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第六章 帰って来た辺境の町、唐突に姿を現したのは・・・
第123話 おいらの秘密を明かしたよ
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「なあ、マロン、危ないところを助けてもらったのは嬉しいが。
俺は正直言って混乱している。
レベルを上げるのにあんなものが必要だなんて知らなかったし。
何にもない空間から、あんなものや『妖精の泉』の水なんてものが出てくる。
この三年の間にいったい何があったってんだ?」
父ちゃんは、本当に戸惑いの表情を浮かべて尋ねてきたんだ。
それはそうだ、『生命の欠片』の事はごく一部の人が秘密にしている事だしね。
こんな小さなおいらが知っているのは普通じゃないモノ。
『積載庫』に至っては、人間で持ってるのはおいら一人かも知れないからね。
「うーん、それを話すのは大分長い話になるよ。
父ちゃんがいなくなってから、三年間に起こった色々なことが絡んでいるから。
そう、全ての始まりは、食べる物が無くなって町の外へ出たこと。
そこで、『スキルの実』の秘密を一つ知ったこと。
そして、『妖精の森』の長アルトに出会ったことなんだ。」
父ちゃんがいなくなって、お金も食べ物も無くなっちゃったおいら。
お金を稼ぐために、シューティング・ビーンズを狩ろうと町の外に出たんだ。
そこで見つけたのは、『ゴミスキルの実』と呼ばれ誰も見向きもしなかった『スキルの実』。
シューティング・ビーンズがドロップするんで、その狩場には山ほど放置されてたの。
その実が追熟してとっても良い匂いがしたんで、お腹を空かせたおいらは貪り食べたんだ。
追熟した『ゴミスキルの実』は甘いのやら、甘酸っぱいのやら、どれもとても美味しくて。
しばらくの間、それがおいらの主食になったの。
だって、みんな放置していくから、労せずに手に入るんだもん。
美味しいモノがタダで手に入るんだから、食べないと損だよ。
貴重なスキル枠をそんなゴミスキルで埋める訳にはいかないと、忌み嫌われる『ゴミスキルの実』。
そんな『ゴミスキルの実』を嬉しそうに拾い集め、持ち切れない分をその場で美味しそうに食べているおいら。
そんなおいらに興味を持ったのが、妖精の森の長のアルトなんだ。
物知りのアルトは、人間が忌み嫌う『ゴミスキルの実』を普通に食べているのが珍しかったみたい。
アルトはおいらの境遇に同情してくれて、それから色々と助けてくれたの。
「みんなが『ゴミスキルの実』と呼んで見向きもしなかった『実』が拾い放題だったんで餓死しないで済んだの。
他にも、アルトが栄養のあるものを食べさせてくれたり、『妖精の泉』の水を飲ませてくれたんで病気一つしないで済んだよ。」
父ちゃんがいなくなってすぐの事からアルトと出会った時の事までで、一旦話を区切ると。
「随分と苦労をさせちまったようだな。
父ちゃんの軽率な行動で、マロンを命の危機に晒してしまって本当に悪かった。」
おいらが、餓死寸前まで追い込まれていたと知り、父ちゃんは改めて頭を下げたんだ。
「だが、それが、色々な不思議な出来事とどう繋がるんだ?」
「うん、実はレベルアップに『生命の欠片』が必要なことを知ったのはつい最近の事なんだ。
それと、『ゴミスキル』と呼ばれていたスキルが、実は全然ゴミじゃなかったことも。
これから話すことは、他の人には絶対に秘密にすると約束してくれる?
約束してくれないと、いくら父ちゃんたちでも話せないないんだ、こればっかりは。
それくらい、ヤバいことなの。」
普通の大人だったら、八歳のおいらが『ヤバこと』と言っても笑い飛ばして真剣には聞いてくれないと思うけど。
父ちゃんは、日頃『親子の間で隠し事は無しだ』と言ってきたんで。
それでも話せないというおいらの言葉に只事ではないと感じたみたい。
「おお、わかったぞ。
ミンミンも、これからマロンが話すことは、他言するんじゃないぞ。
里長にもだ。」
父ちゃんが真剣な顔をで言うと、ミンミン姉ちゃんも頷いてたよ。
「きっかけは半年ほど前のこと。
この町が一匹のワイバーンに襲撃されたの。
おいら、たまたま外を出歩いててそれに遭遇しちゃった。
周りはみんな逃げちゃって。
ワイバーンは一人取り残されたおいらを襲って来たんだ。
で、そのワイバーン、信じられない事においらが倒しちゃったんだ。
おいら、レベルゼロなのに。」
「そんなバカな!
