと五年もすれば分かるさ。
それに、迂闊な事を言うとアルト姐さんに殺されちまうからな。」
あからさまにはぐらかして、『お努め』の内容は教えてくれなかったよ。
そして、話題を変えるように…。
「嫁さん三人を養うんだから、少しでも多く稼がないといけないし。
それに嫁さんが三人もいるんじゃ、体を鍛えておかないときついからな。
そもそも、あんまりサボっちゃ、ギルドで使う木炭が工面できないじゃないか。」
そんな事を口にしたタロウ。
今朝は、おいらが出て来るのを待ち構えていたんだって。
ここ数日、アルトが来ないので、おいらに収穫物を運んでもらいたいらしい。
この町に着くと、すぐにアルトは何処かへ飛んで行ってしまったんだ。
アルトはこの町の近くにある妖精の森の長だから、森に帰るのは当たり前なのだけど。
アルトが居ないとタロウは、狩りの収穫物を持ち帰る術が無いからね。
なので、『積載庫』のスキルを持っているおいらに便乗しようと庭で待っていたんだって。
「お嫁さんを養うためとか、ギルドで使う木炭のためとか。
タロウも、随分と責任感が出て来たね。感心、感心。
じゃあ、おいらとオランがバニーに乗るから。
タロウは、ラビに乗ってちょうだい。」
「おう、助かるよ。
狩場まで走ってついて来いって言われなくて良かったぜ。」
そんな意地悪言わないよ…。
結構な距離があるから、そんな事をさせたら狩場に行くまでに疲れちゃうじゃない。
**********
タロウも仲間に加えてトレントの狩場に行くと…。
「お兄様、背中がお留守ですよ。
気を抜くと怪我をするので、集中してください。」
「うわっ、危なっ…。
助かったよ、カズミ。
しかし、背後からも襲って来るなんて…。
騎士達は、良く一人で討伐できるもだのだな。」
ハテノ男爵領の騎士団が日課のトレント狩り訓練をしていたんだけど。
何故か、カズヤ殿下も騎士に混じって訓練をしてたの。
「おはよう、みんな。
いつも朝早くから、お疲れさま。」
「ごきげんよう、マロン。
マロンもお疲れさま。
やんごとなき立場になっても、鍛錬は欠かさないのね。
とても立派な心掛けだわ。」
おいらが声を掛けると、騎士団長のクッころさんが返事をして褒めてくれたよ。
「ところで、王太子のカズヤ殿下にトレント狩りなんてさせても良いの?
怪我をさせちゃったら、大変なことになるんじゃない?」
「平気ですよ、マロン様。
お兄様には、昨日十分な『生命の欠片』を差し上げたので。
慣れれば、トレントごときには後れを取らないはずです。
そのために、今日から朝の訓練に加わって頂きました。
レベルを上げても、向上した身体能力を使いこなせないと意味ありませんからね。
それに、お兄様は少し『元気』を持て余し気味なので。
少し、体を動かして発散して頂こうかと。」
おいらの問い掛けに答えてくれたのはカズミ姉ちゃん。
カズミ姉ちゃんの言葉には、少しトゲがあるみたいに聞こえたんだけど…。
一緒にカズヤ殿下の護衛任務に就いているクッころさんとスフレ姉ちゃんも、ウンウンと頷いていたよ。
「そんな訳で、私も今日から訓練に同行することにしたのだ。
初っ端からトレント狩りは、多少厳しいものがあるが…。
朝からこうして体を動かすのは清々しいし。
私としても、少しでもカズミに見直して欲しいからな。」
何をしたのかは知らないけど。
カズヤ殿下は、何かやらかして護衛の三人から白い目で見られているようだね。
良い所を見せて少しでも名誉挽回したいと、カズヤ殿下は考えているみたい。
まあ、それなりにレベルを上げているみたいだし、本人がやる気ならかまわないか…。
**********
おいらが日課にしているトレント十体を倒し終えた時、カズヤ殿下が地面にへたり込んでいたよ。
「カズヤ殿下、どうかしたの?
