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第十四章 まずはコレをどうにかしないと
第328話 父ちゃんの初仕事に出かけたの
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毎日お茶会を楽しんでいる女性陣は放っておいて、おいらは女王としての仕事を始めるよ。
第一に命じたのは、簒奪したヒーナルが王位に就く以前の水準まで、民に課している税を戻すこと。
これは、おいらが即位を宣言してすぐに宰相に命じておいたんだけど。
おいらが身辺整理やらなんやらでトアール国へ帰っている間にきちんと済ませてくれたって。
それと、ヒーナルが王室費を凄く引き上げていたんで、それも以前の水準に戻させたよ。
現在王族はおいらとオランの二人しかないから、それでも多過ぎるくらいなんだけどね。
そこは、おいおい様子を見て変えて行こうと思っているんだ。
税収はがたんと減ることになるけど、ヒーナルが王室費を無茶苦茶増やしていたんでそれを元に戻すだけでかなり賄えたみたい。
更に、ヒーナル子飼いの近衛騎士の全部に加えて、ヒーナルの『魔王退治』に加担した騎士の家も全部取り潰したからね。
それによる宮廷費の削減は税収の減少を上回っているって、宰相は言ってたよ。
それに加えて、お取り潰しにした騎士の家から没収した金品も膨大なモノで、国庫は今までになく潤沢だと言ってた。
それについては、色々と使い道を考えているんだけどね。
民から不法に取り上げたものだから、還元してあげないといけないと思ってね。
それは、もう少し時間を掛けて実施するとして、先ずは手近な事からだね。
おいら、父ちゃんに仕事をお願いするために『冒険者管理局』と呼称する部署を作ったの。
その名の通り、冒険者と冒険者ギルドを管理監督する部署だね。
それに先立って宰相には、冒険者の犯罪に対する取り締まりについてのお触れを詰めたうえで民に周知しておくようにお願いしてあったの。
どんな規制を作って欲しいかを伝えた上で、おいらが里帰りしている間にお触れを出しておいて欲しいって。
その日、おいらは宰相と父ちゃんを執務室に呼んで。
「宰相、おいらがトアール国へ戻る前に頼んでおいた冒険者の取り締まりに関するお触れは出してくれたかな。」
おいらが宰相に尋ねると。
「はい、陛下の御指示された内容を法の体裁に整え、既に王都及び主要な町にお触れを掲げてあります。」
宰相はそう返答しながら、お触れ書きとして掲示した紙を差し出してきたの。
そこには、冒険者の私闘を禁ずるとか、女性を拉致監禁することを禁じるとかから始まって。
諸々の迷惑行為を禁じる旨とそれに反した場合の罰則が記されていたよ。
更に、所属する冒険者が法に違反した場合は、その冒険者ギルドの長も連帯責任を問うこととか。
王宮の担当者に立ち入り検査をする権限を与えるとかも記されていたんだ。
「有り難う、お疲れさまでした。
さすが、子供のおいらと違って、色々と細かいことにまで気付いているね。
今のところはこれで良いと思うよ。
冒険者の規制に関しては追加で幾つか法を定めて欲しいから。
その時はまたよろしくね。」
おいら、この国では勝手に冒険者を名乗れないようにしようと思っているんだ。
今の冒険者って、ただのならず者と化しているものね。自称は冒険者だけど全然冒険してないし…。
だから、冒険者は国に登録制にして、一定の水準を満たした者だけを冒険者と名乗れるようにしたいの。
冒険者の登録をしていない者が、冒険者を名乗ったらそれ自体を罪にするつもりなの。
そして、冒険者はどこかのギルドに必ず所属することにして、ギルドに監督責任を負わせるんだ。
今は、事実上特定のギルドに所属していても、どこのギルドもちゃんとした管理なんかしてないからね。
今の状態じゃ、お触れに出した冒険者ギルドの長の連帯責任も言い逃れできちゃうもん。
ただ、おいらが考えていること実施するためには、『冒険者管理局』の体制を整えないといけないから。
直ぐにやるって訳にはいかないんだ、『冒険者管理局』は今のところトップの父ちゃんしかいないんだもの。
「陛下のお考えは承知しました。
では、グラッセ伯爵と体制作りについて相談することとします。
先ずは、私の方でグラッセ伯爵の下に就ける候補を見繕っておきましょう。」
そう言って宰相は執務室から出て行ったの。
父ちゃんには残ってもらったよ。
これから一緒に行ってもらうところがあるから。
**********
「ほー、これがウエニアール国で最大の冒険者ギルド、タクトー会か。
随分と羽振りが良いんだな。