ワイバーンって言ったらレベル四十近いと聞くぞ。
町なんか襲われたら、どんだけ被害が出るかって魔物だ。」
おいらの言葉に、父ちゃんも信じられないという声を上げたよ。
「そう、信じられないでしょう。
そこで、初めて『ゴミスキル』と呼ばれているスキルの本当の効果が分かったんだ。
おいら、三年前からゴミスキルの実を主食にしていたんで、どれもレベル十に達していたの。
まずは、『回避』、これレベル十になると『回避率百%』、つまり『完全回避』になるんだよ。
次に、『クリティカル発生率アップ』、これも『クリティカル発生率百%』なるの。
それに、『クリティカルダメージアップ』、これはレベル十でダメージ三千%アップ。
しかも、『クリティカルダメージアップ』はレベル十が天井じゃなくてまだ上がるの。
この三つが働くと、レベルゼロの八歳児でもレベル四十のワイバーンが倒せちゃうの。
おいらも、その時初めて知ってビックリだったよ。」
「ゴミスキルにそんな秘密が…。
でも、俺が調べた限りじゃ、…。
そのスキルはどれも、レベル十まで上げてもせいぜい四百%アップだろうと言われたぜ。
なんだその、三千%アップってのは。」
「それも、『スキルの実』の秘密の一つなんだ。
スキルの実って、食べ頃になるとどんなものでも美味しくなるの。
『ゴミスキルの実』って、どれも苦くて不味いって言われてるでしょう。
あれって、まだ、食べ頃じゃなくて、その状態で食べても効果が薄いの。
苦い状態で食べると、レベル十まで上がっても四百%アップにしかならないって。
アルトがそう言ってたよ。」
「なんと、『スキルの実』は採ったらすぐに食べろってのは間違いだったのか。」
「それで、一番凄いスキルが『積載増加』。
これって、実はレベル十で初めて解禁になるスキルだったんだ。
レベル十までは何の効果も無いから、みんな見向きもしなくなっちゃったけど。
実はレベル十になると『積載庫』っていう、モノをしまえる空間が解禁になるの。
『積載庫』が実際に何処にあるのかは分かんないけど。
ワイバーンが楽々しまえちゃうくらい、広い空間なんだよ。
だから、十万枚もの『生命の欠片』もしまっておけたんだ。」
後は、『生命の欠片』の話。
おいらは、ワイバーンを倒しても全然レベルが上がらないで不思議に思っていたこと。
偶然、貴族のお嬢様のクッころさんと知り合って、レベルアップには『生命の欠片』が必要な事を教えてもらったこと。
そんなことを父ちゃんに話したの。
さすがに、レベル五以下の魔物を倒してもレベルが上がらないと言うのも間違いだとは教えなかったよ。
『積載庫』を持っていないと意味のない情報だから。
**********
「なるほど、マロンが言う通り、迂闊に他人に知られたら拙い情報ばかりだ。
俺達の社会で知られている常識が、ひっくり返るようなことばかりじゃねえか。
『スキルの実』の食い方から間違ってるなんて思いもしなかったぜ。
ああ、父ちゃん、死んでもマロンから聞いたことは口外しないぜ。」
一通り、おいらの話を聞き終えた父ちゃんは、改めて秘密を守るって約束してくれたんだ。
おいらが話したことに一々驚いていた父ちゃんだけど。
『スキルの実は採ったらすぐに食べるモノ』という常識が間違いだったことが一番ショックだったみたい。
前提から違っているんだから。
『生命の欠片』の事が貴族たちによって秘匿されていることには。
「貴族なんてモノはそんなもんさ、下々の者に力をつけて欲しくないから秘密にしているんだろう。」
父ちゃんは、一言そんな言葉を口にして、あまり気にしているような様子じゃなかったよ。
父ちゃんが今まで知りたかった情報を秘匿されていて、恨み言を言うかと思ってた。
「そうそう、父ちゃん、スキル枠を確認してみて。
レベル十毎に覚えられるスキルが一つ増えるんだよ。
父ちゃん、レベル十一になったなら、一つ枠が増えているはずなんだ。」
おいらは、今話したことに無かった情報を伝えてスキル枠を確認してもらったんだ。
「おお、本当だ、スキルの枠が一つ増えてるじゃねえか。
この歳になって、新しいスキルを覚えられるなんて思わなかったぜ。
さてと、貴重なスキル枠を何に使おうかな。」
父ちゃんは、スキル枠を確認すると笑顔を浮かべて、何のスキルを育てようかと楽しそうに考えてるよ。
こんな時の父ちゃんの表情って子供みたいなんだ。
「おいら、スキルの実も色々と沢山持ってるから、分けてあげることできるよ。
父ちゃん、今、何を持っていたっけ?」
おいら、父ちゃんのスキル構成を聞いたこと無かったんだ。
「うん、俺か?