怪我をしたのなら『妖精の泉』の水を上げるよ。
どんな怪我でもたちどころに治るの。」
「いや、何処か怪我をしたって訳じゃないんだ。
日頃の運動不足が祟ってね。
トレント三体狩ったところでギブアップさ。
マロン陛下は凄いですね。
そんなに小さなお体なのに、易々とトレントを狩っていて。
私なんて、カズミにフォローしてもらってやっとなのに。」
まあ、おいらの場合は反則みたいなスキルがあるからね。
『完全回避』と『クリティカル発生率百%』。
これが無かったら、三年前にワイバーンに襲われた時に死んでたよ。
もっとも、十分レベルが上がった今じゃ、スキルに頼らなくてもトレントくらいは何とでもなるけど。
「カズミ姉ちゃんから、『生命の欠片』を貰ったんでしょう。
だったら、後は慣れるだけだよ。
みんな、最初はカズヤ殿下と同じで危なっかしかったもん。
慣れるまで鍛錬を続ければ、カズミ姉ちゃんみたいに危なげなく倒せるようになるよ。」
今は難無くトレントを狩っているタロウだって、最初は泣き言を零しながら狩っていたもんね。
「そうか、では、私もここに滞在している間に、一人でトレントを狩れるようになってみせるぞ。
何時までも、大きな子供ではいられないからな。」
「いえ、お兄様、そう思うのなら一人でお着替えを出来るようにしてください。」
カズヤ殿下が決意を口にすると、訓練を終えて戻って来たカズミ姉ちゃんがツッコミを入れてたよ。
出会った頃のクッころさんが一人では着替えが出来ず、おいらにやらせていたけど。
やっぱり、王侯貴族って着替えも一人ではできないんだね。
全員が各自で課したノルマを終えて、町に戻ってくとみんなで冒険者ギルドの買取所に寄ったんだ。
毎朝のトレント狩りは大事な訓練なのだけど、同時にみんなの小遣い稼ぎにもなっているの。
トレント狩りを終えて戻ってくると、ギルドの買取所で収穫物を換金しているの。
そうして換金も済んで、にっぽん爺の屋敷まで戻り…。
「はい、お兄様、これ今日の取り分です。
トレント三体分の『ハチミツ壺』と『スキルの実』の売却代金です。
私と二人で協力して狩ったので、取り分は半分ですが。」
カズミさんがカズヤ殿下の前に大きな布袋を置いたの。
袋の中を覗いたカズヤ殿下はというと…。
「おい、カズミ、これって多過ぎないか?
一体いくら入っているのか、数えられないぞ。
朝のたったわずかな時間でこの稼ぎは無いだろう。
貴族だって、一日あたりの収入はこんなに多くないぞ。」
「はあ…、これでもひと頃よりは大分少なくなったのですよ。
私達騎士が訓練で毎朝凄い数を狩るものですから…。
ハニートレントが落す収穫物の値段が暴落しちゃいました。
今や、この領地がハチミツを一番安く買える領地だそうですよ。」
悪いことにこの町の近くに生息しているトレントは2種類だけ。
レベル三の『トレント』とレベル四の『ハニートレント』だけなんだ。
通常の『トレント』は、ドロップするのが『スキルの実』だけであまり旨味が無いの。
なので、朝の訓練は『ハニートレント』の生息地でしてるのだけど。
毎朝、騎士は狩るし、稽古の一環で『STD四十八』の連中は狩るしで…。
『ハチミツ壺』とスキルの実二種類『野外移動速度アップ』、『野外採集能力アップ』は供給過剰になってるんだって。
それで、かつての半額くらいに値が下がっているらしいよ。
おいら達が居る時は、それを避けるためアルトが『積載庫』に乗せて遠出してくれたんだ。
この町から遠く離れた『シュガートレント』や『メイプルトレント』の狩場へ連れて行ってくれたの。
アルトが空を飛べば、大した時間もかからずに到着するからね。
「これで、少なくなったって…。
この領地の騎士は、どんだけ稼いでいたのだ。」
「お兄様、良かったですね。
それだけあれば、毎日お風呂屋さんに通っても大丈夫ですよ。
ご執心のウララさん、しばらく買占めしちゃったらどうですか?」
「おい、カズミ、人聞きの悪いことを言うな。」
カズミ姉ちゃんがトゲのある声で言うと、カズヤ殿下が狼狽してたよ。
どうやら、カズト殿下はあのお金で風呂屋に行こうと思っていたみたいだね。
図星を差されて焦ったって表情をしてたよ。
ウララさんって、この間、風呂屋の支配人の部屋でカズヤ殿下に寄り添っていた泡姫さんかな。
何で、カズミ姉ちゃんが知っているんだろう、カズト殿下がご執心って?