トアール国の三大ギルドの何処よりも大きな本部じゃねえか。」
何故かおいらの隣にいるタロウがタクトー会の本部を見上げて驚いていたよ。
ここは、王都の繁華街、その目抜き通りにある冒険者ギルド『タクトー会』の本部前。
おいら、父ちゃんの顔見せと初仕事を兼ねて冒険者ギルドを一つ見せしめにしようと考えたんだ。
冒険者ギルドに抜き打ちで立入検査に入って色々と悪事を摘発しようってね。
でも、タロウが驚くのも頷けるよ。
トアール国の王都でも三階建より高い建物はないのに、目の前の本部は五階建の建物だもの。
この王都で一番高い建物の一つなんだって、因みに王宮は全部平屋だから王宮を見下ろす形になってるの。
王都にはもう一つ五階建ての建物があって二つで高さを競っているらしいよ。
その建物が『カゲベー組』って言う、この国第二の構成員を誇る冒険者ギルドの本部だっているから笑っちゃうね。
こいつら、ドンだけ悪事を働いている事やら…。
「ほう、これは中々立派な建物であるな。
この国は簒奪王ヒーナルの悪政で民は貧困にあえいでいると聞いていたが。
冒険者ギルドは大分羽振りが良いのであるな。」
今度は、お義父さん(シタニアール国の国王)が呆れ交じりに感心してたよ。
タロウに加えて何でお義父さんまでいるかと言うと。
おいらが、父ちゃんとオランと一緒に冒険者ギルドの摘発に行こうと王宮の外に向かっていたら。
王宮の廊下で暇を持て余していた二人とバッタリ出くわしたんだ。
何処へ行くのか尋ねられたんで、ありのままに答えたら面白がって付いて来たんだ。
因みに、シフォン姉ちゃんも連れて来た、おそらく女手が必要になるだろうから。
もちろん、タオルと女性物の服も沢山持って来たよ。
もう一人の男性陣レモン兄ちゃんは、ライム姉ちゃんと一緒に女性陣のお茶会に行っているらしいよ。
多分、どんな段取りでミントさんをハテノ男爵領へ招くかの打ち合わせをしているんだろうね。
それで、ここへ来る前に一旦、繁華街の裏通りに行ってみたの。
すると、一軒の酒場の中が何やら騒々しくて、皿やカップが割れるような音がしたと思ったら…。
ダーン!っという音と共に、扉を破って中年の男の人が飛び出して来たよ。
それを追うように、ガラの悪いニイチャンが五人ぞろぞろと酒場から出て来たの。
「おう、おう、これで、みかじめ料を払わないとどうなるか分かっただろう。
どうしても、払えねえって言うなら、テメエを港に沈めてやっても良いんだぜ。」
いかにも冒険者でございと言った雰囲気のガラの悪いニイチャンが、道で転がっているおっちゃんに向かって言ってたよ。
どうやら、扉を突き破って転がり出て来たおっちゃんはみかじめ料を渋って冒険者に痛めつけられているみたい。
たぶん、この酒場の経営者だね。
「すみません、すみません、どうかこの通り勘弁してくだせえ。
この不景気と重税のせいで赤字続きなんです。
とてもみかじめ料を納める余裕なんてねえんです。」
地面に頭をこすりつけるようにして、詫びを入れるおっちゃんに。
「なんだ、金がねえなら、金がねえって最初に言えよ。
そうすれば、手荒な真似をしねえで済んだのに。
どれ、お優しい『タクトー会』が金を貸してやろうじゃねえか。
金利は大負けに負けて、トイチでどうだ。
てめえ、たしか娘がいただろう、担保はその娘で良いぜ。
ほれ、『タクトー会』から借金をすればみかじめ料くらい簡単に払えるだろう。
そうだな、一年分のみかじめ料を前払いでどうだい。
その分を全額貸してやるからよ。
なあに、いざとなったら娘を『風呂屋』で働かせばいいさ。
あっという間に返済できるぜ。」
オッチャンの詫びを耳にして、『タクトー会』の冒険者はイヤらしい笑いを浮かべながら言ったんだ。
「あのならず者、とんでもないことを言っておるのじゃ。
みかじめ料なんて、支払う義務のないものを無理強いしたあげく。
その分を高利で貸すなんて、おためごかしに言っておるじゃ。
あんな奴の言いなりになったら、骨の髄までしゃぶられるのじゃ。」
冒険者のセリフを聞いたオランがそんな風に憤慨していたよ。
「それだけは、ご勘弁を。
うちの娘はまだ十二歳です。
『風呂屋』に沈めるなんてそんなご無体な。」
おっちゃんは、借金を返せるはずが無いと分かっているみたい。
奴らの狙いが自分の娘だと言うことも。
「バカ野郎! それが良いんじゃねえか。
世の中にはそういう子供が大好物なド変態がいっぱいいるんだ。
そう言う奴に限って金を持っているからよ。」
こいつ、最初からこの店主の娘さんが目当てだったんだね、とんでもないな…。
「ニイチャン、ニイチャン、真昼間から何やっているの?