『食物採集能力アップ』、『鉱物採集能力アップ』、『野外採集能力アップ』、『野外移動速度アップ』
この四種類だ。
まあ、金のない冒険者が地道に揃えられるといったらこれしかないな。」
父ちゃんが口にした四種類のスキルは、採集を中心に稼いでいる冒険者の定番スキルなんだ。
安くて手に入り易いからね。
「おいらの手持ちあるのは、そこの置いてある壺に詰まっている四種類のスキル。
おいらに力を与えてくれた、世間では『ゴミ』って言われているスキルだね。
他にも、『積載庫』の中に四種類入ってる。
『野外採集能力アップ』、『野外移動速度アップ』、『命中率アップ』、『敏捷性アップ』
それと、一番最近手に入れた『金貨採集能力アップ』って言うのもあるけど…。」
おいら、『金貨採集能力アップ』は小さな声でコッソリ言ったよ。
あまり、あのスキルの事は言いたくないからね。
でも、父ちゃんは、おいらがスキルの実を分けてあげると言った時から心に決めてたみたいで。
「おお、それは有り難いな。
じゃあ、『積載庫』のスキルの実を貰えるか。
大量のモノをどっかの空間にしまえるなんて、ロマンだぜ。」
うん、やっぱり父ちゃん、子供みたいだ。
分かっているのかな、スキルの実を二万個食べないとレベル十まで上がんないことを。
おいらがそれを指摘すると。
「なあに、朝昼晩と五つずつ食べれば、四年も掛からないじゃないか。
マロンのおかげで、四年どころか、あと五十年くらいは生きられそうだ。
四年で『積載庫』を手に入れられれば、その後長いこと重宝するからな。」
なんて言って笑ってたよ、父ちゃん。
まあ、『金貨採集能力アップ』が欲しいって言われなくて良かったよ。
俺は正直言って混乱している。
レベルを上げるのにあんなものが必要だなんて知らなかったし。
何にもない空間から、あんなものや『妖精の泉』の水なんてものが出てくる。
この三年の間にいったい何があったってんだ?」
父ちゃんは、本当に戸惑いの表情を浮かべて尋ねてきたんだ。
それはそうだ、『生命の欠片』の事はごく一部の人が秘密にしている事だしね。
こんな小さなおいらが知っているのは普通じゃないモノ。
『積載庫』に至っては、人間で持ってるのはおいら一人かも知れないからね。
「うーん、それを話すのは大分長い話になるよ。
父ちゃんがいなくなってから、三年間に起こった色々なことが絡んでいるから。
そう、全ての始まりは、食べる物が無くなって町の外へ出たこと。
そこで、『スキルの実』の秘密を一つ知ったこと。
そして、『妖精の森』の長アルトに出会ったことなんだ。」
父ちゃんがいなくなって、お金も食べ物も無くなっちゃったおいら。
お金を稼ぐために、シューティング・ビーンズを狩ろうと町の外に出たんだ。
そこで見つけたのは、『ゴミスキルの実』と呼ばれ誰も見向きもしなかった『スキルの実』。
シューティング・ビーンズがドロップするんで、その狩場には山ほど放置されてたの。
その実が追熟してとっても良い匂いがしたんで、お腹を空かせたおいらは貪り食べたんだ。
追熟した『ゴミスキルの実』は甘いのやら、甘酸っぱいのやら、どれもとても美味しくて。
しばらくの間、それがおいらの主食になったの。
だって、みんな放置していくから、労せずに手に入るんだもん。
美味しいモノがタダで手に入るんだから、食べないと損だよ。
貴重なスキル枠をそんなゴミスキルで埋める訳にはいかないと、忌み嫌われる『ゴミスキルの実』。
そんな『ゴミスキルの実』を嬉しそうに拾い集め、持ち切れない分をその場で美味しそうに食べているおいら。
そんなおいらに興味を持ったのが、妖精の森の長のアルトなんだ。
物知りのアルトは、人間が忌み嫌う『ゴミスキルの実』を普通に食べているのが珍しかったみたい。
アルトはおいらの境遇に同情してくれて、それから色々と助けてくれたの。
「みんなが『ゴミスキルの実』と呼んで見向きもしなかった『実』が拾い放題だったんで餓死しないで済んだの。
他にも、アルトが栄養のあるものを食べさせてくれたり、『妖精の泉』の水を飲ませてくれたんで病気一つしないで済んだよ。」
父ちゃんがいなくなってすぐの事からアルトと出会った時の事までで、一旦話を区切ると。
「随分と苦労をさせちまったようだな。
父ちゃんの軽率な行動で、マロンを命の危機に晒してしまって本当に悪かった。」
おいらが、餓死寸前まで追い込まれていたと知り、父ちゃんは改めて頭を下げたんだ。
「だが、それが、色々な不思議な出来事とどう繋がるんだ?」
「うん、実はレベルアップに『生命の欠片』が必要なことを知ったのはつい最近の事なんだ。
それと、『ゴミスキル』と呼ばれていたスキルが、実は全然ゴミじゃなかったことも。
これから話すことは、他の人には絶対に秘密にすると約束してくれる?