「あら、面白い話をしているのね。
是非、私にも詳しい話を聞かせてもらいたいわ。」
振り向くとそこにアルトが浮かんでいたよ。
なにやら楽し気な笑みを浮かべてね。
オランや護衛の姉ちゃん達と日課のトレント狩りに行こうとしていると。
「おっ、マロン、おはようさん。
これからトレント狩りに行くんだろう。
俺も連れて行ってくれないか。」
隣りの屋敷の庭からタロウが声をかけてきたよ。
「タロウ、今日は早いじゃない。
こっちに来てから、遅くまで寝ているようだし。
すっかり、サボり癖が付いたのかと思ってたよ。」
タロウもトレント狩りを毎朝の日課にしてたのだけど。
この町に着いてからは、毎日昼前まで寝てて狩りをお休みしてたんだ。
「別にサボっていた訳じゃないぞ。
結婚すると、夜にも大事なお努めがあるんだよ。
この屋敷には広い風呂場があるだろう。
シフォンとカヌレが、風呂場でいたすのがお気に入りなもんだから。
朝まで、寝かしてもらえなかったんだよ。
それでも、家庭円満のためには疎かに出来ないんだぜ。
朝のトレント狩りより、優先順位は高いんだ。」
どんな『お努め』か知らないけど、このところタロウが眠るのは夜明け前だったと言ってた。
特に風呂屋から連れて来ちゃったミヤビ姉ちゃんが加わった一昨日は、昼夜関係なかったそうなの。
流石に昨日の晩には、お嫁さん三人とも早々に力尽きたみたいでね。
早い時間に眠れたんで、狩りに行けるだけの体力が回復したんだって。
「ふーん…。夜のお努めって何なの?
おいら、オランと結婚しているけど、夜は早々に寝ちゃうよ。
もちろん、オランも一緒に。」
「マロンの言う通りなのじゃ。
夜は体力回復のために、十分な睡眠をとらないといけないのじゃぞ。
夜更かしは体に悪いし、真夜中に体力を消耗するなど問題外なのじゃ。」
おいらとオランの言葉に、タロウは気拙そうな顔をすると…。
「いや、まあ、マロン達には少し早いかな…。
あと五年もすれば分かるさ。
それに、迂闊な事を言うとアルト姐さんに殺されちまうからな。」
あからさまにはぐらかして、『お努め』の内容は教えてくれなかったよ。
そして、話題を変えるように…。
「嫁さん三人を養うんだから、少しでも多く稼がないといけないし。
それに嫁さんが三人もいるんじゃ、体を鍛えておかないときついからな。
そもそも、あんまりサボっちゃ、ギルドで使う木炭が工面できないじゃないか。」
そんな事を口にしたタロウ。
今朝は、おいらが出て来るのを待ち構えていたんだって。
ここ数日、アルトが来ないので、おいらに収穫物を運んでもらいたいらしい。
この町に着くと、すぐにアルトは何処かへ飛んで行ってしまったんだ。
アルトはこの町の近くにある妖精の森の長だから、森に帰るのは当たり前なのだけど。
アルトが居ないとタロウは、狩りの収穫物を持ち帰る術が無いからね。
なので、『積載庫』のスキルを持っているおいらに便乗しようと庭で待っていたんだって。
「お嫁さんを養うためとか、ギルドで使う木炭のためとか。
タロウも、随分と責任感が出て来たね。感心、感心。
じゃあ、おいらとオランがバニーに乗るから。
タロウは、ラビに乗ってちょうだい。」
「おう、助かるよ。
狩場まで走ってついて来いって言われなくて良かったぜ。」
そんな意地悪言わないよ…。
結構な距離があるから、そんな事をさせたら狩場に行くまでに疲れちゃうじゃない。
**********
タロウも仲間に加えてトレントの狩場に行くと…。
「お兄様、背中がお留守ですよ。
気を抜くと怪我をするので、集中してください。」
「うわっ、危なっ…。
助かったよ、カズミ。
しかし、背後からも襲って来るなんて…。
騎士達は、良く一人で討伐できるもだのだな。」
ハテノ男爵領の騎士団が日課のトレント狩り訓練をしていたんだけど。
何故か、カズヤ殿下も騎士に混じって訓練をしてたの。
「おはよう、みんな。
いつも朝早くから、お疲れさま。」
「ごきげんよう、マロン。
マロンもお疲れさま。
やんごとなき立場になっても、鍛錬は欠かさないのね。
とても立派な心掛けだわ。」
おいらが声を掛けると、騎士団長のクッころさんが返事をして褒めてくれたよ。
「ところで、王太子のカズヤ殿下にトレント狩りなんてさせても良いの?