みかじめ料を取るのはご法度だよ。
広場に掲示したお触れ書きを見ていないの。」
おいらが、ガラの悪い冒険者に注意すると…。
「何だ、この生意気なメスガキは?
テメエ、誰に向かって文句言ってるのか分かっているんか。
俺は、泣く子も黙る『タクトー会』の舎弟なんだぜ。
四の五の言ってると、テメエも変態親父に売り払ってやるぞ。」
素直に注意を聞くとは思ってなかったけど…。
その冒険者は、おいらにまでそんな恫喝をしたんだ。
「こいつら、本当に『勇者』だな…。
マロンにそんな口を利くなんて、ホント、命知らず。」
タロウはそんな言葉を口にながら、父ちゃんと二人で冒険者たちの前に進み出たの。
「何だ、テメエは!」
「俺は、『冒険者管理局』のモリィシーという。
こいつは、今日限りの臨時協力者のタロウだ。
みかじめ料強要及び暴行の現行犯でしょっ引かせて貰うぜ。」
そう告げると、父ちゃんはタロウと共に冒険者を制圧に掛かったの。
制圧はあっという間だったよ。
で、こいつらを手土産に『タクトー会』の摘発に乗り込むことにしたんだ。
王宮を出た時は、どのギルドを見せしめにするかは決まってなかったの。
道すがら悪さをしている冒険者を見つけたら、そいつの所属するギルドにカチ込むことにしてたんだ。
第一に命じたのは、簒奪したヒーナルが王位に就く以前の水準まで、民に課している税を戻すこと。
これは、おいらが即位を宣言してすぐに宰相に命じておいたんだけど。
おいらが身辺整理やらなんやらでトアール国へ帰っている間にきちんと済ませてくれたって。
それと、ヒーナルが王室費を凄く引き上げていたんで、それも以前の水準に戻させたよ。
現在王族はおいらとオランの二人しかないから、それでも多過ぎるくらいなんだけどね。
そこは、おいおい様子を見て変えて行こうと思っているんだ。
税収はがたんと減ることになるけど、ヒーナルが王室費を無茶苦茶増やしていたんでそれを元に戻すだけでかなり賄えたみたい。
更に、ヒーナル子飼いの近衛騎士の全部に加えて、ヒーナルの『魔王退治』に加担した騎士の家も全部取り潰したからね。
それによる宮廷費の削減は税収の減少を上回っているって、宰相は言ってたよ。
それに加えて、お取り潰しにした騎士の家から没収した金品も膨大なモノで、国庫は今までになく潤沢だと言ってた。
それについては、色々と使い道を考えているんだけどね。
民から不法に取り上げたものだから、還元してあげないといけないと思ってね。
それは、もう少し時間を掛けて実施するとして、先ずは手近な事からだね。
おいら、父ちゃんに仕事をお願いするために『冒険者管理局』と呼称する部署を作ったの。
その名の通り、冒険者と冒険者ギルドを管理監督する部署だね。
それに先立って宰相には、冒険者の犯罪に対する取り締まりについてのお触れを詰めたうえで民に周知しておくようにお願いしてあったの。
どんな規制を作って欲しいかを伝えた上で、おいらが里帰りしている間にお触れを出しておいて欲しいって。
その日、おいらは宰相と父ちゃんを執務室に呼んで。
「宰相、おいらがトアール国へ戻る前に頼んでおいた冒険者の取り締まりに関するお触れは出してくれたかな。」
おいらが宰相に尋ねると。
「はい、陛下の御指示された内容を法の体裁に整え、既に王都及び主要な町にお触れを掲げてあります。」
宰相はそう返答しながら、お触れ書きとして掲示した紙を差し出してきたの。
そこには、冒険者の私闘を禁ずるとか、女性を拉致監禁することを禁じるとかから始まって。
諸々の迷惑行為を禁じる旨とそれに反した場合の罰則が記されていたよ。
更に、所属する冒険者が法に違反した場合は、その冒険者ギルドの長も連帯責任を問うこととか。
王宮の担当者に立ち入り検査をする権限を与えるとかも記されていたんだ。
「有り難う、お疲れさまでした。