約束してくれないと、いくら父ちゃんたちでも話せないないんだ、こればっかりは。
それくらい、ヤバいことなの。」
普通の大人だったら、八歳のおいらが『ヤバこと』と言っても笑い飛ばして真剣には聞いてくれないと思うけど。
父ちゃんは、日頃『親子の間で隠し事は無しだ』と言ってきたんで。
それでも話せないというおいらの言葉に只事ではないと感じたみたい。
「おお、わかったぞ。
ミンミンも、これからマロンが話すことは、他言するんじゃないぞ。
里長にもだ。」
父ちゃんが真剣な顔をで言うと、ミンミン姉ちゃんも頷いてたよ。
「きっかけは半年ほど前のこと。
この町が一匹のワイバーンに襲撃されたの。
おいら、たまたま外を出歩いててそれに遭遇しちゃった。
周りはみんな逃げちゃって。
ワイバーンは一人取り残されたおいらを襲って来たんだ。
で、そのワイバーン、信じられない事においらが倒しちゃったんだ。
おいら、レベルゼロなのに。」
「そんなバカな!
ワイバーンって言ったらレベル四十近いと聞くぞ。
町なんか襲われたら、どんだけ被害が出るかって魔物だ。」
おいらの言葉に、父ちゃんも信じられないという声を上げたよ。
「そう、信じられないでしょう。
そこで、初めて『ゴミスキル』と呼ばれているスキルの本当の効果が分かったんだ。
おいら、三年前からゴミスキルの実を主食にしていたんで、どれもレベル十に達していたの。
まずは、『回避』、これレベル十になると『回避率百%』、つまり『完全回避』になるんだよ。
次に、『クリティカル発生率アップ』、これも『クリティカル発生率百%』なるの。
それに、『クリティカルダメージアップ』、これはレベル十でダメージ三千%アップ。
しかも、『クリティカルダメージアップ』はレベル十が天井じゃなくてまだ上がるの。
この三つが働くと、レベルゼロの八歳児でもレベル四十のワイバーンが倒せちゃうの。
おいらも、その時初めて知ってビックリだったよ。」
「ゴミスキルにそんな秘密が…。
でも、俺が調べた限りじゃ、…。
そのスキルはどれも、レベル十まで上げてもせいぜい四百%アップだろうと言われたぜ。
なんだその、三千%アップってのは。」
「それも、『スキルの実』の秘密の一つなんだ。
スキルの実って、食べ頃になるとどんなものでも美味しくなるの。
『ゴミスキルの実』って、どれも苦くて不味いって言われてるでしょう。
あれって、まだ、食べ頃じゃなくて、その状態で食べても効果が薄いの。
苦い状態で食べると、レベル十まで上がっても四百%アップにしかならないって。
アルトがそう言ってたよ。」
「なんと、『スキルの実』は採ったらすぐに食べろってのは間違いだったのか。」
「それで、一番凄いスキルが『積載増加』。
これって、実はレベル十で初めて解禁になるスキルだったんだ。
レベル十までは何の効果も無いから、みんな見向きもしなくなっちゃったけど。
実はレベル十になると『積載庫』っていう、モノをしまえる空間が解禁になるの。
『積載庫』が実際に何処にあるのかは分かんないけど。
ワイバーンが楽々しまえちゃうくらい、広い空間なんだよ。
だから、十万枚もの『生命の欠片』もしまっておけたんだ。」
後は、『生命の欠片』の話。
おいらは、ワイバーンを倒しても全然レベルが上がらないで不思議に思っていたこと。
偶然、貴族のお嬢様のクッころさんと知り合って、レベルアップには『生命の欠片』が必要な事を教えてもらったこと。
そんなことを父ちゃんに話したの。
さすがに、レベル五以下の魔物を倒してもレベルが上がらないと言うのも間違いだとは教えなかったよ。
『積載庫』を持っていないと意味のない情報だから。