怪我をさせちゃったら、大変なことになるんじゃない?」
「平気ですよ、マロン様。
お兄様には、昨日十分な『生命の欠片』を差し上げたので。
慣れれば、トレントごときには後れを取らないはずです。
そのために、今日から朝の訓練に加わって頂きました。
レベルを上げても、向上した身体能力を使いこなせないと意味ありませんからね。
それに、お兄様は少し『元気』を持て余し気味なので。
少し、体を動かして発散して頂こうかと。」
おいらの問い掛けに答えてくれたのはカズミ姉ちゃん。
カズミ姉ちゃんの言葉には、少しトゲがあるみたいに聞こえたんだけど…。
一緒にカズヤ殿下の護衛任務に就いているクッころさんとスフレ姉ちゃんも、ウンウンと頷いていたよ。
「そんな訳で、私も今日から訓練に同行することにしたのだ。
初っ端からトレント狩りは、多少厳しいものがあるが…。
朝からこうして体を動かすのは清々しいし。
私としても、少しでもカズミに見直して欲しいからな。」
何をしたのかは知らないけど。
カズヤ殿下は、何かやらかして護衛の三人から白い目で見られているようだね。
良い所を見せて少しでも名誉挽回したいと、カズヤ殿下は考えているみたい。
まあ、それなりにレベルを上げているみたいだし、本人がやる気ならかまわないか…。
**********
おいらが日課にしているトレント十体を倒し終えた時、カズヤ殿下が地面にへたり込んでいたよ。
「カズヤ殿下、どうかしたの?
怪我をしたのなら『妖精の泉』の水を上げるよ。
どんな怪我でもたちどころに治るの。」
「いや、何処か怪我をしたって訳じゃないんだ。
日頃の運動不足が祟ってね。
トレント三体狩ったところでギブアップさ。
マロン陛下は凄いですね。
そんなに小さなお体なのに、易々とトレントを狩っていて。
私なんて、カズミにフォローしてもらってやっとなのに。」
まあ、おいらの場合は反則みたいなスキルがあるからね。
『完全回避』と『クリティカル発生率百%』。
これが無かったら、三年前にワイバーンに襲われた時に死んでたよ。
もっとも、十分レベルが上がった今じゃ、スキルに頼らなくてもトレントくらいは何とでもなるけど。
「カズミ姉ちゃんから、『生命の欠片』を貰ったんでしょう。
だったら、後は慣れるだけだよ。
みんな、最初はカズヤ殿下と同じで危なっかしかったもん。
慣れるまで鍛錬を続ければ、カズミ姉ちゃんみたいに危なげなく倒せるようになるよ。」
今は難無くトレントを狩っているタロウだって、最初は泣き言を零しながら狩っていたもんね。
「そうか、では、私もここに滞在している間に、一人でトレントを狩れるようになってみせるぞ。
何時までも、大きな子供ではいられないからな。」
「いえ、お兄様、そう思うのなら一人でお着替えを出来るようにしてください。」
カズヤ殿下が決意を口にすると、訓練を終えて戻って来たカズミ姉ちゃんがツッコミを入れてたよ。
出会った頃のクッころさんが一人では着替えが出来ず、おいらにやらせていたけど。
やっぱり、王侯貴族って着替えも一人ではできないんだね。
全員が各自で課したノルマを終えて、町に戻ってくとみんなで冒険者ギルドの買取所に寄ったんだ。
毎朝のトレント狩りは大事な訓練なのだけど、同時にみんなの小遣い稼ぎにもなっているの。
トレント狩りを終えて戻ってくると、ギルドの買取所で収穫物を換金しているの。
そうして換金も済んで、にっぽん爺の屋敷まで戻り…。
「はい、お兄様、これ今日の取り分です。
トレント三体分の『ハチミツ壺』と『スキルの実』の売却代金です。
私と二人で協力して狩ったので、取り分は半分ですが。」
カズミさんがカズヤ殿下の前に大きな布袋を置いたの。
袋の中を覗いたカズヤ殿下はというと…。
「おい、カズミ、これって多過ぎないか?