さすが、子供のおいらと違って、色々と細かいことにまで気付いているね。
今のところはこれで良いと思うよ。
冒険者の規制に関しては追加で幾つか法を定めて欲しいから。
その時はまたよろしくね。」
おいら、この国では勝手に冒険者を名乗れないようにしようと思っているんだ。
今の冒険者って、ただのならず者と化しているものね。自称は冒険者だけど全然冒険してないし…。
だから、冒険者は国に登録制にして、一定の水準を満たした者だけを冒険者と名乗れるようにしたいの。
冒険者の登録をしていない者が、冒険者を名乗ったらそれ自体を罪にするつもりなの。
そして、冒険者はどこかのギルドに必ず所属することにして、ギルドに監督責任を負わせるんだ。
今は、事実上特定のギルドに所属していても、どこのギルドもちゃんとした管理なんかしてないからね。
今の状態じゃ、お触れに出した冒険者ギルドの長の連帯責任も言い逃れできちゃうもん。
ただ、おいらが考えていること実施するためには、『冒険者管理局』の体制を整えないといけないから。
直ぐにやるって訳にはいかないんだ、『冒険者管理局』は今のところトップの父ちゃんしかいないんだもの。
「陛下のお考えは承知しました。
では、グラッセ伯爵と体制作りについて相談することとします。
先ずは、私の方でグラッセ伯爵の下に就ける候補を見繕っておきましょう。」
そう言って宰相は執務室から出て行ったの。
父ちゃんには残ってもらったよ。
これから一緒に行ってもらうところがあるから。
**********
「ほー、これがウエニアール国で最大の冒険者ギルド、タクトー会か。
随分と羽振りが良いんだな。
トアール国の三大ギルドの何処よりも大きな本部じゃねえか。」
何故かおいらの隣にいるタロウがタクトー会の本部を見上げて驚いていたよ。
ここは、王都の繁華街、その目抜き通りにある冒険者ギルド『タクトー会』の本部前。
おいら、父ちゃんの顔見せと初仕事を兼ねて冒険者ギルドを一つ見せしめにしようと考えたんだ。
冒険者ギルドに抜き打ちで立入検査に入って色々と悪事を摘発しようってね。
でも、タロウが驚くのも頷けるよ。
トアール国の王都でも三階建より高い建物はないのに、目の前の本部は五階建の建物だもの。
この王都で一番高い建物の一つなんだって、因みに王宮は全部平屋だから王宮を見下ろす形になってるの。
王都にはもう一つ五階建ての建物があって二つで高さを競っているらしいよ。
その建物が『カゲベー組』って言う、この国第二の構成員を誇る冒険者ギルドの本部だっているから笑っちゃうね。
こいつら、ドンだけ悪事を働いている事やら…。
「ほう、これは中々立派な建物であるな。
この国は簒奪王ヒーナルの悪政で民は貧困にあえいでいると聞いていたが。
冒険者ギルドは大分羽振りが良いのであるな。」
今度は、お義父さん(シタニアール国の国王)が呆れ交じりに感心してたよ。
タロウに加えて何でお義父さんまでいるかと言うと。
おいらが、父ちゃんとオランと一緒に冒険者ギルドの摘発に行こうと王宮の外に向かっていたら。
王宮の廊下で暇を持て余していた二人とバッタリ出くわしたんだ。
何処へ行くのか尋ねられたんで、ありのままに答えたら面白がって付いて来たんだ。
因みに、シフォン姉ちゃんも連れて来た、おそらく女手が必要になるだろうから。
もちろん、タオルと女性物の服も沢山持って来たよ。
もう一人の男性陣レモン兄ちゃんは、ライム姉ちゃんと一緒に女性陣のお茶会に行っているらしいよ。
多分、どんな段取りでミントさんをハテノ男爵領へ招くかの打ち合わせをしているんだろうね。
それで、ここへ来る前に一旦、繁華街の裏通りに行ってみたの。
すると、一軒の酒場の中が何やら騒々しくて、皿やカップが割れるような音がしたと思ったら…。
ダーン!っという音と共に、扉を破って中年の男の人が飛び出して来たよ。
それを追うように、ガラの悪いニイチャンが五人ぞろぞろと酒場から出て来たの。
「おう、おう、これで、みかじめ料を払わないとどうなるか分かっただろう。
どうしても、払えねえって言うなら、テメエを港に沈めてやっても良いんだぜ。」
いかにも冒険者でございと言った雰囲気のガラの悪いニイチャンが、道で転がっているおっちゃんに向かって言ってたよ。
どうやら、扉を突き破って転がり出て来たおっちゃんはみかじめ料を渋って冒険者に痛めつけられているみたい。
たぶん、この酒場の経営者だね。
「すみません、すみません、どうかこの通り勘弁してくだせえ。
この不景気と重税のせいで赤字続きなんです。
とてもみかじめ料を納める余裕なんてねえんです。」
地面に頭をこすりつけるようにして、詫びを入れるおっちゃんに。
「なんだ、金がねえなら、金がねえって最初に言えよ。
そうすれば、手荒な真似をしねえで済んだのに。
どれ、お優しい『タクトー会』が金を貸してやろうじゃねえか。
金利は大負けに負けて、トイチでどうだ。
てめえ、たしか娘がいただろう、担保はその娘で良いぜ。
ほれ、『タクトー会』から借金をすればみかじめ料くらい簡単に払えるだろう。
そうだな、一年分のみかじめ料を前払いでどうだい。
その分を全額貸してやるからよ。
なあに、いざとなったら娘を『風呂屋』で働かせばいいさ。
あっという間に返済できるぜ。」
オッチャンの詫びを耳にして、『タクトー会』の冒険者はイヤらしい笑いを浮かべながら言ったんだ。
「あのならず者、とんでもないことを言っておるのじゃ。
みかじめ料なんて、支払う義務のないものを無理強いしたあげく。
その分を高利で貸すなんて、おためごかしに言っておるじゃ。
あんな奴の言いなりになったら、骨の髄までしゃぶられるのじゃ。」
冒険者のセリフを聞いたオランがそんな風に憤慨していたよ。
「それだけは、ご勘弁を。
うちの娘はまだ十二歳です。
『風呂屋』に沈めるなんてそんなご無体な。」
おっちゃんは、借金を返せるはずが無いと分かっているみたい。
奴らの狙いが自分の娘だと言うことも。
「バカ野郎! それが良いんじゃねえか。
世の中にはそういう子供が大好物なド変態がいっぱいいるんだ。
そう言う奴に限って金を持っているからよ。」
こいつ、最初からこの店主の娘さんが目当てだったんだね、とんでもないな…。
「ニイチャン、ニイチャン、真昼間から何やっているの?
みかじめ料を取るのはご法度だよ。
広場に掲示したお触れ書きを見ていないの。」
おいらが、ガラの悪い冒険者に注意すると…。
「何だ、この生意気なメスガキは?
テメエ、誰に向かって文句言ってるのか分かっているんか。
俺は、泣く子も黙る『タクトー会』の舎弟なんだぜ。
四の五の言ってると、テメエも変態親父に売り払ってやるぞ。」
素直に注意を聞くとは思ってなかったけど…。
その冒険者は、おいらにまでそんな恫喝をしたんだ。
「こいつら、本当に『勇者』だな…。
マロンにそんな口を利くなんて、ホント、命知らず。」
タロウはそんな言葉を口にながら、父ちゃんと二人で冒険者たちの前に進み出たの。
「何だ、テメエは!」
「俺は、『冒険者管理局』のモリィシーという。
こいつは、今日限りの臨時協力者のタロウだ。
みかじめ料強要及び暴行の現行犯でしょっ引かせて貰うぜ。」
そう告げると、父ちゃんはタロウと共に冒険者を制圧に掛かったの。
制圧はあっという間だったよ。
で、こいつらを手土産に『タクトー会』の摘発に乗り込むことにしたんだ。
王宮を出た時は、どのギルドを見せしめにするかは決まってなかったの。
道すがら悪さをしている冒険者を見つけたら、そいつの所属するギルドにカチ込むことにしてたんだ。
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