**********
「なるほど、マロンが言う通り、迂闊に他人に知られたら拙い情報ばかりだ。
俺達の社会で知られている常識が、ひっくり返るようなことばかりじゃねえか。
『スキルの実』の食い方から間違ってるなんて思いもしなかったぜ。
ああ、父ちゃん、死んでもマロンから聞いたことは口外しないぜ。」
一通り、おいらの話を聞き終えた父ちゃんは、改めて秘密を守るって約束してくれたんだ。
おいらが話したことに一々驚いていた父ちゃんだけど。
『スキルの実は採ったらすぐに食べるモノ』という常識が間違いだったことが一番ショックだったみたい。
前提から違っているんだから。
『生命の欠片』の事が貴族たちによって秘匿されていることには。
「貴族なんてモノはそんなもんさ、下々の者に力をつけて欲しくないから秘密にしているんだろう。」
父ちゃんは、一言そんな言葉を口にして、あまり気にしているような様子じゃなかったよ。
父ちゃんが今まで知りたかった情報を秘匿されていて、恨み言を言うかと思ってた。
「そうそう、父ちゃん、スキル枠を確認してみて。
レベル十毎に覚えられるスキルが一つ増えるんだよ。
父ちゃん、レベル十一になったなら、一つ枠が増えているはずなんだ。」
おいらは、今話したことに無かった情報を伝えてスキル枠を確認してもらったんだ。
「おお、本当だ、スキルの枠が一つ増えてるじゃねえか。
この歳になって、新しいスキルを覚えられるなんて思わなかったぜ。
さてと、貴重なスキル枠を何に使おうかな。」
父ちゃんは、スキル枠を確認すると笑顔を浮かべて、何のスキルを育てようかと楽しそうに考えてるよ。
こんな時の父ちゃんの表情って子供みたいなんだ。
「おいら、スキルの実も色々と沢山持ってるから、分けてあげることできるよ。
父ちゃん、今、何を持っていたっけ?」
おいら、父ちゃんのスキル構成を聞いたこと無かったんだ。
「うん、俺か?
『食物採集能力アップ』、『鉱物採集能力アップ』、『野外採集能力アップ』、『野外移動速度アップ』
この四種類だ。
まあ、金のない冒険者が地道に揃えられるといったらこれしかないな。」
父ちゃんが口にした四種類のスキルは、採集を中心に稼いでいる冒険者の定番スキルなんだ。
安くて手に入り易いからね。
「おいらの手持ちあるのは、そこの置いてある壺に詰まっている四種類のスキル。
おいらに力を与えてくれた、世間では『ゴミ』って言われているスキルだね。
他にも、『積載庫』の中に四種類入ってる。
『野外採集能力アップ』、『野外移動速度アップ』、『命中率アップ』、『敏捷性アップ』
それと、一番最近手に入れた『金貨採集能力アップ』って言うのもあるけど…。」
おいら、『金貨採集能力アップ』は小さな声でコッソリ言ったよ。
あまり、あのスキルの事は言いたくないからね。
でも、父ちゃんは、おいらがスキルの実を分けてあげると言った時から心に決めてたみたいで。
「おお、それは有り難いな。
じゃあ、『積載庫』のスキルの実を貰えるか。
大量のモノをどっかの空間にしまえるなんて、ロマンだぜ。」
うん、やっぱり父ちゃん、子供みたいだ。
分かっているのかな、スキルの実を二万個食べないとレベル十まで上がんないことを。
おいらがそれを指摘すると。
「なあに、朝昼晩と五つずつ食べれば、四年も掛からないじゃないか。
マロンのおかげで、四年どころか、あと五十年くらいは生きられそうだ。
四年で『積載庫』を手に入れられれば、その後長いこと重宝するからな。」
なんて言って笑ってたよ、父ちゃん。
まあ、『金貨採集能力アップ』が欲しいって言われなくて良かったよ。
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