一体いくら入っているのか、数えられないぞ。
朝のたったわずかな時間でこの稼ぎは無いだろう。
貴族だって、一日あたりの収入はこんなに多くないぞ。」
「はあ…、これでもひと頃よりは大分少なくなったのですよ。
私達騎士が訓練で毎朝凄い数を狩るものですから…。
ハニートレントが落す収穫物の値段が暴落しちゃいました。
今や、この領地がハチミツを一番安く買える領地だそうですよ。」
悪いことにこの町の近くに生息しているトレントは2種類だけ。
レベル三の『トレント』とレベル四の『ハニートレント』だけなんだ。
通常の『トレント』は、ドロップするのが『スキルの実』だけであまり旨味が無いの。
なので、朝の訓練は『ハニートレント』の生息地でしてるのだけど。
毎朝、騎士は狩るし、稽古の一環で『STD四十八』の連中は狩るしで…。
『ハチミツ壺』とスキルの実二種類『野外移動速度アップ』、『野外採集能力アップ』は供給過剰になってるんだって。
それで、かつての半額くらいに値が下がっているらしいよ。
おいら達が居る時は、それを避けるためアルトが『積載庫』に乗せて遠出してくれたんだ。
この町から遠く離れた『シュガートレント』や『メイプルトレント』の狩場へ連れて行ってくれたの。
アルトが空を飛べば、大した時間もかからずに到着するからね。
「これで、少なくなったって…。
この領地の騎士は、どんだけ稼いでいたのだ。」
「お兄様、良かったですね。
それだけあれば、毎日お風呂屋さんに通っても大丈夫ですよ。
ご執心のウララさん、しばらく買占めしちゃったらどうですか?」
「おい、カズミ、人聞きの悪いことを言うな。」
カズミ姉ちゃんがトゲのある声で言うと、カズヤ殿下が狼狽してたよ。
どうやら、カズト殿下はあのお金で風呂屋に行こうと思っていたみたいだね。
図星を差されて焦ったって表情をしてたよ。
ウララさんって、この間、風呂屋の支配人の部屋でカズヤ殿下に寄り添っていた泡姫さんかな。
何で、カズミ姉ちゃんが知っているんだろう、カズト殿下がご執心って?
「あら、面白い話をしているのね。
是非、私にも詳しい話を聞かせてもらいたいわ。」
振り向くとそこにアルトが浮かんでいたよ。
なにやら楽し気な笑みを浮かべてね。
1
お気に入りに追加
295
あなたにおすすめの小説
義母に毒を盛られて前世の記憶を取り戻し覚醒しました、貴男は義妹と仲良くすればいいわ。
克全
ファンタジー
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。
11月9日「カクヨム」恋愛日間ランキング15位
11月11日「カクヨム」恋愛週間ランキング22位
11月11日「カクヨム」恋愛月間ランキング71位
11月4日「小説家になろう」恋愛異世界転生/転移恋愛日間78位
《勘違い》で婚約破棄された令嬢は失意のうちに自殺しました。
友坂 悠
ファンタジー
「婚約を考え直そう」
貴族院の卒業パーティーの会場で、婚約者フリードよりそう告げられたエルザ。
「それは、婚約を破棄されるとそういうことなのでしょうか?」
耳を疑いそう聞き返すも、
「君も、その方が良いのだろう?」
苦虫を噛み潰すように、そう吐き出すフリードに。
全てに絶望し、失意のうちに自死を選ぶエルザ。
絶景と評判の観光地でありながら、自殺の名所としても知られる断崖絶壁から飛び降りた彼女。
だったのですが。
【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
【本編完結】さようなら、そしてどうかお幸せに ~彼女の選んだ決断
Hinaki
ファンタジー
16歳の侯爵令嬢エルネスティーネには結婚目前に控えた婚約者がいる。
23歳の公爵家当主ジークヴァルト。
年上の婚約者には気付けば幼いエルネスティーネよりも年齢も近く、彼女よりも女性らしい色香を纏った女友達が常にジークヴァルトの傍にいた。
ただの女友達だと彼は言う。
だが偶然エルネスティーネは知ってしまった。
彼らが友人ではなく想い合う関係である事を……。
また政略目的で結ばれたエルネスティーネを疎ましく思っていると、ジークヴァルトは恋人へ告げていた。
エルネスティーネとジークヴァルトの婚姻は王命。
覆す事は出来ない。
溝が深まりつつも結婚二日前に侯爵邸へ呼び出されたエルネスティーネ。
そこで彼女は彼の私室……寝室より聞こえてくるのは悍ましい獣にも似た二人の声。
二人がいた場所は二日後には夫婦となるであろうエルネスティーネとジークヴァルトの為の寝室。
これ見よがしに少し開け放たれた扉より垣間見える寝台で絡み合う二人の姿と勝ち誇る彼女の艶笑。
エルネスティーネは限界だった。
一晩悩んだ結果彼女の選んだ道は翌日愛するジークヴァルトへ晴れやかな笑顔で挨拶すると共にバルコニーより身を投げる事。
初めて愛した男を憎らしく思う以上に彼を心から愛していた。
だから愛する男の前で死を選ぶ。
永遠に私を忘れないで、でも愛する貴方には幸せになって欲しい。
矛盾した想いを抱え彼女は今――――。
長い間スランプ状態でしたが自分の中の性と生、人間と神、ずっと前からもやもやしていたものが一応の答えを導き出し、この物語を始める事にしました。
センシティブな所へ触れるかもしれません。
これはあくまで私の考え、思想なのでそこの所はどうかご容赦して下さいませ。
僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?
闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。
しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。
幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。
お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。
しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。
『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』
さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。
〈念の為〉
稚拙→ちせつ
愚父→ぐふ
⚠︎注意⚠︎
不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。
【完結】婚約破棄されて修道院へ送られたので、今後は自分のために頑張ります!
猫石
ファンタジー
「ミズリーシャ・ザナスリー。 公爵の家門を盾に他者を蹂躙し、悪逆非道を尽くしたお前の所業! 決して許してはおけない! よって我がの名の元にお前にはここで婚約破棄を言い渡す! 今後は修道女としてその身を神を捧げ、生涯後悔しながら生きていくがいい!」
無実の罪を着せられた私は、その瞬間に前世の記憶を取り戻した。
色々と足りない王太子殿下と婚約破棄でき、その後の自由も確約されると踏んだ私は、意気揚々と王都のはずれにある小さな修道院へ向かったのだった。
注意⚠️このお話には、妊娠出産、新生児育児のお話がバリバリ出てきます。(訳ありもあります)お嫌いな方は自衛をお願いします!
2023/10/12 作者の気持ち的に、断罪部分を最後の番外にしました。
2023/10/31第16回ファンタジー小説大賞奨励賞頂きました。応援・投票ありがとうございました!
☆このお話は完全フィクションです、創作です、妄想の作り話です。現実世界と混同せず、あぁ、ファンタジーだもんな、と、念頭に置いてお読みください。
☆作者の趣味嗜好作品です。イラッとしたり、ムカッとしたりした時には、そっと別の素敵な作家さんの作品を検索してお読みください。(自己防衛大事!)
☆誤字脱字、誤変換が多いのは、作者のせいです。頑張って音読してチェックして!頑張ってますが、ごめんなさい、許してください。
★小説家になろう様でも公開しています。
妹しか愛していない母親への仕返しに「わたくしはお母様が男に無理矢理に犯されてできた子」だと言ってやった。
ラララキヲ
ファンタジー
「貴女は次期当主なのだから」
そう言われて長女のアリーチェは育った。どれだけ寂しくてもどれだけツラくても、自分がこのエルカダ侯爵家を継がなければいけないのだからと我慢して頑張った。
長女と違って次女のルナリアは自由に育てられた。両親に愛され、勉強だって無理してしなくてもいいと甘やかされていた。
アリーチェはそれを羨ましいと思ったが、自分が長女で次期当主だから仕方がないと納得していて我慢した。
しかしアリーチェが18歳の時。
アリーチェの婚約者と恋仲になったルナリアを、両親は許し、二人を祝福しながら『次期当主をルナリアにする』と言い出したのだ。
それにはもうアリーチェは我慢ができなかった。
父は元々自分たち(子供)には無関心で、アリーチェに厳し過ぎる教育をしてきたのは母親だった。『次期当主だから』とあんなに言ってきた癖に、それを簡単に覆した母親をアリーチェは許せなかった。
そして両親はアリーチェを次期当主から下ろしておいて、アリーチェをルナリアの補佐に付けようとした。
そのどこまてもアリーチェの人格を否定する考え方にアリーチェの心は死んだ。
──自分を愛してくれないならこちらもあなたたちを愛さない──
アリーチェは行動を起こした。
もうあなたたちに情はない。
─────
◇これは『ざまぁ』の話です。
◇テンプレ [妹贔屓母]
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇ご都合展開。矛盾もあるかも。
◇なろうにも上げてます。
※HOTランキング〔2位〕(4/19)☆ファンタジーランキング〔1位〕☆入り、ありがとうございます!!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる